海外就職経験後のキャリアへのアドバイス

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海外就職の先にあるキャリアの選択肢

海外就職実現後、何年働くか検討されていますか?

人によりまちまちですが、私の知る限りでは 1 年から 3 年の滞在が多いでしょうか。私がシンガポールに転職した時は長く就労したかったのですが、やむにやまれぬ事情で 2 年半しか働けませんでした。未来は予測できないですね。

このシリーズでは海外就職という選択肢を提供してきたにもかかわらず、夢を壊すようなことを言ってしまい恐縮です。しかし、海外就職を実現してそれで終わりというのも無責任な気がします。近年は変化のスピードが速くいつ・何が起きるかわかりません。ひとつのことを実現したらその次を考えることも必要です。

この記事では海外で働き始めた後のキャリアと、前回の記事で書いた働き方改革への関係について私の考えをまとめました。

「その国に居続けるか出るか」という観点での選択肢

まずは記事冒頭のイラストをご覧ください。海外就職後の選択肢についてまとめました。いずれも重大な決断を伴う選択ですので、どの選択が良い/悪いというものではありません。

このイラストでは「その国に留まって活動する」、「日本に帰国して活動する」、「他国に渡航して活動する」の 3 つの選択肢を紹介します。自分勝手なお願いですが、各絵の下にはその国でしてほしい活動を書かせていただきました。ひとつずつ解説していきましょう。

第一の選択肢は「その国に留まって活動する」です。最も想定しやすいケースが国際結婚やパートナーを通じた長期滞在(永住)でしょう。また結婚にかかわらず、就職した先の国で縁ができて長く就労するか、起業することもあるでしょう。

一つの会社や地域で長く働くことができることも大切なご縁です。その際は新しくその国(地域)に渡航した人たちをサポートしていただきたいというのが私の勝手なお願いです。日本代表としてその国(地域)に貢献していただきたいというお願いです。

第二の選択肢は「日本に帰国して活動する」です。数年海外就職を経験して日本のグローバル採用として転職するか、または日本で起業されるケースがあります(最も驚いたのは市長に立候補して当選されたケースです)。

日本に帰国された場合は、海外就職で得た経験を日本社会に少しでも還元していただきたい。これが私の勝手なお願いです。このタイプについては最後の節「グローバルとローカルの中間層人材が増えてほしい」で詳しく説明させていただきます。

第三の選択肢は「他国に渡航して活動する」です。ここまでの私は「日本 → シンガポール → ベルギー」と渡り歩いているためこのタイプに該当するでしょう。また駐在員の場合、一つの国の赴任が終わり一度日本に帰国するものの、すぐに他国への赴任を命じられるケースではないでしょうか。

このタイプで活動される場合、いわゆるグローバル人材となって世界にまたがって貢献していただきたいです。次節で詳しく説明させていただきます。

このように、日本国内外の移動という観点からでも働き方改革への何らか貢献ができるものと考えています。

グローバル人材はごく一部のエリート

これまで海外就職については説明してきましたが、グローバル人材については触れてきませんでした。なぜでしょうか?そもそも「グローバル人材」の定義が明確ではないからです。

日本政府発行の資料を参照すると、グローバル人材についてこのように書かれています。引用させていただきます。

我が国がこれからのグローバル化した世界の経済・社会の中にあって育成・活用していくべき「グローバル人材」の概念を整理すると、概ね、以下のような要素が含まれるものと考えられる。

要素I:語学力・コミュニケーション能力
要素II:主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感
要素III:異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティー

引用元:グローバル人材育成戦略(グローバル人材育成推進会議 審議まとめ)|首相官邸 2012年6月発行 p.8 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/global/1206011matome.pdf

外部リンク:グローバル人材育成推進会議|首相官邸

このように、グローバル人材の概念はあっても定義はありません。にもかかわらず世間にはグローバル人材に関する情報があふれています。それが私の中ではどうしても受け入れられないのです。

私がしいてグローバル人材を定義するのであれば「場所(国)や人種に関係なく仕事ができ、世界に貢献できる人材」ではないでしょうか。日本国内でもグローバル人材になることは可能でしょうが、やはり世界に一度出ることが必須だと考えています。

グローバル人材のイメージは世界中を飛び回り世の中ために貢献している人の姿です。そのため、上記の定義に沿った「真のグローバル人材」はごく一部のエリートだと考えています。先ほど説明した3つの選択肢のうち「他国に渡航して活動する」という人材がグローバルに一番近い個人的なイメージです。

グローバル人材になるべく複数の国で就労経験を積むにはどうすればよいでしょうか?例えば東南アジア圏内の複数の国で経験を積むのもいいでしょう。ヨーロッパ圏内(イギリス・スイス・北欧を含む)の複数の国で経験を積むのもいいでしょう。

東南アジア地域内やヨーロッパ域内での移動は比較的スムーズにできますが、大陸をまたいで経験を積めるチャンスはそれほど多くありません。

地域に関係なく色々な国に比較的行けるのは駐在員や国連関係職員のような一部でしょう。ただ「グローバル人材=駐在員や国連職員」というイメージも過去のものです。

現在は私のような現地採用であっても複数の国で働くことはできます。ただ私がグローバル人材に該当するかどうかは周囲が判断することなので、自称は控えさせていただきます。

グローバルとローカルの中間層人材が増えてほしい

ローカル人材、グローバル人材、中間人材の割合イメージ

では、グローバル人材は不要なのでしょうか?

そうではありません。私の独断になりますが、そもそもグローバル/ローカルというグループ分け自体が時代に合わなくなってきています。言い換えると、グローバル/ローカル人材に対してもうひとつのグループの人材が出てきていると考えています。

イメージになりますが、上のグラフのようになります。

日本の生産人口から割合を推定すれば、ほとんどは日本国内で働くローカル人材です。日本経済を支えているのは当然ローカル人材であり、このグループを無視してグローバルを語ることはできません(どの国のローカル人材も同じです)。

ローカル人材の対義語として「グローバル人材」があると考えられます。しかし先にも述べたように、真のグローバル人材はごく一部のエリートであり誰でもなれるものではありません。

この「ローカル/グローバル」というふたつのグループから、 3 番目の中間グループとして「海外就職(留学)経験者」が生まれていると考えています。海外就職後の選択肢2番目の「海外就職を経験後、日本で働く」というキャリアパスを経験した人材です。

海外で働いたり留学した経験を経て日本に還元する人材が増えれば、それもある意味で働き方改革に貢献できるのではないでしょうか。もっと人材が流動的に動ける時代ではないでしょうか。

加藤順彦氏は『若者よ、アジアのウミガメとなれ 講演録(ゴマブックス、 2016 )』にてこのような講演をしています。アメリカや世界に出て経験を積んだ中国人が中国で起業して(例えばアリババのように)中国経済に還元しており、そういった人材を「ウミガメ」と呼んで尊敬しているという話です。そしてその話から、日本でもウミガメ的人材が少しでも育ってほしいという熱意を伝えています。

加藤氏の場合は経営者の観点から語りかけています。

一方、日本は歴史の節目で同じようなことをしてきたはずです。古くは遣隋使・遣唐使の存在があり、明治維新期の岩倉使節団しかり、国外の優れたものを貪欲に吸収して取り込んできました。

日本政府による支援もあります。文部科学省が実施している「トビタテ!留学JAPAN」です。

このプログラムはグローバル人材の育成や産業界の発展を目的としており、最長 2 年まで外国で経験を積ませてもらえます。官民協働海外留学支援制度であり、留学費用は民間スポンサーで賄われているため実費負担は少なく海外経験を積むことができます(書類審査と面接あり)。

外部リンク:【文部科学省】トビタテ!留学JAPAN – その経験が、未来の自信。

このページから、私の考えと似ていた部分があったため引用させていただきます。

帰国後は海外体験の魅力を伝えるエヴァンジェリスト(伝道師)として日本全体の留学機運を高めることに貢献することが期待されています。

あくまでも留学という言葉を使っていますが、これこそ政府主導の 21 世紀型の遣唐使プログラムではないか、と個人的にイメージしています。

学生などの若い人たちはこのプログラムに応募するのも良いですし、団体を経由しなくても個人で同じようなことができる時代ではないでしょうか。

このように、全員がグローバル人材になる必要はありませんし、日本全体がグローバルになる必要もありません。あくまでも海外とのつながりが少しでも増えることが大切ではないでしょうか。

まとめ

私は日本を変えるといった大風呂敷を広げられる器ではありませんし、余計なお世話なのも重々承知です。しかし、前記事のように働き方改革としての海外就職を紹介する以上、ここまで先を見越したキャリア形成について提案させていただきます。

この記事をまとめましょう。

  • 滞在国という観点から、海外就職実現後の選択肢として「その国に留まって活動する」、「日本に帰国して活動する」、「他国に渡航して活動する」がある
  • どのキャリアを選択しても、「新しくその国に渡航した人をサポートする」、「海外就職経験を日本に還元」、「グローバル人材へのステップ」といった海外就職の経験は活きる(ただし筆者の個人的なお願いとして)
  • グローバル人材とローカル人材の中間グループ「海外就職(留学)経験者」の増加が働き方改革にも貢献できるのではないか

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参考文献

加藤 順彦, ゴマブックス, 2016
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このブログを書いている人

ダイブツ
twitter: @habatakurikei
元々IT系だけど電気系技術者。20代で博士号を取得するも、全然社会の役に立てないのが不満でブログによる情報発信を開始。あなたに有益な知識やノウハウを理系目線かつ図解でわかりやすく解説するのがモットー。2018年心臓発作であわや過労死寸前。そこからガジェットレビューを通じた体調管理の情報発信も開始。ベルギー在住でシンガポール就労経験もあり、海外転職や海外生活のノウハウも公開中。

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