個人のブランド化とは挑戦し続けること『自分ブランドで勝負しろ!』

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今回の書評は『自分ブランドで勝負しろ!』です。

自分ブランドで勝負しろ成分

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会社員でも個人ブランド化できる

これからは個人が活躍する時代である。

インフルエンサーがしきりにそう言います。スマートフォンの登場や今までにない便利なサービスが続々と出てくることで、個人で仕事ができる環境は整いました。あとは心理的なハードルくらいでしょうか。

元LINE株式会社上級執行役員の田端信太郎氏の『ブランド人になれ!』という本も最近出版され、個人のブランド化についてツイッター上などで議論されています。

今後、個人で活躍できる場が広がるのは私も同意します。むしろ現在の大企業にはできないことを個人やベンチャーでやったほうが面白いのでは?と感じています。

個人をブランド化しよう。私がこのメッセージを最初に受け取ったのが本書です。著者の藤巻氏はスマートフォンが登場するはるか前から、個人のポテンシャルには可能性があることを当時学生の私に教えてくれました。

著者のこのメッセージを忘れさせてはいけないと思いこの記事を書きました。それくらい、藤巻氏は私にとってのあこがれの人でした。

本書は著者の藤巻氏が「何を考え、どうビジネスをしてきたか」ということを熱く語ったビジネス書です。

藤巻氏はもともと伊勢丹のバイヤーであり会社員でした。しかし、経営破綻した下着メーカーである福助の再建で社長に抜擢されたことから一躍メディアの注目を浴びます。藤巻氏を知らない人向けの自己紹介という意味も込めた本です。

外部リンク:藤巻幸大 – Wikipedia(晩年は本名の幸夫から幸大に改名)

一営業社員から社長へ上りつめたのはなぜか、どのようにブランディングしてきたのか、本書で語りかけています。

田端氏の『ブランド人になれ!』も読みましたが、彼は「ツイッターのフォロワーが1000ない人は終わっている」など攻撃的なところがあります。こういう人の下で働きたいと私は思いません。本書で藤巻氏は𠮟咤激励こそするものの、読み手を攻撃するようなフレーズは一切出てきません。

その意味でも私は田端氏より本書の藤巻氏を支持します。

足を使い挑戦することを熱く教えてくれた

私は本書を通じて「常にチャレンジする人間であろう」と心に決めました。

20代、大学院生の頃や日本で働いていた頃は何度も「自分の人生はもうだめだ」と心が折れそうになりました。博士号なんか取得したのに何の役にも立たない。何のために博士号まで取ってハイエースの運転なんかしているんだ?と自分自身が腐りかけていました。

しかし33歳で転職。シンガポールに移住したことで人生が大きく変わりました。初めて自分の力で殻を破ったと思えました。

シンガポールの仕事が決まるまでは、正直「どうせやっても無駄」という気持ちは少しありました。その反面「チャレンジしてダメならしょうがない、やるなら全力で」と思い力を出し切りました。

シンガポールで2年半、ベルギーで1年以上働き、世界で勝負する技術者という「自分のこうありたいキャリア」は実現できました。独立こそしていないものの、会社員として自分のブランド化は成功したといえるでしょう。

あれ?「個人=独立」ではないの?と思われるかもしれません。

個人のブランド化についてですが、著者は必ずしも「個人=会社から独立」ではないと言っています(p.47)。著者は伊勢丹に入社時の「変わった新入社員」からニューヨークで買い付けまでやる「カリスマバイヤー」になるまで、どのように「ブランド会社員」となったかを具体的に教えてくれます。

もちろん独立したほうが個人の力が試されます。著者は伊勢丹に勤めたあと、福助でサラリーマン社長を経験し会社を再建、最終的に独立します。さらには選挙に立候補して国会議員までやります。

私は藤巻氏が選挙に出たという報道を耳にした時「それは違うんじゃない?」と色目で見てしまいました。しかし本書を読み返すと「挑戦し続けることが自分にとって最高の個人ブランド(p.230)」というご自身の信念があったのでしょう。

挑戦し続けること。これは行動することであり、他のビジネス書にもある多動力的な考え方にも通じるでしょう。

またホリエモンこと堀江貴文氏が「これからはストーリーが大切」と言っているように、藤巻氏は「これからのビジネスは感動がキーワード(p.102)」という持論でビジネスを展開していきました。

藤巻氏はホリエモンとは違い、いわゆる体育会系のノリです。そのため著者の言うことを受け入れられる人とそうでない人に分かれるでしょう。しかし私は藤巻氏に直接お目にかかったこともあるせいか、この熱いメッセージには心を動かされました。

この目で見た有言実行の人

私は藤巻氏とは面識はないものの、3回お見かけしたことがあります。

最初は某学会での講演会でした。福助の社長に就任されて経営再建中の藤巻氏がいすに座り、大きな声でしゃべっていました。メモをとろうとしたら「私の講演は話が飛ぶのでメモをとっても無駄ですよ!」と笑顔で話していました。今思うと貴重な経験でした。

その講演会で忘れられない一言がありました「私の最寄り駅は◯◯なんですが…」。

なんと私の実家の最寄り駅と同じなのでした。聞いたときは半信半疑でしたが、残り2回お見かけできたのは、その最寄り駅ですれ違ったからです。

一度は駅の階段にて、藤巻氏は下り、私は上りですれ違いました。そのとき一瞬目が合ったのですが、ちゃんとした面識がなく声をかけられませんでした。すれ違ったあと後ろ姿を見たら水色のシャツにジーンズ、ジャケットは脱いで肩にかけていたはずです。

もう一回は駅前の広場でした。携帯電話(スマホではなくガラケーの時代)で仕事の話をしていた藤巻氏の前を歩いて通過しました。もちろん声はかけられず、何の話をしていたのかも聞いていません。

社長という立場であれば運転手付きの車に乗れるはずです。ところが藤巻氏は電車で移動していました。本書では「足を使って情報を集めて、世の中の変化を五感で感じとれ」とアピールしていましたが、まさにそれを実践していたのでしょう。

藤巻氏のメッセージを引用させていただきます。

明日からでも、いや、いまこの瞬間からでも、五感をめいっぱい使って、社会や時代の変化というものをじっくり観察しよう。生きた情報を、浴びるように自分の中に取り込んでいこう。

藤巻幸夫 『自分ブランドで勝負しろ!』 オーエス出版 (2004) p.63より引用

藤巻氏はとにかく休まずに仕事をしていたと聞きます。その無理がたたってか、藤巻氏は2014年3月に大動脈破裂でこの世を去りました。54歳という若さでした。

私は同じ時期に日本の会社を辞めました。そして海外就職活動をして9月にシンガポールの日系メーカーの開発の仕事への転職が決まりました。本書と出会ってから10年後、私は足を使って挑戦し新しい人生の門出を迎えることができました。

改めて、藤巻氏のご冥福をお祈りします。

「自分ブランドで勝負しろ!」というメッセージは、今も私の中でちゃんと生きています!

今回紹介した本