心臓発作で倒れたけど心臓は悪くなかったおはなし

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生まれて初めて心臓発作を経験しました。それも日本ではなく異国の地で起きた出来事で、私にとっては決して忘れられない体験となりました。

この記事では私が実際に発作が起きた時とその前後の状況、さらに考えられる原因などを、覚えている限り整理しました。思い出すと当時の辛さが甦り心苦しくもあります。ただ私自身の経験や情報を公開することで、同じ苦しみを経験している方に少しでもお力になれればと思い書くことにしました。

私の経験談

前兆はあったがすぐ診察できなかった

2018年2月21日(水)、俳優の大杉漣さんが急性心不全で逝去された日です。この訃報はベルギーにいる私にも入ってきました。同じ日夜の就寝時、いつもどおりベッドに入り眠りに就こうとしたところ、突然左肩近くの胸に痛みを感じました。

この痛みは明らかに今までにないタイプでした。数分痛みが続いたら一度消え、再び痛みが発生する、というサイクルが何度もありました。痛みが完全に消えたのは数十分後でしたでしょうか。この痛みは決して忘れられませんし、二度と経験したくありません。

心臓発作の前兆として自覚のあった痛みの部位

怖くなりインターネットで調べてみたところ、狭心症もしくは不整脈が疑われました。その日は数時間しか眠れませんでした。

翌日、すぐに病院の予約を入れました。言葉の不安があった(医学用語に自信がなかった)ので、ローカルよりも日本語の通じるお医者様を希望していました。一件予約を取ることはできたのですが、アポイントは10日後でした。その日まで待てなかったため、会社の上司に病院を紹介してもらえるかお願いしたのですが、自分で調べるのと変わらない情報しか得られませんでした。

※後日談:ベルギーでは「ホームドクター」という、いわゆる「かかりつけのお医者様」を持つのが通常です。当時私にはホームドクターはいませんでした。何か不調があればまずホームドクターで診察してもらい、必要に応じて専門医を紹介してもらうそうです。ただこの方法を使っても、すぐ専門医を紹介してもらえず発作は防げなかっただろうとのことでした。

職場で心臓発作で倒れ救急病院へ

週末も就寝のたびに何らかの症状がありました。胸の痛みだけでなく、左腕の痺れや「ドキン」と一瞬の痛みとともに体が一瞬浮く、ということもありました。入浴もしましたが、気分はリフレッシュできませんでした。

翌月曜日、いつもどおり出勤しました。この日は始業後から左腕に違和感がありました。そして、昼食時食堂にて着席したところ、突然気分が悪くなりました。そしてフラフラになり倒れました。

意識は遠のくものの完全には途絶えず、同僚のサポートで深呼吸をしながら何とか自分の意識は保つことができました。左腕はズキズキ痛み、その後両手の痺れを感じました。数分後のある時点から急に楽になり、痛みや痺れは引きました。

平行して救急車を呼んでもらうように同僚にお願いしていました。幸い先週の時点で不調があることを同僚に伝えていたため、迅速に対応していただきました。救急車が来るまで私に付きっきりになってくれました。ただ救急車が来る前に私の容態は回復しました。

※後日談:救急の電話をしてから救急車が到着するまで20分程かかったようで、しかも救急隊員は急ぐそぶりを見せなかったとのことでした。

救急搬送された病院Marie Middelares(後日撮影)

近くの救急病院に担架で運ばれ、入院用のパジャマ(これが薄着で寒い)に着替えて検査が始まりました。ローカルのお医者様から問診があり、血液検査、心電図、胸部レントゲン、血圧、脈拍(心拍数)を検査しました。

数時間後、全ての検査の結果「問題なし」でした。何が原因かもわからず、薬の処方も無く、何事も無かったかのように着替え、二日間仕事を休んでも良い(倒れた当日と翌日)という医師のサインが書かれた紙片を受け取り終了しました。

ただ、どうしても不安であれば専門医に診察してもらったほうが良いということで、その医師はアポイントを入れてくれていました。ただその予約も一ヵ月後でした。その一か月の間に何かあったらどうするんだ!と同僚が気を利かせて交渉してもらった結果、翌日の夕方の予約に変更してくれました。

その日はすぐ自宅に戻り、ひたすら寝るしかありませんでした。シャワーも浴びず、寝室で寝るのも怖かったのでダイニングのソファで一晩を過ごしました。

翌日の専門医診察でも問題なし

翌日は仕事を休み、夕方の専門医の診察までソファでじっとしていました。

夕方、同僚の車で診察に行きました。予定時刻前に着きましたが、遅れて診察は始まりました。上半身の服を脱ぎ身長・体重を測定し、ベッドで横になりました。

前日と同じように心電図を測り、いくつか質問に答えました。その後医師はエコーで心臓の映像をモニタリングしました。エコーの結果問題はありませんでした。

ジムにあるようなサイクリング装置で自転車をこぎながら心電図の測定もしました(自転車エルゴメーター法というそうです)。

全ての検査を終え、着替えを済ませて医師の診断結果を聞きました。結果は「良い知らせです。心臓に全く問題はありません(It is a good news. Your heart is fully normal.)」。医師も困ったようでした。「時々胸の筋肉が緊張することもあるけど…いずれにしても問題ないから、次回また何かあればまた来てほしい」という結果でした。最後に医師と握手をして退室しました。

その日の夜、一人で眠ることに不安しかありませんでした。ベッドに入り目を閉じると、突然息苦しくなりました。慌ててベッドから出て腹式呼吸で深呼吸し数分後楽になりました。

念のため、同じマンションに住んでいる同僚(トルコ人で「何かあったら連絡してほしい」と事前了承を得ていた)に連絡し私の部屋に来てもらいました。30分~1時間くらい雑談しながら、自分の呼吸を整えたところ楽になりました。

専門医からさらに3日間休んでも良いという証明書をもらいました(自分から発行してもらうようにお願いした)。発作が発症した月曜日から合計一週間休むことができたので、終日ほぼソファでゴロゴロしました(というか動けなかった)。その後、疲労回復の方法(別記事で紹介予定)を取り入れながら、徐々に体を動かし、日曜日は散歩できるまで回復しました。

仕事量を少なくしてほしいというお願いを受け入れてもらい、リハビリを兼ねて月曜日から出勤を始めました。そしてこの記事の執筆時点まで、心臓発作は再発していません。

結局原因は何だったのか?

私の身体情報をシェアします

結局、何が原因だったのか医師の説明はありませんでしたし、当然自分もわかりませんでした。心筋梗塞であれば、まず生活習慣病が疑われます。私のケースでは心臓の検査結果問題なしだったので、血液ドロドロからの血管の詰まりではないのでしょう。

念のため、発作発症時の私のスペックをシェアさせていただきます。ご参考になれば嬉しいです。

  • 年齢37歳、男、血液型AB型
  • 身長168cm、体重66kg (BMI23.4 < 25で肥満ではない)
  • 喫煙暦3年(ただし10年以上前にタバコは止めている)
  • 両親または親戚に心臓の病で亡くなった人はいない
  • 運動はしてない(歩くのは好き)
  • 就寝時刻は夜10~11時、起床時刻は毎朝6時30分ごろ(土日祝日も同じ)
  • 食生活など
    • 朝食:パン(バターと蜂蜜)、生ハム、ヨーグルト、紅茶(または豆乳かフルーツジュース)
    • 昼食:肉か魚、サラダ、フライドポテト、スープ(社員食堂)
    • 間食:チョコレート(チョコビスケット)
    • 夕食:スーパーのデリカか冷凍(インスタント)食品
    • お酒:350ml/日(週3~4日)
    • 好き嫌いなし
  • その他:尿酸値が高い(通風予備軍として服用中の薬あり)

運動をしていない、服用中の薬はあるといった項目はあるものの、明らかな不摂生をしているつもりはありません。実際、血液検査の結果は何も問題ありませんでした。

ストレス要因の積み重ねの可能性

私の身体的な情報だけでなく、他に何があったかを思い出してみました。箇条書きにしてみると、これらのことが考えられます。

  • 残業や労働環境:残業は月10時間未満で、日本で働いていた時よりも明らかに好条件。ただし、プロジェクトの計画性のなさから振り回されて思うように作業ができなかったことはよくあった。海外就労は前職のシンガポールに続いて2度目だったので順応はできていた。
  • 一番寒い時期で寒暖差があった(心臓発作のあった週は最低気温-5℃前後、最高気温+1℃前後、この冬欧州は6年ぶりの大寒波だった)
  • 前年はまだシンガポール在住だったので、体が寒い冬に適応できなかった(シンガポールは赤道近くにあり、冬でも連日30℃超え)
  • 日照時間が少なくビタミンD欠乏となり、軽いうつ状態になっていた(欧州の冬ではビタミンDのサプリを使ってうつ病などを防ぐ)
  • 日本食を食べる機会が少なくストレスを感じていた
  • プライベートでの問題もストレスとなっていた(例えばクレジットカードのトラブルなど)
  • PCでの作業時間が長く、ストレスを感じ視野が狭くなっていた
  • スマホ依存、チョコレート依存していた
  • 職場で紅茶やコーヒーが無料だったので、飲みすぎた(カフェインの過剰摂取)
  • 睡眠をとっていたつもりが、回復していなかった
ビタミンDのサプリには太陽のイラストがある

ビタミンDについては、札幌など日本の北の方では欧州と同じように摂取が必要な場合があるようです。

外部リンク:体内で必要とするビタミンD生成に要する日照時間の推定 -札幌の冬季にはつくばの3倍以上の日光浴が必要-|2013年度|国立環境研究所

上記の要因のどれかではなく、複数の要因が積み重なって発症したと考えるのが自然ではないでしょうか。

心臓発作をどう予防/再発防止すべきか

一度発症してしまった以上、再び起きる可能性はあります。しかし、このままでは医師からも周囲からも「偶然発作が起きたのでは?」で片付けられてしまいます。

あの発作の苦しみは本人にしかわかりません。自分の身体ですので、まず自分で向き合うしかないのでしょう。

どのような経緯にせよ、まずは医師の検査と診断を受けましょう。私も医師ではない以上、勝手なことは言えません。

私のケースで言えば、まず発作の前兆がありました。医師の書かれた本を読んだところ、以下の記述を見つけました。引用させていただきます。

心臓病の発作は、なかには突然発症するものもありますが、患者さんによく聞いてみると、大きな発作が起きる前に、典型的な初期症状が出ていることも多いのです。(中略)初期症状として典型的なものは、激しい胸痛・動悸や脈拍の異常・息切れと呼吸困難・むくみ・めまい・一時的な失神、主にこの六つです。

天野篤 『最新 よくわかる心臓病~心筋梗塞・狭心症・不整脈・弁膜症・大動脈瘤~』 成文堂新光社 (2013) kindle版位置No.943付近

ここに書かれているように、胸痛の自覚はありました。そのため病院にまず連絡して診察をお願いしました。結果的に私のケースでは診察前に発作が出てしまいました。しかしそれでもまず医師に相談することをお勧めします。

そして、場合によっては専門医にも診察してもらいましょう。私のケースではこれらの検査をやりました。いずれも心臓の専門医が紹介している方法です。同書から再度引用させていただきます。

【一般病院にて行われた検査】
血液検査、心電図、胸部レントゲン、血圧、心拍数、問診

【心臓専門医にて行われた検査】
心エコー検査、自転車エルゴメーター法(自転車をこぎながら心臓の負担を測定する心電図検査の一種)

天野篤 『最新 よくわかる心臓病~心筋梗塞・狭心症・不整脈・弁膜症・大動脈瘤~』 成文堂新光社 (2013) Kindle版位置No.1233付近『心臓病の診断と治療の流れ』より

体験談でお話しした通り、上記の検査は一通りやってもらいました。それでも何も問題ありませんでした。生活習慣病ではないとなると何が考えられるのでしょうか。

ここまで医師の協力で検査してもらって、それでも問題なかった場合はどうすべきか?再発の恐れもあり不安で仕方ありません。私もどうしたらいいのかとても悩みましたが、自分でなんとかするしかありません。

あくまでも推測ですが、自分で調べてみた結果『脳疲労を原因とした自律神経失調による心臓発作』だったのではないかと考えています。この仮説を自分の身体で確認するために、今後の記事でいくつか試行錯誤を行いたいと考えています。

万が一発作で休養の必要が出てきた場合は最低二週間、できれば1ヶ月休みましょう。私は一週間休んで出勤しましたが、やはり体力は戻らずしんどいです。1ヶ月あれば普通の生活はできるようになりますが、仕事との兼ね合いで休めない現実もあります。幸い職場での仕事量をコントロールさせてもらえたため、一週間の休みでも試行錯誤して体力を回復することができました。私は最低二週間、できれば1ヶ月休むことをお勧めします。

まとめ

この種の病気で一番大切なことは、この二つだと思いました。

  1. 本人が症状を受け入れる勇気
  2. 周囲の理解と協力

このような病気は責任感の強い人がなりやすい傾向にあるため、まず本人が症状を受け入れる必要があります。私のケースでは、症状を受け入れて病院にコンタクトを取ったにもかかわらず発症してしまいました。

自分なりにいくら予防したとしても、防げるとは限らないため周囲の理解(特に職場)も必要です。私のケースでは事前に自分の症状を職場の仲間に伝えてかつ理解をしてくれました。そのため、発作が発症したときにも協力してくれ、一命をとりとめることができました。

もし私が日本にいたとしても、周囲の協力が無ければ発作で倒れて帰らぬ人になった可能性もゼロではありません。

以上、この記事をまとめるとこのようになります。

  • ホームドクター(かかりつけ医)を持ち、緊急時に備えて普段から相談できる医師を見つけよう。
  • 心臓発作は必ず前兆があるので、気が付いたら医師の診察を受けよう。身体は悲鳴を上げている!
  • 周囲の理解が何よりも大切なので、信頼関係が持てる仲間をつくろう。

※この記事は医師の診断結果と筆者の独自調査と個人的な経験から総合的に判断してまとめました。症状が発生したと感じられたら病院に行き、医師の診察をお受けください。

参考文献

本書の著者である天野先生は、2012年に天皇陛下の心臓手術をされた方です。心臓の権威とも言うべき先生の本ですが、わかりやすくイラスト付きで書かれています。

病院の選び方、病院でどのような検査があるか(この記事で一部引用)、治療方法、再発防止方法、ワインで予防できるかといった雑学、どのような人が発症しやすいかなど、患者さんの目線で知りたい情報が書かれていてとても参考になりました。