国際将棋マガジン3で英語を学ぼう—二歩、詰将棋、アジア大会

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国際将棋マガジン第3号
国際将棋マガジン第3号

国際将棋マガジンの英訳をこれまで2回やらせていただき、主にヨーロッパとアジアでの活動を中心に紹介させていただきました。

今回は同誌第3号から記事を紹介します。毎回できるだけ異なるテーマを取り上げたいと思い、今回は将棋の基本や勝負メシといった身近な話題について解説します。以前紹介した内容と一部重複もあるかもしれませんがご了承ください。

二歩は将棋の独特なルール

紹介文の概要、英文の和訳

最初は『将棋の基本的な考え方』という記事から紹介させていただきます。

将棋で歩は最弱な駒ではあるものの「歩のない将棋は負け将棋」という格言があるほど勝つためには必要な駒です。チェスなどの他国で遊ばれているボードゲームでも同じ動きの駒は存在します。

しかし将棋だけは歩についての独特なルールがあります。それが二歩です。どうしてでしょうか?

持ち駒という概念があるのは日本の将棋だけだからです。チェスや他の類似ゲームでは相手の駒を取っても再度使うことはできません。

この記事の執筆者である Ng 氏はマレーシアの方です。他国のゲームの比較をしながら二歩のルールについてこのように解説しています。引用させていただきます。

In shogi board, each pawn has to accept its path and move forward without any other choice. And each of them consists of different experience when they are moving on their own path. If you play shogi before, we know that there will never be 2 pawn at the same column due to the rule. This is a particular rule which different from International Chess and Chinese Chess (xiangqi). Even a capture pawn from the opponent (Dropping) also cannot put it on the same column with the other pawn. In simple word, each column just can consist of 1 pawn without counting the promoted pawn “tokin”, a pawn that successful reach enemy camp and get promoted according to the player wish.

【訳例】

将棋盤にて、各歩には自分の筋があり、かつ前進以外の動きができないことを受け入れなければいけません。歩が自分の筋で前進するとき、その動きは歩ごとに異なる経験をします。もしあなたが将棋を指したことがあるなら、ルールによって1列に歩が2個あってはならないことを知っていることでしょう。これはチェスや中国将棋(シャンチー)にない将棋特有のルールです。たとえ相手からとった歩を持っていても、既にある歩と同じ列に打ってはいけません。単純に言うと各列には、と金を除いて1つの歩しか存在してはいけません。と金は敵陣に到達することに成功した歩で、プレイヤーが望んで成った歩のことです。

T.S. Ng, “The Basic Philosophy on Shogi,” International Shogi Magazine, no.3, p.49-51 (2019) より引用

前半部分の解説

まずは最初の2文を取り出しましょう。

In shogi board, each pawn has to accept its path and move forward without any other choice. And each of them consists of different experience when they are moving on their own path.

将棋盤上 (shogi board) にある各歩 (each pawn) の決められた動きをプレイヤーはルールとして受け入れないといけない (has to ≒ must) と書かれています。

「受け入れる」という意味の英単語は accept です。ビジネス英会話では重要な単語なので覚えてください。例えば退職願を上司に出した場合、上司は一旦受け取ります (receive)。その後、志望者の退職意思を承認することで受理 (accept) になります。この英文ではプレイヤーは歩の動きをルールとして認めなければいけない、だから has to accept なのです。

ではどのような動きを受け入れなければいけないのでしょうか?それは前に進む (move forward) という動きだけ、ということです。

同文にある path は道という意味です。同じ道でも way よりも「人が通る道、通路」という意味が強い単語です。ビジネス英語の例ならキャリアパス (career path) も「職歴」という、ある意味人生の通り道ですね。

将棋の世界では縦の通路を筋と言うので「各歩は自分の置かれた筋で前にしか進めない」となります。

そして歩は横やななめに移動できないことを強調して、文の最後に without other choice (他に選択肢はない)としています。

without は「~なしで」という意味です。日常英会話でも使われます。例えば “You can not come without an appointment.” は「アポイント(予約)なしで来ることはできない」という感じです。

2文目は簡単に解説します。 consist of は以前も紹介した「~で構成されている」です。その後 different experience (異なる経験)とあるので「各歩は異なる経験からなる」になります。ただ自然な日本語にするため「異なる経験をする」と訳しました。

何が言いたいかというと、推測ですが「歩を前に進めるにも意味の違いがある」ということでしょう。角道を開けるのか、駒をぶつけるのかで意味が違うということを主張したいのでしょう。

中盤部分の解説

次に中盤の2文を再度紹介します。

If you play shogi before, we know that there will never be 2 pawn at the same column due to the rule. This is a particular rule which different from International Chess and Chinese Chess (xiangqi).

最初の文です。「将棋をやったことがあれば、1つの列に歩を2個置いてはいけないというルールを知っていることでしょう」とこの記事の核心に入ります。

same column は「同じ列」です。先ほどは path という表現を使いました。同じ表現の繰り返しを避けるために今度は column としています。将棋盤のマス目を表にみたてれば、筋は列になりますね。ちなみに段(行)は row です。

due to は「~が原因で、~という理由で」という意味です。ここでは「ルールだから」となります。この表現も日常英会話で使います。例えば “A train is delayed due to snow.” (雪のせいで電車が遅れています)という感じです。

ちなみに、文法的には 2 pawn ではなく複数形の 2 pawns にするのが正解です。この記事はワードで書いていますが、しっかり修正候補の緑線がでます。

しかしグローバル英語は意思疎通(意味が通じること)が最優先です。間違えを恐れずに自分の考えを主張することが大切です。私も今でもたくさん間違えます。

もう1つ、 will never be とあります。「絶対に~ではいけない」と。二歩は反則なので絶対にしてはいけないので never を使っています。また、二歩をしているのは現在ではなく「将来将棋をプレーした場合」ということなので未来形です。未来形の will の後の動詞は原形なので be ですね。

2文目です。「チェスや中国将棋とは違う独特なルールです」と他のボードゲームと比較して解説しています。

particular は「特別な、特有な、独特な」という意味です。ここでは「将棋の独特なルール」となります。

後半部分の解説

最後の部分を改めて紹介しましょう。

Even a capture pawn from the opponent (Dropping) also cannot put it on the same column with the other pawn. In simple word, each column just can consist of 1 pawn without counting the promoted pawn “tokin”, a pawn that successful reach enemy camp and get promoted according to the player wish.

capture pawn は「持ち駒の歩」のことです。 capture は「捕まえる、捕獲する」という意味の強い単語です。ビデオをパソコンにデータとして取り込むことを「キャプチャー」と言いましたが、この単語です。文法的には captured pawn (すでに持ち駒として捕まった歩)とした方が自然かもしれません。

opponent は「敵、相手」です。持ち駒にするには相手の駒を取らないといけません。だから from the opponent と詳しく説明しています。

最後の文は、と金は二歩のルールに当てはまらないことを解説しています。そして、と金の簡単な説明を加えています。

successful reach enemy camp は「敵陣に入りこむことに成功した」です。 camp は以前紹介した「陣営、玉形」で、相手陣であることから enemy camp です。 reach は「到達する」、 successful は「成功した」です。文法的には successfully reaches とした方が自然でしょう。

最後の player wish は「プレイヤーが望む」です。 wish は「希望する、~であればよいと思う」です。 iPhone にあるウィッシュリスト (wish list) は「ほしいものリスト、やりたいことリスト」という意味です。

駒を成るかどうかは選択できます。「プレイヤーが成ることを望んだ結果、歩はと金に成る」と執筆者は解説しました。

このように、二歩の解説でも様々な英語表現が出てきましたね。私自身も勉強になります。

アジア将棋トーナメントレポート

日本を除く6か国のチームによる大会

2018年9月16日、第6回アジア将棋トーナメントがシンガポールで開催されました。以前はポーランドの将棋大会の模様を紹介したので、今回はアジアの大会を紹介させていただきます。

シンガポール、ベトナム、バンコク(タイ)、香港、マレーシア、広東 (Canton) の全6か国(地域)による参加で開催されるこの大会は、直近ではバンコクチームが4連覇となっています。

各チームは3人の棋士で構成された団体戦で、先に2勝したチームの勝利です。ただし2敗失格システムなので、チームが1度負けても別のトーナメント枠でまだチャンスはあります。持ち時間は10分、秒読み30秒です。

この記事の導入部分を紹介させていただきます。

The annual competition is a main highlight of shogi for the Asia region and this year’s was no different. A total of thirteen teams from six countries gathered to battle for supremacy. The Asia Shogi Tournament allows country and interest group representatives to concurrently compete. This meant that the tournament ran two competitions in tandem. Professional shogi players Mr Kenji Kobayashi, Mr Shohei Takada and Ms Madoka Kitao were also present to oversee and perform teaching sessions.

【訳例】

この年次大会はアジア圏では将棋のメインイベントで、今年も違いありませんでした。6か国(地域)、計13チームが集まり、覇権を争いました。アジア将棋トーナメントは、国と参加に興味のあるグループの代表が同時に競いあいます。これは2つの大会が1つになっていることを意味します。プロ棋士の小林健二九段、高田尚平七段、北尾まどか女流二段も参加され試合の様子を観戦、また指導セッションも行われました。

J. Tan, “The 6th Asia Shogi Tournament 2018,” International Shogi Magazine, vol.3, pp.35-47 (2019) より引用

この記事では次の将棋めしと合わせて2か所から引用させていただきました。ボリュームが多くなるため簡単に解説させていただきます。

前半部分をおさらいします。

The annual competition is a main highlight of shogi for the Asia region and this year’s was no different. A total of thirteen teams from six countries gathered to battle for supremacy.

最初の文です。annual competition は「年次大会」と訳しました。 annual は「年次の」で、毎年行われるものについてよく使う表現です。

competition は「競争、大会、コンテスト」つまり棋戦のことです。

region は「地域」です。ここではアジア圏と訳しました。

次の文です。 gather は「集まる」という意味で、6か国(地域)のチームが集まっています。赤ちゃん用品のおむつでギャザーという部分があります。これは赤ちゃんが出したものが漏れないように集める、という意味です。

supremacy は「覇権」です。やや政治色の強い単語なので日常英会話では使われません。

後半部分をおさらいします。

The Asia Shogi Tournament allows country and interest group representatives to concurrently compete. This meant that the tournament ran two competitions in tandem. Professional shogi players Mr Kenji Kobayashi, Mr Shohei Takada and Ms Madoka Kitao were also present to oversee and perform teaching sessions.

次の文です。 allow は「許可する、許す」という意味で日常英会話の頻出単語です。以前紹介した permission よりもカジュアルな単語です。例えば “You are not allowed to enter without a ticket.” (チケットなしで中には入れません)といった感じです。

representative は「~を代表する」です。これもビジネス英語で使われる単語です。

concurrently は「同時に、一度に」という意味です。硬い表現なのであまり使うことはありません。この記事でも “to compete in the same tournament” という表現で良かったかもしれません。 compete は先ほどの competition の動詞形です。

次の文です。 in tandem は「一緒に」という意味です。バイクの二人乗りを「タンデム」と言いますが、そこから来ています。あまりよく使う表現ではありません。

最後の文です。 present は「出席する、参加する」という意味で使っています。 presentという単語には「贈り物(ギフト)/出席する/現在」などたくさんの意味があるので覚えてくださいね。

oversee の意味は「監督する、目撃する」ですが「観戦した」と訳しました。あまり使わない表現です。

この記事からおわかりかもしれませんが、プロ棋士の先生方は将棋の海外への普及活動にも力を入れています。そういった活動が日本の方にも伝わればいいな、という思もかねてこの記事を選ばせていただきました。

将棋めし(勝負メシ)も提供された

同記事からもう1つ引用させていただきます。それは「将棋めし(勝負メシ)」です。

将棋の対局がネット中継されるようになってから、棋士の昼食や夕食、さらにはおやつなどの間食にも注目が集まるようになりました。そういう文化もあっていいと思います。

このアジア将棋トーナメントでは、昼食に日本式のお弁当が参加者に提供されました。その部分から引用させていただきます。

As the wise saying goes, an army cannot fight on an empty belly. Neither can shogi players. What more could one ask for in an eventful morning of shogi battles? Free lunch of course! DONGURI family restaurant kindly sponsored bento lunches for all participants. And what goes into these bentos, you ask? A healthy portion of fish, tofu, sashimi, tempura, rice, pickles and vegetables.

【訳例】

格言の通り「腹が減っては戦ができぬ」です。棋士にとっても同じです。対局で多忙な午前中に、さらに何を求めるのでしょうか?もちろん無料ランチです!「ファミリーレストランどんぐり」様がスポンサーとなり全参加者にお弁当が提供されました。そしてこのお弁当に何が入っていたのか、聞きます? お魚、豆腐、お刺身、天ぷら、白米、漬物、そして野菜など健康的なメニューでした。

J. Tan, “The 6th Asia Shogi Tournament 2018,” International Shogi Magazine, vol.3, pp.35-47 (2019) より引用

こちらも簡単に一文ずつみていきましょう。

前半部分をおさらいします。

As the wise saying goes, an army cannot fight on an empty belly. Neither can shogi players. What more could one ask for in an eventful morning of shogi battles? Free lunch of course!

wise saying は「格言、金言」です。文章として “As the wise saying goes,” は「格言にある通り」という定型文として覚えておけばよいでしょう。

そしてどの格言かというと「腹が減っては戦ができぬ」です。この格言のルーツはナポレオンの発言とのことですので、英語でも通じるものがあるのでしょう。

記事中の “An army cannot fight on an empty belly.” のうち、 army は「軍隊」、 belly は「お腹、胃」です。ベリーダンスのベリーは belly から来ています。

次の文です。neither は「~もない」です。否定文に同調する場合、 either ではなく neither を使います。この場合は軍隊だけでなく「私たち棋士もおなかが減っていては勝負できませんよ」と書いています。

文法的に neither の後は倒置文なので “Neither can shogi players.” です。 “Neither shogi players can.” ではありません。理屈ではなくそういうものだと覚えましょう。

次の文です。 eventful は「出来事の多い」が転じて「忙しい」という意味です。朝からみな対局に集中しているので eventful morning です。 morning は「朝、午前」のどちらでも使えます。

“What more could one ask” は「さらに何を求めることができる」です。この one は誰かですが、参加者たちであることが文章から感じとれるので省略しました。また ask は「尋ねる」という意味で良く使いますが、「求める、請求する」という意味もあります。

午前中に忙しく対局をして、さらに何を求める? “Free lunch of course!” (もちろん無料のランチ!)とワクワクした感じが伝わりますね。

後半部分もおさらいしましょう。

DONGURI family restaurant kindly sponsored bento lunches for all participants. And what goes into these bentos, you ask? A healthy portion of fish, tofu, sashimi, tempura, rice, pickles and vegetables.

最初の文です。 sponsored は「後援の」という意味ですが、スポンサーで通じますね。この大会では「ファミリーレストランどんぐり」がスポンサーになって全参加者 (all participants) にランチを提供してくれました。

ちなみに私はシンガポールに2年半住んでいましたが、このレストランを存じませんでした。シンガポール日本人会館の中にあるレストランです。駐在員さんは知っているかもしれません。私は現地採用だったので、あの建物に行ったことはありますが気にしていませんでした。

そして「弁当の中に何が入っているか気になる?」みたいな感じて聞いてきます。

魚、豆腐、お刺身といった「健康的な食べ物」が入っていました(天ぷらは?とつっこむのはやめておきましょう)。 portion は「1人前の量」という意味ですが「健康的なメニュー」と訳しました。

このような感じで、参加者は将棋だけでなく日本食も食べて「日本」を感じたのでしょうか。確かに年1回の大きなイベントといえるかもしれませんね。

このお弁当の写真は本誌に掲載されています。また小林先生たちとの集合写真もありますので、ご興味あれば下記のリンクから国際将棋マガジンをダウンロードしてご覧ください。

外部リンク:ISM Magazine – Shogi Harbor(国際将棋マガジンダウンロードページ)

外部リンク:シンガポールのアジア支部対抗戦 | 47NEWS (北尾まどか女流二段による同大会のレポート)

ハリウッド顔負けの詰将棋の大作

紹介文の概要、英文の和訳

本誌の解説の最後は棋譜の出てくる記事「ベン・ハーを救出せよ」から紹介しましょう。

『ベン・ハー』は1959年に発表された映画(とその原作)で、当時のアカデミー賞を総なめにした作品です。内藤國雄九段は若かりし頃この映画に感銘を受けて、40年かけて111手詰めの詰将棋を制作しました。

詰めの手順に同映画のシーンを再現するような局面が登場することから『ベン・ハー』と名付けられました。

この詰将棋を Jim Tan 氏が創刊号から3回に分けて解説しました。今回が連載の最後のため、詰めもラストシーンを迎えています。そのラストシーンから引用させていただきます。

詰将棋『ベン・ハー』の102手目
Fig. 11 (図11:102手目の局面)

But Fig. 10 gives a crucial clue from ▲S*66 △Kx86, had the Silver been at 86 as a sacrifice piece, the mate structure would still hold. To get there, Black can play a really cool sequence of ▲S*88, △Kx86, ▲S-87(88), △K-77, ▲S-86, △Kx86, ▲+R-88, △K-96, ▲+R-87 for 111 moves with no pieces held in hand!

【訳例】

(しかし)図10〔正しくは図11〕には決定的な詰み筋があります。▲6六銀打〔正しくは8八銀打〕、△8六玉として8六の銀〔8八の銀〕を犠牲にします。詰めろはまだ残っています。詰みまでもっていくには、先手は以下に示す(本当に)クールな手を指すことで実現できます。▲8八銀、△8六玉、▲8七銀上、△7七玉、▲8六銀、△同玉、▲8八竜、△9六玉、▲8七竜、までの111手で、持ち駒も使い切りました!

〔〕内は筆者が補足、8六には桂馬があるため駒を打てない。

J. Tan, “Ben Hur – Part 3,” International Shogi Magazine, vol.3, pp.23-29 (2019) より引用

最初の文の解説

最初の文をおさらいしましょう。

But Fig. 10 gives a crucial clue from ▲S*66 △Kx86, had the Silver been at 86 as a sacrifice piece, the mate structure would still hold.

crucial clue は「決定的な詰み筋」と訳しました。crucial は「決定的な」、 clue は「(解決の)糸口、手掛かり、ヒント」という意味です。ここでは将棋の解説として一番自然な訳になるように「決定的な詰み筋」としました。

sacrifice は以前も紹介した「犠牲にする」です。

mate structure は直訳すると「詰めの構造」です。本当ならここでも「詰み筋」と訳すべきですが、文章の流れから「詰めろ」にしました。

hold は「保持する」ですが、それでは硬い表現なので「残っている」と訳しました。 still は「まだ~」なので、「詰めろはまだ残っている」となります。

ちなみに、ヨーロッパに行くとミネラルウォーターに炭酸付きのものがあります。炭酸付きの水は sparkling water (または water with gas ) で、炭酸ナシの方は still water (または no gas, water without gas )です。炭酸を入れる前の「まだ」水の状態だからでしょうか。

最後の文の解説

次の文が最後です。おさらいします。

To get there, Black can play a really cool sequence of ▲S*88, △Kx86, ▲S-87(88), △K-77, ▲S-86, △Kx86, ▲+R-88, △K-96, ▲+R-87 for 111 moves with no pieces held in hand!

to get there は「そこに到着するには」です。日常会話でも例えば “To get to the hotel, please come by car.” (ホテルまでは車でお越しください)という感じで使います。ここでは「詰みの局面にまでもっていく(到着する)には」となります。

sequence は「順序、手順」です。ここでは詰みまでの残りの手順が「本当にクール」と解説しています。

そして文章に書かれている手順で駒を進めていくと、最終的に111手 (111 moves) で詰みとなります。

詰将棋のルールの1つに「持ち駒をすべて使い切る」があります。ちゃんとルールに沿って解答できたので “with no pieces held in hand” (持ち駒を全部使い切った)と書いています。held は先ほど出た hold の過去形、 in hand は「手持ち」なので、 with no pieces と合わせて「手持ちの駒がない」となります。

この詰将棋の初手から詰みまでの全手順は下記のリンクに用意しました。私が個人的にこの詰将棋の内容を確認するために作ったものですが、無料でアクセスできるのでご自由にお使いください。内藤先生の言う通り、攻防が映画のシーンのように映し出されます。

外部リンク:ベン・ハー | Shogi Playground (この詰将棋の初期局面と全手数をデータに起こしました。鑑賞や答え合わせにお使いください)

まとめ

今回もボリュームたっぷりになりました。読み応えはありましたでしょうか?

毎回、私もかなり力をいれて訳しています。特に今回は、プロ棋士の先生方が海外でも積極的に活動されていることを知り、英語だけでなく日本語で情報発信することが改めて重要ではないかと認識しました。将棋の国際的な活動が少しでもお伝えできれば嬉しいです。

次号もお楽しみに。

このレビューで解説した英単語一覧

  • accept: 受け入れる、(書類を)受理する
  • allow: 許す、許可する
  • annual: 年次の、毎年の
  • army: 軍隊
  • ask: 尋ねる、求める、請求する
  • belly: おなか、腹、胃
  • capture: 捕まえる、捕獲する
  • clue: (解決の)糸口、手掛かり、ヒント
  • column: 列
  • compete: 競う、争う
  • competition: 競争、大会、コンテスト、コンペ、棋戦
  • concurrently: 同時に、一度に
  • crucial: 決定的な
  • due to: ~が原因で、~の理由で
  • enemy camp: 相手陣、敵陣
  • eventful: 出来事の多い、忙しい
  • forward: 前に、先に
  • hold: 保持する、持つ
  • mate structure: 詰めろ、詰め筋(詰めの構造)
  • morning: 朝、午前
  • opponent: 敵、相手
  • oversee: 監督する、目撃する
  • particular: 特別な、特有な、独特な
  • path: (人が通る)道、通路
  • portion: 一人前の量
  • receive: 受け取る
  • region: 地域
  • representative: ~を代表する
  • row: 行
  • sacrifice: 犠牲にする
  • sequence: 順序、手順
  • still: まだ~
  • successful: 成功した
  • supremacy: 覇権
  • tandem: 一緒に、共同で、二人乗り
  • to get there: そこに到着するには
  • wish:
  • without: ~なしで

国際将棋マガジン第3号の目次(日本語訳)

  • 編集長のことば by Karolina Styczynska
  • 質問コーナー:一緒に答えを探しましょう! by Johan Kocur
  • 国際将棋リーグ2019 (WSL2019) へのご招待 by WSL Team
  • 強者の視点―棋士たちの藤井将棋論―将棋世界より by Kazuo Mima (Richard Sams訳)
  • 将棋ミニパズル(パート1) by Koji Horiguchi
  • ベン・ハーを救出せよ(パート3)by Jim Tan
  • なぜ第11回クラクフ将棋トーナメントに来ないのですか?(大会レポート) by Krzysztof Sieja
  • 第6回アジア将棋トーナメント2018(大会レポート) by Jim Tan
  • 玉と飛車は離れて(イラスト) by Austin Rucker
  • 将棋の基本 by Teck Sen Ng
  • 将棋英和・和英辞典 by Chi Him Wong, Hong Kong
  • ヨーロッパ将棋連盟(FESA)データのウェブアプリ by Adrian Woloszyn

外部リンク:Shogi Harbor – a safe place for every shogi player (カロリーナ女流が立ち上げた英語による将棋情報発信サイト、国際将棋マガジンの発行元)

※本記事の目的は英語表現を学ぶことです。将棋のルールや駒の動かし方、局面の解説については取り扱いません。