海外就職活動で求人を探す4つの方法と長所・短所
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日本国内での転職活動と、海外就職としての転職活動には大きな差はありません。例えば履歴書の提出は電子データで可能ですし、面接も時差を考慮して Skype でできます。ただそれでも、海外の求人を探す方法については漠然としているのではないでしょうか?
この記事では、私が過去 2 回の海外就職(シンガポール、ベルギー)を経て認識している求人の探し方についてまとめました。
これから上図に示す 4 つの方法を紹介します。それぞれの長所・短所と私の経験についてもできるだけ詳しく書きました。ご参考になれば幸いです。
海外就職向けの求人検索と応募方法
転職(就職)エージェントから紹介してもらう
もっともオーソドックスな方法はこれです。
転職エージェントは人と会社を仲介するのが仕事です。そのため、独自に会社の採用担当者や経営者に「どういう人材が欲しいか」というヒアリングをしています。応募に適していそうな会社については、事前にどのような会社か情報収集ができます。
最近は日本のエージェントが海外展開(主に東南アジア)しているので、日本にいながらにして現地の求人探し・応募・面接が可能です。
転職エージェントを利用するメリットは、私の経験ではこれらの点でしょうか。
- 原則無料で利用できる(成功報酬を会社側が支払う)
- 求人情報を提供してくれる(自分で探さなくてよい)
- アドバイスをもらえることがある
デメリットについては私の経験上これらの点ではないでしょうか。
- エージェントの数が多すぎてどこに依頼するかが難しい
- 同じエージェント内でも担当者レベルでサービス(親切さ)が違う
- 求人も担当者レベルで握っており、必ずしも希望する求人を紹介してもらえるとは限らない
これらを踏まえて、どのエージェントがお勧めなのでしょうか?
残念ながらこれに対する答えはありません。なぜなら求人情報は会社ごとに違いますし、同じ会社内でも担当者によって持っている求人が違うためです。同じグループ会社でも国によって持っている求人に強みと弱みがあり、一概にどこがおすすめとは言い切れません。
また私のような専門性の高い仕事になると、担当者がどれくらいその領域に精通しているかでも変わってきます。それこそ縁というか、めぐりあわせによる影響があります。
どのエージェントでも登録時に面談があります。その際、担当者によって対応が変わります。そして、敏腕な担当者に当たるかどうかでもその後の転職活動が変わっていきます。担当者が変わったり、登録時の面談で食い違いがあると紹介してもらえない場合もあります。
転職エージェントが書いた転職本には大抵「エージェントと仲良くするのが成功の秘訣」と書かれています。人と人の交流なので仲良くする必要はありますが、媚びを売る必要はありません。おかしいことがあればキチンと言うべきですし、残念ながら「しっかりやってくれよ!」と言いたくなる担当者に遭遇したことは何度もあります。
私自身、2度の海外就職で痛感するのはこの「担当者のレベルが均一ではない」ことです。
一度目の転職では「そもそも転職とはどういうものか」がわからず大変参考になりましたし、シンガポールの職はエージェント経由で決まったため感謝しています。ただ2度目の転職時にはメリットよりもデメリットの方が多く、結果的には転職の決め手にはなりませんでした。
LinkedInやIndeedなどのマッチングサービスを利用する
これらのサービスは「エージェントによる紹介」と「直接応募」の中間的なものです。
共通のサービスを介して会社側は求人を公開し、求職者は登録・応募ができます。この二つはかなり広い範囲の国に同じサービスを展開しているため、海外就職の際の新たな選択肢となっています。
メリット
- 原則無料で利用できる(有料サービスもある)
- アプリがあるのでスマホでやり取りができる
- 採用担当者からヘッドハンティングされる可能性がある
デメリット
- 登録から応募、面接の日時設定まですべてセルフサービス(自分でやる)
- 会社の情報も自分で探す必要がある
- 書類や面接、アプローチの方法などをどう改善すればよいかわからない(第三者の目線で見てくれる人はいない)
LinkedInでは企業側(採用担当者)が求職者のプロフィールを閲覧し、連絡することができます(Indeedは未使用)。つまり「ヘッドハンティング」もありえます。そのためにも履歴書などの情報は定期的に見直してベストの状態をキープしておくことをお勧めします(私はもう更新していませんが…)。
知名度の高い会社ほど競争も激しいので、私は実際に利用しても面接に進むことはできませんでした。ただリクルーターの方々からたまにつながりの申請が来るなど、少なくとも私の履歴書を見られているという実感もありました。
チャレンジ精神が旺盛であれば、利用する価値は十分にあります。少なくとも情報収集ツールとして利用する方法もありです。
会社に直接応募する
実は意外と知られていないのが「直接応募」です。私が一番おすすめなのはこの方法です。
会社のホームページから書類を送信し、採用担当者と直接やり取りする方法です。私はずっと「こういう方法は表向きオープンにしているだけで、実際は相手にされないだろう」と遠慮していました。
後述しますが、実は採用側は直接応募を期待しています。またシンガポールにいたとき、知り合い(アメリカ国籍の日本人で、アメリカからシンガポールに引っ越してきた)から「直接応募もありだよ」と教えていただきました。
そしてベルギーの就職を決めたのはこの直接応募でした。私が実際に直接応募したおはなしは後述します。
メリット
- 採用側は直接応募してくる人をエージェント経由よりも高く評価する傾向にある(もちろん会社によるが、少なくとも日系の会社はその傾向にある)
- 自分で応募するので、熱意やスキルのアピールがしやすい
デメリット
- 求人情報は自分で探す必要がある(会社のホームページだけでなく、掲示板や facebook, twitter などでも情報収集する必要がある)
- 大手企業ばかりの求人ではないので、その会社を知っていないと応募に躊躇する
では会社の情報を知るにはどうすれば良いでしょうか?
日本国内であれば転職会議などの口コミサイトがあります。その海外版として glassdoor というサービスもあります。口コミで会社の評判を調べるのも世界共通ですね。
外部リンク:転職会議(日本国内の会社の口コミ)
外部リンク:glassdoor(英語による会社の口コミ情報サイト)
実際に私も glassdoor で海外にある会社の口コミを調べた経験があります。そして残念なことに、日系の会社の海外での評判は決して高くありません。悲しいですが、やはり日本的な仕事の進め方は海外の人たちには受け入れられないのかな?と感じる面もあります。
上記の方法以外にも、求人情報は決して多くありませんが、海外在住日本人が運営している情報サイトもあります。採用側は少ない広告費でこういう場所にも求人を掲載しています。私の経験上、こういった情報もあなどれません。
関連記事:海外就職や移住に役立つ求人・転職・ローカル生活情報サイト一覧(求人情報を掲載している国別の現地情報サイト一覧を見る)
知人・友人など人づてによる紹介(コネ)
私が大学生の時代 (2002 年ごろ)も「就職はコネを使うべき」という論調はありました。この方法は「みんなエントリーシートを書いて応募しているのにフェアではない」という反論もあります。しかし、縁故による就職にもメリットがあるのは事実です。
メリット
- 採用側は、知らない人の採用よりも知り合い経由の採用の方が心理的な負担が少ない
- 応募側も、何も知らない会社よりも事前に情報が得られる(応募書類は用意しておく必要がある)
デメリット
- 人脈や友達の多くない人(私も含む)にはできない
- 就労開始後にトラブルが起きたときに気まずい関係になることがある(これが日本の場合にはある)
ということで、この方法は万人に勧められるわけではありません。しかしこの方法を取り上げたのには次節で述べる理由があります。
採用側と応募者側のやり方にはズレがある
これまで4つの方法を解説しました。いずれの方法にもメリット/デメリットはあるのですが、人によってどの方法がベストかは時と状況によるので一概には言えません。ただ少しでもマッチする仕事を見つけていただくために、もう少し客観的なデータを提供できないかを検討しました。
私なりに調査した結果、参考になるアンケートがありました。会社側と個人(海外就業体験者、つまりワーキングホリデーの経験者)に「どういう方法で求人を出すか(応募をするか)」というアンケートを集計した結果です。
下図は数ある方法の中で「企業が積極的に使っている採用方法」と「応募側が積極的に求人を探している方法」にはズレがあるのです。
引用元データ(外部リンク):「海外体験を生かしたキャリア形成事例分析平成28年度版」一般社団法人海外留学協議会 ― 勤労青少年の国際交流を活用したキャリア形成支援事業(厚生労働省委託事業) (PDF)
外部リンク:一般社団法人海外留学協議会
グラフによると、ハローワークを除くと採用側は「知人の紹介または直接応募」に積極的であるという回答をしました。一方、応募側は「就職サイトやエージェントを利用する」という回答でした。このすれ違いは「人と仕事のミスマッチ」が起きている原因の一つでは?とも考えられます。
もちろんこのデータを全面的に受け入れるには注意が必要です。この調査はサンプル数Nが328と少ないですし、あくまでも日本国内の会社を対象とした調査です。外国でもこれが当てはまるかどうかはデータで示せていませんが、私の肌感覚で言ってしまえば「海外就職活動でも通じるものはある」でしょう。
直接応募やコネを使うことに心理的な抵抗はあるかもしれませんが、これらを積極的に利用することで転職を勝ち取ることは可能ではないでしょうか。
体験談:ベルギーの会社は直接応募で採用された
では実際に私がベルギーの会社に転職が決めたときのお話をしましょう。
シンガポールで働き始めて2年が経ち、あれこれ悩んだ末「違うエリアでも挑戦したい」と思うようになりました。日本、東南アジアと就労経験をしてきて、エンジニアとして世界で勝負するには残りは「アメリカかドイツ(欧米)」しかないと考えていました。
結果的には「モノづくりならドイツ」と判断し、欧州系の求人を探すためにドイツとイギリスのエージェントに登録しました。面談を経て登録後、一向に求人情報が入ってこない日々が続きました。登録から半年後、私もあきらめかけた頃にドイツのエージェントから一件応募のお誘いが来ました。
是非お願いしますと書類選考をお願いしたのですが、さらに一か月待っても何も返事がありませんでした。いよいよストレスも最高潮に達したので、こちらから仕掛ける決意をしました。
予備知識を入れてから動くべきだと思い、ドイツの就労ビザ(労働許可)の取得方法についてネットで調べ始めました。
そして、あるヨーロッパ系の掲示板に行きつき、この広告を見つけました。
まさかこれだけの情報でちゃんとした就職ができるのか、疑いの方が強かったです。しかし「宝くじは買わなければ 100 % 当たらない」、言い換えると「応募してみなければどうなるかわからない」と考え、ダメ元でメールを出しました。
その 3 日後、返事が来て Skype 面接をすることになりました。シンガポールとベルギー間の時差 6 時間(サマータイム)で Skype 面接をしたところ、日系大手メーカーの仕事でありかつシンガポールでの職歴が活きる仕事でした。
イメージにある広告だけではこういう情報はわかりませんでしたが、買ってみた宝くじは当たりでした。
この一回の面接で採用通知をいただき、私ももう一度チャレンジする決意をしました。まさかとは思いましたが、このように仕事が決まる縁もあるのです。
まとめ
私は日系の会社での経験しかないため、情報に偏りはあるかもしれません。ただ私の持っている情報をできるだけ公開しました。
この記事をまとめましょう。
- 求人を探す方法(エージェント、ウェブサービス、直接応募、知人の紹介)のどれにも長所と短所はあるので、時と状況でうまく使い分けること
- 企業側は「エージェントや就職情報サイト経由」よりも「直接応募と知人の紹介」による採用を期待している
- 日本にいながらにして求人情報を探して応募・スカイプ面接も可能なので、情報収集や書類の準備は万全にすること