ベルギーの健康保険サービスとフランダースの社会保障

この記事は約 5 分で読めます

海外生活にてもしもの際に必要なのが医療です。日本で海外旅行保険に加入するのも良いですが、現地ではどうしたら良いでしょうか?

この記事ではベルギー国内での医療と相互扶助サービス(健康保険)、またフランダース地方特有の社会保障について簡単に解説させていただきます。

相互扶助サービス(ムチュエル)とは

ベルギーの相互扶助サービス (mutual/health care fund) は、医療費を還付してくれる社会保険/国民健康保険のようなものです。ベルギーで就労する人は加入が義務付けられています。

以前の記事で解説しましたが、ベルギーでは税金と社会保障で給与の約 4 割を源泉徴収されます。しかし一方、医療費は無料ではありません。しかしこのサービスに申し込むことで実質2割負担になります。

病院でまず実費負担で治療を受けます。そして登録した業者に領収書を送付すると、後日 80 % の金額が銀行口座に振り込まれるという還付方法です。

関連記事:ベルギーで就労した際の給料明細の見方と税金・社会保障

2018-05-16 追記:恥ずかしながら、心臓発作で救急車を呼び診察や検査をベルギーで受けました。本記事では 80 % のお金が戻ると書きましたが、実際には内容によって還付率は異なりました。私の例では救急車が 50 % の還付率、救急病院では 84 % など様々でした。詳細は下記の記事も併せてご覧ください。

関連記事:ベルギーでかかった医療費、還付方法と還付金額の例

関連記事:ベルギーで救急車を呼ぶ方法、支払い費用と還付金額

このサービスを提供している会社は複数あります。私の場合は会社から業者を指定されて加入しました。料金プランはいくつもありましたが、私は月 8 ユーロの基本プランとしました。

外部リンク:Contactez les mutualités – INAMI(フランス語による相互扶助サービス会社一覧)

付帯サービスも充実している

付帯サービスのパンフレット
サービス内容の書かれたパンフレット

このようにムチュエルは健康保険のようなサービスですが、ただの掛け捨て保険とも違います。各業者は健康促進に関係するサービスも提供しています。どのようなサービスが受けられるかはパンフレットに書かれています(英語版あり)。その一部を紹介しましょう。

  • ベルギー以外の欧州で支払った医療費も一部還付可能
  • フィットネスクラブ月会費の一部還付
  • 眼鏡代の一部還付
  • 禁煙サポートや各種指定セラピー代の一部還付
  • 各種マタニティーサポート

私の場合タバコは 10 年以上前に止めましたし、眼鏡も持っていません(日本で LASIK をやった)。スポーツ系とかも苦手なのでこれらのサービスを使っていません。ただ月額を払うよりもこれらのサービスもうまく利用した方がいいでしょう。

注意すべき点がひとつだけあります。歯科治療は基本プランではカバーされません。別途歯科オプションに加入していないと虫歯治療で 10 万円以上取られてしまいます。歯科オプションのケースを別記事で解説しました。

関連記事:ベルギーの健康保険を使って歯科検診を受ける方法と還付額

フランダース州社会保障の支払い代行

ある日、ムチュエル業者から一通の手紙を受け取りました。

フランダース州社会保障
フランダース州の社会保障加入のレター抜粋(オランダ語)

原文はオランダ語ですので、英訳して読んだところ以下のような内容でした。

フランダース社会保障制度は、健康保険、基礎支援予算、および高齢者への援助の補償からなる、フランダース政府の報酬パッケージです。例えば、長期ケアを必要とする人々は財政的支援を受けることができます。フランダースに住む25歳以上のすべての人は、保険会社を介して毎年フランダース社会保障への寄付を義務付けられています。

正直ショックでした。税金と社会保障で既に 4 割も引かれているのに、まだ取ります?という感じでした。

疑うようで申し訳ないですが、そういう制度があるならフランダース政府から直接請求が来るべきで、ムチュエル業者から請求が来るのは納得できませんでした。また、私のような外国人に対して本当にサポートが必要になった時、対応してもらえるとは思えないのが本音です。あくまでもフランダース地域へ貢献してくださいね、という内容でしょう。

そこでベルギー在住歴の長い会社の先輩(日本人)にお願いして調べてもらいました。結果的には確かに皆支払っているということでした。以下のリンクが制度説明のソース(英語)になります。

外部リンク:Joining the Flemish Social Protection

上記の外部リンクには指定の保険会社リストがあり、そこを経由して支払ってくださいという内容でした。私は熟考の末、レター発行元の業者(すでに月々の支払いをしている)にお願いしました。同じ会社で一括管理した方が楽だと思ったからです。

ただ、この業者のレターも「他社から弊社に乗り換えるとお得ですよ」という書き方でした。加入した覚えのない業者名(外部リンクに掲載されている正規業者)から変更しませんか?というレターでした。そもそも他業者では支払ってないし、すでに加入していると書かれていた会社にコンタクトをとったら、やっぱり未加入であることを確認しました。変な誘導をしている感じがあり不愉快な気持ちでした。

この支払いはカレンダー年に従います。つまり 2017 年 7 月に引っ越してきた私は 2017 年分も支払い対象となります。当然 2018 年分はまた請求されます。先ほどのレターによると、 2017 年は 50 ユーロで 2018 年は 51 ユーロでした。

ブリュッセルやワロン地方にはこの制度はないそうです。

私も海外生活は3年を超えましたが、シンガポール生活では無かった制度なので最初は拒否反応を示しました(シンガポールはアメリカと同じ自由診療で自己責任)。しかし自分の中で「日本の住民税を支払うようなものだ」と咀嚼して受け入れ、支払いました。

2020-11-11 追記:ブリュッセルに引っ越し後、来年も請求されるのか?と業者に連絡しました。数日後にキャンセルの通知書が届きそれ以来請求は来ていません。確かにフランダース地域だけの徴収でした。

まとめ

いかがでしたでしょうか。ベルギー(フランダース)に引っ越される前に、このような制度があることをあらかじめご理解ください。

この記事の内容をまとめましょう。

  • ベルギーの医療は実費負担後、相互扶助サービス経由で還付してもらうことで負担額を減らせる
  • 相互扶助サービスには健康促進に関する金銭サポートもあり、保険料は掛け捨てではない
  • フランダース地方に住む場合は、年会費に相当する社会保障を源泉徴収とは別に支払う必要がある

まとめページ「ベルギーで就労する人向け移住手続きと現地生活情報まとめ」に戻る

※この記事は 2017 年 12 月時点の情報を基に作成しました。

シェア
この記事のカテゴリ:ベルギー移住手続きと現地生活
この記事のタグ:なし

このブログを書いている人

ダイブツ
twitter: @habatakurikei
元々IT系だけど電気系技術者。20代で博士号を取得するも、全然社会の役に立てないのが不満でブログによる情報発信を開始。あなたに有益な知識やノウハウを理系目線かつ図解でわかりやすく解説するのがモットー。2018年心臓発作であわや過労死寸前。そこからガジェットレビューを通じた体調管理の情報発信も開始。ベルギー在住でシンガポール就労経験もあり、海外転職や海外生活のノウハウも公開中。

私の詳細:プロフィール

このような記事も読まれています

ベルギーで就労する人向け移住手続きと現地生活情報まとめ

このシリーズではベルギーでサラリーマンとして働く場合の手続きについて解説しています。 起業する場合は「プロフェッショナルカード」という別の手続きが必要で、このシリーズでは取り扱いませんでした。また留学の場合は多少手続きは異なりますが、参考ま...

ベルギーの滞在許可証を申請して入手するまで

この記事ではベルギー移住の手続きシリーズの大詰め、滞在許可証(通称 ID カード)を入手するまでの私の経験をまとめました。本編が長いので、前置きはこれくらいにしましょう。 2019-07-07 追記:2019 年 1 月 1 日よりそれまで...

ベルギーの運転免許証の取得方法

ベルギーの運転免許証を入手する手順をまとめました。日本の免許証を大使館で翻訳してもらい、コミューンでベルギーの免許証を発行してもらいます。試験は不要で最短2週間で手続きは完了します。

ベルギー国内の住所変更に伴う滞在許可証の更新方法

ベルギー国内の引っ越しで発生する役所手続きについて整理しました。ゲントからブリュッセルに転居する例です。警察による住居チェックはあるものの役所の訪問は2回で終わり簡単でした。証明写真や手数料も不要でした。