ベルギーの健康保険サービスとフランダースの社会保障
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海外生活にてもしもの際に必要なのが医療です。日本で海外旅行保険に加入するのも良いですが、現地ではどうしたら良いでしょうか?
この記事ではベルギー国内での医療と相互扶助サービス(健康保険)、またフランダース地方特有の社会保障について簡単に解説させていただきます。
相互扶助サービス(ムチュエル)とは
ベルギーの相互扶助サービス (mutual/health care fund) は、医療費を還付してくれる社会保険/国民健康保険のようなものです。ベルギーで就労する人は加入が義務付けられています。
以前の記事で解説しましたが、ベルギーでは税金と社会保障で給与の約 4 割を源泉徴収されます。しかし一方、医療費は無料ではありません。しかしこのサービスに申し込むことで実質2割負担になります。
病院でまず実費負担で治療を受けます。そして登録した業者に領収書を送付すると、後日 80 % の金額が銀行口座に振り込まれるという還付方法です。
関連記事:ベルギーで就労した際の給料明細の見方と税金・社会保障
2018-05-16 追記:恥ずかしながら、心臓発作で救急車を呼び診察や検査をベルギーで受けました。本記事では 80 % のお金が戻ると書きましたが、実際には内容によって還付率は異なりました。私の例では救急車が 50 % の還付率、救急病院では 84 % など様々でした。詳細は下記の記事も併せてご覧ください。
このサービスを提供している会社は複数あります。私の場合は会社から業者を指定されて加入しました。料金プランはいくつもありましたが、私は月 8 ユーロの基本プランとしました。
外部リンク:Contactez les mutualités – INAMI(フランス語による相互扶助サービス会社一覧)
付帯サービスも充実している
このようにムチュエルは健康保険のようなサービスですが、ただの掛け捨て保険とも違います。各業者は健康促進に関係するサービスも提供しています。どのようなサービスが受けられるかはパンフレットに書かれています(英語版あり)。その一部を紹介しましょう。
- ベルギー以外の欧州で支払った医療費も一部還付可能
- フィットネスクラブ月会費の一部還付
- 眼鏡代の一部還付
- 禁煙サポートや各種指定セラピー代の一部還付
- 各種マタニティーサポート
私の場合タバコは 10 年以上前に止めましたし、眼鏡も持っていません(日本で LASIK をやった)。スポーツ系とかも苦手なのでこれらのサービスを使っていません。ただ月額を払うよりもこれらのサービスもうまく利用した方がいいでしょう。
注意すべき点がひとつだけあります。歯科治療は基本プランではカバーされません。別途歯科オプションに加入していないと虫歯治療で 10 万円以上取られてしまいます。歯科オプションのケースを別記事で解説しました。
フランダース州社会保障の支払い代行
ある日、ムチュエル業者から一通の手紙を受け取りました。
原文はオランダ語ですので、英訳して読んだところ以下のような内容でした。
フランダース社会保障制度は、健康保険、基礎支援予算、および高齢者への援助の補償からなる、フランダース政府の報酬パッケージです。例えば、長期ケアを必要とする人々は財政的支援を受けることができます。フランダースに住む25歳以上のすべての人は、保険会社を介して毎年フランダース社会保障への寄付を義務付けられています。
正直ショックでした。税金と社会保障で既に 4 割も引かれているのに、まだ取ります?という感じでした。
疑うようで申し訳ないですが、そういう制度があるならフランダース政府から直接請求が来るべきで、ムチュエル業者から請求が来るのは納得できませんでした。また、私のような外国人に対して本当にサポートが必要になった時、対応してもらえるとは思えないのが本音です。あくまでもフランダース地域へ貢献してくださいね、という内容でしょう。
そこでベルギー在住歴の長い会社の先輩(日本人)にお願いして調べてもらいました。結果的には確かに皆支払っているということでした。以下のリンクが制度説明のソース(英語)になります。
外部リンク:Joining the Flemish Social Protection
上記の外部リンクには指定の保険会社リストがあり、そこを経由して支払ってくださいという内容でした。私は熟考の末、レター発行元の業者(すでに月々の支払いをしている)にお願いしました。同じ会社で一括管理した方が楽だと思ったからです。
ただ、この業者のレターも「他社から弊社に乗り換えるとお得ですよ」という書き方でした。加入した覚えのない業者名(外部リンクに掲載されている正規業者)から変更しませんか?というレターでした。そもそも他業者では支払ってないし、すでに加入していると書かれていた会社にコンタクトをとったら、やっぱり未加入であることを確認しました。変な誘導をしている感じがあり不愉快な気持ちでした。
この支払いはカレンダー年に従います。つまり 2017 年 7 月に引っ越してきた私は 2017 年分も支払い対象となります。当然 2018 年分はまた請求されます。先ほどのレターによると、 2017 年は 50 ユーロで 2018 年は 51 ユーロでした。
ブリュッセルやワロン地方にはこの制度はないそうです。
私も海外生活は3年を超えましたが、シンガポール生活では無かった制度なので最初は拒否反応を示しました(シンガポールはアメリカと同じ自由診療で自己責任)。しかし自分の中で「日本の住民税を支払うようなものだ」と咀嚼して受け入れ、支払いました。
2020-11-11 追記:ブリュッセルに引っ越し後、来年も請求されるのか?と業者に連絡しました。数日後にキャンセルの通知書が届きそれ以来請求は来ていません。確かにフランダース地域だけの徴収でした。
まとめ
いかがでしたでしょうか。ベルギー(フランダース)に引っ越される前に、このような制度があることをあらかじめご理解ください。
この記事の内容をまとめましょう。
- ベルギーの医療は実費負担後、相互扶助サービス経由で還付してもらうことで負担額を減らせる
- 相互扶助サービスには健康促進に関する金銭サポートもあり、保険料は掛け捨てではない
- フランダース地方に住む場合は、年会費に相当する社会保障を源泉徴収とは別に支払う必要がある
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※この記事は 2017 年 12 月時点の情報を基に作成しました。