【日英別】履歴書に英語力を記載する際のポイント

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このサイトでは海外就職を希望される方に、履歴書(職務経歴書)は日本語と英語の両方を用意することを勧めています。ただ英語のレベル(他の言語の語学力を含む)の書き方については、日本語と英語の履歴書で異なります。

この記事では語学力の履歴書上のアピール方法の違いについて説明します。また、その理由についてもお話しします。

日本語と英語では履歴書上の表記が違う

まずは私の履歴書から語学力の部分を抜粋して、日本語版と英語版を比較してみましょう。

日本語と英語の語学力記載方法の比較
日本語と英語の語学力記載方法の比較

日本語の履歴書では語学資格を細かく書く

日本語版については既にご存知かもしれません。自分が取得した資格(実用英検, TOEIC, TOEFL, IELTS, 工業英検など)とその取得年月を記載しますね。

TOEIC であれば 500 点台以上、実用英検であれば 2 級以上がアピールの目安です。この水準に達していなければ書かない方が無難です。英語ができないことをアピールするだけです。私自身も英検 2 級や TOEIC 500 点台を取る前は履歴書で英語力アピールはしませんでした。

代表的な語学資格について、書く内容はそれぞれこのようになります。

各種英語系試験スコアや資格の書き方

英検やその他の検定試験(中国語検定、フランス語検定など)の合格証は一生有効です。特別な理由(運営方針が変わる、不正があったなど)がない限り何度でも履歴書に書くことができます。そのため合格証で級と日付を確認してください。

一方、 TOEIC と TOEFL のスコアは受験日から 2 年間有効です。スコアシートが届いた日ではないので注意してください。スコアシートはあくまでも受験した日の時点での能力を証明するものです。点数は合計点 (TOTAL SCORE) を書きましょう。

検定とTOEICの日付の比較
年月はここを見て書く

IELTS も有効期間は 2 年ですが、さらに「筆記試験日」という指定があります。 IELTS は最大 2 日制です。初日の筆記試験の実施日が能力証明の基準日になります。受験日はスコアシートを確認しましょう。点数は合計点 (Overall) を書きます。

またIELTSにはアカデミック (Academic) とジェネラル (General) の 2 種類があるため、どちらの試験をしたのか書いておくと親切でしょう。

英語の履歴書では自分をアピール

英文履歴書 (CV, Resume) には TOEIC のスコアを書かずに “English (Advanced)” や “Japanese (Mother Tongue)” と書きます。語学レベルは大きく分けて以下の 4 つがあります。

  • Mother Tongue/Native → 母国語
  • Advanced/Fluent → 上級者(ビジネスレベル)
  • Intermediate → 中級者(日常会話レベル)
  • Beginner → 初級者(書かない方がいい)

なぜ日本語版と違って資格を書かないのでしょうか?

私の経験では「書いても書かなくても同じ」です。最初の転職活動時は TOEIC のスコアを記載してシンガポールの職で採用してくれました。しかし、 2 回目の転職時には削除しましたがそれでもベルギーの会社で採用してくれました。

このように書いても書かなくても良いのには理由があります。

TOEICスコアをアピールする際の注意点

TOEIC は世界で認知されていない試験です。日本国内にある外資系企業ならまだしも、外国にある会社の採用担当者は TOEIC という試験自体を知りません。そのため、英語の履歴書にスコアを書いても英語力を判断できません。何故でしょうか?

TOEIC は世界中で受験できる点をアピールしていますが、実は日本以外の国籍の受験者数は公開されていません。

公式データを読むと以下の指摘ができます。

  • 受験者数に相当する数字として「なお年間の総受験者数が 500 名以上の国のみを掲載しています」としか書かれていない。つまり国別の正確な受験者数がわからない。
  • 国籍別の受験者数の記載もない。日本人以外の受験データかどうか確認できず、日本人駐在員と家族が外国で受験しただけの可能性が否定できない。

外部リンク:ETS TOEIC L&R 2020 Report on Test Takers Worldwide (PDF)

※ 2022-10-09: 2021 年版レポートも確認しました。指摘内容に変更はありません。

このデータは統計学に基づいて解析しているはずなので、前提条件として母数またはサンプル数 N が必要です。それが書かれていない以上、たとえ公式データであっても鵜吞みにすることはできません。

TOEICは元々日本国内向けに作られた

私は決して TOEIC という試験自体を否定しているのではありません。過去記事をご覧いただくとわかりますが、自分の英語力を客観的に測ってくれた TOEIC に感謝しています。

しかし同時に、 TOEIC は日本人(と韓国人)向けに作られたテストであるということを認識する必要があります。発案者の一人である北岡靖男氏(故人)が「誰もが納得できる共通の物差しを作りたい」という願いから、アメリカの Educational Testing Service (ETS) に試験の製作をお願いしたのです。

第 1 回の試験は日本国内で行われ、その後国内大手企業にて人材の英語力評価方法として普及していったのです。つまり、 TOEIC は最初から日本国内をターゲットとした試験だったのです(千田潤一『TOEICテストスコア別英語学習法』明日香出版社 (2004) p.125 【TOEIC発案者の想い】より)。

団体受験(今の IP テスト)こそ TOEIC の原点なのです。

TOEIC が今でも日本国内で利用されているのには、このようなメリットがあります。

  • 年間の試験実施回数が実用英検より多い
  • 受験料が(同じアメリカで製作された) TOEFL より安い
  • スコアで出るので自分の英語レベルが細かく測定できる

もし英検しかなかったら、私は英語コンプレックスから抜け出せずにいたかもしれません。 TOEIC を通じて英語力を定期的に測定しながら学習できたことはとても有益でした。

関連記事:TOEIC問題集を解きまくって850点!一番の対策は実践

他の英語の試験はアピールになるか?

もし他の試験の結果を英語の履歴書に記載したいのであれば、 TOEFL や IELTS の方がまだ海外での知名度はあります。しかし、正規留学といった理由でスコア提出を求められない限り、これらの試験を受ける必要はありません。またこれらの試験でハイスコアをとれる人は海外の大学に正規に入学できるので「 ○ ○ University 卒業」と書けます。外国の大学で外国語の授業をちゃんと受けて卒業するという経験の方が、よっぽど語学力のアピールになります。

私は TOEFL も IELTS も受験したことはありませんが、外国(シンガポールやベルギー)で働きローカルスタッフとの意思疎通もできています。少なくとも海外就職という観点では TOEFL や IELTS を無理して取得する必要はありません。

今回、この記事を書くために Google で “resume sample” というキーワードで検索しましたが、語学力まで記載している英文履歴書は少数派でした。求人として特別に要求されていない限り、無理に書かなくても良いというのが私の意見です。

以上、 TOEIC はあくまでも日本の会社向けに英語力をアピールするため、と割り切りましょう。ここまでの話はあくまでも英語の履歴書についてです。日本語の履歴書には TOEIC や他の資格のスコアをきちんと書きましょう。

外国企業での語学力アピールは履歴書・面接・電話

では外国企業に対してどうやって語学力をアピールすべきでしょうか?

その国で認められている語学試験の取得はアピールになります。例えば、中国では HSK という政府公認の中国語の資格試験があります。英語の TOEFL や IELTS に相当する試験の中国語版です。中国で留学や仕事をするための中国語力の裏付けとして利用することはできます。

そして実用英検や TOEIC は日本国内で認知されている試験だからこそ、日本語の履歴書でアピールになります。

ただ英語を例として私の経験をお話しするのであれば、英語で履歴書を書いて応募し、英語で面接を受けるのが一番でしょう。採用担当者とやりとりすることで「英語力に問題はない」ことを直接アピールするのです。

私はシンガポールで外国籍の会社も応募しましたが、書類審査で落ちました。なぜなら「日本人は英語ができない」という先入観が海外の採用担当者にあるのも事実です。シンガポールでもヨーロッパでも複数の言葉が話せるのは普通で、残念ながら日本人のように「バイリンガルすごい!」とは言われません。

私はありがたいことに「君の英語なら問題ない」と言われたことはありますが、「君は英語が上手」とは言われません。英語が話せても「プラス」ではなく、「マイナスではない」のです。

もしスキルがあるのに落とされたと感じた場合は、採用担当者に直接電話で問い合わせるのも良いと私の同僚(トルコ人)が教えてくれました。私も知りませんでしたが、直談判は意外と効果的なようです。嫌なことも経験するでしょうが、海外生活では日本との生活習慣や文化の違いから生じる摩擦はよくあることです。めげずに挑戦しましょう。

そして仕事である以上、英語以外の「職業スキル」もきちんとアピールしましょう。ローカルスタッフとはいえ英語ができても仕事ができるとは限りません。多少のハッタリをかけてでも(ウソはダメ)アピールすべきです。私は押しが弱かったと反省しています。

まとめ

以上、長文になりましたがいかがでしたでしょうか。採用は縁によるところも大きく、一般論として語るには難しいところもあります。ただこの記事も私の経験を元にしたので、少しでもお役に立てれば幸いです。

以上、この記事のポイントはこのようになります。

  • 日本語版の履歴書には語学の保有資格を記載する。
  • 英語版の履歴書には日本の語学資格は書いても書かなくても同じ(外国人は基本的に TOEIC という試験自体を知らない)
  • 語学力のアピールだけでなく、職業スキル(専門能力)のアピールを忘れずに

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このブログを書いている人

ダイブツ
twitter: @habatakurikei
元々IT系だけど電気系技術者。20代で博士号を取得するも、全然社会の役に立てないのが不満でブログによる情報発信を開始。あなたに有益な知識やノウハウを理系目線かつ図解でわかりやすく解説するのがモットー。2018年心臓発作であわや過労死寸前。そこからガジェットレビューを通じた体調管理の情報発信も開始。ベルギー在住でシンガポール就労経験もあり、海外転職や海外生活のノウハウも公開中。

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