英単語を克服するコツ、多読による覚え方と必須単語数
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単語力を鍛えることをボキャビルといいます。今はスマホアプリで簡単に学習できる環境がありますが、効率を重視すべきでしょうか?それとも楽しく覚えるべきでしょうか?
この記事では私が実践した洋書多読による単語の学習法とコツを解説します。あと英単語を身近に感じる雑学をふたつ紹介します。私のおすすめは単語帳を使わず生きた英文から単語を身につける方法です。
基礎単語力は洋書多読で鍛えられる
出てこない単語を覚える必要はない
単語帳で学習した場合「この単語本当に使うのかな?」と思うことはありませんか?
いま目の前に出てこない英単語を覚える必要はありません。将来出てくるかもしれない単語を単語帳で機械的に覚えるよりも、いま自分にとって必要な単語を覚えることに集中してください。
私は大学受験で英語が苦手になったため、単語帳を使った暗記型の学習がいやでした。だからストーリーを楽しみながら英語を学習する洋書多読で単語力を身につけました。
そしてこのやり方でも問題はありませんでした。時間はかかりましたが、英語での仕事やコミュニケーションは普通にできます。
またヒトの脳は興味があることを記憶しやすいという性質があります。その意味でも単語だけをただ記憶するよりも、ストーリーとして楽しみながらの方が効果を期待できます。
経験談:辞書を使わずに推測すれば英会話に役立つ
多読学習はストーリーを楽しむことが重要です。そのため読書中に辞書を使わないという指導をしている先生がいます。私も辞書を使わないことを推奨します。
これは実践の英会話で相手が何の話をしているのかを推測する良い訓練になります。その場で単語がわからなくても「いまこの話かな?」と頭の中でイメージできれば対応ができるからです。
私の実例を紹介しましょう。
ベルギーの社員食堂でステーキを頼む際「 How much ごにょごにょ?」と聞かれることがあります。 How much の後ろの単語が聞き取れません。
しかしお会計ではないので、この how much は金額のことではありません。「焼き加減はどうしますか?」と言っているのです。ステーキを注文している状況からこのように推測するのです。相手の話す内容を一字一句理解できなくても大丈夫です。
なので私は聞き返さずに「ウェルダン」と答えした。するとコックさんは了解して焼いてくれました。コミュニケーションは成立しました。ただし鉄板に熱が伝わりにくいのか、しっかり焼いてくれても結果的にはミディアムでしたが。
このように、一字一句理解しなくても推測でコミュニケーションできます。
多読中にわからない単語が出てきたら、前後の話の流れから意味を推測してみましょう。はじめは難しいでしょうが、ハッと気が付くときがあります。その瞬間は快感です。
学習レベルの洋書であればひとつふたつ単語がわからなくても、全体のストーリーがわからなくなることはありません。もし推測するのが苦痛だったら思い切ってその単語は飛ばし読みしてください。楽しくない多読は本末転倒です。
ハリーポッターやシドニーシェルダンのような本格的なペーパーバックであれば、 1 語の意味でストーリーを読むのが苦しくなることはあります。そのレベルの洋書でなければあまり深刻に考えないでください。
雑学:英語にも日本語に似た文化がある
英単語を覚えるのは大変です。しかし言葉は生き物です。使う人がいるから学ぶ必要があります。
ここではちょっと寄り道して、英語に関する雑学をふたつ紹介します。英語も日本語のように身近に感じてもらえると嬉しいです。
アメリカ版流行語大賞Word of the Year
この記事の執筆中に 2018 年の流行語大賞は「そだねー」に決まりました。
アメリカにも流行語を決める風習があります。 1990 年より毎年 Word of the Year という名前で発表しています。
外部リンク:All of the Words of the Year, 1990 to Present American Dialect Society(アメリカ言語学会によって発表された英語の流行語一覧)
リンク先の情報によると、過去にこのような英語が取り上げられました。
- fake news, #MeToo (2017)
- selfie, Obamacare (2013)
- #hashtag, marriage equality (2012)
2017 年のフェイクニュースという単語は日本でも使われていますね。自撮りのセルフィーは 2013 年、いまや SNS で当たり前のハッシュタグは 2012 年にそれぞれ受賞しました。
まさに日本の流行語と同じように世相を反映していますね。
印象に残る単語は覚えやすいので、流行語は単語を覚えるきっかけになります。
漢字検定の英語版?Spelling Bee
アメリカでは英単語のスペルが書けるかどうかを競うコンテストがあることをご存知ですか?日本でいう漢字検定のようなものです。
名前を Spelling Bee (スペリング・ビー)といいます。アメリカ発祥ですが他国でも開催されています。学校に通う生徒さんが自分の知識を競うために開催されるケースが多いようです。
外部リンク:スペリング・ビー – Wikipedia
スペリング・ビーは筆記試験ではなく、公開ステージで実施されるコンテストです。下記の動画は 2018 年決勝の様子です。小さい子たちが大人のアメリカ人ですら使わない単語を答えていきます。
外部リンク:2018 Scripps National Spelling Bee Winning Moment – YouTube
この動画から一例を紹介します。
出場者の女の子が問題に挑戦します。まず質問者が答えの単語の意味を説明します。次にヒントが出されます。制限時間は 1 分 45 秒です。そして女の子は単語のスペルをアルファベット一字ずつ声に出して答えます。
実際の問題はこのようになっています。
Definition: a state of consciousness or a feeling devoid of sensory components.
Hint: noun, from an originally German word
【訳例】
意味(定義):意識のある状態、または知覚がない状態
ヒント:ドイツ語に由来する名詞
答え: bewusstseinslage
この女の子は答えを間違えてしまい優勝を逃してしまいます。悔しくて涙を流すシーンは印象的ですが、不正解を恥じる必要はありません。大人だってわからないのですから。知っているとすれば医者か心理学の専門家くらいでしょうか。
単語の知識をクイズとして楽しむのは日本もアメリカも同じですね。
ちなみに私は答えどころか定義中の devoid すらわかりませんでした。ただこの単語の意味はまだ推測できます。
この単語に含まれる void は「無効」という意味です。期限切れのパスポートを記念に持ち帰る場合、パスポートに VOID と刻印されるからです。この void に de (意味を強める接頭語)が頭に付きます。
以上のことから devoid の意味は「存在しない、欠けた」になります。
このように、英単語の数は限りがありません。全て覚えようとするのはできないので推測力を身につけるのがいいでしょう。
覚える単語数の目安はグロービッシュ1500語
英単語の数は限りがないと説明しました。ではどれくらい覚えればよいのでしょうか?
1500 語です。
英会話を目的としているのであれば 1500 語で十分です。ただきっかり 1500 語を覚えているかどうかなんてわからないので、目安として覚えておきましょう。
この数字には根拠があります。フランス人のジャン=ポール・ネリエール氏が提唱しているグロービッシュ (Globish) という考え方です。非ネイティブスピーカー向けのグローバルコミュニケーションツールとして英単語を取捨選択した結果、 1500 語となりました。
外部リンク:グロービッシュ日本語公式サイト
英語のニュースを見たり読んだりするためには難しい単語を知っている必要があります。しかしそれらの難しい単語もこの 1500 語の組み合わせで言い換えができるのです。したがって実用上ビジネスマンが最小限知っているべき単語数は 1500 でいいのです。
間接的な紹介になりますが、参考文献からも引用させていただきます。
またネリエール氏によれば、この 1,500 語を基にして派生する単語(いくつかの単語を結合する、動詞と名詞にする、など)は 5,000 を超えるので、ある程度限られたビジネスコミュニケーションは、 1,500 程度の単語で充分賄えると言えます。
グロービッシュの単語 1500 語は公式サイトで公開されていません。しかし Google で「グロービッシュ 単語」で検索すると他のサイトでまとめられた単語帳が出てきます。ダウンロードして活用するのはありでしょう。
私が大学受験のときに愛用した英単語帳「英単語ターゲット」は 1900 語です。シリーズとして他にも 1400 語や 1200 語のバージョンもありますが、定番なのは 1900 語版です。
ところがグロービッシュ 1500 語は英単語ターゲットの 1900 語よりも少ない。つまり、英会話を習得するには大学受験英語ほどの単語力は不要なのです。
まとめ
私は大学受験のせいで英語が苦手だった時期があります。
でも安心してください。使いこなす英語に受験英語は不要です。もしニュース英語やペーパーバックにチャレンジしたい場合はもっと上を目指しましょう。
この記事をまとめましょう。
- 単語帳の丸暗記よりも洋書多読によるボキャビルを推奨。大切なのは楽しく覚えられるかどうか。
- 多読では辞書を使わずに推測する訓練をしよう。実践英会話で聞き取れなかった部分を推測できるようになり、コミュニケーション力アップに貢献する。
- グロービッシュという考え方ではビジネス英語に必要な単語数は 1500 でよい。大学受験の 1900 語よりも少ないので受験英語にこだわらなくても大丈夫。