POLAR Ignite vs Fitbit 「睡眠の質」表示比較レビュー
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このシリーズの目的は、日々の睡眠状況をしっかり把握し、より良い生活ができるようにサポートすることです。そのためにスマートウォッチの睡眠計測・管理機能を辛口でレビューしています。
この記事はフィンランドのメーカーである Polar (ポラール社)製のスマートウォッチ(アクティビティトラッカー)である Ignite (イグナイト)の睡眠機能をレビューします。同社製のトラッカーはマラソンやトレッキングをする人に好評ですが、睡眠機能はどうでしょうか?
結論から言うと、残念ながらおすすめできません。なぜでしょうか? 1 か月装着して Fitbit の睡眠機能と比較した結果を整理しました。
そもそも睡眠図がうまくとれない
3パターンの睡眠図がアプリで表示される
睡眠は自動で計測されるため、特別な設定は不要です。念のため最新のファームウェア(ソフト)をウォッチにインストールしてください。
上の図は Polar Flow アプリで表示される睡眠図(睡眠サイクル)です。睡眠図とは「覚醒(中断)」、「レム睡眠」、「軽い(ノンレム)睡眠」、「深い(ノンレム)睡眠」というステージの変化を記録した図です。各ステージの説明については省略させていただきます。
Polar のデバイスを 1 か月装着してデータをとったところ、この 3 パターンの結果が表示されました。
- 左:睡眠データから睡眠サイクルを解析できた
- 中央:睡眠データは計測したが、細かく解析できなかった
- 右:睡眠時間は記録したが、睡眠サイクルはデータから解析できなかった
1か月装着して睡眠図がとれたのは約半分
詳しくみていきましょう。上のカレンダーに示す期間、デバイスを装着して睡眠の記録をとりました。
そして色分けしているように、睡眠サイクルがきちんと解析されてアプリで表示されたのは全 39 日のうちわずか 38 %でした。割合的には 1 週間のうち 2 ~ 3 日しか波形がとれなかった計算になります。ひと月の半分未満しか睡眠サイクルが表示されませんでした。
これは睡眠の質をチェックする以前の問題です。残念ながらおすすめできません。
そもそもどのように睡眠データを取得しているのでしょうか? Polar 社のトラブルシューティングのページを見たところ、このように書かれています。引用させていただきます。
Polarデバイスにおける睡眠検出は完全に自動化されています。これは、内蔵3D加速度センサーによる非利き手の運動の記録に基づきます。当社および他者により、Sleep Plusのアルゴリズムは、非常に正確であることが確認されていますが、自動睡眠検出技術の課題を認めることも重要です。
寝ている間の腕の動きを検出している。つまり寝返りなど就寝中に動きがないと検出しないということでしょうか。
私の睡眠データが取れないのは、寝ている間に腕を動かしていないということなのでしょうか?就寝中に腕を動かしているかどうかはビデオ撮影しないとわかりません。
4時間以上寝ても睡眠図がとれない
腕の動き以外にもデータがとれない理由がありそうです。
ウォッチの画面で睡眠データを確認しようとすると、上の写真のように「睡眠データを得るには睡眠中最低 4 時間時計をぴったりと着用します」と表示されます。
先ほどのトラブルシューティングのページには「睡眠時間が少なくとも 4 時間必要」という記述もありました。私は毎日 4 時間以上寝ているはずですが、アプリ内の睡眠データを見直しました。
この日は明らかに 8 時間以上寝たと記録されています。しかし睡眠サイクルは計算されていません。
希望の睡眠時間や他の設定も変更したが睡眠はとれない
アプリをいろいろ操作してみたところ「希望する睡眠時間」の設定がありました。もしやこの設定と実際の睡眠時間が連動しているのでは?という仮説を立てました。
試しに「希望する睡眠時間」を最小値の 5 時間にセットして 1 週間以上データをとりました。その結果、特に変化はありませんでした。
また工場出荷時設定へのデバイスリセットもやってみました。それでも特に変化はありませんでした。
自分にできるだけの対策を試みたのですが、確実に安定して睡眠データをとる方法はとうとう見つけることができませんでした。
睡眠サイクルの比較
睡眠サイクルがとれた日の波形から睡眠の質が判断できるかレビューします。過去の経験上、 Fitbit の睡眠サイクルから判断できますので Polar と比較します。
データの取り方
私は右利きなので Polar を非利き腕の左腕に装着しました。比較のため Fitbit は反対の右腕に装着しました。どちらのデバイスもアプリ上で「装着した腕(右手か左手か)」の設定は確認しました。
この状態で普通に生活しました。そして起床後、アプリでデータを収集しました。
1 か月装着した中で代表的な波形について比較をしました。
睡眠の質をチェックするポイント
医師が書いた睡眠に関する本や私が Fitbit で計測した睡眠データから、睡眠の質をチェックするポイントは以下の 3 つに整理しました。
- 「覚醒」から「最初の深い睡眠」に入るまでの時間は短いほど良い (30 分以内が目安)
- 最初の深い睡眠は 20 分間以上あることが望ましい
- 睡眠中の途中覚醒回数は少ない方が良い
1番が最も重要で、番号順に優先順位は下がります。各項目の詳細と根拠については下記の補足説明をご覧ください。
比較結果
上の図は Polar の睡眠サイクルをグレースケールにして、その上に Fitbit の波形を重ねました。どちらも同じ日の睡眠サイクルです。入眠時刻と起床時刻はどちらもほぼ同じでした。
睡眠の質をチェックするポイントの 1 番目「覚醒から最初の深い睡眠までの時間」を見てみましょう。 Polar では割と短時間で深い睡眠に移行したといえます。しかし一方、 Fitbit のグラフは「覚醒の赤い線」から「深い睡眠の青い線」まで 2 時間かかっています。
どういうことかというと、 Fitbit のグラフでは「寝つきが悪かった → よく眠れなかった」といえるのに対して、 Polar のグラフは「割と寝つきが良かった→よく眠れた」となります。 Fitbit と Polar で逆の解釈となってしまいます。
そして過去の経験上、 Fitbit の睡眠波形と自分の体調(起床後の眠気、あくびや気分)は一致しています。そのため Polar の表示結果は正しいと思えません。少なくとも眠れなかったことを「よく眠れた」と表示するのは問題です。人の健康にかかわることだからです。
ここで紹介した波形はたまたま不一致だったという指摘も受けそうです。確かに相似した波形が得られる日もありました。
ただ残念ながら、そもそも 1 週間で 2 ~ 3 日分の睡眠サイクルしかとれません。その少ない波形の中でも参考になりそうな波形とそうでない波形があるのです。とても非効率で利用できるものではありません。
まとめ:スポーツ系トラッカーとして活用しよう
残念ながら睡眠解析機能については改善が必要ではないでしょうか。誤解をしないでほしいのは、 Polar Ignite という製品のすべてがダメとは評価していません。
この製品は GPS と連動したトラッキング機能に定評があります。フィットネス、運動やスポーツはするけど睡眠にこだわらない人であれば使うのは何も問題ありません。
実際、私の知り合いは趣味のマラソン(とそのトレーニング)に Polar 製品を使っており、アクティビティのアプリ画面を facebook で共有しています。
この記事をまとめましょう。
- Polar 製品はアクティビティトラッカーとして定評がある。運動やスポーツはするが睡眠を気にしない人は利用すべき。
- 睡眠機能だけをみれば、 1 か月使ってみて睡眠サイクルが計測されたのは 1 週間のうち 2 ~ 3 日の割合だった。原則的に毎日計測されないと睡眠の分析も対策も改善もできない。
- さらに計測された睡眠サイクルが Fitbit と比較しても一致していなかった。全く同じ波形である必要はないが、少なくとも睡眠の質をチェックするポイントが適用できないグラフだった。
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※この記事のアプリ画面は iPhone 版ですが、 Android 版でも同じ機能が搭載されています。
※このレビューは 2019 年 8 月から 9 月にかけて行いました。最新ソフトではこの記事で書かれた内容と相違があるかもしれません。
※良い睡眠がとれたかどうかは必ずご自身の体調や起床後の気分などでご確認ください。アプリの表示は計測結果を保証するものではありません。