Honor Band 5 vs Fitbit「睡眠の質」表示比較レビュー
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このシリーズの目的は、日々の睡眠状況をしっかり把握し、より良い生活ができるようにサポートすることです。そのためにスマートウォッチやアクティビティトラッカー(活動量計)の睡眠計測・管理機能を辛口でレビューしています。
この記事は中国メーカーである Huawei (華為、ファーウェイ)製のアクティビティトラッカーである Honor Band 5 の睡眠機能をレビューします。
ファーウェイでは他にも Band Pro シリーズもあります。 Honor Band は同社製の格安トラッカーという位置付けです。値段と機能のバランスはどうでしょうか?
結論から言うと、ハッキリとおすすめできません。きちんと分析して 50 %の確率で結果を受け入れることができます。
どうしてでしょうか?詳しく解説します。
Huawei Health アプリ睡眠管理機能を解説
Huawei Health (またはヘルスケア)というアプリで睡眠データを管理します。アプリの基本的な機能を簡単に紹介しましょう。
基本画面はiPhoneとAndroidで少し違う
上図は睡眠のメイン画面です。 iPhone と Android で少し違うので両方紹介しています。
画面上から下記に示す情報が表示されています。
- 睡眠時間 (iPhone 版は表示なし)
- 睡眠サイクルと睡眠ステージ(凡例)
- 睡眠スコア
- アドバイス
睡眠サイクルは iPhone 版が棒グラフ、 Android 版は折れ線グラフです。なぜ違う種類のグラフなのかはわかりません。
睡眠ステージは以下の 4 つで他社製品と同じです。
- 目が覚めた状態(中途覚醒)
- レム睡眠 (REM)
- 浅い(ノンレム)睡眠
- 深い(ノンレム)睡眠
睡眠スコアはアプリが算出した睡眠評価で 100 点満点で算出します。計算方法が不明のためこのレビューでは使いません。参考程度としてください。
スコアの下にはアドバイスが表示されます。より良い睡眠をとるためのヒントを教えてくれます。参考にしましょう。
詳細画面には解説もある
メイン画面を下にスクロール(上にスワイプ)するとさらに細かい分析結果の画面になります。
画面上部のグラフは「各睡眠ステージの割合」です。 iPhone は棒グラフ、 Android は円グラフです。
ただしグラフには「中途覚醒時間」が含まれていません。トータルの睡眠時間から比率を出すのであれば中途覚醒時間も含むべきです。
画面の残りには下記に示す項目と数字が表示されます。
- 合計睡眠時間
- 深い睡眠の割合
- 浅い睡眠の割合
- レム睡眠の割合
- 深い睡眠の連続性(点数、計算根拠不明)
- 目が覚めた回数
- 呼吸の質(呼吸の規則性のチェック、解説あり)
- 昼寝の時間 (iPhone 版アプリのみ)
さらに上記の各項目には解説があります。タップすると上図左に示すように解説ページが表示されます。やや専門的ですが勉強になるでしょう。
各解説画面の下には参考情報として医学本や論文名も書かれています。解説内容の根拠を裏付けています(本当に信頼できるかどうかはさらなる調査が必要)。
格安トラッカーなのにここまで用意してくれているのはすごいですね。
このレビューでは睡眠サイクルを分析します。上記のデータは参考までにお使いください。
睡眠図のシェア機能で将来的に睡眠の改善を
アプリでは睡眠図をシェアすることができます。上図に示す操作でレシートのような縦長の画像ファイルが生成されます。
将来的に医師と不眠症治療や睡眠改善する場合に共有は必要になるでしょう。アメリカでは既に医師がトラッカーのデータを導入し始めています。
このシェア機能は Android 版のみです(この記事の執筆時点)。 iPhone 版には共有ボタンがありませんでした。
グラフをタップして睡眠サイクルの詳細を分析できる
睡眠サイクルは時間ごとにステージが変化します。そのため「いつ、どの睡眠ステージだったか」をチェックする機能がこのレビューでは必須です。
iPhone 版アプリではグラフ内をタップ(タッチ)することで濃いグレーのボックスが表示されます。
Android 版アプリではグラフの下にある丸いボタンを左右にスライドさせることで詳細が画面上部に表示されます。
上の図はどちらも下記の内容を表示しています。
- 1:56 – 2:24 (28 分間)
- 深い睡眠ステージだった
レビューではもっと細かい分析をします。
過去の睡眠履歴と平均値集計
画面上部で「日/週/月/年」の表示切替ができます。日別の場合にのみ、カレンダーを使った過去データの検索ができます。
表示が切り替わることで過去の睡眠データを集計してくれます。週表示であれば 1 週間の平均睡眠時間、月表示であれば 1 か月の平均睡眠時間を集計して表示してくれます。
上図の例では週別/月別データにもアドバイスが入っています。生活習慣を改善するために振り返ってみるのもいいでしょう。
上図は iPhone 版ですが Android 版にも同じ機能はあります。
レビュー方法
レビューをするにあたり、下記に示す方法でデータ収集と分析をしました。結果だけ知りたい人はここは飛ばしてください。
データの取り方
睡眠の質を比較するための判断基準は Fitbit のデータです。過去の経験上、起床後の身体の感覚(すっきりしているか、眠気が残っているか)と睡眠図に最も関連性を見いだせているのが Fitbit だからです。
片腕に Honor Band 5, もう片腕に Fitbit を装着していつも通り就寝しました。この記事の冒頭で紹介した写真の状態です。右腕/左腕の装着設定は確認済みです。
※ Honor Band 5 には装着する腕の設定はありません。 Fitbit 側だけ設定を確認しました。
起床後アプリでデータを収集し、両デバイスの波形を比較しました。その結果を解説します。
データは 3 週間分 (21 日分)収集しました。
睡眠の質を評価するポイント
医師が書いた睡眠に関する本や私が Fitbit で計測した睡眠データから、睡眠の質をチェックするポイントは以下の 3 つに整理しました。
- 「覚醒」から「最初の深い睡眠」に入るまでの時間は短いほど良い (30 分以内が目安)
- 最初の深い睡眠は 20 分間以上あることが望ましい
- 睡眠中の途中覚醒回数は少ない方が良い
1 番が最も重要で、番号順に優先順位は下がります。各項目の詳細と根拠については下記の補足説明をご覧ください。
TruSleepを有効にして睡眠データを分析
事前にアプリ内の “Huawei TruSleep” を有効にします。詳細な睡眠データ解析とレビューをするためには必須の設定だと思われます。
上図は iPhone 版アプリの設定方法です。下図に Android 版アプリの設定方法を示します。
心拍数を常時計測に設定変更
もう 1 つの事前設定として、心拍数を常時計測にします。他社製品と同じ条件でレビューするためです。
TruSleep 設定の下に「心拍数の継続的な監視/モニタリング」という項目があります。タップして「リアルタイム」を選択します。「スマート」ではありません。
iPhone/Android どちらも設定方法は同じです。
リアルタイム計測にすることで緑色の光が常時デバイスから放出されます。
バッテリーが速く減ります。しかしそれでも実際に使ってみて約 1 週間持ちます。
心拍数計測をリアルタイムにすることで不整脈の自動検出が可能になります。後ほど解説します。
睡眠サイクルの比較結果
50%の確率で一致するが不安定
上図は計測期間中に最も多かった睡眠パターンでした。
Honor Band 5 のグラフをグレースケールにして、その上に Fitbit のグラフを重ねています。就寝時刻と起床時刻が一致するように横軸は調整済みです。
2 つのグラフを比較するとなんとなく傾向は似ています。しかし細かく分析すると結果は微妙に違います。
Honor Band 5 の睡眠サイクルをチェックポイントで分析しましょう。
- 最初の深い睡眠まで 5 分 (30 分以内が良い) → 〇
- 最初の深い睡眠が 16 分間 (20 分間以上が良い) → △
- 中途覚醒 0 回 → 〇
- 睡眠の質の総合評価 → △ (ただし良い方)
最も重要なのはチェックポイント①です。この例では 5 分で深い睡眠に入っているので良い傾向です。しかしチェックポイント②の深い睡眠が十分ではないので疲れはスッキリとれていないはずです。
上記の分析は Fitbit でも同じでした。しかし Fitbit では②の深い睡眠が 4 分間で Honor Band 5 よりも短いです。分析結果としてはどちらも△ですが、実際には Fitbit は「睡眠の質はほぼ悪い」といえます。
厳密に分析すると、この例では Honorr Band と Fitbit の分析結果は不一致です。
このように Honor Band 5 の結果は細かく分析して何とか当たるか当たらないかという感じです。確率的には 50 %と思ってください。
まずは起床後の自分の気分や体調がすっきりしているか確認しましょう。
よく眠れた睡眠サイクルで一致した例
上図はよく眠れた日の睡眠サイクルです。チェックポイントを使って Honor Band 5 の睡眠サイクルを分析しましょう。
- 最初の深い睡眠まで 24 分 (30 分以内が良い) → 〇
- 最初の深い睡眠が 20 分間 (20 分間以上が良い) → 〇
- 中途覚醒 2 回 → △ (優先順位は低い)
- 睡眠の質の総合評価 → 〇
1 つ前のグラフとは明らかに違いますね。こういう波形が出れば目覚めもスッキリしているはずです。
また Fitbit のグラフとも分析結果は一致しています。
このように一致することはまれでした。今回 21 日間計測してわずか 1 回だけでした。
Honor Band でこのような結果が出ても受け入れるのは 50 %としてください。半分の確率で Fitbit とは逆の結果になりました。
眠れなかった睡眠サイクルで一致した例
上図は明らかに睡眠の質が悪い日の例です。もう一度チェックポイントを使って Honor Band の睡眠サイクルを分析しましょう。
- 最初の深い睡眠まで 41 分 (30 分以内が良い) → ×
- 最初の深い睡眠が 6 分間 (20 分間以上が良い) → ×
- 中途覚醒 1 回 → 〇 (優先順位は低い)
- 睡眠の質の総合評価 → ×
起床後もスッキリしなかったり、あくびが出る時はこのような波形になることが多いです。グラフが示す通り、入眠後に深い睡眠までなかなか到達しません。
また Fitbit も同じ結果になりました。この例では両ガジェットで結果が一致しています。
ただこのような一致も 21 日間の計測でわずか 1 回でした。
こういう結果が出ても 50 %の確率で受け入れてください。起床後の体調や気分は逆の結果になる可能性もあります。起床後の自分の体調と合わせて確認してください。
睡眠サイクルの不一致の例
上図は Honor Band と Fitbit で結果が一致しなかった例です。わりとハッキリ差がでた例です。
ここまで分析した通り、 Honor Band の睡眠サイクルでは睡眠の質は悪いといえる結果になっています。しかし Fitbit の睡眠サイクルではよく眠れたことになります。
実際この日はどちらかというと起床後の気分は良い方でした。 Fitbit のグラフの方が自分の体調に当てはまっているといえました。
このように Honor Band の睡眠計測は不安定です。
しかし安価なモデルの割にここまで分析できるのは他社製よりもむしろ大健闘です。今後の改善が期待されます。
利用する際の注意点
その他レビューして気になったことを整理しました。
充電器は自分の micro USB ケーブルに接続できて便利
付属の充電ケーブルは短いです。
上の写真左にあるように、コンセントの位置によっては本体が宙ぶらりんになってしまいます。また宙ぶらりんの状態はケーブルが引っ張られ、内部の電線が切れて火災の恐れがあり危険です。
しかし充電器本体と充電ケーブルは別々でした。開封時は接続されていたのですぐには気がつきませんでした。
普段使っている micro USB ケーブルがあれば、写真右に示す様に宙ぶらりんにならずに充電ができます。
睡眠データの同期に時間がかかる
毎日の睡眠データが集計されるのに少し時間がかかります。
アプリ起動後すぐに同期が始まり、歩数や心拍数はすぐ表示されます。
しかし睡眠データは上図に示す様に「同期中」と表示され何 % という数字が少しずつ上がっていきます。集計しながら睡眠サイクルを分析もしているのかもしれません。
睡眠の同期処理は数分かかることもあるためご注意ください。
血液中の酸素飽和度 (SpO2) 機能は手動測定のみ
血液中の酸素濃度を調べることができます。専門用語で動脈血酸素飽和度 (SpO2) といいます。
原理はパルスオキシメーターとよばれる機能で、呼吸不全かどうか調べることができます。
Honor Band 5 を使った測定は手動のみです。上の写真に示す様に時計側を操作して数十秒~数分間かけて計測します。
日本呼吸器学会によると、 96 %以上で正常、 90 %以下の場合は呼吸不全の可能性があるということです。
腕時計側での測定結果はアプリで集計や管理ができます。睡眠データと同じように毎日の測定結果や週/月での集計結果をアプリで見ることができます。
この SpO2 機能、現在日本では実装されていません。
上図は Android 版アプリ画面です。このスマホでは居住国をベルギーにセットしているため見ることができました。
しかし住居設定が日本となっている iPhone 版アプリでは上図の画面がありませんでした。
心拍数は常時計測すべき?健康管理目的ならYES
睡眠データをとるために心拍数を「常時計測」にしました。ついでに「心拍数上昇の警告」も ON にすることをおすすめします。
安静にしているにもかかわらず、心拍数が上がる状態を「頻脈」といい不整脈が疑われます。この警告機能を ON にしておくことで頻脈を自動検知・通知してくれます。
ただし、レビュー時点にて Honor Band では心拍数が低い状態(徐脈)の検出機能はありませんでした。あくまでも心拍数が高い方だけ検出します。
心拍数の高い/低い両方検出できる他社製品もあります。また同社製の Huawei Band Pro 4 をレビューしたときには下の心拍数検出設定がありました。同じアプリでバージョンアップされたため今は使えるかもしれません。
睡眠データがとれない?3時間以上の睡眠が必要
Honor Band 5 を約 1 か月使用して、睡眠データのとれない日はありませんでした。
もし睡眠データがとれなかった場合は以下のことを確認してみましょう。
- ベルトがゆるくて本体が固定されていなかった(その結果、データがちゃんととれなかった)
- 睡眠時間が 3 時間未満
上図にあるように、 TruSleep では最低 3 時間以上の睡眠時間が必要です。なぜか iPhone 版アプリでしか表示されません。
あまりにも眠れない場合は医師に相談しましょう。
まとめ
アプリ自体は Android 版の方が使いやすかったです。ファーフェイは Android スマホも出しているのでアプリの作り込みに偏りがあるのでしょう。
格安トラッカーの中ではかなり買いな一品だといえるでしょう。
この記事をまとめましょう。
- 日々の睡眠データの分析機能だけでなく、アドバイスや解説機能も充実している。格安トラッカーとしては十分なお得感がある。
- 睡眠状態は毎日分析されるが結果が不安定なところがある。チェックポイントを使って分析はできるが 50 % の確率で受け入れよう。日によっては「質が良かった/悪かった」が逆の判定になることもある。
- 設定は TruSleep を ON, 心拍数計測を「リアルタイム」にしよう。常時心拍数を計測することで安静時の異常も通知してくれる。
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※このレビューは 2020 年 4 月から 5 月にかけて行いました。最新ソフトではこの記事で書かれた内容と相違があるかもしれません。
※良い睡眠がとれたかどうかは必ずご自身の体調や起床後の気分などでご確認ください。アプリの表示は計測結果を保証するものではありません。