Mi Smart Band vs Fitbit「睡眠の質」表示比較レビュー
この記事は約 15 分で読めます
このシリーズの目的は、日々の睡眠状況をしっかり把握し、より良い生活ができるようにサポートすることです。そのためにスマートウォッチやアクティビティトラッカー(活動量計)の睡眠計測・管理機能を辛口でレビューしています。
この記事は中国の会社である小米 (Xiaomi, シャオミ) 製のアクティビティトラッカーである Mi スマートバンドの睡眠機能をレビューします。これまで 6, 5, 4 の 3 モデルを入手しました。
他社製よりも圧倒的な安さがアピールポイントですが、睡眠分析という観点からのコスパはどうでしょうか?
結論を先に書くと、はっきりとはおすすめできません。
6 は 5 から改善していません。 5 は 4 より改善され、 4 は入眠直後の深い睡眠が検出されず睡眠の質を評価できませんでした。
睡眠管理画面の解説
Mi Fit というアプリでデータ収集と管理をします。このアプリの睡眠管理機能をまずは解説しましょう。
基本画面と情報共有機能
上図が Mi Fit の睡眠管理メイン画面です。他社製のアプリと同様、睡眠スコア(昨夜の睡眠点数)と睡眠サイクルがまず表示されます。
ただし他社製と違うことがあります。自分の睡眠スコアを他のユーザーと比較できます。
上図の画面では「 86 % のユーザーよりも良い睡眠です」と表示されています。つまり昨夜の睡眠が私のスコア (89) 未満だった人は 86 % いるということです。
睡眠ステージは「覚醒、レム睡眠、浅い(ノンレム)睡眠、深い(ノンレム)睡眠」の 4 ステージです。
Mi Band 4 のときはレム睡眠がありませんでした。 5 以降からレム睡眠が出るようになりました。
画面右上にはシェアボタンもあります。タップすると睡眠スコア、就寝時刻、起床時刻、深い睡眠の消費時間がシェアできるようです。
しかし、シェアすべきは睡眠スコアではなく睡眠サイクルです。もし医師と不眠治療をするのであれば、睡眠サイクルこそ現状を把握する大元のデータになるからです。
グラフ内タップで睡眠サイクルが細かく分析できる
睡眠サイクル内の任意の部分をタッチすると各睡眠ステージの詳細を知ることができます。
上図内の睡眠サイクルの白い部分がタッチされた場所です。「 22:16 – 13:46 まで (30 分間) 浅い睡眠だった」ことがわかります。
この機能はレビュー時に使います。下記に示す時間のチェックに使います。
- 最初の深い睡眠まで何分間だったか
- 最初の深い睡眠ステージは何分間だったか
アドバイス機能で過去の睡眠や他者と比較
Mi Fit はさらに睡眠のアドバイス機能があります。私のケースでは「深い睡眠が短いです」という表示ばかりですが。
過去 7 日間の睡眠データと前夜のデータを比較できます。下記に示す比較項目があります。
- 何分早く/遅く就寝したか
- 何分早く/遅く起床したか
- 合計睡眠時間が何分増えたか/減ったか
- 深い睡眠が何分増えたか/減ったか
過去の最高/最低スコアの日も表示されています。しかしスコアそのものが表示されていないのは不親切ですね。
さらに、同年齢ユーザーとの比較ができます。既に睡眠スコアの比較はありましたが、それ以外に「就寝時刻の早さ」と「深い睡眠の長さ」を比較してくれます。
上図によるとこのようなことがわかります。
- この日は 21 時台に就寝したので 99 %の人よりも早い(残り 1 %の人が私よりもさらに早く寝た)
- 53 %の人が私よりも深い睡眠が長い(残り 47 %の人は私よりも短い)
最後に、画面一番下の「今日の調子はどうですか?」をタップします。上図右に示す「今の気分」を記録することができます。
起床後の気分と睡眠サイクルを比較する目的としては嬉しい機能です。ただし必ずしも使う必要はありません。
履歴と過去の平均睡眠時間が表示できる
メイン画面から睡眠の傾向をみることもできます。
1 日の睡眠時間だけでなく、 1 週間/月間/年間の睡眠時間も切替で表示されます。
画面内では下記の統計値を分析してくれます。
- 平均睡眠時間
- 深い眠りの平均時間
- 浅い眠りの平均時間
- レム睡眠の平均時間
- 入眠時刻
- 起床時刻
- 平均中途覚醒時間(途中で目が覚めた時間)
日々の傾向を把握して睡眠管理をするためには必須の機能ですね。
睡眠中の呼吸の質がわかる
「睡眠時呼吸の質のモニタリング機能」が新たに追加されました。
血中酸素レベルが計測できるモデルは日中だけでなく睡眠中も血中酸素レベルを計測します。
睡眠中に血中酸素レベルが低くなると酸素が取り込まれておらず「睡眠時無呼吸症候群」の疑いが出てきます。
本来は「血中酸素飽和度 (SpO2) 」といった専門用語を使うべきですが、それには医療機器認定が必要になります。
Mi Band は医療機器認定を受けていないためこの機能は診断に使うことはできません。あくまでも参考にしてください。
Mi Fit アプリ内では睡眠中の呼吸が点数で表示されます。上図では 96 点で問題ないですが 90 点を下回ると注意が必要だとアプリは教えてくれます。
レビュー方法
レビューにあたり、どのようにデータをとって評価したのか整理します。結果だけ知りたい方は飛ばしていただいて構いません。
データの取り方
睡眠の質を比較するための判断基準は Fitbit のデータです。過去の経験上、起床後の身体の感覚(すっきりしているか、眠気が残っているか)と睡眠図に最も関連性を見いだせているのが Fitbit だからです。
片腕に Mi Band, もう片腕に Fitbit を装着していつも通り就寝しました。右腕/左腕の装着設定は確認済みです。
起床後アプリでデータを収集し、両デバイスの波形を比較しました。
睡眠の質を評価するポイント
医師が書いた睡眠に関する本や私が Fitbit で計測した睡眠データから、睡眠の質をチェックするポイントは以下の 3 つに整理しました。
- 「覚醒」から「最初の深い睡眠」に入るまでの時間は短いほど良い( 30 分以内が目安)
- 最初の深い睡眠は 20 分間以上あることが望ましい
- 睡眠中の途中覚醒回数は少ない方が良い
1 番が最も重要で、番号順に優先順位は下がります。
これらのチェックポイントを導き出した根拠については、まとめページの補足を参照してください。
「睡眠アシスタントのON/OFF」2パターンともレビューする
Mi Band には 2 種類の睡眠データ計測方法があります。「心拍数を利用しない方法」と「心拍数を使う方法」です。
心拍数を使う方法のことを「睡眠アシスタント」といいます。
Mi Band 4 のレビューでは睡眠アシスタント機能の ON/OFF 両方ともレビューしました。最初の 2 週間は OFF, 次の 2 週間は ON, 合計 4 週間データ計測しました。
購入時点では睡眠アシスタントはオフです。購入直後「どうして日中の心拍数を計測しないんだ?」と思っていたのですがこの機能がオフでした。
上の図にある手順でオンにできます。プロフィールから認識しているデバイス (Mi Band 4) を選択し「心拍数検出→検出方法」を選択します。
「自動心拍数検出」と「睡眠アシスタント」の設定画面が表示されます。このレビューでは両方オンにしました。
日中も心拍数を計測することで他社製のトラッカーと同一測定条件になります。
Mi Band 5 と 6 は ON の条件だけレビューしました。
Mi Band 6のレビュー結果:5から改善なし
Mi Band 6 は睡眠アシスタントありの条件だけで 14 日間データをとりました。
結論として 5 からの改善は見られませんでした。実際の睡眠波形を紹介します。
上図では Fitbit は良い睡眠がとれたという判定でした。しかし Mi 6 では睡眠初期に深い睡眠が出ず質は悪いと判断せざるを得ませんでした。
00:55 以降の深い睡眠は両デバイスでかなり一致しているのです。しかし重要なのは最初の 90 分です。入眠してから最初の段階で深い睡眠が出ないと起床後のスッキリ感は出にくいです。
上図は逆のケースです。 Mi 6 では深い睡眠が少し出ましたが、 Fitbit ではよく眠れなかったという結果でした。
実際にはよく眠れなかったのに、グラフ上で良い睡眠がとれたと出るのはユーザーに混乱を与えかねません。
14 日間のデータ収集で、睡眠の質の良し悪しにかかわらず Fitbit と分析結果が一致したといえるのは 3 日間だけでした。比率でいうと 21.4 % でした。
しいて改善点を挙げるとするなら、就寝時刻/起床時刻は前より正確になっている感じがしました。
Mi Band 5のレビュー結果:4より改善あり
Mi Band 5 は睡眠アシスタントありの条件だけで約 30 日間データをとりました。レビューの結果 4 よりは改善しているものの、やはり課題は残りました。
代表波形:時間が合わない
上図は代表的な睡眠波形です。 Mi Band 5 の図に Fitbit の睡眠サイクルを重ねています。就寝時刻と起床時刻は調整したうえでの比較になっています。
この図を見ると、就寝時刻が合っていません。 Fitbit が 22:21 であるのに対して Mi Band 5 は 23:26 となっています。
Fitbit が正しくこの日は 22:30 前にはベッドに入っています。 Mi Band 5 の方が睡眠の検出が遅いです。
Mi Band で表示されている最初の深い睡眠は Fitbit が示す 2 番目の深い睡眠です。ここだけで判断してしまうと「睡眠の質が良いのでは?」とも解釈できそうです。
実際には Fitbit/Mi Band どちらも評価が△なのである意味一致しています。しかし Mi Band がきちんと計測できていないと判断する方が納得できます。
睡眠サイクルが一致した例
上図は質の良い睡眠がとれたといえる波形です。比較するとどちらも睡眠冒頭部分が似ています。
Mi Band の睡眠の質を評価してみましょう。
- 最初の深い睡眠まで 30 分以内が良い → 〇
- 最初の深い睡眠は 20 分間以上が良い → ◎ (30 分以上はまれなので)
- 中途覚醒 → Mi Band は × (ただし優先順位低い)
- 睡眠の質の総合評価 → 〇
Fitbit でも評価は ◎ でした。これだけきれいな睡眠サイクルはめったにとれません。今回のレビューでも全記録のうちわずか 1, 2 回でした。
上図は逆に睡眠の質が悪い評価で一致した例です。
Fitbit では深い睡眠まで 2 時間以上、 Mi Band は深い睡眠を検出していません。
Mi Band の検出感度は Fitbit よりも弱めになっており、深い睡眠が検出されにくくなっています。
それでも Mi band 4 よりは深い睡眠が検出されています。
睡眠評価が一致した例のほとんどは質が△か×だった日です。
睡眠サイクルが不一致だった例
睡眠サイクルが不一致だった例も紹介します。
この例はめずらしく Fitbit の質は×, Mi Band の評価が△(良い方)となっています。結果的には Fitbit の結果の方が実際の睡眠の状態を表していました。
また最初に紹介した代表波形と同じく就寝時刻と起床時刻が一致していません。
結論としては、前モデルの Mi Band 4 よりは改善されているものの、毎日使うにはまだ不安定ではっきりとはおすすめできません。
Mi Band 4のレビュー結果(1)睡眠アシスタントなし
初期の深い睡眠が検出されず質の判断が逆になる
上図は睡眠アシスタント OFF (心拍数を使わない)で計測した睡眠サイクルてす。 Mi Band の波形に Fitbit の波形を重ねています。時刻は調整済みです。
結論は、 Mi Band 4 の睡眠サイクルから質の評価は難しいです。
理由を説明します。
睡眠の質をチェックするポイント①「入眠から最初の深い睡眠まで 30 分以内」を上図に当てはめると結果はこのようになりました。
- Fitbit → 6 分なので◎
- Mi Band 4 → 56 分なので×
両者の結果は一致していません。
残りのチェックポイントでも両者を比較しましたが、やはり一致していません。詳細は上図をご覧ください。
14 日間計測しましたが、 Mi Band 4 は「 30 分以内に深い睡眠ステージに入った日」が一度もありませんでした。 Fitbit は 6 日ありました。
私自身、この 14 日間でスッキリ眠れない日が多いことは自覚しています。
しかしそれでも Mi Band 4 の睡眠サイクルが示すような寝苦しさは感じていません。 Fitbit の波形の方が実感覚に近い結果でした。
以上、おすすめできません。ちゃんと眠れた日であっても Mi Band 4 は「眠れていませんよ」と表示する可能性が高いです。
うたた寝を検出したのはすごい
上図は Mi Band 4 がうたた寝を検出したケースです。もし腕の動きだけでうたた寝を検出したのであればすごいですね。
一度目を覚まし、歯みがきをして再度 22:16 ごろにベッドに入り就寝しています。深い睡眠の検出位置が似ていて驚いています。
しかし一番重要なのは入眠直後です。
しつこいようですが、落ちた直後に深い睡眠が出ると疲労回復しやすことがわかっています。睡眠の後半にいくほど浅い睡眠が多くなり目覚めに向かいます。
Fitbit の波形にはベッドで就寝後、短いながらも深い睡眠が検出されています。しかし同じポイントに Mi Band 4 の波形には深い睡眠が検出されていません。
Mi Band 4 は心拍数を計測していないので睡眠データ解析に誤差がでるのはやむを得ないのでしょう。しかしおすすめできません。
Mi Band 4のレビュー結果(2)睡眠アシスタントあり:やっぱり深い睡眠が出ない
上図は睡眠アシスタント ON による睡眠サイクルの比較結果です。
この日は良く眠れたのに Mi Band 4 はそのように表示していません。むしろ真夜中にハッキリ起きているとオレンジ色で表示しています。
私は普段から夢をみず熟睡するタイプです。そのためこのオレンジ色の表示は明らかにおかしいです。
また 14 日間比較したところ、質の評価が一致した日は 2 日しかありませんでした。
残念ながら Mi Band 4 で睡眠の質はチェックできなさそうです。
睡眠アシスタントを ON にして睡眠中も心拍数を常時計測しています。それにもかかわらずこの結果になったのは残念です。
睡眠アシスタント OFF の方がまだ安定した睡眠サイクルでした。
利用する際の注意点
実際に使用してみて気がついたことをこの記事の最後にまとめます。
アドバイス機能は「スマート分析」をONにする
もし睡眠管理画面にアドバイスや比較結果が表示されない場合「睡眠の質分析」がオフになっている可能性があります。
初期設定ではオンのはずです。しかし表示されない場合は上の図にある手順「プロフィール→スマート分析」にて設定を確認しましょう。
Mi Fit の公式サイトにはヘルプやマニュアルのページがありません。
そのためこの記事で紹介している機能解説や睡眠データの扱いについて公式見解を知ることができませんでした。
心拍数は常時計測すべき?健康管理目的ならYES
初期設定では心拍数を常時計測しません。この「自動心拍数検出機能」は利用すべきでしょうか?
健康管理重視の人であれば ON にしましょう。初期設定では上図左に示す「手動で計測したときの心拍数の結果一覧」しか表示されません。
しかし自動検出を ON にすれば他社製のトラッカーによくある「心拍数のグラフ」と「高心拍数のアラート機能」を利用することができます。上図の中央と右に示す画面です。
Mi Band 4 のアピールポイントは低価格とバッテリーの長さでした。バッテリーが長く持つ理由は「心拍数を常時計測していないから」です。
自動検出を ON にすることでバッテリーの消費は早くなります。しかしそれでもまだ Mi Band 4 は 1 回のフル充電で 1 週間以上使うことができました。
Apple Watch よりはるかに長時間使うことができて無駄ではありません。
最大酸素摂取量(VO2 max)の値が表示されない
最大酸素摂取量 (VO2 max) は、どれくらいの強度の運動ができるかを表す数値です。
フィットネス系のトラッカーでは搭載されている機種が増えています。
この計測値は自動心拍数検出を ON の時だけ算出されると思われます。しかし心拍数の画面内に表示項目はあっても計測値は表示されませんでした。 2 週間自動検出を利用して1度も表示されませんでした。
不具合なのかどうか調べたところ、この記事の執筆時点ではまだ搭載されていないようでした。英語でも調べたのですが、私と同様に表示されない報告を見つけることができました。
将来的に実装されることを待った方がいいかもしれません。
まとめ
まだまだ改善の余地がありそうです。
コスパが圧倒的に良いので、今後のファームウェアバージョンアップで良くなることを期待しています。
この記事をまとめましょう。
- Mi Fit アプリでは睡眠スコアだけでなくアドバイス機能や同年齢ユーザーとの比較もありコスパは良い。
- 睡眠アシスタント ON/OFF 両方ともレビューしたが、睡眠の質を判断できなかった。入眠直後の深い睡眠が検出されないのが改善点。
- 自動心拍数検出は ON にすべき。バッテリーの消耗は多くなるがそれでも 4 日間以上使える。また健康管理したい人にとっては高心拍数異常検知機能が使える。
まとめページ【おすすめ】各社の活動量計の睡眠管理機能を徹底レビュー【比較】に戻る
※このレビューは 2020 3 月から 8 月, 2021 年 11 月に行いました。最新ソフトではこの記事で書かれた内容と相違があるかもしれません。
※良い睡眠がとれたかどうかは必ずご自身の体調や起床後の気分などでご確認ください。アプリの表示は計測結果を保証するものではありません。