UMind Mirror vs Fitbit「睡眠の質」表示比較レビュー

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UMind Mirrorを額に装着した状態の写真

これまで多くの睡眠トラッカーをレビューしてきましたがそのほとんどは腕時計型(スマートウォッチ)か指輪型(スマートリング)でした。

睡眠状態を把握するための本来の計測方法は脳波です。しかし睡眠ポリグラフ検査は医療設備に行く必要があり難しいところです。

この記事では UMind Mirror というスタートアップ製品を紹介します。

上の写真にあるように、 UMind Mirror はボタン型のデバイスです。専用のゲルシートを使っておでこに貼るだけで手軽に脳波計測ができます。ヘッドバンドを使わない分、寝ている間も頭が苦しくないのでデータがとりやすいと期待しました。

このデバイスで睡眠分析ができるのか、 Fitbit と Apple Watch と比較しました。また自分の脳波データを入手して自分で睡眠サイクル分析ができないか試してみました。

結論は、睡眠サイクルは Fitbit より Apple Watch と似た傾向でした。また脳波データは入手出来て解析してみたものの、ノウハウがたりず解析を断念しました。

アプリの機能解説

睡眠分析画面で睡眠状態と身体の動きをチェック

UMindアプリのメイン画面

上図は UMind アプリのメイン画面です。

メイン画面には最新の睡眠データが表示されています。画面中の 66 という数字は睡眠スコアです。

この画面で “View the full report” をタップすると詳細画面に移ります。

睡眠スコアの下には睡眠サイクル(睡眠図)があります。このサイクルを分析して睡眠の質をレビューをします。

睡眠ステージは「覚醒」、「レム睡眠」、「浅い(ノンレム睡眠)」、「深い(ノンレム睡眠)」の 4 ステージです。睡眠トラッカーが標準的に扱う 4 項目です。

さらに画面をスクロールすると「姿勢」と「身体の動き」というグラフがあります。

UMind Mirror には加速度センサーが搭載されています。このセンサーで睡眠中の寝返りなどの動きも計測しています。

過去の睡眠の傾向をチェック

UMindアプリの過去の睡眠記録画面

過去の睡眠データの記録を振り返るには詳細画面の上のタブを使います。

デフォルトでは「日」が表示されていますが、「週」や「月」に切り替えることで過去の傾向を分析できます。

ただし睡眠スコアの平均値は出るものの、睡眠時間の平均値などは表示しないようです。

正直この機能は使いませんでした。

アプリで睡眠開始を手動でセットする必要がある

UMindアプリの睡眠計測開始操作画面

スマートウォッチやスマートリングは普段装着して寝るだけで睡眠データの計測と分析をしてくれます。

しかし UMind Mirror は寝るときだけ使うデバイスです。そのため睡眠の開始をアプリでセットする必要があります。

まずはデバイスの電源を入れて Bluetooth 接続を確立します。

上図に示すように “Device Connected” をタップしてデバイスの接続を確認します。そして “Complete” をタップして睡眠開始の手続きをします。

デバイスの性質上仕方ないのですが、この手順があるだけで普段使いのハードルが上がってしまいます。

本当に疲れて眠い日は頭にデバイスを装着してもセットし忘れて寝てしまうことがありました。そういう日こそ質の良い睡眠がとれていそうです。

レビュー方法

レビューをするにあたり、下記に示す方法でデータ収集と分析をしました。結果だけ知りたい人はここは飛ばしてください。

データの取り方

UMind Mirror と Fitbit をそれぞれつけて睡眠データを計測しているイメージ

睡眠の質を比較するための判断基準は Fitbit のデータです。過去の経験上、起床後の身体の感覚(すっきりしているか、眠気が残っているか)と睡眠図に最も関連性を見いだせているのが Fitbit だからです。

おでこに UMind Mirror, 左腕に Fitbit を装着していつも通り就寝しました。補足のため Apple Watch Series 8 も Fitbit と同じ左腕に同時装着しデータ収集しました。

起床後アプリでデータを収集し、両デバイスの波形を比較しました。その結果を解説します。

計 24 日分のデータ収集しました。

睡眠の質を評価するポイント

医師が書いた睡眠に関する本や私が Fitbit で計測した睡眠データから、睡眠の質をチェックするポイントは以下の 3 つに整理しました。

  1. 「覚醒」から「最初の深い睡眠」に入るまでの時間は短いほど良い (30 分以内が目安)
  2. 最初の深い睡眠は 20 分間以上あることが望ましい
  3. 睡眠中の途中覚醒回数は少ない方が良い

1 番が最も重要で、番号順に優先順位は下がります。各項目の詳細と根拠については下記の補足説明をご覧ください。

関連記事:補足:睡眠の質をチェックする3つのポイント(各社の活動量計の睡眠管理機能を徹底レビュー)

睡眠サイクルの比較結果

Fitbitとの比較結果

UMind MirrorとFitbitの睡眠サイクルの比較結果。Fitbitの深い睡眠が長くUMind Mirrorの睡眠サイクルと一致していない。

上図は代表的な睡眠サイクルの比較結果です。 UMind Mirror のグラフをグレースケールにして Fitbit のグラフを上に重ねています。横軸が一致するように時間軸は調整済みです。

UMind Mirror の睡眠サイクルを分析するとこのような判定になります。

  1. 最初の深い睡眠まで 20 分 (30 分以内が良い) → 〇
  2. 最初の深い睡眠が 5 分間 (20 分間以上が良い) → △
  3. 中途覚醒 1 回 → 〇 (判定の優先順位は低い)
  4. 睡眠の質の総合評価 → △

一方 Fitbit は入眠後 2 分で深い睡眠に到達し、しかも深い睡眠が 22 分間続きました。睡眠の質の判定は 〇 です。

UMind Mirror と Fitbit で判定が割れています。脳波の計測が正しければ Fitbit の結果が違うことになります。

レビュー期間全体を通じて睡眠の質の判定が一致したのは 40 % 程度でした。 UMind Mirror と Fitbit の睡眠の分析が一致していない感じです。

Apple Watch とも比較したのでその結果も考慮してみましょう。

Apple Watchとの比較結果

UMind MirrorとApple Watchの睡眠サイクルの比較結果。深い睡眠やレム睡眠の出方がFitbitより似ている。

上図は Apple Watch と UMind Mirror の睡眠サイクルの比較結果です。先ほどの Fitbit の比較と同じ日の睡眠データです。

Apple Watch の睡眠サイクルから質を判定するとこのようになります。

  1. 最初の深い睡眠まで 12 分 (30 分以内が良い) → 〇
  2. 最初の深い睡眠が 13 分間 (20 分間以上が良い) → △
  3. 中途覚醒 3 回 → × (判定の優先順位は低い)
  4. 睡眠の質の総合評価 → △

判定結果は UMind Mirror と同じです。この日の睡眠の質は良くも悪くもなく中途半端な結果でした。

ただしグラフを見た感じ、 Apple Watch のサイクルは全体的に UMind Mirror と似ている感じでした。

例えば上図に示すように、レム睡眠 (REM) の発生頻度や発生場所が UMind Mirror と似ています。 Fitbit は最初のレム睡眠を検出していません。

レビュー期間全体を通じた睡眠の質判定は 〇 が約 54 %, △ が 33 %, Fitbit よりも良い結果でした。

客観的な比較ではないものの、レビューを通じて Apple Watch と UMind Mirror が似た傾向の睡眠分析をすることがわかりました。

それであればわざわざ頭にデバイスを装着して寝なくても Apple Watch で睡眠管理すればよいのでは?というのが結論です。

頭に機器を装着することへの違和感がどうしても取れません。より高い精度の睡眠分析を希望したければ医療機関に行くべきでしょう。

腕時計を装着して寝ることは習慣化しています。一般利用であればこのスタイルを普及すべきでしょう。

開発者向け機能

開発者ツールが提供されている

UMindMirror SDKアプリのメイン画面。デバイスの状態がリアルタイムで表示されている。

UMind アプリは iPhone, Android の両 OS で提供されています。

このメインアプリとは別に開発者向けの SDK アプリが Android のみ提供されています。上図の画面はこの SDK アプリの画面です。

UMind Mirror を Bluetooth で接続すると信号強度や身体の動き、姿勢(加速度センサー)などのデータがリアルタイム計測できます。

ただこのアプリはリアルタイム計測のみで記録がとれません。また脳波データは表示されません。

自分の脳波データを解析してみたかったのですがこのアプリはできませんでした。

独自で睡眠データ解析もやってみたが何もわからず

実際に記録された脳波データを周波数解析してみた結果

今回は Android スマートフォンでデータを取ったので、日々の記録がファイル保存されている場所を見つけることができました。

一晩分のデータが 1 フォルダに収められており、バッテリー残量や体の動きなどのデータが個別に保存されていました。

そのうちバイナリファイル (Eegdata.bin) が脳波だとわかったので、メーカーに問い合わせして脳波データの取り出し方法を確認しました。

この脳波記録は 1 秒間に 256 点の脳の信号の電圧を記録していました。そのため上図に示すように FFT で 128 Hz までのスペクトラム解析ができました。

脳波には α 波, β 波など周波数帯域からリラックス状態や緊張状態がわかるとされています。このパターン解析で自分で睡眠サイクルの分析ができないか試しました。

外部リンク:睡眠時脳波 – Wikipedia

結論は、自分のスキルでは睡眠サイクルの分析はできませんでした。

理由はいくつかあります。

  1. 医療設備で使う脳波計は電極の数が多く、周波数から睡眠サイクル分析をするにも複数の観測点の脳波を複合的に判断している。一方 UMind Mirror は一か所測定のみでデータが限定的。
  2. UMind Mirror は身体の動き、姿勢も含めて総合的に睡眠サイクルを判定している。そのノウハウがこの企業の強みであり個人で解析するにはノウハウが足りない。論文はあるかもしれないが労力に対して得るものが少ないと判断。
  3. 一晩分のデータ量が膨大すぎて解析に時間と手間がかかる。 Python コードを自分で書いてある程度解析してみたが、ノウハウが足りないので睡眠ステージに変換できるプログラム開発がいつ完成するか見えなかった。

以上の理由から自分で睡眠サイクル分析は断念しました。

まとめ

UMind Mirrorのパッケージの内容物

これまでレビューしてきた中で、頭に装着するデバイスの中では最も手軽で素晴らしいデバイスです。

しかし頭に装着することへの違和感が最後までなくならず、ちゃんとしたデータが取れる自信がありませんでした。

Youtube で脳波も使った睡眠サイクルの比較をやっている人がおり、すでに Apple Watch がかなりの高精度であることを報告しています。そのため自分で脳波を測ったレビューはやらなくてもいいのかもしれません。

この記事をまとめましょう。

  • 脳波を使った睡眠状態の計測は本筋であり UMind Mirror は頭に装着するデバイスの中では最も手軽に使うことができる。しかし入眠前に睡眠計測開始操作が必要など制約もありデータの収集が難しかった。
  • おでこにデバイスを装着することに最後まで違和感があった。その結果良い睡眠もとれなかったと思われる。一般利用を想定すると、腕時計型デバイスを装着して寝る方が普及しやすいと思われる。
  • 睡眠サイクルを比較したところ、 Apple Watch と UMind Mirror で似た傾向だった。それであれば手軽に計測できる Apple Watch を日常使いでおすすめしたい。
  • SDK 機能付きで脳波のデータから睡眠ステージを割り出す試みをしたがノウハウが足りず断念した。

外部リンク:UMind Mirror: Smartest EEG Brainwave Wearable for You – Kickstarter

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※このレビューは 2023 年 8 月から 9 月にかけて行いました。最新ソフトではこの記事で書かれた内容と相違があるかもしれません。

※レビュー時点での UMind Mirror Firmware Version: 2.14.0

※この記事のデータ測定結果は診断結果ではありません。データを過信せず不調を感じた際にはかかりつけ医に相談してください。