Withings Move (ECG) vs Fitbit「睡眠の質」表示比較レビュー

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Withings Move ECG と Fitbit Versa 2 をそれぞれの腕に装着
Withings Move ECG と Fitbit Versa 2 で睡眠データの比較(アップルウォッチではないので注意)

このシリーズの目的は、日々の睡眠状況をしっかり把握し、より良い生活ができるようにサポートすることです。そのためにスマートウォッチやアクティビティトラッカーの睡眠計測・管理機能を辛口でレビューしています。

この記事はフランスのメーカーである Withings (ウィジングズ社)製のアクティビティトラッカーである Move (ムーブ)の睡眠機能をレビューします。欧州ブランドらしいおしゃれなアナログ時計タイプのトラッカーですが、睡眠機能はどうでしょうか?

結論から言うと、残念ながらおすすめできません。なぜでしょうか?数日間装着して Fitbit の睡眠機能と比較した結果を整理しました。

なお、同社から Move (心電図機能なし)と Move ECG (心電図機能あり)という類似モデルが 2 つあります。睡眠管理機能は両モデルとも同じとみなすため、以降は Move (ECG) と表記します。レビューに使用したのは Move ECG です。

Move (ECG) の睡眠管理機能を解説

Withings のトラッカーは Health Mate というアプリで睡眠データの表示と管理を行います。機能を順番にみていきましょう。

睡眠結果の表示はグラフとスコア

Withings Health Mate アプリの睡眠管理画面

睡眠画面上部には就寝時刻、起床時刻、睡眠時間、睡眠サイクル(睡眠図)が表示されます。いずれも自動で計測されるため、寝る前に設定等は不要です。他社とほぼ同じです。

睡眠ステージは「覚醒、浅い睡眠、深い睡眠」の3つです。 レム (REM) 睡眠がありません。レム睡眠も重要な睡眠ステージなのですが、そこまで細かく計測はできないようです。

ちなみにこの記事の執筆時点で最も睡眠解析が優れている Fitbit は「覚醒、レム睡眠、浅い睡眠、深い睡眠」の 4 ステージです。

画面下には睡眠スコアが表示されます。非常に良い睡眠がとれた場合は 100 点以上になることもあるようです。公式の説明によると以下の項目で評価しているとのことです。

  1. 睡眠時間
  2. 深い睡眠の割合
  3. 毎日規則的な就寝時刻と起床時刻か
  4. 睡眠の中断回数(途中覚醒の回数)
  5. ベッド(布団)に入ってから眠りに入るまでの時間
  6. 目が覚めてからベッドを出るまでの時間

アプリ内には「睡眠は長さより質」と書かれた解説があります。それにも関わらず睡眠時間が評価項目に入っています。

過去の記録の振り返り機能

過去の睡眠履歴画面

過去の記録を振り返るには睡眠管理画面の下部にある「日・週・月」のいずれかをタップすることで切り替わります。

週表示の場合は各曜日の睡眠時間と就寝・起床時刻が縦棒で表示されます。色は青(緑)が高スコア、悪いほど赤で表示されます。

月表示の場合は各日の睡眠スコアが色付きの丸で表示されます。

また週表示・月表示のどちらも「睡眠スコアの平均値、平日の平均睡眠時間、週末の平均睡眠時間」が計算されて表示されます。

レビュー:睡眠サイクルの比較

ここから睡眠の質をチェックできるかレビューします。

他のデバイスのレビューでは 1 か月分のデータを取ったのですが、 Move (ECG) は 1 週間分とれば十分でした。あまり参考にならないと早々に判断したためです。詳しく解説します。

データの取り方

WithingsとFitbitをそれぞれの腕につけて睡眠データを計測

睡眠の質を比較するための判断基準は Fitbit のデータです。過去の経験上、起床後の身体の感覚(すっきりしているか、眠気が残っているか)と睡眠図に最も関連性を見いだせているのが Fitbit だからです。

片腕に Move (ECG) 、もう片腕に Fitbit を装着していつも通り就寝しました。この記事の冒頭で紹介した写真の状態です。右腕/左腕の装着設定は確認済みです。

起床後アプリでデータを収集し、両デバイスの波形を比較しました。その結果を解説します。

睡眠の質をチェックするポイント

医師が書いた睡眠に関する本や私が Fitbit で計測した睡眠データから、睡眠の質をチェックするポイントは以下の 3 つに整理しました。

  1. 「覚醒」から「最初の深い睡眠」に入るまでの時間は短いほど良い (30 分以内が目安)
  2. 最初の深い睡眠は 20 分間以上あることが望ましい
  3. 睡眠中の途中覚醒回数は少ない方が良い

1番が最も重要で、番号順に優先順位は下がります。各項目の詳細と根拠については下記の補足説明をご覧ください。

関連記事:補足:睡眠の質をチェックする3つのポイント(各社の活動量計の睡眠管理機能を徹底レビュー)

波形の比較結果:睡眠サイクルに相違あり

代表的な睡眠サイクルの比較結果

代表的な波形が上の図になります。 Move (ECG) の睡眠サイクルをグレースケールにして、その上に Fitbit の睡眠サイクルを重ねました。就寝時刻と起床時刻は同じになるように位置調整してあります。

睡眠サイクルの冒頭部分(左側)を見てみましょう。 Fitbit は浅い睡眠(水色)なのですが、 Move (ECG)では深い睡眠(濃い色)と浅い睡眠(薄い色)の両方が表示されています。睡眠ステージに不一致があります。

睡眠の質を評価するポイントの 1 番目は「「覚醒」から「最初の深い睡眠」に入るまでの時間は短いほど良い (30 分以内が目安)」です。睡眠波形の冒頭部分は睡眠の質をチェックする最重要ポイントです。

このポイントについて、上図ではオレンジ色で補足してあります。冒頭部分の波形の解釈は

  1. Fitbit 「深い睡眠に入るまで 30 分以上かかっている(質はあまり良くない)」
  2. Withings 「深い睡眠に入るまで 30 分以内、実際には数分で落ちている(質が良い傾向)」

と正反対になってしまいます。

残念ながら、この日は起床後もあくびをするなどよく眠れませんでした。 Fitbit の波形の方が自分の感覚とマッチしていました。 Withings Move (ECG) では睡眠の質のチェックは難しいと言わざるをえません。

ちなみに上図では両デバイスとも深い睡眠で一致している部分があります。ここで疲れはとれたのでは?という意見もありそうです。しかし途中のサイクルは参考程度であり評価の重要ポイントではありません。

あくまでも落ちた直後(入眠した直後)の波形が最重要ポイントです。

睡眠サイクルの比較結果(2例目)

別の日の波形も比較してみましょう。この波形でも Fitbit では深い睡眠に入るまで 30 分以上かかっています。一方、 Move (ECG) の方はすぐ深い睡眠に移行しています。睡眠ステージが一致しませんね。

しかも Fitbit では 5:10 に起床しているのに対して、 Move (ECG) では起床後も計測が続き 6:02 で起床扱いになっています。

もちろん違うデバイスなので就寝時刻や起床時刻に誤差はあります。それにしても約1時間の誤差は大きすぎますね。

Move (ECG) を睡眠管理のパートナーとして使うのは難しいのが本音です。

睡眠割合表示の項目数が少ない

睡眠ステージの割合比較

2つのデバイスでは睡眠サイクルの解析方法が違うので睡眠ステージの割合表示も当然違ってきます。しかし他にも違うことがあります。

  • Withings (上図左)では睡眠ステージの割合を「浅い眠り/深い眠り」の 2 項目でしか算出していない。
  • Fitbit (上図右)は睡眠ステージの割合を「覚醒状態、レム睡眠、浅い睡眠、深い睡眠」の4項目から算出する。

Fitbit の方がより細かい睡眠分析ができます。

睡眠解析の精度が良くない原因:腕の動きしか検知していないから?

心拍数の計測履歴
Withings Move ECG では心電図の計測時にのみ心拍数を計測、そのため日々の心拍数をグラフ表示できない

ではなぜ Move (ECG) の睡眠データにはこれほどの制限があるのでしょうか?

睡眠データの計測方法は公式に公開されていません。唯一推測できること、それは「心拍数を計測していないから」だと考えられます。

Move (ECG) は乾電池駆動のデバイスです。常時心拍数を計測していると電池はあっという間になくなってしまいます。

乾電池駆動にして充電口を無くすといったファッション性を採用し、心拍数の常時計測が犠牲になっていると考えられます。

それでも Move (ECG) は加速度センサーで腕の動きを計測しています。睡眠中の腕の動きの情報だけを頼りに睡眠データを解析していると考えられます。

一方、 Apple Watch や Fitbit ではデバイス本体から緑の光が出ているのをご存知でしょうか?あの光の反射光を計測して心拍数を常時計測しています。また Move (ECG) と同じように加速度センサーで腕の動きも計測しています。

このように、トラッカーによる睡眠データの計測と解析には「心拍数」と「腕の動き」を総合的に使っていると考えられます。より詳しい方法はどの会社も企業秘密としているため知ることはできません。

まとめ

Withings Move ECG 装着写真
おしゃれさを追求している分、データ収集は物足りないか

辛口評価になりましたが、健康にかかわることなのでウソは書けません。しっかり睡眠管理をするのであればあえてこのデバイスを利用する必要はありません。

Withings Move (ECG) では万歩計機能やジョギングなどのアクティビティが記録できます。簡単な健康管理機能でかつファッション性を求めている人には良いデバイスかもしれません。

この記事をまとめましょう。

  • 睡眠サイクルが一致しない。特に質のチェックに使う冒頭部分の波形にて、 Withings は「深い睡眠」が過剰に検出されており、よく眠れたかどうかの判断が難しい。
  • 実際、 Fitbit と Withings で同じ日の睡眠サイクルから「よく眠れた/眠れなかった」の正反対の解釈ができてしまう。
  • 睡眠ステージの割合表示について、 Fitbit は 4 項目を算出するのに対して Withings Move (ECG) は「浅い睡眠/深い睡眠」の 2 項目のみ。細かい分析ができない。
  • 睡眠データが細かく分析できない原因は心拍数を計測しないからだと考えられる。
  • Withings Move (ECG) は乾電池駆動なので心拍数を常時計測するとバッテリーが持たない。そのため睡眠中の腕の動きだけでデータ解析していると考えられる。

外部リンク:Withings Moveで睡眠を追跡 – Withings | Support (公式解説ページ)

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※この記事のアプリ画面は iPhone 版ですが、 Android 版でも同じ機能が搭載されています。

※このレビューは 2019 年 12 月に行いました。最新ソフトではこの記事で書かれた内容と相違があるかもしれません。

※良い睡眠がとれたかどうかは必ずご自身の体調や起床後の気分などでご確認ください。アプリの表示は計測結果を保証するものではありません。