Pillow vs Fitbit 「睡眠の質」表示比較とアプリレビュー

[この記事は約 14 分で読めます]
iPhoneとPillowアプリ起動中

このシリーズでは iPhone (+ Apple Watch) 向けにリリースされている睡眠アプリをレビューします。私が徹底的に調べた Fitbit の睡眠図とどう違うのか、比較して解説します。

今回は Pillow というアプリをレビューします。結論だけ先に書くと「睡眠の質をこのアプリで確認するのは難しい」です。どうしてでしょうか?詳しくみていきましょう。

Pillowアプリでできること

最初にこのアプリで何ができるのか、どういう操作で睡眠データを確認するのか簡単に整理します。もしすでに使い方を知っていればここは飛ばしてレビューをお読みください。

睡眠管理に特化したアプリ(画面解説)

アプリのメイン画面

iPhone には多数の健康管理アプリがあります。この Pillow というアプリは睡眠に特化したアプリです。

上図の左は起動直後の画面です。すでに Apple Watch と連携していれば起動直後にデータをとりにいき、その日の睡眠データを集計・解析して表示してくれます。

上の2つの円のうち、外側の紫は Pillow が独自に解析した睡眠の質のスコア、内側の白い円は目標睡眠時間に対する実際の睡眠時間です。それぞれ100%のうち何%だったかを表しています。

メイン画面の下側に睡眠図(睡眠サイクル)があります。ここをタップすると上図中央の画面に移行し詳細を見ることができます。睡眠時間や各睡眠ステージ(覚醒、レム睡眠、浅い睡眠、深い睡眠)の占有率などが表示されています。

この記事では各睡眠ステージの定義や説明は省略させていただきます。質の良い(疲労を回復する)睡眠は「深い睡眠ステージ」です。後ほどレビューにて解説します。

起床後の気分やメモの入力は任意です。私は使いませんでした。

画面上部の「心拍」をタップすると、睡眠サイクルに心拍数が重ねて表示されます。睡眠中の最大・最小・平均心拍数や、各ステージでの平均心拍数を確認することができます。

iPhone を横にすると、週別や月別の集計データも見ることができます。しかし私は見ませんでした。睡眠時間の合計ではなく、睡眠サイクルから睡眠の質をチェックするからです。ポイントは後ほどレビューにて解説します。

Pillow が定義する睡眠の質

睡眠の質について、このアプリには独自の定義があります。

Pillow では睡眠中の腕の動きや心拍数、睡眠中のノイズ(音声)も考慮して総合的に質を計算し、100%満点でスコア表示します。これ以上詳しいことはわかりません。この値は基本的に25%~90%であり、この範囲の外に出ることは相当レアとのことです。

そして一般的な成人にとって、4つの睡眠ステージに理想的な割合があります。 Pillow ではこのように定義しています。

  • 覚醒: 5%
  • レム睡眠(REM): 25%
  • 浅い睡眠: 35%
  • 深い睡眠: 35%

上記の各パーセンテージはバランスよく睡眠ステージが推移したケースだと考えられます。なぜなら睡眠は約90分のサイクルがあるといわれているからです。

この後のレビューにて、実際に計測した各睡眠ステージの占有率と上記の推奨値を比較します。

外部リンク:How does pillow calculate sleep quality? – Pillow Support & Feedback Center (睡眠の質についてのアプリ制作側による解説)

睡眠グラフを画像でシェアできる

睡眠図画面共有

他の睡眠記録アプリと同じように、 Pillow でも睡眠図と解析結果をスクリーンショットで共有できます。

個人間で睡眠図をシェアすることはまれでしょう。しかし将来的に医師がアプリの睡眠データを不眠治療に活かすなどしてくれれば、この機能は必須となるでしょう。

Apple Watch 上でも睡眠グラフが見られる

Apple Watch上で睡眠サイクルを見る

Pillow はApple Watch 上でも睡眠波形を確認できます。毎回 iPhone でデータを確認するのが面倒な人には便利でしょう。

上図の左は睡眠サイクルの表示、右は睡眠中の心拍数の推移です。

Watchアプリとヘルスケアアプリの連携

Pillow は Apple Watch と iPhone の両方で連携が必要です。上図の左にあるような Watch アプリとの連携、そして上図中央と右にあるようにヘルスケアアプリとの連携(睡眠解析)をしました。

レビュー: Pillow vs Fitbit で睡眠図を比較

私が「睡眠サイクルと睡眠の質の関係」を調べたのは Fitbit のデバイスが最初でした。睡眠図と起床後の眠気を比較した結果、 Fitbit の睡眠サイクルは参考になることを確認しました。

Pillow でも同じような睡眠波形がとれるのか、データをとって比較してみましょう。また睡眠の質を見るポイントが Pillow でも当てはまるかレビューします。

データの取り方

Apple WatchとFitbitで睡眠データを同時測定

できるだけ同じ条件で波形が取れたかどうかを確認するため、片方の腕には Fitbit 、もう片方の腕には Apple Watch を装着していつものように就寝しました。

Fitbit も Apple Watch も睡眠の計測には「腕の動きと心拍数」を使用しています。そのため計測条件を合わせれば、あとはソフト(解析アルゴリズム)の違いによって睡眠サイクルの違いが表れるはずです。

片腕に2つのデバイスを装着して計測したかったのですが、心拍数のデータに誤差が発生する恐れがありました。そのため手首の同じ位置にデバイスが来るように、左右の腕の違いだけを残す計測方法にしました。ウォッチとトラッカー、どちらの腕につけても性能は同じはずです(ただし装着する腕の設定は事前に確認しました)。

アプリで自動計測をONにする

Pillow アプリは上の図にあるように「自動モード」を ON にする必要があります。一度設定したら、1日1回を目安に Apple Watch と接続してデータ収集と日々の睡眠解析を行いました。

以上で Fitbit と完全に同じ条件とはいわないまでも、波形が比較できる状態になりました。

この状態で数週間生活し、データがとれました。その中から代表的な波形でレビューします。

比較結果:睡眠ステージに不一致がある

睡眠サイクルの比較

上のグラフはFitbit と Pillow による同じ日の睡眠図です。 Pillow の波形はグレースケールにして、その上に Fitbit の睡眠図を重ね合わせました(上図右下)。

ぱっとみたところ、睡眠ステージの不一致がありますね。赤い点線で3か所丸をつけました。左の丸印から順にこのような違いが出ました。

  • 左: Fitbit では「深い睡眠」だが、 Pillow では「レム睡眠」
  • 中央: Fitbit では「レム睡眠」と「覚醒」の2つの山があるが、 Pillow では「深い睡眠」と「浅い睡眠」
  • 右: Fitbit では「浅い睡眠」と「深い睡眠」だが、 Pillow では「深い睡眠」と「レム睡眠」

これだけの違いはなぜ生じているのでしょうか?先にソフト的な違いだけだと仮定したのですが、ハードウェア的な要因とソフトウェア的な要因、両方とも考えられます。

  • ハードウェア的な違い: Apple Watch と Fitbit でデータの取れ方が違う(腕の動きや心拍数など)。もしくは右腕と左腕で違う動きをして誤差が出たのか?
  • ソフトウェア的な違い:データの解析方法(アルゴリズム)が違う

睡眠サイクルの不一致はこの1例だけでなく、他の日でも起きていました。

この記事ではどちらの睡眠図が正しいかは判定しません(私は医師ではないので)。ただしデバイスやアプリの違いでこれだけ睡眠サイクルも違いがはっきり出ることは承知の上でお使いください。

ちなみに、両デバイスで検知した就寝時刻と起床時刻には数分~数十分のずれがありました。このレビューでは Fitbit の波形を Pillow の時間軸に合わせました。

睡眠の質をチェックしたいがポイントを抑えられない

睡眠サイクルが異なりチェックできない

医師の書いた睡眠に関する本や私が Fitbit で計測した睡眠データから、睡眠の質をチェックするポイントは以下の3つに整理しました。1番が最も重要で、番号順に優先順位は下がります。

  1. 「覚醒」から「深い睡眠」に入るまでの時間は短いほど良い(30分以内が目安)
  2. 最初の深い睡眠は20分以上あることが望ましい
  3. 睡眠中の途中覚醒回数は少ない方が良い

上図の比較結果をご覧ください。Pillow の睡眠図で上記の3つの観点から睡眠の質をチェックするのは難しいです。

同じ日の睡眠サイクルなのですが、全く違う結果になっています。理由はすべて先ほどの「睡眠サイクルの不一致」が根本にあります。

最初のポイントは「覚醒から深い睡眠に入るまでの時間は短いほど良い」です。

Fitbit では「覚醒状態から最初の深い睡眠まで2時間」ですが、 Pillow では約20分でした。この日はよく眠れませんでした。 Fitbit の睡眠図ではそれを裏付けているのですが、 Pillow の睡眠サイクルでは問題なかったことになります。

上記のデータだけでなく、他の日も比較した結果「最初の深い睡眠に入るまでの時間のずれ」があることを確認しました。中には睡眠サイクルが一致する日もありましたが、残念ながらごく少数派でした。

各睡眠ステージの時間が見れない

睡眠の質をチェックするポイントの2つ目は「最初の深い睡眠は20分以上あることが望ましい」です。各ステージが何分だったかもっと細かく見る必要があります。

上の図に示す様に、 Fitbit では各ステージをタップしたりカーソルを合わせると何分だったか表示されます。上図の例は「深い睡眠」が37分30秒継続したあと、次の「浅い睡眠」に移行したことになります。

一方、 Pillow の睡眠図では各ステージが何分だったか知る方法がありません。 Fitbit のような時間表示もなければ、他のアプリにあるような時間軸の補助目盛もありません。

つまり、2番目のポイントを Pillow でチェックするには目測で大体何分という把握しかできません。しかしそれ以前に、睡眠サイクルが正しいかどうかもわからないことは既に説明しました。

最後のポイント「睡眠中の途中覚醒回数は少ない方が良い」も表示される睡眠サイクルが違うので参考になるかどうか不明です。このポイントは優先順位を低くしているのであまり気にしないでください。

以上、 Pillow アプリで睡眠の質を細かくチェックするのは難しい。 Fitbit を使ってきた私の意見です。

関連記事:Fitbitのデバイスで「睡眠の質」をグラフから見分けるポイント(睡眠の質を徹底的に調査した原点)

各睡眠ステージの割合も Pillow の推奨値と実際は異なる

睡眠ステージの占有率の比較

先に紹介した「各睡眠ステージの占有率」も比較してみましょう。上の図は下記3つを棒グラフで比較しました。

  • Pillow が推奨する占有率(青)
  • Fitbit が解析した各睡眠ステージの占有率(赤)
  • Pillow が解析した各睡眠ステージの占有率(緑)

Fitbit, Pillow のどちらも推奨値とは違う傾向になりました。比較の結果このようになりました。

  • 覚醒: 推奨値は5%、しかし実際には10%以上(多い)
  • レム睡眠(REM): 推奨値は25%、しかし実際には25%未満(少ない)
  • 浅い睡眠: 推奨値は35%、しかし実際には35%以上(多い)
  • 深い睡眠: 推奨値は35%、しかし実際には35%未満(少ない)

この日はよく眠れたと感じました。しかし各睡眠ステージの占有率は一致しません。 Fitbit を使用して1年以上、私の睡眠データは基本的に上記の傾向となっています。

したがって、 Pillow が推奨する睡眠ステージの占有率は私には当てはまりません。 Fitbit のように世代別・性別で各ステージの割合に幅があることを示した方が良いのではないでしょうか。

Pillow アプリをお使いの際には占有率(と睡眠の質のスコア)も注意してご確認ください。

Pillowアプリの睡眠以外の機能レビュー

睡眠解析以外の残りの機能についてもレビューします。こちらも辛口レビューとなっている点にご注意ください。

有料版でしか過去の睡眠記録を見返せない

無料版では過去のデータを見れない

Pillow はアプリ内課金があります。起床した日の睡眠データは無料で見ることができます。しかし睡眠図をスワイプして過去のデータを見るにはプレミアム機能に課金しないといけません。

今回のレビューにて私はプレミアム機能を利用しました。しかし料金体系に疑問があります。

上のスクリーンショットではサブスクリプションのような料金体系になっています。しかし私の iPhone の記録では600円を支払っただけです。上の図にはどこにも600円という表記はありません。サブスクリプションではなく買い切りをしたかもしれません。また購入したプロセスもハッキリ覚えていません。

ここまでレビューをした限り、課金してまで利用推奨できるアプリではありません。申し訳ございませんが、他のアプリ、例えば Vitalbook (Sleep Meister) の睡眠図の方が参考になります。

睡眠記録をCSVデータ化できるが

CSVデータ出力

Pillow は他のアプリと異なり、睡眠図のスクリーンショット共有だけでなく睡眠データをテキスト(CSV)形式でエクスポートすることができます。最初この機能を見つけた時は「データを吸い上げて解析したい!」と考えていました。

実際にエクスポートしたデータは、各ステージ(覚醒、レム睡眠、浅い睡眠、深い睡眠)が何分あったか、占有時間が集計済みのデータでした。

何時から何時までがどのステージだったか、という時系列の生データが正直ほしかったです。生データがあれば自分でも解析ソフトを作って検証できたのですが。

AI学習機能もあるが

AI学習機能

Pillow には AI 機能があります。日々の睡眠データを蓄積することで、さらに良い睡眠解析とアドバイスが提供できるとのことです。

AI を使ってデータを解析して改善案を提供できるのは素晴らしいことです。ただし同時に疑問も2つあります。

まず、日々の睡眠データをさらに収集してAIに学習させなくても、アドバイスはできるのではないでしょうか?

アプリをリリースしてから今日までに、すでに膨大な量の睡眠データ(ビッグデータ)が蓄積されているはずです。そのビッグデータから一般的な睡眠の傾向を割り出し、各個人の日々の睡眠データがどのパターンに当てはまるのか?アドバイスができるはずです。ここから更にデータを収集して学習させる必要性は本当にあるのでしょうか。

もう1つ疑問があります。具体的にAIがどのデータをどうやって解析しているのかがわからず、具体的なアドバイス(洞察)が本当にあるのかわかりません。

Pillow を1か月以上使ってきて、睡眠のアドバイスを受けたことがありません。またどのような時にアドバイスをもらえるのか、どれだけアプリを操作してもわかりませんでした。

この記事で紹介した、睡眠サイクルから睡眠の質のチェック方法を理解していればアプリのアドバイスは不要でしょう。そのためこのAI機能がどれだけ活躍するのかが未知数です。アイデアとしては面白いのですが。

まとめ

かなり厳しい評価をしてしまいました。しかし睡眠は人の健康に影響を与える重要な生活の一部です。そのためきちんとしたデータ解析をして欲しかったので辛口レビューになりました。

iPhone ではほかにも睡眠アプリがあるため、引き続きレビューをやりたいと思います。お役に立てれば幸いです。

この記事をまとめましょう。

  • Fitbit の睡眠サイクルと Pillow の睡眠サイクルにいくつも不一致な部分があった。睡眠の質をチェックするポイントがうまく適用できなかった。また睡眠図と自分の感覚(よく眠れたか)にもずれが生じた。
  • 各睡眠ステージ(覚醒、レム睡眠、浅い睡眠、深い睡眠)の割合にも推奨値はあるが、実際の私の睡眠データとは一致しなかった。推奨値は固定値ではなく、世代別・性別による幅(5%~20%など)を持たせた方が判断しやすい。
  • CSVデータ出力やAI機能もあるようだが、使いこなせない。画面のスクリーンショット共有は医師の協力状況によって必要な機能である。
  • 過去データは有料のプレミアムサービス(アプリ内課金)でないと使用できない。ここまでのレビューの結果から、有料版を推奨することはできない。
自動睡眠トラッカーPIllow

自動睡眠トラッカーPillow

Neybox Digital Ltd.無料posted withアプリーチ

【まとめ】iPhone (Apple Watch) 睡眠管理アプリレビュー【比較】ページに戻る

※このレビューは2019年6月から7月にかけて行いました。最新アプリではこの記事で書かれた内容と相違があるかもしれません。

※良い睡眠がとれたかどうかは必ずご自身の体調や起床後の気分などでご確認ください。アプリの表示は計測結果を保証するものではありません。