Huawei Band vs Fitbit「睡眠の質」表示比較レビュー
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このシリーズの目的は、日々の睡眠状況をしっかり把握し、より良い生活ができるようにサポートすることです。そのためにスマートウォッチやアクティビティトラッカー(活動量計)の睡眠計測・管理機能を辛口でレビューしています。
この記事は中国メーカーである Huawei (華為、ファーウェイ)製のアクティビティトラッカーである Band 6, Band Pro 4 の睡眠機能をレビューします。
同社製の格安モデル Honor Band 5 はすでにレビューしました。 GPS 付きの Band シリーズの睡眠計測機能はどうでしょうか?
結論は、おすすめはできません。 Band 6 は良い睡眠と悪い睡眠の区別ができませんでした。 Band Pro 4 は深い睡眠の検出が不安定で、約 50 %で結果を受け入れることができます。
Huawei Health アプリ睡眠管理機能を解説
Huawei Health というアプリで管理します。 Honor Band と同じアプリです。睡眠関連の機能について簡単に整理します。
基本画面はiPhoneとAndroidで異なる
iPhone 版と Android 版で表示が一部異なります。上図にて両方紹介します。
メイン画面では下記に示す項目が表示されます。
- 睡眠時間 (iPhone 版は表示なし)
- 睡眠サイクルと睡眠ステージ(凡例)
- 睡眠スコア
- アドバイス
アドバイスについては使用していません。参考程度にお使いください。
睡眠サイクル(睡眠図)の表示が iPhone 版は棒グラフ、 Android 版は折れ線グラフです。どうして違うのかはわかりません。どちらのグラフも睡眠状態の中身に違いはなく、あくまでも表示方法が違います。
睡眠ステージは下記の 4 種類です。他社製品と同じです。
- 目が覚めた状態(中途覚醒)
- レム睡眠 (REM)
- 浅い(ノンレム)睡眠
- 深い(ノンレム)睡眠
睡眠スコアはその日の睡眠が良かったかどうかを 100 点満点で表した数値です。計算方法が分からないためこのレビューでは使用しません。
解説があり専門知識が学べる
先ほどのメイン画面から下にスクロール(上にスワイプ)すると詳細データを見ることができます。
上図の上には「睡眠ステージの割合」が表示されます。深い睡眠、浅い睡眠、レム睡眠には一定の割合があります。ただこのレビューでは使用しません。
そのほか下記に示す項目も一覧表示されます。
- 合計睡眠時間
- 深い睡眠の割合
- 浅い睡眠の割合
- レム睡眠の割合
- 深い睡眠の連続性(点数、計算根拠不明)
- 目が覚めた回数
- 呼吸の質(呼吸の規則性のチェック、解説あり)
- 昼寝の時間 (iPhone 版アプリのみ)
上記の各項目には解説があります。タップすると上図左のような解説画面に切り替わります。
難しいので無理して読む必要はありません。より良い睡眠をとるための予備知識として読んでおいて損はないでしょう。
睡眠図のシェア機能で将来的に睡眠の改善を
睡眠図はシェアすることができます。
上図に示す様にレシートのような縦長の画像で睡眠サイクルと各睡眠データを共有することができます。
将来的に医師から睡眠のアドバイスを受けたり、不眠症の改善をする際に必要な機能です。
ただしこの記事の執筆時点では Android 版のみです。 iPhone 版にはシェアボタンがありません。
グラフをタップして睡眠サイクルの詳細を分析できる
睡眠サイクルのどのタイミングでどの睡眠ステージだったかをアプリ上で確認することができます。
iPhone 版では上図左に示す様にグラフをタップします。 Android 版はグラフ下の丸ボタンを左右にスライドさせることで詳細がわかります。
上の図はどちらも下記の内容を表示しています。
- 0:47 – 1:13 (26 分間)
- 深い睡眠ステージだった
この機能を使って細かく睡眠状態を分析します。
過去の睡眠履歴と平均値集計
日々の睡眠だけでなく、過去の履歴など一定期間の睡眠データも集計できます。
上図に示すように日/週/月/年で表示を切り替えることができます。表示を切り替えることで平均睡眠時間などのデータも週別や月別で再集計してくれます。
上図は iPhone 版の画面ですが Android 版にも同じ機能があります。
レビュー方法
データの取り方や設定をここで整理します。結果だけ知りたい人はここを飛ばしてください。
データの取り方
睡眠の質を比較するための判断基準は Fitbit のデータです。過去の経験上、起床後の身体の感覚(すっきりしているか、眠気が残っているか)と睡眠図に最も関連性を見いだせているのが Fitbit だからです。
左腕に Huawei Band, 右腕に Fitbit を装着していつも通り就寝しました。この記事の冒頭で紹介した写真の状態です。右腕/左腕の装着設定は確認済みです。
※ Huawei Band には装着する腕の設定はありません。 Fitbit 側だけ設定を確認しました。
起床後アプリでデータを収集し、両デバイスの波形を比較しました。その結果を解説します。
Band 6 は 14 日間、 Band Pro 4 は 3 週間分 (21 日分)データ収集しました。
睡眠の質を評価するポイント
医師が書いた睡眠に関する本や私が Fitbit で計測した睡眠データから、睡眠の質をチェックするポイントは以下の 3 つに整理しました。
- 「覚醒」から「最初の深い睡眠」に入るまでの時間は短いほど良い (30 分以内が目安)
- 最初の深い睡眠は 20 分間以上あることが望ましい
- 睡眠中の途中覚醒回数は少ない方が良い
1 番が最も重要で、番号順に優先順位は下がります。各項目の詳細と根拠については下記の補足説明をご覧ください。
TruSleepを有効にして睡眠データを分析
睡眠データを詳しく解析するのであれば Huawei TruSleep を有効にする必要があります。
上図は iPhone 版アプリの設定方法です。下に Android 版アプリの設定方法を紹介します。
このレビューでは iPhone 版の波形を比較に使用します。
睡眠サイクルの表示方法は iPhone 版と Android 版で違いますが、分析内容に違いはありません。
心拍数を常時計測に設定変更
心拍数計測はリアルタイム(常時)とスマート(必要時のみ計測、節電できる)から選択できます。
このレビューではリアルタイムにセットしました。上図の方法で設定を変更しました。 iPhone/Android アプリ共通です。
これで Fitbit と計測条件は同じになります。
後ほど解説しますが、心拍数の異常検知をするのであれば常時計測をおすすめします。
Band 6 の睡眠サイクルの比較結果:4から改善していない
結論からいうと、おすすめできません。
Band 6 の睡眠サイクルは、よく眠れた日も眠れなかった日も似たような波形でした。
上図はよく眠れた日の睡眠サイクルの比較結果です。
Band 6 の波形をグレースケールにして、その上に Fitbit の波形を重ねています。就寝時刻と起床時刻が同じになるように横軸は調整しました。
Fitbit の方は寝落ち後すぐ深い睡眠に入り、 44 分間深い睡眠を継続しました。ガッツリ眠ることができました。
こういう日は目覚めがすっきりして気持ち良いです。
一方、 Band 6 の睡眠図も入眠後すぐ深い睡眠まで到達しました。
しかし深い睡眠が 7 分間しか継続せず、一度浅い睡眠になってから再度深い睡眠に入っています。
Band 6 の睡眠図だけみると良かったのか悪かったのか判断が下せません。
少なくともこの日は Fitbit の結果が体調と一致していました。
上図は睡眠の質が悪かった日の例です。
Fitbit は入眠後最初の深い睡眠まで 90 分以上かかっています。典型的な「眠れたけど目覚め後すっきりしない」睡眠サイクルです。
一方、 Band 6 は入眠から深い睡眠まで 13 分で到達、その後の深い睡眠が 11 分間継続していました。
先に紹介した良い睡眠がとれた例と傾向がほぼ同じです。
Band 6 は 14 日間の計測にて、睡眠が良くても悪くても似たような睡眠サイクルしか検出されませんでした。
Band Pro 4 のように睡眠の質がはっきり悪いと判断できる波形すら出ませんでした。
4 から改善していないどころか改悪しているといっても言い過ぎではないくらい、 6 の睡眠おすすめできません。
Band Pro 4 の睡眠サイクルの比較結果:50%ほど正確
深い睡眠の検出が悪く微妙なケースが多い
上図は代表的な睡眠サイクルの比較例です。
Band Pro 4 の波形をグレースケールにして、その上に Fitbit の波形を重ねています。就寝時刻と起床時刻が同じになるように横軸は調整しました。
上図を見ると、どちらの睡眠サイクルもハッキリ良くも悪くもありません。微妙な睡眠結果です。
先に紹介した 3 つのポイントで Band Pro 4 の波形を分析するとこうなります。
- 最初の深い睡眠まで 6 分 (30 分以内が良い) → 〇
- 最初の深い睡眠が 14 分間 (20 分間以上が良い) → △
- 中途覚醒 2 回 → △
- 睡眠の質の総合評価 → △ (ただし良い方)
ポイントは最初の深い睡眠です。
Band Pro 4 では 14 分間でしたが、 Fitbit ではわずか 6 分間でした。深い睡眠が出ないよりはましですが、しかし良い睡眠だと判断するには私の経験上 20 分間以上必要です。
21 日間計測して、 Band Pro 4 では 20 分以上の深い睡眠は冒頭部分で一度も出ませんでした。最初の深い睡眠は 10 分間以上あれば良い方です。
このような微妙な判断になるケースが多いです。同社製の Honor Band と同じです。
そのため、 Band Pro 4 の睡眠サイクルは 50 % 正しいくらいにお考え下さい。
良い睡眠だった例
上図は Fitbit, Band Pro 4 ともに良い睡眠だったと判断できる例です。
先ほどと同じように Band Pro 4 の波形をチェックポイントを使って評価してみましょう。
- 最初の深い睡眠まで 13 分 (30 分以内が良い) → 〇
- 最初の深い睡眠が 18 分間 (20 分間以上が良い) → △
- 中途覚醒 2 回 → △
- 睡眠の質の総合評価 → △ (ほぼ〇)
最初の深い睡眠が 18 分間なので、厳密には基準を満たしていません。しかし Band Pro 4 のクセで 20 分以上の深い睡眠が冒頭部分で出ることはまずありません。
Fitbit の方は最初の深い睡眠が 26 分間あり基準を満たしています。
大切なこと。それは入眠から短時間で深い睡眠に移行し、かつ最初の深い睡眠をしっかりとることです。
最初の深い睡眠で疲労が回復します。
そのため Band Pro 4 では最初の深い睡眠が 20 分間なくても良しとする基準が必要です。しかし先にも紹介した通り微妙な波形になるケースが多いです。
このような良い睡眠で一致した例は全 21 日間の計測のうちわずか 2 例だけでした。
悪い睡眠だった例
上図は睡眠の質が悪かった日の例です。起床後も疲れが残ったり、あくびが止まらなかったりする場合はこのような波形になります。
もう一度、 Band Pro 4 の波形を分析してみましょう。チェックポイントを使うとこのようになります。
- 最初の深い睡眠まで 17 分 (30 分以内が良い) → 〇
- 最初の深い睡眠が 2 分間 (20 分間以上が良い) → ×
- 中途覚醒 4 回 → ×
- 睡眠の質の総合評価 → △ (ほぼ×)
Band Pro 4 の波形では最初の深い睡眠に移行するまで 17 分です。一方 Fitbit では 2 時間以上かかっています。
質が悪い場合はたいていチェックポイント①を満たしません。上図の Fitbit の波形は典型的な「眠りが良くない例」です。
しかし Band Pro 4 でも疑問が残ります。最初の深い睡眠がわずか 2 分間しかありません。たった 2 分だと「たまたま深い睡眠が検出されたのでは?」とも解釈できてしまいます。
入眠から 2 番目の深い睡眠までは 53 分になります。そうすると基準の 30 分を超えて NG です。やはり質は悪いと判断できるでしょう。
Band Pro の波形の中盤に深い睡眠がまとめて出ています。途中から深い睡眠がでても、冒頭部分に出る時よりも目覚めのスッキリ感はありません。
繰り返しますが、波形の冒頭部分が重要です。このような質の悪い波形は比較的安定してとれました。
判定が不一致だった例
上図は不一致だった例です。
この例では Fitbit ではよく眠れたことになりますが、 Band Pro 4 では真逆の「質が悪い」という結果になります。
過去の経験上、 Fitbit の睡眠計測はかなり安定しています。そのため Band Pro 4 の表示がおかしいと判断せざるを得ません。
今回データをとった 21 日間のうち、一致した日は 8 日、不一致だった日も同じく 8 日、残りは微妙な判定結果でした。
このように、 Band Pro 4 の睡眠データの分析は難しいのです。
利用する際の注意点
レビュー中に気がついたことを整理します。こちらも Honor Band とほぼ同じです。
睡眠データの同期に時間がかかる
起床後、スマホの Bluetooth を ON にしてアプリを開きます。
その場合は上図に示す様に同期に時間がかかります。気になりますね。
iPhone/Android 共通です。読み込みに数分かかることもありますのでご注意ください。
スマホの Bluetooth を常時接続していれば読み込みはもっと早いかもしれません。
血液中の酸素飽和度 (SpO2) 機能は手動測定のみ
Honor Band と同じく、血液中の酸素濃度を計測することができます。専門用語で動脈血酸素飽和度 (SpO2) といいます。
SpO2 は手動で計測します。上図に示すように本体から SpO2 を選択し、数十秒~数分間かけて計測します。
SpO2 は心拍数よりも計測が難しいです。少しでも手首を動かすとやり直しになります。
日本呼吸器学会によると、 96 % 以上で正常、 90 % 以下の場合は呼吸不全の可能性があるということです。
アプリでデータ集計します。上図に示すように、計測した日時のスコアが画面上に表示されます。
日/週/月/年別の集計もできます。その場合は最小値と最大値も表示されます。
この記事の初回執筆時点にて、 SpO2 の機能は日本ではまだ使うことができません。
上図右は Android 版アプリのダッシュボード画面です。 SpO2 の画面があります。スマホの国設定はベルギー(居住国)です。
上図左は iPhone 版アプリのダッシュボード画面です。 SpO2 の画面がありません。スマホの国設定が日本だからでしょうか。
この場合、本体で SpO2 のデータをとってもスマホ上で表示されません。ご注意ください。
心拍数は常時計測すべき?健康管理目的ならYES
心拍数計測の設定は「リアルタイム」と「スマート」の 2 種類がありました。どちらにするのが良いでしょうか?
健康管理目的でお使いであれば「リアルタイム」がおすすめです。
安静にしているにもかかわらず、心拍数が上がる状態を「頻脈」といい不整脈が疑われます。この警告機能を ON にしておくことで頻脈を自動検知・通知してくれます。
ただし、心拍数が低い状態(徐脈)の検出機能はありませんでした。あくまでも心拍数が高い方だけ検出します。
心拍数の高い/低い両方検出できる他社製品もあります。
※ iPhone 版アプリは上側しか検出する機能がありませんでした。 Android 版は高低両方検出設定ができます。
睡眠データがとれない?3時間以上の睡眠が必要
Band Pro 4 で 3 週間睡眠データを計測しました。幸いデータがとれない日は一度もありませんでした。他の製品ではデータがとれない日もあります。
iPhone 版にだけ、上図に示すような注意書きがあります。もしデータがとれなかった時は下記の状態をチェックしてみましょう。
- ベルトがゆるくて本体が固定されていなかった(その結果、データがちゃんととれなかった)
- 睡眠時間が 3 時間未満
眠れない日が続くときは医師に相談しましょう。
まとめ
Honor Band と同じ結論です。 Android 版アプリが iPhone 版より使いやすく、データの取れ方も同じでした。
Huawei Band には GPS があります。スポーツやアクティビティと位置情報を連携させることができます。スマートウォッチとして使う分には全く問題ありません。
この記事をまとめましょう。
- 日々の睡眠データの分析機能だけでなく、アドバイスや解説機能も充実している。
- Band 6 はよく眠れた日もそうでない日も睡眠図の冒頭に深い睡眠が検出され、睡眠の質を判断できなかった。
- Band Pro 4 は睡眠分析はできるが 50 % の確率で受け入れよう。日によっては「質が良かった/悪かった」が逆の判定になることもある。
- 設定は TruSleep を ON, 心拍数計測を「リアルタイム」にしよう。常時心拍数を計測することで安静時の異常も通知してくれる。
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※このレビューは 2020 年 6 月、 2021 年 11 月に行いました。最新ソフトではこの記事で書かれた内容と相違があるかもしれません。
※良い睡眠がとれたかどうかは必ずご自身の体調や起床後の気分などでご確認ください。アプリの表示は計測結果を保証するものではありません。