Apple Watchで心電図を測り使い方と注意点を整理した

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Apple Watch基本画面

私は心臓が止まりました。しかし病院で検査をしても心臓はどこも悪くありませんでした。

自分の身体に何が起きたのか知りたい。そこで Fitbit の活動量計(アクティビティトラッカー)で睡眠の質を調べて生活習慣を改善しました。

次第に睡眠解析だけでは満足できなくなってきたところに、 Apple Watch で心電図が測れるようになるというニュースが入ってきました。そして私が住んでいるベルギー(この記事の執筆時点)でも対応が始まっていることがわかりました。

この記事ではスマートウォッチである Apple Watch を使った心電図 (Electrocardiogram, ECG, EKG) の機能について解説します。実際に装着して自分のデータを集めた結果から解説していきます。

できること1:不整脈を検出して通知してくれる

心拍数を常時計測して異変があると通知

異変を通知

Apple Watch は他のアクティビティトラッカーと同じように、装着中は心拍数を常時計測します。ただ他の製品と違うのは、心拍数に異変があった場合、 Apple Watch が画面通知してくれることです。

Apple Watch のおかげで命が助かったというニュースが海外から日本に入ってきています。ニュースによると、この通知機能のおかげで異変に気付けて病院で早期対応ができたからです。

具体的には以下の症状について通知してくれます。

  • 高心拍数:安静状態のはずなのに心拍数が10分間ある値を超えている(デフォルトは120拍/分、アプリで設定変更可能)
  • 低心拍数:心拍数が10分間ある値を下回っている(デフォルトは40拍/分、アプリで設定変更可能)
  • 不規則なリズム(心房細動):脈が一定ではない状態、 Wikipedia による「RR間隔の不整」

外部リンク:心房細動 – Wikipedia

通知機能のおかげで助かる人がいる

Apple Watch で人の命を救ったニュースのうち、直近の1例を紹介します。

30歳のイギリス人男性です。ある日のマラソン練習中に突然動悸を感じました。この男性はイギリスでも解禁になった心電図機能付きの Apple Watch を発売直後に購入していました。練習中も装着していたため画面を見たところ、上記で解説した「心房細動」の通知があったそうです。

マラソン大会は10日後だったのですが参加をやめて病院に行きました。そして2か月半にわたる検査の結果、心臓弁の修復手術(心臓切開による)が必要なことがわかりました。手術日は2019年7月3日、この記事の公開後の予定です。

この男性は医師や看護師のサポートに感謝していることを掲示板に投稿しています。またアップルのティム・クックCEOにメールで感謝を伝えたところ、ご本人から返事をもらえました。下記のリンクに実際のやり取り(英語)があります。

外部リンク:My Apple Watch saved my life. : apple | reddit (イギリス人男性本人による英語の投稿)

このように、不安のある人(特に高齢者など)は常時 Apple Watch を装着しておくことで、いざという時にすぐ対応ができます。これがメリットです。

心拍数の状態や通知された記録などは iPhone の「ヘルスケアアプリ」で管理することができます(ヘルスケアの画面は後ほど使い方の項目で紹介します)。

私は Apple Watch を装着してから2週間以上、まだ通知はなく異変はなさそうです。

通知機能の設定確認方法

通知設定の確認

Apple Watch に Bluetooth 接続した状態で Watch アプリを開きます。起動後の画面からアプリ一覧の「心臓」をタップします。すると「心臓の健康」という画面が表示されます。この画面内に「不規則な心拍リズム」のスイッチがあります。

このスイッチが緑の状態(白い丸が右にある)であれば通知機能はONです。

また高心拍数/低心拍数の検出値(しきい値)は通知 ON/OFF の下に設定項目があります。

常時接続だとこまめな充電が必要

デメリットはバッテリーです。他のアクティビティトラッカーほど Apple Watch はバッテリーが長持ちしません。

iPhone と Apple Watch を常時接続 (Bluetooth) している場合、1日1回は充電が必要です。そして充電中の約2時間は心拍数を計測できないのでご注意ください。

Apple Watch を機内モードにしておくとバッテリーは約2日間持ちます。機内モードするとiPhone と連携はできませんが心拍数は計測できます。

他の Apple Watch アプリ(着信や株価など)を使わないのであればこういう使い方ができます。普段は機内モードとして使い、ときどき Bluetooth で iPhone に接続してデータを集める。そうすればバッテリーを節約しつつ長時間使用できます。

アメリカでは Apple Watch と医師の連携が進んでいる

Apple Watch のこの新機能の活用について、アメリカはやはり進んでいます。ある調査結果の記事を紹介させていただきます。

調査の対象は40万人の Apple Watch ユーザー。そのうちの0.5%、2000人が心房細動の通知を受け取ったことがあると伝えています。しかしこの2000人のうち実際に病院に行ったのは57%でした。

この結果をうけて、ある医師は「通知機能だけでなく、通知後にユーザーが次の行動をとる気にさせる機能が必要」とメッセージを出しています。

せっかく機能があってもユーザー側が活用しないと手遅れになるかもしれない、と。そのため心房細動の通知をした際に「遠隔診察のアポイントをとるかどうか」アプリで確認したケースも調査内にはあります。

同記事によると、アメリカでは年間1万人以上が心房細動によって死亡しているとのことです。より良いサービスを提供するためにアメリカでは試行錯誤されています。

外部リンク:Study confirms that the Apple Watch saves lives – PhoneArena

できること2:測定した心電図波形をPDF化して医師に送れる

波形をPDF化して共有

心電図計測機能を使用した場合(このあと使い方を解説)、測定した心電図はPDFフォーマットに変換してシェアすることができます。

iPhone ヘルスケアアプリ (Watch アプリではない) の「心電図→心電図詳細」の画面内に「医師に渡すためにPDFを書き出す」というボタンがあります。このボタンをタップするとA4サイズ横向きのPDFが生成されます(上の画面中央)。

PDF の画面からさらに右上の共有ボタンをタップすると、共有可能なアプリの一覧が表示されます。あらかじめメールアプリ (Gmail を含む) をセットアップしておけば、波形のPDFを添付ファイルにして医師に送付することができます。

波形のPDF表示

たとえ医師に送付しなくても、生成したPDFファイルはスマホやPC画面で見ることができますし、印刷もできます。上の画面は Adobe Reader で波形ファイルを開いた状態です。

このPDFには氏名、生年月日、年齢、計測日時、平均心拍数と「メモリ付きのグラフ」が含まれます。氏名と生年月日はヘルスケアアプリの初期設定時に登録しましょう。

普段から医師と連絡を取りあえる状態にしておくことが必要ですが、いざというときに即行動を起こせるのは便利ですね。またこういう機能を医師側にもご理解いただき、積極的に導入していただきたいですね。

心電図計測アプリの使い方

すでに紹介した通知機能のおかげで、不整脈を検出することができます。しかし心電図にするには Apple Watch を装着しただけではダメで、アプリを起動して別途計測が必要です。

そのため1日のうち何度か測定のために時間を確保する必要があります。1回の測定時間は30秒なので時間はかかりません。気軽に測定することができます。

では実際に心電図を時計側のアプリで計測してみましょう。Apple Watch のアクティベーションが完了し、アプリが使える状態を想定しています。

準備:装着の向きとアプリの設定を合わせよう

Apple Watch の装着向きとアプリ側の設定が一致しているか、計測を始める前に必ず確認してください。

具体的にはこの2つの設定があります。

  • Apple Watch を装着している手首(左手?右手?)
  • Digital Crown (デジタル王冠、リューズのこと)の向き(右側?左側?)

そしてこの設定の確認方法も2通りあります。 Apple Watch 側で確認する方法、 iPhone の Watch アプリ(ヘルスケアではない)で確認する方法です。それぞれ下の図のようになっています。

時計本体で装着向き設定
Apple Watch 上で装着向き設定を確認
アプリで時計の装着向き設定
iPhone の Watch アプリで装着向き設定を確認(要 Bluetooth 接続)

この記事の写真はすべて「左手に装着、右に Digital Crown 」という設定で解説します。

設定を一致させることには理由があります。専門的な話なのでポイントだけ説明します。

Apple Watch の装着向きが変わると、心電図の電気信号の向き(上下)も変わります。装着向きの設定は電池のプラスとマイナスの設定のようなものです。

私は電気技術者なので、専門的に言うと「極性が違う」といいます。プラスとマイナスを逆にすると、波形も上下さかさまになったり、最悪機器が故障します。

Apple Watch はとても微弱な電気を扱うため設定が違っていても故障はしません。しかし心電図には正しい向きがあるので、装着設定が違うと上記の理由で正しい計測や解析ができなくなります。ご注意ください。

アプリを起動して測定

心電図アプリの起動方法

まず Apple Watch で心電図アプリを立ち上げます。上の写真のマークのアプリです。心電図の計測自体に iPhone は不要です。 Apple Watch を正しく装着してください。

測定準備状態

アプリを起動すると赤い点でできたハートマークが出てきます。この状態で、 Apple Watch を装着していない方の手の指で Digital Crown (リューズ)にタッチします。指の腹の部分でリューズがクリックしない程度の強めの接触が必要です。

計測中

Apple Watch がリューズのタッチを感知すると計測が始まります。

測定は 30 秒間なので、この間は安静にしてください。微弱な電気を扱うため、少しでも腕を動かすと波形が乱れて判定ができません。机に腕を置いた状態などで計測することをお勧めします。

測定が終わると判定がでます。判定種別についてはこのあと解説します。もし気になる症状があれば記録に追記ができます。

判定画面を閉じると赤い点のハートマークの画面に戻ります。再度計測する場合は再びリューズにタッチします。メイン画面に戻るにはリューズをクリックします。

判定は4パターン

異常がない場合の画面表示

アプリは測定した波形を解析して以下の4つに「判定」します。

  • 洞調律:心臓が正しいリズムで動いている状態、また電気的興奮が正しく心臓全体に伝わっている状態
  • 心房細動:鼓動が不規則なリズムになっている状態。通知対象になっている
  • 低心拍数または高心拍数:設定値よりも高い、または低い心拍数の状態。通知対象になっている(設定値の確認や変更は「通知機能の設定確認方法」を参照)
  • 判定不能:波形が乱れていて解析しても判定できなかった

洞調律は難しい表現ですが4つの判定結果の中では「異常なし」とみなせる波形解析結果です。

「診断」ではなく「判定」であることに注意してください。診断するのはあくまでも医師です。 Apple Watch はあくまでもサポートです。

この記事の最後に補足しますが、 Apple Watch の心電図は「波形の間隔」は解析しても「波形の形状」は解析できません。そのためチェックできる項目は限られています。

ヘルスケアアプリで波形を管理

アプリで波形のチェック

測定データの詳細はヘルスケアアプリで確認できます。 iPhone と Apple Watch を Bluetooth で接続して測定データを収集しましょう。 iPhone はさらにクラウド (iCloud) にデータを保存します。

心電図に限らず、すべてのデータは日付ごとに整理されています(上図の左)。私は心電図を「よく使う項目」にして画面トップに表示する設定にしています。

見たい波形を時系列で探して(上図の中央)タップすると詳細画面に移動します(上図の右)。

波形の詳細画面にはすでに紹介した「PDF を書き出す」ボタンがあります。詳細グラフを指で左右にスライドすると、測定した30秒間のすべての波形を確認することができます。

波形の下に書かれている「平均BPM」は平均心拍数のことです。 BPM は単位のことで拍/分 (Beat Per Minute) です。

Apple Watch の心電図機能の注意点

ここまでは使い方について解説してきました。この記事の残りは Apple Watch でこの機能を使う際の注意点について整理します。大変便利なものですが、まだまだ制約もあります。

すべての心臓病を見つけることはできない

波形のチェックポイント

心電図は大きく分けてこの2つから病気かどうか判断します。

  • 波形の「間隔」から判断:心房細動(不整脈)
  • 波形の「形状」から判断:狭心症、心筋梗塞、心室細動など

この2つのうち、 Apple Watch が計測・解析するのは前者「波形の間隔」つまり脈です。

しかし心電図で波形の「形状」を観測することで、もっと多くの病気を調べることができます。

残念ながら、現モデル (Apple Watch Series 4) ではすべてに対応していません。技術的な課題もあれば、計測方法にも限界があります(補足を参照のこと)。

「心電図をPDFに書き出す」機能があるのはそのためでしょう。あくまでも診断するのは医師です。私も専門家ではないのでこれ以上の解説はできません。詳しくは参考文献をご覧ください。

アプリで計測中「心臓発作の兆候をチェックすることはできません」と画面表示されます。このような表示が出るのは上記の理由からです。

少しブレるだけでも測定できない

判定不能時の画面表示

私は1日4~5回心電図を計測しています。しかし判定不能になることも多く、1回で安定した測定ができないこともあります。

おさえている指を少し動かしたり、呼吸が少し強くなっただけで波形がブレます。また外出先での測定もなかなかうまくいきません。安静状態ではないからでしょうか。

どうしてこれだけ不安定なのでしょうか?それは「とても微弱な電気を扱っている」からです。

心電図の計測で検知する電気信号は、スマートフォンのUSB充電で使われる電圧 (5V) の 5,000 分の1 (1 mV) です。電気ノイズと区別がつきにくいレベルの信号を計測しています。 Apple Watch はかなり精密なつくりをしていることがわかります。

判定が難しい波形

病院にある装置はこの微弱な電気信号を精密に測定できるように作られています。しかしそれでも、異常な波形なのか、測定に問題があったのか判断が難しいグラフになることもあるようです(専門用語でアーチファクトといいます)。

こういうことからも、 Apple Watch の測定を過信してはいけないことがわかります。

外部リンク:アーチファクト | ハート先生の心電図教室

アクティベーションにSIMカードが必要

この記事の執筆時点にて、不規則リズムの通知機能や心電図機能は日本で対応していません。そのため日本で購入しても使うことができません。

私は Apple Watch も iPhone もベルギーでセットアップしたので使うことができました。

Apple Watch のセットアップでは SIM カードが求められました(写真を撮り忘れました)。 WiFi 接続だけではセットアップが先に進みませんでした。言葉は日本語でも問題ないのですが、アクティベーションの場所を SIM カードでチェックしているかもしれません。

そのためこの機能を使いたいのであれば、対応している国で Apple Watch を購入し、かつ日本に戻る前にアクティベーションをする必要があるようです。日本で購入して、対応している外国でアクティベーションして使えるかどうかはわかりません。

下記のリンクにて、対応している国一覧の公式情報を見ることができます。

外部リンク:watchOS – Feature Availability – Apple (英語による不規則リズム通知や心電図機能に対応している国の一覧)

補足: Apple Watch で心電図を計測するしくみ

波形計測方法の比較

Apple Watch で心電図を計測する仕組みについて補足します。病院で行う測定と比較して解説します。

Apple Watch はあくまでも簡易検査です。そのための計測結果を過信せず結論を出さないでください。必ず医師に相談し、必要であれば病院で精密検査を受診してください。

健康診断や人間ドックで心電図検査を受診したことがあれば、体に吸盤のようなものを付けられた記憶はありませんか?私は何度も経験があります。

この吸盤を付けて計測する方法を 12 誘導といいます。電極を腕と足、胸部に付けることで、心臓の活動をたくさんの角度から電気信号として捉えます。この方がより細かい診断が可能だからです。

一方、 Apple Watch の計測方法はⅠ誘導(ローマ数字の1)といいます。病院の検査とは異なり吸盤のような電極はありません。片腕に Apple Watch を装着し、反対の手の指で時計のリューズに触るので電極は2つしかありません。

Ⅰ誘導は12誘導とは異なり1方向の心臓の動きしか見ることができません。だから簡易検査なのです。

電気的な専門性でいえば、電極は2つあれば電気信号を計測できます。電気信号はプラス極とマイナス極の間の電気の流れをみるからです。

その意味では、 Apple Watch はミニマムな生体電気信号計測機器でもあるのです。不安を抱えている人であれば簡易検査でも必要であることに変わりはないでしょう。

まとめ

電気技術者の目線で解説させていただきました。今回 Apple Watch を通じて私の身体に異変は見つかりませんでした。ただし今後さらに技術が発展すればもっと便利な機能も出てくるでしょう。

しかし医療機器というハードルもあるので、法律面の整備や医師の理解と協力が求められます。私自身心臓が止まった身として、より多くの人の命が助かるように改善されていくことを切に願います。

この記事をまとめましょう。

  • Apple Watch は常時心拍数を計測するそのため、不整脈を検知したら通知してくれる。
  • 計測した心電図はPDF化してシェアができる。いざという時の早期対応が期待できる。
  • 微弱な電気信号を扱っているため、測定できないこともある。安静な状態で計測すること。
  • Apple Watch の心電図は波形の「間隔」を解析している。波形の「形」も考慮するとさらに多くの検査ができるが、現行モデルではそこまで対応していない。
  • Apple Watch は計測のしくみ上あくまでも簡易検査である。過信せずに病院での精密検査も受診しよう。

参考文献

池田隆徳, 新星出版社, 2019
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※この記事の内容は2019年6月時点での情報です。記事の執筆時点でベルギー在住の筆者が測定したデータに基づきます。ご不明な点は医療機関等にお問い合わせください。