Polar H10心拍センサーで心電図も測れたのでレビューした

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Healthcheckモードで計測

Polar H10 はスポーツをする人向けに心拍数やアクティブティの記録ができるデバイスです。

私はベルギー在住で、心電図 (ECG) の測れるデバイスを探していたら H10 で計測可能なことを知りました。

日本では使えない機能かもしれませんが、どういう機能があるのかこの記事でレビューしました。

胸部に装着するだけで心拍数と心電図が計測できる

H10を胸部に装着した状態

このデバイスはお腹の上、肋骨の下部に装着します。

ボタン電池 (CR2025) が既に入っているので購入してすぐ装着することができます。電源ボタンはなくベルト側の操作は一切ありません。

H10のバッテリーと固定金具兼電極

購入時点ではデバイス本体とベルトは別々です。上の写真に示すように装着します。

金属部分は固定金具ではあるものの、同時に電極の役割を果たす重要なパーツです。破損しないように注意して取付/取り外しします。

H10チェストストラップ裏面

デバイスの装着後ベルトを裏返します。

電極の周囲だけ繊維ではなくゴムのようなコーティングがあります。この部分を湿らせた上で装着するように、とマニュアルに書かれていました。

私は最初の 1 回目だけ、水道水で少しだけ濡らしてタオルで水拭きしました。問題なく計測ができました。

ユーザー目線でレビュー

H10とEquineアプリののBluetoothペアリング

H10 で計測する心電図は Polar Equine というアプリを使用します。上図はデバイスをペアリングした状態です。

Polar アプリが複数あるため混乱すると思います。下記のように使い分けるようです。

  • Flow: ファームウェアのアップデート
  • Equine: この記事で紹介している心電図計測機能と計測結果のダウンロード
  • Beat: 心拍数とアクティビティ (+GPS) の同時記録

Polar Equine アプリは機能がシンプルです。どういうことができるかレビューします。

心電図をアプリ上で見れるが異常検知はできない

Polar Equineアプリのメイン画面

Equine アプリを起動し、ペアリングを終えてホーム画面に戻ります。すると "Healthcheck" モードか "Data Collection" モードを選択する画面になります。

この記事の冒頭で紹介した画面は Healthcheck モードです。リアルタイムで計測しています。

Data Collectionモードによる計測

上図は Data Collection モードです。

心電図波形が表示されるのは Healthcheck モードと同じです。ただ Data Collection モードでは計測結果の数値データを共有できます。

データ共有についてはのちほど開発者目線のレビューで詳しく解説します。

残念ながら、心電図波形のモニタリングはできても異常検出はできません。

あくまでもスマホアプリを起動している間に計測と記録をするだけです。ご注意ください。

通信規格は Bluetooth だけでなく ANT+ にも対応しています。スポーツジムに設置されている機器で ANT+ が対応していれば今後はスマートフォンなしで波形表示や解析ができるかもしれません。

加速度センサーで細かい身体の動きがわかる

加速度センサーのリアルタイム波形

Data Collection モードでは加速度センサーの波形も表示できます。 X/Y/Z の各軸の動きがそれぞれグラフに表示されます。

これこそまさにスポーツをやる人には良いのではないでしょうか。フォームのチェックで無駄な動きがあるかないかを数値的に、より科学的に解析ができそうです。

このデータも ANT+ 通信や数値データ出力が可能です。

心拍数は水泳中も計測できるが心電図は不可

私は H10 をベルギーで購入しましたが、日本語のマニュアルもありました。それにはしっかり「水泳を含む様々なトレーニングにお使い頂ける…」と書かれています。

防水仕様です。極端な話、装着したままトライアスロンも可能です。

ただし水泳時の心電図計測は不可です。微弱ながら電気が流れるため感電の恐れがあります。また海水だと塩分があるので故障しやすいリスクはあるかもしれません。

アプリはAndroid版のみ

Polar Equine アプリはこの記事の執筆時点で Android 版しかありません。

確認したところ、 iPhone 版はリリースされていませんでした。 iPhone ユーザーには不満かもしれません。

しかし納得できる理由もあります。開発者向けに開発環境と計測データを公開しているからです。

Polar H10 は自由度の高い Android ならではのガジェットかもしれません。つづいて開発者目線でもレビューします。

開発者目線でレビュー

このデバイスの面白い点、それは計測した数値データをテキスト出力できることです。心拍数、心電図、加速度センサーの計測結果を入手できました。

どのようなことができそうなのか?開発者目線の内容をまとめました。

純正アプリで計測データが入手できる

Polar Equineアプリで計測データを共有

上図は純正アプリ Polar Equine の Data Collection モードの画面です。

この画面から「メニュー → SEND 」をタップすると、欲しいデータの選択画面が表示されます。デフォルトではすべて選択(心拍数, ECG, 加速度, GPS) になっています。このまま OK をタップしましょう。

あとは他のアプリと同じような共有ツール選択画面になります。

※ GPS についてはどのようなデータが取れるか未検証です。 Polar Beat アプリと連携するものと思われます。

Polar Equineで共有された計測データの内部テキスト

各ファイルは .txt 形式で出力されます。その中から心電図のファイルをテキストエディタで開いてみます。

ヘッダーが 6 行あり、 7 行目からが計測データです。計測データはスペース区切りで、左列のマイナスの値が計測値、右列は時系列カウンタでした。

Polar Equineで共有された計測値をエクセルでグラフ化

左列の数字だけを取り出してエクセルでグラフ化してみました。

実際にはマイナスだけでなくプラスの値もありました。あくまでも基準電位からプラスかマイナスか、というデータなんですね。

これだけ細かいデータが取れるのであれば自分で解析して何かできそうですね。法律的にどうなのかはわかりませんが。

SDKが公開されている

Polar SDK in Github

Polar の英語サイトで開発環境 (SDK) があることを確認しました。公式サイトには Github へのリンクがあるだけで簡単な説明しかありません。

開発言語は Python です。 SDK のインストールまでは確認していません。時間があればやってみたいのですが…。

この開発環境を使えばデータをとってきて解析する機能を自分で実装できるのでしょう。

外部リンク:Polar SDK | Polar Global

外部リンク:Polar Electro · GitHub

サードパーティ製アプリでデータ収集・解析も可能

ECGLoggerのメイン画面

上の画面は ECGLogger というサードパーティ製アプリです。

既に紹介した SDK を使って開発したのでしょうか。このアプリも Android 版しかありません。

機能は純正アプリとほぼ同じですが心電図に特化しています。

  • リアルタイム計測とモニタリング
  • CSV 形式による心電図の記録・再生・シェア
ECGLoggerで共有されたCSV計測データをフリーツールでグラフ化

取り出した CSV データはエクセルや統計ツールの R, その他のツールで自分で解析できます。例として、上図は plotly というフリーのウェブツールで心電図をグラフ化しました。

現状、他のスマートウォッチでも心電図機能は波形記録ができても細かい解析をしていません。チェックしているのは R-R 間隔という「波形のピーク値の間隔」です。これは心拍数計測で使っている機能のはずです。

現行の日本の法律でどこまでやっていいのかわかりません。ただ一方で、エンジニアの腕の見せ所ではないでしょうか。

将来的にもっと細かい解析ができるようになり、重い病気の検出がこのデバイスでできるようになるだけでも便利になるはずです。

まとめ

Polar H10のパッケージ

こういうガジェット(というかおもちゃ)、大好きです。

まだまだ改善点や課題はあるものの、将来的にはもっと便利なデバイスになる気がします。今後に期待しましょう。

この記事をまとめましょう。

  • H10 はボタン電池駆動。購入してすぐにアクティビティ記録が始められる。
  • 防水仕様で水泳もできるが心電図計測は感電の恐れがあるので不可。また海水での利用は注意した方がよい。
  • アプリは複数あるので注意。
    • Polar Flow: ファームウェアのアップデート機能
    • Polar Equine: この記事で紹介した心電図計測機能と計測結果のダウンロード機能
    • Polar Beat: 心拍数とアクティビティ (+GPS) の同時記録
  • 心電図はアプリでリアルタイム計測ができる。ただし異常検出はできない。
  • 開発者向けの SDK や計測データのダウンロード機能がある。将来的にさらに便利なアプリが生まれることを期待したい。

外部リンク:H10 User Manual Polar H10 Heart Rate Sensor (公式によるH10心電図機能の解説、英語)

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関連記事:【おすすめ】スマートウォッチの心電図機能をレビュー【比較】

※このレビューは 2020 年 3 月に行いました。最新版ではこの記事で書かれた内容と相違があるかもしれません。

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この記事のカテゴリ:体調管理とガジェットレビュー
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このブログを書いている人

ダイブツ
twitter: @habatakurikei
元々IT系だけど電気系技術者。20代で博士号を取得するも、全然社会の役に立てないのが不満でブログによる情報発信を開始。あなたに有益な知識やノウハウを理系目線かつ図解でわかりやすく解説するのがモットー。2018年心臓発作であわや過労死寸前。そこからガジェットレビューを通じた体調管理の情報発信も開始。ベルギー在住でシンガポール就労経験もあり、海外転職や海外生活のノウハウも公開中。

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