LUUNA vs Fitbit「睡眠の質」表示比較レビュー
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スマートウォッチで日々の睡眠の質をチェックできる。この習慣は新たなライフスタイルの一部になりました。
心拍数や睡眠中の寝返りなどからスマートウォッチは睡眠サイクルを分析します。しかし睡眠分析の出発点は「脳波」です。脳波計測には頭にセンサーを装着する必要があります。
この記事ではヘッドバンド型の睡眠計測デバイスである LUUNA を徹底レビューします。スマートアイマスクとも呼ばれています。
脳波で厳密な睡眠状態を計測し、 Fitbit の睡眠分析が正しいのか評価したいのが本音です。
結論は LUUNA をおすすめすることができません。頭にセンサーを着けて寝ることへの違和感がとれませんでした。詳しく解説します。
Innerpeaceアプリでできること
Innerpeace というアプリで睡眠データを管理します。このアプリの機能を解説をします。
睡眠管理の基本画面
上図は睡眠管理の基本画面です。
まず睡眠時間、就寝時刻、起床時刻、睡眠スコアが上に表示されます。
日時の表示が他の製品とは違います。他の製品の多くは「起床した日のデータ」として記録が表示されます。 Innerpeace では「就寝した日のデータ」として記録が表示されます。
例えば他の製品では 2 月 14 日に起床した時の睡眠データは 2/14 と表示されますが、 Innerpeace では 2/13 (就寝した時点)と表示されます。 Innerpeace は 1 日遅れた表示になりややこしいです。
睡眠スコアはやや厳しめの印象でした。
次に「総合評価」という項目があります。これはアドバイス機能であり、その日の睡眠がどうだったかコメントが表示されます。ただしコメントはパターン化しているので特にチェックしませんでした。
その下には「睡眠データ」があります。いわゆる睡眠サイクルです。
睡眠ステージは「覚醒」、「浅い(ノンレム睡眠)」、「深い(ノンレム睡眠)」の 3 ステージです。レム睡眠はありません。その下には各ステージの占有時間と割合が表示されています。
脳波を使った測定なのか、他の製品と異なり睡眠ステージがはっきり区切られていません。上図に示すようなカーブタイプのグラフはレビューが難しいです。実際、今回のレビューは苦戦しました。
画面を下にスクロール(上にスワイプ)すると、雑音レベルやいびきの録音結果が表示されます。
LUUNA にはマイクも搭載されているようで、睡眠時無呼吸症候群かどうかチェックできるものと思われます。今回のレビューではいびきは測定されませんでした。
一番下には睡眠を導入する音楽に何を使ったかが表示されます。デフォルトなのでアプリ標準搭載の音(田舎の夜間の屋外の音)を使用しました。
睡眠記録の画像保存と共有機能
睡眠の記録は画像として保存することができます。右上の共有ボタンをタップすることで上図右に示すような縦長の画像が保存されます。
この画像を共有することもできます。本来であれば医師から睡眠改善の指導を受けるための情報共有として使うことができます。
この記事の執筆時点にて、 LUUNA に限らず他の製品でも睡眠図の共有機能を使ったことはありません。
過去の記録の確認
過去の記録を振り返ることができます。睡眠データ画面から左上の履歴アイコンをタップします。
履歴画面には睡眠時間と睡眠スコアの一覧が表示されます。チェックしたい日の項目をタップすると睡眠サイクルを含む詳細画面が表示されます。
Innerpeace アプリでは週の平均睡眠時間といった過去のトレンドを確認することはできません。
レビュー方法
データの取り方や設定をここで整理します。結果だけ知りたい人はここを飛ばしてください。
データの取り方
睡眠の質を比較するための判断基準は Fitbit のデータです。過去の経験上、起床後の身体の感覚(すっきりしているか、眠気が残っているか)と睡眠図に最も関連性を見いだせているのが Fitbit だからです。
頭部に LUUNA, 左腕に Fitbit を装着していつも通り就寝しました。
起床後アプリでデータを収集し、両デバイスの波形を比較しました。その結果を解説します。
計 3 週間分 (21 日分)データ収集しました。
睡眠の質を評価するポイント
医師が書いた睡眠に関する本や私が Fitbit で計測した睡眠データから、睡眠の質をチェックするポイントは以下の 3 つに整理しました。
- 「覚醒」から「最初の深い睡眠」に入るまでの時間は短いほど良い (30 分以内が目安)
- 最初の深い睡眠は 20 分間以上あることが望ましい
- 睡眠中の途中覚醒回数は少ない方が良い
1 番が最も重要で、番号順に優先順位は下がります。各項目の詳細と根拠については下記の補足説明をご覧ください。
LUUNAの睡眠の計測方法
LUUNA は睡眠の開始(就寝)と終了(起床)の記録が手動です。これを忘れると睡眠の記録や分析が行われません。注意が必要です。
まずアプリと LUUNA 間の Bluetooth 接続を確立します。そして「睡眠モード」をタップすると睡眠の記録が始まります。
上図中央の画面の状態でスマホの画面をロックします。その間にアプリは LUUNA 本体からデータを収集します。
アラーム設定や入眠誘導音楽の設定は上図中央の画面でできます。音楽は変更せずデフォルト(田舎の夜間の屋外の音?)を使いました。
画面中央の 3 つの緑の点は各センサーの接触状態です。緑は OK, 赤だと NG (センサーがおでこに接着していない)ことを示します。 3 つすべてが緑になることを必ず確認しましょう。
計測を途中で終了するには「終了する」をタップします。中断した場合はデータ分析されません。
朝になるとアラームが鳴ります。スマホのロック画面を解除すると上図右に示す青い画面が表示されます。「上にスワイプして停止する」と書かれているのでその通りにするとアラームが鳴り止み、睡眠分析の結果が即表示されます。
ちなみに上図ではアラーム時刻は 5:30, 実際になっているのは 5:08 と早いです。これは浅い睡眠の状態で目覚めを良くするための機能です。後ほど解説しますが簡単に目覚めることができました。
睡眠サイクルの比較結果
結論は「評価不能」です。その理由を解説します。
正直どう判定すればよいかどうかわからなかった
上図は代表的な睡眠サイクルの比較結果です。 LUUNA の波形をグレースケールにして、その上に Fitbit のグラフを重ねています。就寝時刻と起床時刻は合わせてあります。
上図の冒頭部分に緑で「深い睡眠?」と補足を書きました。 LUUNA は睡眠ステージをカーブ状で示すため、どこまでが浅い睡眠でどこからが深い睡眠なのかはっきり表示しません。
言い換えれば、睡眠ステージをはっきり浅い/深いと区切る能力がデバイスの睡眠分析精度を決めるのかもしれません。
本来の脳波計測であれば、睡眠中の脳波に含まれる周波数帯域の比率で浅い睡眠か深い睡眠か判断できると思うのですが。私は脳波の専門家ではないのでこれ以上はわかりません。
すでに紹介した 3 つのポイントで Fitbit の睡眠サイクルを評価するとこのようになります。
- 最初の深い睡眠まで 90 分以上 (30 分以内が良い) → ×
- 最初の深い睡眠が 26 分間 (20 分間以上が良い) → 〇
- 中途覚醒 0 回 → ◎ (判定の優先順位は低い)
- 睡眠の質の総合評価 → ×
この日はあまりよく眠れなかったことは確かです。
上図の例だけで考えれば、 LUUNA の睡眠サイクルも Fitbit と同じ判定ができるでしょう。しかし他の例も考慮すると LUUNA で正しい睡眠分析ができるとは思えませんでした。
Fitbitが正しいと思えた例
上図は LUUNA と Fitbit で判定が逆になったと思える例です。
睡眠の質を評価する 3 つのポイントで判定すると、 Fitbit はこの例でも × (睡眠の質は悪い)と判定できます。
しかし LUUNA の睡眠サイクルでは冒頭部分に深い睡眠が現れています。ひとつ前のグラフで紹介した「深い睡眠?」のカーブよりもさらに深いです。
細かい時間計測はできませんが、 LUUNA の睡眠サイクルを見る限りではこのような判定になります。
- 最初の深い睡眠まで 30 分? (30 分以内が良い) → 〇
- 最初の深い睡眠が 20 分間? (20 分間以上が良い) → 〇
- 中途覚醒 2 回? 3 回? → △ (判定の優先順位は低い)
- 睡眠の質の総合評価 → 〇
Fitbit とは逆の判定です。しかしこの日は起床後、午前中の仕事であくびをしてしまいました。
感覚的には Fitbit の結果が正しかったと判断せざるを得ませんでした。
Luunaが正しいと思えた例
上図も LUUNA と Fitbit で判定が逆になった例です。
しかしこの日はしっかり寝落ちしてスッキリ目覚めることができました。日中の活動も楽でした。
つまり LUUNA の睡眠サイクルの分析結果が正しく、 Fitbit の睡眠サイクルが不正確だったといえます。
Fitbit の判定を覆すのは珍しいです。誤解を恐れずに言えば Fitbit も完ぺきではありません。あくまでも精度が他社製品より圧倒的に高くて安定しているので判定基準に採用しています。
2 例目と 3 例目はほぼ同じ睡眠サイクルの分析結果だったのに、身体の感覚が真逆の判断となりました。このようなことはスマートウォッチの睡眠レビューでは起こりません。
以上、あえて LUUNA で睡眠を分析することをおすすめすることはできません。判定不能です。
利用する際の注意点
その他レビュー中に気がついたことを整理します。
頭部への機器装着がやっぱり違和感
LUUNA はコンパクトな作りなのですが、頭にアイマスクなど機器を装着して寝ることへの違和感がどうしてもありました。
レビュー最初の一週間はアイマスクをつけて寝てデータをとりました。しかしセンサーの金の部分をおでこに合わせると目を隠す部分が上にいき、逆に目を隠すことができませんでした。
そこで結局、アイマスクを外してセンサー本体をテープでおでこに貼り付けて寝ることにしました(上図右)。この方が冷却ジェルシートをつける感覚で眠ることができてより自然な睡眠がとれたはずです。
しかしそれでも睡眠データの分析は大変でした。違和感を完全になくすことはできませんでした。
計測できないケースが複数回あった
LUUNA にある 3 つのセンサーが正しくおでこに貼りついていなかったり、音声が検出できないと上図のような注意マークが出ます。
約 3 週間のレビューで複数回発生しました。
ただでさえ頭にデバイスを装着して寝ることに違和感があるのに、さらに正しく計測されなかったとエラーが出ると気分が下がります。
脳波の計測がこのような小さい機器でできることはわかりました。しかしあえて頭に装着するタイプをおすすめする必要はないでしょう。スマートウォッチやリング型デバイスで手軽に計測できるようになってきています。
目覚めははっきりするがアラーム時刻より早く起床
毎朝 5:30 にアラームをセットしているのですが、いつも使っているスマートフォンのアラームだとどうしても二度寝してしまいます。
しかし LUUNA は違いました。上図に示すようにアラーム設定時刻よりも早くアラームが鳴ります。しかしはっきりと目覚めることができました。
身体のリズムと起床したい時刻が一致するとは限りません。 LUUNA は睡眠のサイクルから「浅い睡眠」のタイミングが起床しやすいことを教えてくれます。
注意していただきたいのは、はっきり目覚めるからといって「スッキリ」目覚めるわけではありません。良い睡眠がとれたかどうかは別問題です。
この記事で睡眠の質をレビューしたように、日中の活動がパワフルになる機能ではありません。あくまでも二度寝は防げるという機能です。
まとめ
脳波を使った睡眠の計測で Fitbit の睡眠分析が正しいのかレビューしたかったのですが、市販の脳波計を使った比較は難しいことを確認しました。
ヘッドバンド型/スマートアイマスクで快適な睡眠を得ることは私には難しそうです。
この記事をまとめましょう。
- 頭に計測器を装着して寝ることへの違和感がどうしてもとれなかった。
- 分析した睡眠サイクルと実際の身体の感覚にずれがあった。日常使いは難しい。
- 睡眠サイクルをモニタリングして「浅い睡眠」のタイミングでアラームが鳴るのではっきり目覚めることができた。二度寝の防止になったが睡眠の質の改善にはつながらなかった。
関連記事:Philips SmartSleep vs Fitbit 「睡眠の質」表示比較レビュー(もっと違和感があったヘッドバンド型の例)
※このレビューは 2021 年 2 月から 3 月に行いました。最新ソフトではこの記事で書かれた内容と相違があるかもしれません。
※このレビューではアプリは iPhone 版を主に使用しました。このレビューで Android 版アプリは使用していません。
※良い睡眠がとれたかどうかは必ずご自身の体調や起床後の気分などでご確認ください。アプリの表示は計測結果を保証するものではありません。