Apple Watch vs Fitbit「睡眠の質」表示比較レビュー

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アップルウォッチの画面上に表示される睡眠サイクル

このシリーズでは iPhone (+ Apple Watch) 向けにリリースされている睡眠アプリをレビューします。私が徹底的に調べた Fitbit の睡眠図とどう違うのか、比較して解説します。

今回はアップル純正の健康管理アプリ「ヘルスケア」の睡眠機能をレビューします。サードパーティ製アプリが先行で多数出ている状況でメーカー純正アプリがリリースされました。

結論は「睡眠計測精度や分析精度は良く、日々の睡眠管理は十分できそう。ただ使い勝手は Fitbit の方が楽かも」です。

時間をかけてデータを積み重ね慎重にレビューしました。結果を詳しく紹介します。

ヘルスケアアプリの使い方

ヘルスケアアプリの睡眠機能の部分だけ解説します。基本的には他社製アプリと大きな違いはありません。

基本画面

ヘルスケアアプリの睡眠管理メイン画面

iPhone のヘルスケアアプリから「睡眠」の項目をタップすると上図の画面が表示されます。

画面中央に大きく睡眠図(睡眠サイクル)が表示されます。この部分が watchOS 9 になって初めて搭載されました。従来は就寝時刻、起床時刻、睡眠時間しか表示されませんでした。

画面上部には「全就寝時間(ベッドや布団にいた時間)」、「睡眠時間(実際に寝ていたと判定された時間)」が表示されます。

メイン画面を上にスワイプ(下にスクロール)するとハイライトが表示されます。詳細は別途説明します。

また画面中央の「さらに睡眠データを表示」をタップすると睡眠ステージの詳細が表示されます。

睡眠ステージは「覚醒、レム(睡眠)、コア、深い(ノンレム)睡眠」の 4 ステージで標準的な睡眠分析をします。ただし「浅い(ノンレム)睡眠」のことをヘルスケアアプリでは「コア睡眠」と呼んでいます。

詳細画面にはさらに詳しい分析結果が表示されます。後程説明します。

基本画面で心拍数などをチェック

ヘルスケアアプリの睡眠基本パラメータ

メイン画面をスクロールすると睡眠時間の比較グラフや睡眠中の心拍数をチェックすることができます。いずれも従来から搭載されている機能だと思われます。

さらに下にスクロールすると「睡眠スケジュール」の画面が表示されます。

一番下には「睡眠について」という睡眠の基本的な解説(教材)があります。一読して基礎知識を身につけるのもよいでしょう。

詳細画面で呼吸数や表面体温もわかる

ヘルスケアアプリの睡眠詳細パラメータ

詳細画面の中央には「ステージ」、「量」、「比較」の表示切替ボタンがあります。

「ステージ」画面には 4 つの睡眠ステージの占有時間と占有率(パーセンテージ)が表示されます。

「量」画面には主に睡眠時間の比較分析結果が表示されます。測定日数、目標睡眠時間などが表示されます。

「比較」画面には睡眠時刻に対する心拍数のグラフが表示され、その下には呼吸数や手首体温(表面体温/皮膚温)が表示されます。

アップルウォッチの進化により追加された機能ですが、今では他社製品でも搭載している標準的な機能です。

例えば呼吸数は睡眠時無呼吸症候群かどうか判断するためのひとつの目安になります。また皮膚温は体調の変化や女性の月経周期を知るきっかけになります。

個人的な感想としては、このような皮膚温度や呼吸数もメイン画面に表示してほしいです。こんなデータも見れたの?と見落としていました。

過去の睡眠傾向を調べる

ヘルスケアアプリの過去の睡眠傾向と平均睡眠時間

過去の睡眠傾向を振り返るのは生活習慣を見直すよいきっかけになります。

ヘルスケアアプリにも過去の睡眠傾向を分析できる機能があります。画面上部には「日」、「週」、「月」、「半年」を切り替えるボタンがあります。

「週」に切り替えると週の平均睡眠時間が計算されて表示されます。また睡眠ステージの変化がカラフルな棒グラフで比較できるようになっています。

「月」に切り替えると月の平均睡眠時間、過去 1 か月の睡眠ステージの棒グラフによる比較ができます。

「半年」 (6 か月) でも同じ比較ができます。

今回偶然にも watchOS 9 以前のデータが過去半年に含まれていたのでひとつの画面で比較できました。旧バージョンでは睡眠時間のみの緑の棒グラフ、そして睡眠ステージの棒グラフに切り替わっているのがよくわかります。

睡眠ステージの詳細時間を調べる

ヘルスケアアプリで睡眠サイクルから睡眠ステージをチェック

睡眠サイクルをタッチ(長押し)することでもっと細かい睡眠ステージの情報を見ることができます。

上図では「 23:08 – 23:31 深いノンレム睡眠 23 分間」と表示されています。

このレビューではこのような睡眠ステージと時間配分から睡眠の質を分析します。地味な機能ですが必須です。

レビュー方法

データの取り方や設定をここで整理します。結果だけ知りたい人はここを飛ばしてください。

データの取り方

Apple Watch と Fitbit をそれぞれつけて睡眠データを計測

睡眠の質を比較するための判断基準は Fitbit のデータです。過去の経験上、起床後の身体の感覚(すっきりしているか、眠気が残っているか)と睡眠図に最も関連性を見いだせているのが Fitbit だからです。

左腕に Apple Watch (Series 8), 右腕に Fitbit (Charge 5) を装着していつも通り就寝しました。右腕/左腕の装着設定は確認済みです。

起床後アプリでデータを収集し、両デバイスの波形を比較しました。その結果を解説します。

計 1 か月分以上 (40 日間)データ収集しました。

睡眠の質を評価するポイント

医師が書いた睡眠に関する本や私が Fitbit で計測した睡眠データから、睡眠の質をチェックするポイントは以下の 3 つに整理しました。

  1. 「覚醒」から「最初の深い睡眠」に入るまでの時間は短いほど良い (30 分以内が目安)
  2. 最初の深い睡眠は 20 分間以上あることが望ましい
  3. 睡眠中の途中覚醒回数は少ない方が良い

1 番が最も重要で、番号順に優先順位は下がります。各項目の詳細と根拠については下記の補足説明をご覧ください。

関連記事:補足:睡眠の質をチェックする3つのポイント(各社の活動量計の睡眠管理機能を徹底レビュー)

睡眠サイクルの比較:一致した例

ヘルスケアアプリの睡眠分析結果は良好でした。詳しい分析結果を代表的な波形とともに紹介します。

よく眠れた日の波形

よく眠れた日の睡眠サイクルの比較結果

上図はアップルウォッチ(+ヘルスケアアプリ)、 Fitbit ともに「質の良い睡眠がとれた」と判定した例です。

ヘルスケアの画面をグレースケールにして Fitbit のグラフを上に重ねて表示しています。時間軸が同じになるように両グラフとも調整してあります。

ヘルスケアの睡眠サイクルを「睡眠を評価する 3 つのポイント」から分析するとこのような結果になります。

  1. 最初の深い睡眠まで 19 分 (30 分以内が良い) → 〇
  2. 最初の深い睡眠が 23 分間 (20 分間以上が良い) → 〇
  3. 中途覚醒 3 回以上 → × (判定の優先順位は低い)
  4. 睡眠の質の総合評価 → 〇

Fitbit は最初の深い睡眠に入るまで 14 分、その深い睡眠が 23 分間継続でした。ヘルスケアとたった 5 分のずれでした。

これだけ両デバイスで同じような睡眠サイクルになるのは驚異的です。過去にレビューしてきた他社製品よりも圧倒的に良い一致率です。

ヘルスケアは中途覚醒が何度も表示されていますが、実際には Fitbit でも中途覚醒が細い線で表示されています。睡眠中に実際には何度も目が覚めているが覚えていないだけという医学的な根拠はあり、深刻な違いではありません。

睡眠ステージの精度を正しく分析するには脳波と比較する必要があります。

このような良質な睡眠がとれた日の朝は目覚めが良く日中もスカッとした気分で仕事ができます。

ただ被験者の私自身が年を重ねており、上図のような質の良い睡眠が年々取りづらくなってきています。データ収集が過去のレビューより大変です。

しかしそれでもヘルスケアアプリの睡眠分析は優れていると断言できます。

眠れなかった日の波形

睡眠の質が悪かった日の睡眠サイクルの比較結果

上図は睡眠の質が悪かった例です。ヘルスケアの睡眠サイクルを分析するとこのようになります。

  1. 最初の深い睡眠まで 43 分 (30 分以内が良い) → ×
  2. 最初の深い睡眠が 6 分間 (20 分間以上が良い) → △
  3. 中途覚醒 3 回 → × (判定の優先順位は低い)
  4. 睡眠の質の総合評価 → ×

Fitbit では最初の深い睡眠が 38 分間出ています。しかしそこに至るまで 2 時間以上費やしています。「深い睡眠→浅い睡眠」のサイクルは 90 分程度とされているので深い睡眠に到達するまでが長すぎます。なので「睡眠の質が悪い」のです。

またヘルスケアで表示されている最初の深い睡眠は 6 分間でした。睡眠の質という観点では短く老廃物の除去など疲労回復ができてないといえます。

両デバイスの睡眠サイクルを比較すると細かい違いはあるものの、レム睡眠/浅い睡眠/深い睡眠のラインがかなり一致しています。この一致率も驚異的でこれまでレビューしてきた他社製品ではほぼ見られませんでした。

すっきりしない日がほとんどだが分析傾向は正しい

睡眠の質が良くも悪くもない睡眠サイクルの比較結果

40 日間のデータどりで最も多かったのは上図のようなケースです。睡眠の質の良し悪しをしっかり区別するため判定を △ (中途半端な結果)としています。

どちらのデバイスも △ 判定なので分析結果は一致しています。ただしこのような中途半端なケースではさすがに両デバイスで細かい部分に差がでました。

上図の例で解説します。深夜 2 時ごろに Fitbit は中途覚醒していると分析、一方ヘルスケアはレム睡眠と分析。

また Fitbit は深夜 2 時以降も深い睡眠を検出したと表示しています。

どちらが正しいのでしょうか?

脳波を計測するしかありません。このレビューではこれ以上の精度の比較はできません。

オランダ人 Youtuber のロブ氏は脳波を使ったレビューをしています。

彼の分析結果では Fitbit よりもヘルスケアの方が脳波ベースの睡眠サイクルと一致していたと報告しています。そのため上図の結果もアップルウォッチが正しいかもしれません。

ロブ氏によるレビュー動画を共有します。

外部リンク:Apple Watch : Scientific Sleep Test – YouTube

睡眠サイクルの比較:不一致だった例

ここで紹介する不一致の例はあくまでもごく少数派です。全体的にはヘルスケアと Fitbit で大きな違いはありませんでした。

ただこのようなケースもあるということを知っていた方が日々の睡眠管理にとってプラスになるのでご紹介します。

夕食会で飲み過ぎて寝るのが遅くなった日

いつもより寝る時刻が遅くなって睡眠サイクルが不一致だった例

上図はよく眠れたのに不一致だった例です。

この日は久しぶりの職場での夕食会で帰宅が遅くなりました。ヘルスケアにセットしている就寝時刻は 22:30 ですが帰宅が遅いため就寝時刻が 23 時以降になっています。

Fitbit は寝落ち直後から深いノンレム睡眠と判定しています。しかしヘルスケアは浅い睡眠と深い睡眠が短時間で何度も切り替わっているという分析結果です。

この日はベッドに入ってすぐに眠れました。そのため Fitbit が正しいと認識しています。

このような違いが出たのは Fitbit が心拍数と腕の動きの両方を常時計測しているからだと推測しています。

深夜にトイレに起きた後に深い睡眠が出た日

夜中に目が覚めて睡眠サイクルが不一致だった例

上図も不一致だった例ですが全く別のケースです。入眠直後の睡眠状態はどちらのデバイスも同じように分析しています。

しかし夜中の 3 時台に腹痛で突如目を覚ましトイレに行きました。幸いトイレに行ってから腹痛も不快感も全くなく、ベッドに戻ってからすぐにまた寝つけました。

目が覚めてトイレに行ったことはアップルウォッチも Fitbit もしっかり記録しています。しかし再度寝た際に寝落ちしたことをしっかり記録したのは Fitbit だけでした。

二度寝が気持ちいいのと同じでこのようなケースで寝落ちできると朝までスッキリ眠ることができます。

ではなぜアップルウォッチは深い睡眠だと判定しなかったのでしょうか?

詳細は脳波を測らないとわかりませんが、やはりアップルウォッチの心拍数や腕の動きの計測が Fitbit とは異なるからだと考えられます。

心拍数や腕の動き(加速度センサー)のデータが同じようにとれていればヘルスケアも Fitbit も同じような分析結果になるはずです。違いが出るのはデータのとり方ではないでしょうか。

利用する際の注意点

そのほか気になった点を整理します。

睡眠スケジュールをオンしないと計測できない

アップルウォッチの睡眠スケジュール設定画面

Apple Watch Series 8 の購入直後、最初の数日間は睡眠データが取れませんでした。

悪戦苦闘した結果「睡眠スケジュール」を ON にしないと睡眠データが取れないことがわかりました。

正直これは不便です。 AutoSleep などのアップルウォッチアプリではこのような設定をしなくても自動的に睡眠状態を検知してくれます。

二度寝や昼寝は計測できない

ヘルスケアで二度寝が検出されていない睡眠サイクル

ヘルスケアアプリでセットしている睡眠スケジュールは 22:30 – 5:30 です。テレワークのおかげでもっと遅い時間に起床できますが、平日も休日も通勤する場合の起床時刻に統一しています。

そのせいか、ヘルスケアは睡眠スケジュールの範囲でしか睡眠分析をしていませんね。 5:30 になったら分析が強制終了です。

つまりヘルスケアでは昼寝や二度寝、ソファでのうたた寝といったデータが取れません。

「パワーナップ」と呼ばれる、昼食後の短時間の昼寝で午後の業務もスッキリこなそう、といったデータも計測できないことになります。

Fitbit や他社製品は原則的に睡眠状態を自動計測するのでこのように時間を区切った計測や分析はしません。

アップルウォッチのバッテリー節約の意味もあるかもしれません。しかし就寝中以外の睡眠も計測をしたければ自動で分析する AutoSleep アプリや Fitbit の方をお勧めします。

バッテリーは改善されているがやはりこまめな充電が必要

省電力モード (watchOS 9.1, 20S75) にすると睡眠分析に差が出るかどうか、今回レビューしていません。

使っていてやはり気になったのはバッテリーです。前回購入した Series 4 より改善されているのはわかります。

ハードウェアの性能向上やバッテリーが節約できるようにソフトが修正されています。例えば時計の秒針が数秒しか表示されない、睡眠中の時計はシンプルな緑の文字だけになったりなど変化を感じます。

それでもバッテリーは 2 日間でほぼなくなる計算です。 Bruetooth が常時 ON の状態、夜間に睡眠計測して翌日の夕方まで常時装着しているとバッテリー残量は 56 % 前後です。さらに次の日の夕方までバッテリーが持つかどうかギリギリです。

今回リリースされた Apple Watch Ultra は通常モデルよりも長時間使用できるようですが、それでも平均的な他社製トラッカーほど長持ちしません。

Fitbit などは普通に 4 日間は使えます。

高機能にするほどバッテリー消費が多くなるのは仕方ありません。永遠の課題かもしれませんね。

重い

アップルウォッチ本体の重さがどうしても気になります。

近年は指輪型のデバイスも販売されており、健康管理は「より手軽に」といった傾向があります。

アップルウォッチはこの重量から「計測しているというよりも監視されている」感がどうしても否めません。

このようなコメントは炎上する可能性があるのは承知の上です。

しかし他社製品の軽さと比べるとアップルウォッチはどうしても身につけていることが気になる重さです。

個人の好みとしてはもっと軽いデバイスが良いです。

まとめ

アップルウォッチが入った紙袋と帰り道
アップルストアで買い物した後ってテンション高いよね

ヘルスケアアプリの睡眠計測と分析機能は普段使いであれば十分素晴らしいです。あとは好みの問題です。

とりあえず睡眠データがとれれば良いのであればヘルスケアで十分。他の製品やアプリを購入する必要はありません。バリバリおしゃれに睡眠管理をしたいのであれば AutoSleep を別途購入して使うことをお勧めします。

この記事をまとめましょう。

  • ヘルスケアアプリの睡眠サイクル分析機能は優秀。 Fitbit と比較しても全体傾向が一致しており日々の睡眠の質の良し悪しがしっかり分析できる。
  • ヘルスケアの睡眠スケジュール機能を ON にしないと睡眠分析ができない。 AutoSleep や Fitbit では特別な設定なしで日々の睡眠を分析してくれる。
  • ヘルスケアは「昼寝/二度寝/ソファでのうたた寝」といった就寝時間以外の睡眠データがとれない。 Fitbit などは常時自動計測なので日中の睡眠も記録される。
  • 睡眠サイクル以外の睡眠中の呼吸数や手首体温(皮膚温度)も表示されるがヘルスケアアプリのメイン画面にないためやや見にくい。 AutoSleep だと細かい表示や比較ができる。

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※このレビューは 2022 年 10 月から 11 月にかけて行いました。 Apple Watch Series 8, watchOS 9.0.2 (20R383). 最新ソフトではこの記事で書かれた内容と相違があるかもしれません。

※良い睡眠がとれたかどうかは必ずご自身の体調や起床後の気分などでご確認ください。アプリの表示は計測結果を保証するものではありません。