Circular Ring vs Fitbit「睡眠の質」表示比較レビュー

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Fitbit と Circular Ring を左腕に両方装着した状態の写真

このシリーズでは各種スマートリングの睡眠計測・分析機能をレビューしています。

この記事ではフランスのメーカーがリリースした Circular Ring (サーキュラーリング)の睡眠機能をレビューします。

結論からいうと、正確な睡眠分析はできませんでした。

眠りが浅かったと自覚した日でも深い睡眠が出ていると判定され Fitbit とは違う判定結果になりました。詳しく解説します。

スマートリングはスタートアップ系企業がしのぎを削って開発しています。そのため一回限りのレビューではなくソフトウェアのアップデート後も追加レビューしていく予定です。

Circular アプリ睡眠管理機能を解説

まずは簡単に Circular アプリの睡眠管理機能を紹介します。

基本画面

Circular アプリの睡眠管理画面。睡眠スコア、起床時刻、睡眠サイクルなどが表示されている。

上図は Circular アプリの睡眠管理画面です。

上図一番左がアプリ起動直後に表示される画面です。青い “Sleep Analysis” をタップすると直近の結果が表示されます。

図中の一番上は「睡眠スコア」です。メーカー基準による「良く眠れたかどうか」の判断を 100 点満点で採点しています。スコアが低いと赤い円になります。このレビューでは睡眠スコアを使った睡眠の質評価はしません。

画面を上にスワイプ(下にスクロール)すると就寝時刻・起床時刻が円グラフで表示されます。

さらに下にはその日の睡眠データが横棒のグラフで表示されます。「実際に寝ていた時間」、「サーカディアンリズム」、「寝落ちするまでの時間」、「睡眠負債」など全 8 項目あります。

睡眠データのグラフの下には睡眠サイクル(睡眠図)が表示されます。このレビューでは睡眠サイクルから睡眠の質を判断します。

睡眠ステージは「覚醒」「REM」「浅い」「深い」の 4 ステージがあります。いずれも標準的な睡眠ステージの定義です。

睡眠サイクルの下には睡眠以外の計測項目の表示切替ボタンがあります。詳細は後述します。

豊富な計測項目

睡眠以外のデータの表示画面。例として睡眠中の呼吸数や血中酸素ウェルネスの値が表示されている。

睡眠管理画面の一番下にはさらに 8 つのアイコンがあります。

上図ではアイコンをタップすることで「睡眠中の呼吸数」や「睡眠中の血中酸素」のグラフに画面が切り替わっています。呼吸数や血中酸素は睡眠時無呼吸症候群かどうか判断するための重要なデータです。

また「歩数」や「消費カロリー」といったアクティビティ関係の項目は睡眠とは別の画面で確認ができます。

Circular Ring は小さな指輪の中にかなり細かい生体データを計測することができます。オーラリングが何年もかけて開発した機能がすでに備わっています。また価格もオーラリングより若干安いです。

この記事では睡眠分析機能をレビューします。睡眠以外の「安静時心拍数」「心拍変動」「呼吸数」「血中酸素 (SpO2) 」「皮膚温」「最大酸素摂取量 (VO2 Max) 」などの指標については別記事でレビューします。

過去の傾向をチェック

過去の睡眠傾向の分析画面。過去一週間分の傾向と平均睡眠時間が表示されている。

睡眠図の上には “Today” と “7 days” というふたつのボタンがあります。

このボタンで表示を切り替えることで過去の睡眠の傾向を知ることができます。上図左は当日 1 日分、右は過去一週間分の各睡眠ステージの占有時間がプロットされます。

グラフの下には各睡眠ステージの一週間の平均時間が表示されています。自分の睡眠の傾向を知ることができます。

この記事の執筆時点では当日と一週間分のトレンドしかわかりません。例えば過去一か月、半年、一年といったスパンの傾向は分析できません。

レビュー方法

データの取り方や設定をここで整理します。結果だけ知りたい人はここを飛ばしてください。

データの取り方

睡眠分析のレビュー方法。Fitbit を左腕に装着、 Circular Ring を左手人差し指に装着して毎晩寝てデータを収集。

睡眠の質を比較するための判断基準は Fitbit のデータです。過去の経験上、起床後の身体の感覚(すっきりしているか、眠気が残っているか)と睡眠図に最も関連性を見いだせているのが Fitbit だからです。

左腕に Fitbit (Charge 5), 左手人差し指に Circular Ring を装着していつも通り就寝しました。 Circular Ring は非利き手に装着することを推奨しているためそれに従いました。

起床後アプリでデータを収集し、両デバイスの波形を比較しました。その結果を解説します。

計 2 週間 (14 日間)データ収集しました。

睡眠の質を評価するポイント

医師が書いた睡眠に関する本や私が Fitbit で計測した睡眠データから、睡眠の質をチェックするポイントは以下の 3 つに整理しました。

  1. 「覚醒」から「最初の深い睡眠」に入るまでの時間は短いほど良い (30 分以内が目安)
  2. 最初の深い睡眠は 20 分間以上あることが望ましい
  3. 睡眠中の途中覚醒回数は少ない方が良い

1 番が最も重要で、番号順に優先順位は下がります。各項目の詳細と根拠については下記の補足説明をご覧ください。

関連記事:補足:睡眠の質をチェックする3つのポイント(各社の活動量計の睡眠管理機能を徹底レビュー)

睡眠サイクルの比較結果

ずれが多く日用使いの参考にならない

睡眠サイクルの比較画面。 Circular は就寝後 16 分で深い睡眠が出たが Fitbit は 1 時間以上かかっている。判定は不一致で Fitbit が示すようにこの日は眠りが浅かった。

上図は代表的な睡眠サイクルの比較結果です。 Circular Ring の波形をグレースケールにして、 Fitbit の結果を上に重ねています。時間軸は一致するように調整済みです。

この分析結果は不一致です。 Fitbit では睡眠の質は良くなかったのですが Circular Ring は良い睡眠がとれたと判定しています。

Circular の計測結果を 3 つの評価ポイントを使って分析するとこのようになります。

  1. 最初の深い睡眠まで 16 分 (30 分以内が良い) → 〇
  2. 最初の深い睡眠が 50 分間 (20 分間以上が良い) → ◎
  3. 中途覚醒 0 回 → ◎ (判定の優先順位は低い)
  4. 睡眠の質の総合評価 → ◎

Cicular Ring はこの例のように寝落ち直後に深い睡眠が出るケースが多かったです。

快適な生活を送るためにはそうであってほしいのですが実際には違いました。起床後も目がショボショボして眼精疲労が残っていました。 Fitbit の方が正しく計測できていたと判断します。

全レビュー日の約 6 割は Fitbit の睡眠サイクルと不一致だったという結果でした。毎日利用するには参考にならないと言わざるをえません。

明らかな一致は1回のみ

睡眠サイクルの比較画面。どちらも就寝時刻から 30 分以内に深い睡眠が出ており良い睡眠がとれたと一致した判定。

上図は良く眠れたと判定が一致した例です。

Circular Ring の睡眠サイクルを分析するとこのようになります。

  1. 最初の深い睡眠まで 8 分 (30 分以内が良い) → 〇
  2. 最初の深い睡眠が 42 分間 (20 分間以上が良い) → ◎
  3. 中途覚醒 0 回 → ◎ (判定の優先順位は低い)
  4. 睡眠の質の総合評価 → ◎

ただしすでに解説したように、 Circular Ring は全体的に深い睡眠が多く出る傾向にあります。この結果は偶然だった可能性もあります。

全 14 夜レビューして一致したのは 3 夜。このケースを除く 2 例は判定が △ (はっきり良くも悪くもない中途半端な結果)でした。

就寝時刻が早すぎた例

睡眠サイクルの比較画面。本当の就寝時刻は 23 時台だが Circular は 20 時台に就寝したと分析。

Circular Ring の就寝時刻と起床時刻の記録はかなり正確でした。上図はまれなケースですが実際に起きたので紹介します。

この日は 20 時台に就寝していたと記録しています。この時間帯は普段はデスクで YouTube を視聴しているので寝ているはずはないです。 Fitbit が正しいです。

私自身の減量と体質改善により、この数年間で心拍数が落ち着いてきているようです。そのため Fitbit でもたまにこのような「いつもより早く寝ている」という判定が起きます。

利用する際の注意点

違うサイズが届きぶかぶかだった

指輪のサイズがぶかぶかなので樹脂製のリングも装着している写真。これで寝ている間でも外れなかった。
大きいサイズの製品が届いたので、サイズ確認用リングを装着して指から外れるのを防いだ

お金を支払ってから品物の到着まで 1 年待ちました。

ようやく届いた品物はサイズ US 9 号 でした。私は US 8 号を注文したのですが。

注文履歴を確認しましたが 8 号を注文したと記録されていました。また梱包されていた箱にも 8 号と書かれていました。実物だけが 9 号でした。

日本ではもちろんクレームものです。交換したかったのですが早々に見切りをつけました。時間とエネルギーを浪費するだけです。

Reddit という掲示板サイトでは他の注文者によるクレームの嵐でした。メールを何度送っても返信がない、返品処理を対応してくれない、初期ロットはまさかの防水すらできていない、といった書き込みをたくさん見ました。

私自身、欧州に住んでいるので欧州企業の対応の悪さを承知しています。

ぶかぶかのリングでは正しく睡眠を計測できないのではないか?という疑問が出ることでしょう。

サイズ確認用の樹脂製リングも装着して指から外れるのを防ぎました。起床時にリングが外れてることはなかったので計測データは採用しました。

スマートウォッチと違ってベルトでサイズ調整ができないのがリング型の欠点ですね。

まとめ

リングのカバーは取り外し可能で着せ替えができます。写真ではゴールドですが、カバーを買い足せばシルバーやほかの色も楽しめます。このようなファッション性は欧州メーカーらしく面白いデザインです。

ただ肝心の計測機能について改善が必要です。ファームウェアのアップデート頻度が減り今後も改善されるかどうかは不安なところです。

スマートリングによる手軽に生体データ計測ができるようになってほしいので厳しく簡潔なレビューになりました。

この記事をまとめましょう。

  • Circular Ring は最初のリリースの時点で睡眠、歩数、心拍数だけでなく呼吸数や血中酸素も計測できる。かつ価格はオーラリングより安い。
  • Fitbit よりも深い睡眠が過剰に検出されて正しく睡眠が計測できているとはいえなかった。
  • 起床時刻と就寝時刻は比較的正確に記録していたが、かなり早い時刻の就寝を記録することもあった。

外部リンク:Circular Ring (Official)

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関連記事:サーキュラーリング対アップルウォッチ生体データ比較レビュー

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※このレビューは 2023 年 4 月に行いました。最新ソフトではこの記事で書かれた内容と相違があるかもしれません。

※このレビューではアプリは iPhone 版を主に使用しました。 Android 版でも大きな違いはないと想定してレビューしました。

※レビュー時点での Circular Ring Firmware Version: 1.0.80-release

※良い睡眠がとれたかどうかは必ずご自身の体調や起床後の気分などでご確認ください。アプリの表示は計測結果を保証するものではありません。