新型コロナ状況下でベルギーから日本に一時帰国した方法と体験談
この記事は約 15 分で読めます

新型コロナウイルス (COVID-19) のパンデミックから 1 年以上、どの国もいまだに国外渡航を厳しく制限しています。
ヨーロッパにいる人たちはこれ以上ロックダウン生活に耐えられないような感じです。
この記事では私がコロナ禍でベルギーから日本に一時帰国した際の渡航手続きや体験談を整理します。
今回私が利用した日本の空港は羽田です。成田や他の空港では内容が違うかもしれません。
これから渡航する人へのアドバイスになれば嬉しいです。
ベルギーから日本へ行くとき
一番大変なのはベルギーから日本への入国です。ペーパーワークが多いのでできるだけ詳しく解説します。
出国前の書類の準備
外部リンク: Traveling to and from abroad | Coronavirus COVID-19 (フランス語)
上記のリンクを根拠に、ベルギー出国前に用意しておくべき書類は以下の 2 点です。
- PCR 検査証明書で陰性のもの
- 日本政府指定の誓約書
ベルギー政府指定の自己宣言書 (Sworn Statement) は 2021-04-19 以降不要になりました。また必要になるかもしれないため引き続き最新情報を追いかける必要があります。
詳細を説明します。
PCR 検査は日本入国時、経由国、または航空会社によって求められます。直行便で日本に入国するのであれば出国 72 時間前までに検体を採取した結果であれば OK です。
私の場合、ルフトハンザ航空を利用したためドイツ・フランクフルト経由になりました。そこに落とし穴がありました。この詳細は記事の最後に紹介しています。お気を付けください。
PCR 検査の受け方と体験談については別記事にて解説します。
関連記事:ベルギーと日本で新型コロナのPCR検査を受ける方法と体験談
誓約書は日本国内にて 14 日の自主隔離をすることなど、厚生労働省が提示する条件に承知したことを記録に残す書類です。専用フォームを下記のリンクからダウンロードできます。事前に記入と印刷を済ませましょう。
外部リンク:誓約書の提出について|厚生労働省 href=”https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00249.html
羽田空港では日本到着時にこのフォームを紙でもらうことができました。しかし記入に時間がかかるため事前に用意しておいた方が安心ですね。
自主隔離日数の条件はこのようになっています。ご注意ください。
×日本到着日から 14 日間
〇日本到着日の次の日から 14 日間
日本で使うアプリの準備
日本到着後、自主隔離がきちんと行われているか確認されます。厚生労働省の指定により下記のアプリ類をスマホにインストールされていることを求められます。
- OEL (Overseas Entrant Locator: 位置情報確認アプリ)
- Skype または WatsApp (ビデオ通話で所在確認される可能性あり)
- COCOA(接触確認アプリ)
- その他位置情報を記録して提出できるアプリ (Google Map など)
- 質問票 Web へのショートカットかブックマークをスマホ内に作っておく
税関アプリ(コロナと関係ないが、電子申告できるので)
ほとんどのアプリはアプリストアで検索すると出てきます。出国前にダウンロードしておきましょう。
質問票 Web はアプリストアからダウンロードできません。厳密には Javascript と呼ばれる、 Safari や Chrome などのブラウザ上で動作するアプリです。紙ではなく電子申請です。画面が表示されるまで少し時間がかかります。
そのため下記のリンクにすぐアクセスできるようにブックマークかショートカットを作っておくと便利です。
外部リンク: 新型コロナウイルス感染症対策 質問票Web | 厚生労働省
質問票は出国前に必要事項を記入し、結果を QR コードにしてスマホで画面保存しておきましょう。私は空港到着後に記入すれば良いと思っていましたが、到着後わりと早い段階で QR コードの提出が求められました。
税関アプリは使うことができませんでした。コロナ状況下のためか、羽田行の飛行機の中でもらった申告用紙を使いました。
機内でもらった書類
羽田空港行の機内でさらに申告書類をもらいました。機内の照明がない状態で撮影したので暗い写真です。
左の書類は「 PCR 検査を受けたか?」、「必要なアプリをインストールしたか?」といった質問に「はい」か「いいえ」で答えるフォームです。すでに紹介した質問票ではダメだったのでしょうか?
右側の書類は現在の症状の申告と、どの国から日本に到着したかを答える書類です。これも質問票と一緒で良い気はしたのですが。
右側の書類を羽田空港内では「健康書類」と呼んでいました。この紙に PCR 検査の記録をシールで貼り付けるため実は非常に重要な書類です。確実にもらいましょう。
日本到着時、ただし入国手続き前
外部リンク: 水際対策に係る新たな措置について|厚生労働省
ベルギーは残念ながら『変異株の流行地域』に指定されています。そのため日本到着後すぐに入国審査ができません。
飛行機を降りた後、新型コロナ水際対策のために用意されたルートを係員さんの後ろについてひたすら歩きます(写真撮影禁止)。途中何度もパスポートや同じ書類の提示を求められます。 PCR 検査にたどり着くまで 30 分はかかりました。
事前に用意した書類をどの順番で提出したか覚えていません。それくらい複雑でかつ何度も提示しました。質問票 QR コードも途中で提示しました。
Skype などアプリの動作確認も係員さんがチェックして記録に残します。
最後に PCR 検査です。日本到着後 2 回やります。到着日と到着 4 日目(到着日から 3 日後)です。
この PCR 検査は鼻ではなく唾液で検査します。指示通りにやりましょう。水を入れてはいけません。検査エリアに梅干しとレモンの写真が貼ってあって唾液を出しやすくしていました。
検体を提出してから約 1 時間半(?)後、私の結果が出ました。陰性だったのでまた係の人について行き入国審査と税関を済ませます。
そしてやっと空港の外に出ることができます。引き続き係員さんの後ろについて歩き、専用のバスに乗って隔離先のホテルに向かいました。
ここまでたくさんの書類をもらうので少し厚めのクリアファイルを持参するといいかもしれません。
また何度も手をアルコール消毒するので皮膚の弱い方はご注意ください。
ホテルにて隔離
私の場合、羽田から都内某所まで約 1 時間高速道路を使わずに移動しました。はとバスツアーをやった感じでした。
移動中にイトーヨーカドーのガラス張りのフードコートを見ました。みんなマスクはしているものの、ソーシャルディスタンスなく普通に食べていました。街中でもマスクを耳からかけているものの、鼻をカバーしていない人が歩いていました。
ベルギーはこの記事の執筆時点でまだロックダウン中でレストランは閉店、街中ではマスク着用義務です。日本ははるかに平和だと思ったのが率直な感想です。
飛行機が羽田空港に到着して、ホテルに移動が終わるまで 5 時間弱かかりました。
ホテル到着後、もう一度手をアルコール消毒してチェックインカウンターに向かいます。いつものホテルのカウンターではなくコロナ水際対策専用カウンターでした。
ホテル滞在のしおり(マニュアル)をもらって説明を受けました。ベルギーでも基本的に家を出ないのでルールに問題はありませんでした。
毎日体温を測りスマホで専用フォームにアクセスして電子申告します。体温計はホテルの受付で借り、退出時に返却します。
食事は 3 食お弁当が提供されます。ベジタリアンかどうか、アレルギーはないか等希望を受け付けてくれます。私は指定なしでした。
差し入れ可能でしたが食べ物系はほぼ不可だったので期待しない方が良いでしょう。
ホテル滞在中は部屋の外に出られません。原則、食事の受け取りとゴミ出し時のみ扉を開けることができます。扉を開けるだけでもマスク着用です。ホテルが何度もアナウンスします。
それ以外にむやみに扉を開けたり外にでることはできません。
ベルギーの職場で聞いた話です。ある駐在員さんが家族で一時帰国しましたが、この隔離中に家族は別の部屋で家族でも会えなかったそうです。確かにその通りでしょう。
最大14日間の自主隔離
外部リンク: 水際対策の抜本的強化について(新型コロナウイルス感染症)|厚生労働省
日本到着日から 3 日後の朝、 新型コロナ検査キットが扉にかかっています。朝食前に 2 度目の唾液による PCR 検査をします。
その前日の昼までにホテル退出の希望時間を専用フォームに書いて扉に貼りだして提出します。
専用バスに乗れるのは 2 度目の検査結果が出る日の夕方か、その翌朝です。時間はどちらか選べますが、行き先は羽田空港第 3 ターミナルのみです。
検査結果が陰性であればバスに乗れます。 7:30 ごろに唾液を提出して、 15:30 ごろに部屋の固定電話に連絡がありました。「陰性でしたので今からバスが出発しますので 1F 受付に来てください」
この時点で到着日を含めて日本滞在 4 日目だと思います。全 14 日間の自主隔離期間にホテル滞在の 3 日間は含まれますので、残りの日数だけを自宅または他の場所で隔離します。
全 14 日間の自主隔離中、公共交通機関の利用はできません。
羽田空港からは誓約書に書いた手段で移動します。成田空港からですと隔離者向け専用の電車が提供されているようです。
外部リンク:日本へ帰国・入国される方の交通アクセスについて | 成田国際空港公式WEBサイト https://www.narita-airport.jp/jp/news/corona_publictransport
私の場合、実家が横浜なので羽田空港まで父親に車で迎えに来てもらいました。
14 日間の隔離が終了するまで毎日 11 時頃に健康状態の問い合わせメールがきます。熱はあるか?ほかに咳など症状はあるか?という簡単な質問だけです。午後 2 時までに返す様に指示されてそのようにしました。
1 日に何度か不定期で OEL アプリの通知がきます。今どこにいるのか位置情報を共有します。アプリ画面の「今ここ!」ボタンをタップするだけ共有完了です。しかし私の場合 (iPhone 12, iOS 14), アプリの通知にサウンドもバイブレーションもなく画面通知のみでした。気がつかない可能性があるのでこまめに通知画面をチェックしました。
Skype によるビデオ通話は結果的には使いませんでした。
何事もなく 14 日経過すれば自由の身です。おめでとうございます!
日本からベルギーに戻るとき
日本からベルギーに戻る場合はここまで複雑ではありません。しかし 2021-04-23 のベルギー政府による決定でルールが増えました。
PLFを事前に記入・印刷しておく
外部リンク: Passenger Locator Form (English)
ベルギー到着 48 時間前から申告する書類です。記入と印刷を出発前にしてベルギーに持参しましょう。
下記は実際の体験談です。
上記のフォームからオンラインで申告すると、申告内容をまとめた QR コード入りの PDF をメールでもらいます。この PDF かスクリーンショットをスマホに保存して携帯すれば OK でした。
申告時にショートメールの動作確認をやります。お手数ですがベルギーの SIM カードを入れてスマホを起動し、ローミングを ON にしてから申告を始めましょう。
申告内容は主に下記の通りです
- 個人情報の入力
- どの国からベルギーに入国するか
- 滞在先でどのような活動をしたか
- 子どもを連れているかどうか
このうち 3 番目の活動内容が一番重要です。 “Self-assessment questionnaire” と呼ばれており、申告するかどうか選択します。申告しない方がリスクは高いと思われるので、私は申告しました。
質問のほとんどは「手洗いはこまめにすべきか?」といった衛生意識についてです。しかし最後には滞在先にてどのような活動をしたのか、該当項目をすべてチェックする質問があります。
私のケースでは選択肢はこのようになっていました。
- コンサートやナイトクラブなど大規模な集会に参加した
- 仕事で大規模な会議(学会やシンポジウムを含む)に参加した
- 2 日間以上入院した
- 公園や遊園地などの施設でアウトドアアクティビティをした
- カフェやレストランに定期的に行った
- ハイキングや自転車などのアウトドアアクティビティをした
- 映画館や博物館などのインドアアクティビティをした
- 上記のどれも該当なし
このうち「ハイキング…」だけチェックしました。日本滞在中に宮崎を観光し、高千穂峡の遊覧ボート(という手漕ぎボート)を利用したからです。
映画『鬼滅の刃 無限列車編』を観たかったのですが、映画館には行きませんでした。また人間ドックも計画していたのですが自粛しました。院内感染リスクを避けるためです。
ちなみに、ベルギーでは公共交通機関の利用禁止はどこにも明記されていません。私が見つけられていないだけでしょうか?
自宅までバスとトラムで帰宅しました。公共交通機関は使えました。
自主隔離とPCR検査
PLF の回答内容によってはベルギー到着後に自主隔離の命令をショートメッセージで受け取るようです。またメッセージを受け取った場合は到着日と 7 日目に PCR 検査を受けないといけません。
2021-04-23 の政府決定により、上記のルールは変更になりました。7 日間の自主隔離とPCR 検査が必須になったようです。
2021-05-24 追記:
PLF をオンライン申告して PDF をスマホで持参しましたが、ベルギー到着後ショートメッセージは届きませんでした。そのため自主隔離と PCR 検査はやりませんでした。必須ではないようです。
また私の申告内容(特にアクティビティ申告)はハイリスク帰国者とは判定されなかったようです。
補足:航空会社ごとのルールに要注意
私は諸事情で羽田空港着の便を使わないといけませんでした。そのためドイツ経由を選択したのですが、日本との感染対策ルールの違いにより思わず落とし穴にはまりそうでした。
私の経験をすべて紹介します。
ルフトハンザは布マスク不可
出国 72 時間前の PCR 検査を空港で受けて帰宅。ほっと一息ついたときふと「航空会社のルールは大丈夫だよね?」と思い立ち再度調べました。
そして上記の記載を見つけました。
いわゆる布マスクは “NG” でした。上記の FFP2, KN95, N95 の認証を受けたサージカルマスクを着用しないと飛行機に乗せてくれないのです。
前に調べたときこんな記載あったかな?と思ったのですが、私が最初に調べていた時点ですでに運用されています。私の見落としでした。
不織布マスクは?と思ったのですが上記の文面からだけでは分かりませんでした。写真かイラスト付きで説明して欲しいのですが、ここはヨーロッパ品質の「オール活字」でした。
結論を書くと、不織布マスクは OK でした。しかしこの時はわかりませんでした。
気がついた時は日曜日。急患向けに当番制で日曜日も開店している薬局があります。急遽開店している薬局を探しました。
外部リンク: pharmacie.be
このページの (uniquement pharmacie de garde) にチェックを入れた状態で近くの「当番制で開店している薬局」を見つけることができます。
航空会社の注意書きをスクリーンショットにおさめ、薬局の店員さん(ごつい男性)にスマホ画面を見せました。「このマスクのうちどれかありますか?」
そうしたら「 FFP2 マスクあるよ。 1 パック 2 個入りからだけど OK ? 」と言われたので即決で購入しました。
ブリュッセル空港のフランクフルト行きの搭乗口ではサージカルマスクをしてない人がほとんど!布マスクをしていた人だけが「マスクを替えてくれ」と求められていました。これで不織布マスクが OK であることを悟りました。
しかも不織布マスクを持っていない人は搭乗口で不織布マスクをもらっていました。お金を払っている様子は見られませんでした。あれだけの思いをしてサージカルマスクを買いに行ったのに…。
ちなみに日本人 3 人組が同じフライトで、そのうちひとりが布マスクで同じ注意を受けていました。「布マスク NG だって」と他人事のように話していました。
この鈍感力を少しは見習いたいです。
PCR陰性証明はドイツ到着48時間以内に検査したものだけ受付
PCR 検査をした次の日、職場に向かう朝のバスで上記のメールを受け取りました。
ドイツ到着 48 時間以内に PCR 検査した陰性証明書の提示を求める。トランジットする人も例外ではない。
愕然としました。 72 時間前の証明書ではダメなのです。
バスの中であわててスマホでアポイントを取り、職場から帰宅する時に空港に立ち寄りもう一度検査を受けました。 2 日連続で同じ場所で鼻ほじほじをやるなんて。
2 回とも陰性だったのでとりあえず良かったです。
ブリュッセル空港のチェックインカウンターで陰性証明書を見せました。受付してくれたルフトハンザ航空の男性はパッと見ただけで “OK!” と言って陰性証明書を私に返してくれました。
ものの 3 秒間も見ずに陰性チェックは終わりました。確かに 48 時間以内の検査かどうかは見ていそうでしたが、あまりにもあっけないチェックで力が抜けました。
同じ検査証明書を日本行きのフライト前に確認されたときはもっと大変でした。日本入国時のドタバタについては別記事にてお話しします。
日本からドイツ経由する際も陰性証明書が必要になります。ドイツ到着 48 時間以内に検査した陰性証明書を日本で出発前に入手しておく必要があります。
まとめ
この記事の一部はフランクフルト空港のトランジット中に書きました。ラウンジも閉まっていて使えないため、羽田空港行の搭乗口向かいの背もたれ付きイスで書きました。
情報がない中での今回の渡航だったので多少のトラブルはつきものです。海外在住者(特に欧米在住者)であればこれくらいは想定内といえば想定内ですね。
コロナ収束後「あ~あの時はこうだったよね」と後で良い思い出になったらいいですね。
この記事をまとめましょう。
- 日本入国時のペーパーワークが多いし全ての書類が事前に手に入るわけではない。柔軟に対応しよう。
- ホテル隔離中は一切外に出られない。差し入れ可能だが注意は必要。
- ドイツ経由だと往復時にそれぞれ PCR 検査の陰性証明書が必要。ドイツ到着 48 時間以内に検体採取した結果が必要。
関連記事:ベルギーと日本で新型コロナのPCR検査を受ける方法と体験談
※この体験談は 2021 年 4 月から 5 月までの内容を整理しました。最新情報は必ず政府公式情報をご確認ください。