異文化理解力とは思いこみを克服すること、考え方は違うのが普通

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海外で働いたり、外国人と仕事をすれば誰でも必ず「日本ではこんなことないのに」と思える瞬間はあります。外国人とのすれ違いを減らすための研究分野を専門的に異文化理解といいます。

この記事では私が考える異文化理解とそのスキルアップの方法についてまとめました。今回のテーマは異文化理解ですが、多様性と言っても同じように当てはまるでしょう。

経験談:私が経験した異文化理解の例

アメリカ人は何でもハッキリ言うんじゃないの?

アメリカ人はネガティブなことをストレートに言わない

まずは私が経験した異文化理解のケースを2例紹介します。

20代の大学院時代、英語である論文を投稿しました。その論文の審査結果はNG(掲載拒否、つまり業績にならない)だったのですが、通知の表現がストレートではありませんでした。

当時受け取ったメールがまだ残っていたので見たところ、このように書かれていました(原文のまま)。

Reviewed and regret to inform you that the referees do not find it acceptable for publication.

【和訳例】

残念ですがお伝えします。査読員たちは(あなたの原稿を)出版するにふさわしくないと判断しました。

掲載できないことをストレートに伝えるのであれば reject を使います。実際に “Your paper has been rejected.” と通知する学会もあります。しかしこのケースは違いました。

アメリカ人はポジティブなことはストレートに言います。しかしネガティブなことは遠回しに言う傾向があるのです。何でも白黒はっきり表現するのではありません。

12年以上前のことなのに今でも覚えているのは、掲載拒否という結果がやはり悔しかったからでしょう。

休みの連絡をSNSでするのは失礼?

もう1つの例は私がシンガポールで働いていた頃の話です。

当時親しくさせていただいていた日本人で、マネジメントをしていた女性です。あるコミュニティで会って仕事の話になりました。その人は興奮した感じでこう言いました。

シンガポール人なんて信じられない!仕事を休む連絡を WhatsApp (ワッツアップ、海外版 LINE のようなメッセージアプリ)でしてくるのよ!

年配者ほど「仕事を休むときは電話で連絡すべき」という考えなのでしょう。

しかし私は何も返事しませんでした。なぜなら私も同じアプリを仕事で使っていたからです。

同僚や上司に休みの連絡をしただけでなく、日々の業務連絡や出張先からの報告にも使っていました。ワッツアップにはグループチャット機能もあるため、複数人に一度に情報をシェアできて(個別連絡が不要で)むしろ便利でした。本当に LINE と同じ使い方です。

ベルギーで働いていても携帯電話のショートメッセージ機能やワッツアップで業務連絡をします。むしろ積極的に導入すべきではないでしょうか。

異文化理解とバカの壁は表裏一体

すれ違いは思い込みから生じる

考え方の違いは育った環境で生じる

人は自分が育った環境で当たり前だったことを基準にして他人や他国を比較します。「ところ変われば考え方は違う」これが異文化理解の根底にあります。

さきほど紹介した例はあくまでも一例です。他にもこういった「あるある」があるように感じます。

  • 東南アジアでは人に注意するときは別室で個別に対応し、人前では怒らない。
  • イギリス人は皮肉を言うのが好きだから、言うことを額面通りに受け取ってはいけない。
  • 中東では契約は口頭のみで書面に残さない。

これらは言い換えれば国民性とも言えます。どういう考え方が良いとか悪いということではありません。

この記事の執筆中にも、日本人の同僚が「ロシア人はジョークも真顔で言うよね。ヘラヘラ笑っていたら(命が)危険だよね」という会話をしていました。

※この日は有休消化中のため形だけ出勤しており、業務をしなくてよいことになっていました。これも日本とは違う文化ですね。

海外に進出する日本人、特に経営者層は日本のやり方が一番だと信じて疑わない傾向にあります。それは本人がそのやり方で(日本で)成功してきたからです。

だからこそ海外進出してうまくいかないことに気がつきません。

そして「◯◯人は仕事ができない」とか「どうして自分のことをわかってくれないの?」とすれ違いが生じるのです。

思い込みからトラブルが生まれる

でも待ってください。

文句を言う前に「自分の考え方は間違っているのでは?」と相手に確認しましたか?このやり方で本当にいいのか確認しましたか?

すれ違いは両者が自分たちのやり方を確認せず、そのまま先に進もうとして起きます。そして後になってトラブルになります。

つまり思い込みこそが異文化トラブルの原因です。どちらかが自分で気がつかない限り、いつまでたっても平行線です。

偏見や差別はこれがエスカレートしたものではないでしょうか。

アインシュタインはこう言いました「常識とは18歳までに集めた偏見のコレクションのことである」。また脳科学者の養老孟司氏はこの現象を『バカの壁』として著書にまとめてベストセラーになりました。

異文化理解の裏側にはこういうことがあるのです。

国や地域による考え方の違いは体系化された

エリン・メイヤー氏の著書『異文化理解力―相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養(英治出版)』では考え方の違いの一例として「ローコンテクスト/ハイコンテクスト」という表現で解説しています。

  • ローコンテクスト:直接的な表現を無意識にする
  • ハイコンテクスト:間接的な表現を無意識にする、行間を読む、空気を読む

両者は正反対の関係と定義しています。

アメリカやイギリスなどのアングロサクソン系はローコンテクスト、日本やアジア圏はハイコンテクストであるという調査結果を本書では指摘しています。

この比較だけでいえば、アメリカと日本は反対の性質で仕事をしているということです。そのためアメリカと日本の文化比較はつねに面白い話題になるのでしょう。厚切りジェイソンさんの “Why Japanese people!?” がギャグとして成立しますし、トランプ大統領のやり方には批判が絶えないのです。

しかしメイヤー氏は言います。一番危険なのはハイコンテクスト同士の人やグループだと。

これが先ほど指摘した「両者がいつまでたっても平行線」の正体です。どちらも行間や空気を読むのが普通なので自分たちのやり方を確認しない。だからトラブルが生まれるのです。

ローテクストとハイテクストで構成されたグループは逆に補正が効きます。ローコンテクストな人が率直な意見を求めて動くからです。そしてハイテクストな人たちの考え方を理解して説得すればチームワークができるのです。

私は海外にある日系大手企業で働いています。グローバルな環境ですがこう感じます。

  • シンガポール人、若いベルギー人、他の国籍の同僚→ローテクスト
  • 年配のベルギー人→ハイコンテクスト

私も含めて中国やインドなどの「ハイテクスト」な国の出身の同僚はたくさんいます。しかし英語という共通言語で仕事をするため、みんなローコンテクストなコミュニケーションを意識しているのでしょう。そのため私は同僚とうまくいっています。

しかし、年配のベルギー人の業務メールは何がいいたいかわからずとても苦労しています。ベルギー人は人と争うことを避ける傾向にあるからでしょうか?

異文化理解力を上げるには「考え方は違って当然」と意識改革すること

異文化理解とは違いを受け入れること

日本人同士でも違うことから気づこう

ここまでは異文化理解力という国民性の違いについて説明しました。

でも考えてみてください。日本国内でも地域によって考え方は違いませんか?

秘密のケンミンSHOWというテレビ番組で「◯◯県人は~」という話で盛り上がりますね。関東と関西、東北、九州では文化も話す言葉(なまりや方言)も違います。同じ関西でも大阪、京都、奈良でまた違いますし、同じ東京都内でも原宿、恵比寿、巣鴨、浅草で違いますよね。

さらに日本人は血液型占いが好きで「A型は~」、「B型は~」といった話をしますよね。他人に対して「この人は◯◯な人」と分類しがちな気がします。

でもそんな日本人が海外に出ると「私たち日本人は~」と1つになります。

これって変ではありませんか?心当たりはありませんか?

結局、異文化理解とは「人や考え方は違って当たり前」ということではないでしょうか。

ヒト(ホモサピエンスという種)としては人類共通ですが、両親、性別(LGBTを含む)、言葉(方言)、地域、気候はみな違いますし、視点を広げれば国や人種も違うということです。

異文化理解力を身につけるには「人や考え方は違って当たり前」として多くの人とコミュニケーションをとって経験をたくさん積むことが近道です。思い込みをいかに乗り越えて適応できるかが重要なのです。

そういう私自身、いつもそう言い聞かせていますがなかなか難しいですね。

経験談:ドリフが教えてくれた「違って当たり前」

最後に私が「人は違って当たり前」と気づかせてもらった話を紹介します。

教えてくれたのは、いかりや長介さんでした。昭和のお笑いで一時代を築いたザ・ドリフターズのリーダーです。

いかりや長介さんのテレビインタビューを観ていて忘れられないフレーズがありました。どのような話の流れだったか、原文は思い出せませんがこのように言っていたことはハッキリと覚えています。

俺(いかりや長介)と志村(志村けん)は20歳も年が離れている。これだけ離れていたら考え方なんて違って当たり前だからね。

いかりやさんと志村さんは師匠と弟子の関係です。笑いに対する考え方の違いは絶対にあったはずです。しかし、年長者であるいかりやさんは考え方が違うことを承知の上で、志村さんのやり方が時代に合っていると理解していた。

だからこそ『8時だよ!全員集合』や『ドリフ大爆笑』などの番組で昭和の一時代を築けましたし、コント中にドリフのメンバー同士でバトルができたのでしょう。世代間のギャップを乗り越えて信頼関係ができていたのです。

私は視聴者としてドリフのコントが大好きでした。ドリフのファンだったからこそ、いかりやさんのこの言葉を素直に受け止めることができたのでしょう。

まとめ

異文化理解と口で言うのは簡単ですが、いざ行動に移すと簡単ではありません。

自分の何気ない行動は無意識に出るもので、違うことになかなか気づかないからです。それでも今後外国人と接する機会があれば、ぜひ意識してみてください。

この記事をまとめましょう。

  • 異文化理解とは思い込みをなくして「人や考え方は違って当たり前」という意識改革をすること。
  • 考え方の違いはその国の風土だけでなく地域や気候、言葉によって生まれる。
  • 日本人同士でも地域によって言葉(方言)や考え方は違う。まずは身近なケースから理解を深めていこう。

参考文献

エリン・メイヤー, 英治出版, 2015
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養老 孟司, 新潮社, 2003
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