グローバル人材が日本で転職するなら?候補3種と企業の矛盾
この記事は約 7 分で読めます
海外で働いても数年後に辞めて日本に帰る人は多いです。日本で再度転職するならキャリアはどうすればよいでしょうか?
結論から言うと、日本国内で転職するなら
- 日系大手企業
- 外資系企業
- 日系大手企業の協力会社
の 3 パターンです。
なぜでしょうか?この記事で説明しましょう。ここでは起業については考えません。
グローバル人材を必要としている企業は少数派
実は、日本企業はそもそもグローバル人材をそれほど必要としていません。グローバル化かが大切という割に実態は違います。
このあとデータ付きで詳しく解説しますが、まずはグローバル人材が転職できそうな会社候補 3 種を説明します。
日本企業の中では中小企業より大企業の方がグローバル人材を採用している実績はあります。そのため日本国内で転職する先の第一候補は「日系大手企業」になります。
大手企業は新卒で入社するのは難しいものの、転職で入れるチャンスはあります。人材の受け入れやすさでいえば、従業員数の多い大手企業はグローバル人材を採用しやすいと考えられます。もちろん業種や職種にもよります。
次に「外資系企業」です。
本社が海外にある企業であれば当然英語を使える人材は日本の会社より必要としているはずだからです。ただし日本国内に職場があるということで、外資系企業であっても日本の会社の風土になっているという指摘もあります。それでもコテコテの日本企業よりはましなはずです。
3 番目は「日系大手企業の協力会社」です。関連子会社や下請け企業です。
あまり名の知られていない会社であっても、大手企業の協力会社であれば英語で仕事をする機会はあります。
なぜでしょうか?
この記事の執筆現在、私は日系大手企業のヨーロッパ本社で開発の仕事をしています。開発中のハードウェアの製造やソフトウェア製作は別の会社に委託します。この場合、協力会社は本社が日本でも生産拠点を海外に持っていたり、ソフト開発を外国人と一緒にやるのです。だから英語のできる人材を求められている可能性はあります。
注意すべき点もあります。協力会社は日本の地方に所在しているケースがあります。そういう会社はコテコテの日本企業の風土(よく言えば家庭的、悪く言えばムラ社会)である可能性があります。優秀な人や目立つ人は働きづらい可能性があります。
私の体験談です。
ある中小企業がシンガポール事業を拡大することになり、私がその人員増強に応募したときのことです。その面接で役員の面接官にわけのわからない難癖をつけられたことは今でも忘れません。
データを見てみよう
グローバル人材の採用に積極的ではない
ここまでの話を裏付けるデータを紹介しましょう。
外部リンク:グローバル人材レポート 2018 | マイナビ転職 中途採用サポネット(今回参照させていただいたデータ)
まずは下のグラフを見てください。これはマイナビが調査したグローバル人材(外国語が使える人材、外国人人材)採用についてのアンケート結果です。企業のグローバル人材採用担当者が回答しました。
「直近 3 年間でグローバル人材の雇用実績はない」と回答した採用担当者は、従業員 60 人未満の会社で 83 %, 従業員 300 人以上では 43.8 % でした。
このアンケート結果には英語が使える日本人と外国人のどちらも含まれています。
規模の大きい会社ほどグローバル人材を採用していますが、それでも約半数は採用実績がありません。それも直近 3 年間の話です。
次です。今後グローバル人材を採用していくか?という質問については以下のような回答結果になりました。
大手企業でも約 3 割はグローバル人材を採用しないと回答しています。規模の小さい会社ほど採用しない割合は高くなりました。
あくまでもアンケート結果ですが、グローバル人材の採用に積極的とは限りません。これが実態なのです。
それでも大手企業の方が中小企業よりもグローバル人材の採用についてポジティブな回答をしました。規模の大きい会社ほど受け入れる余裕があるのでしょう。
最初に解説した転職先の第 1 候補が「日系大手企業」となるのはこれが理由です。
ただし中小企業がグローバル人材を全く採用しないわけではありません。グラフにあるように少数派ですが採用している会社はあるからです。
この少数派に当てはまる企業が第 3 候補の「大手企業の協力会社」だったり、直接海外の顧客と取引している会社(町工場など)である可能性が高いのです。
※注意:このレポートには業種・職種別のデータはありません。そのため一般的な傾向として解説します。
優秀な人材より会社の場を乱さない人材が欲しい
グローバル化は昔からずっと言われ続けているのだから、英語もできる優秀な人材はどの企業も欲しいのでは?と思うのですが、そうではありません。
次に紹介するグラフを見てください。「国籍に関係なく優秀な人材を採用したい」と回答した採用担当者は少数です。大企業ですら半分もいません。
なぜこういう結果になるのでしょうか?優秀な人材は欲しくないのでしょうか?
この理由は次に紹介するグラフが説明してくれます。次のグラフは「外国人の採用に関する懸念」についての採用担当者の回答結果です。
日本の企業は「優秀な人材」よりも「会社の場を乱さない人材」が欲しいのです。
この結果は会社の規模に関係なくほぼ同じ数字だったので、全体の平均値を使いました。またグラフを見やすくするため、元のデータのトップ 5 を抜粋しました。
このデータには外国人と記載されていますが、外国語のできる優秀な日本人と置き換えても通じるでしょう。
採用担当者が懸念している項目トップ 5 は以下のようになっていました。
- 日本語能力・コミュニケーション能力の不足
- 文化・価値観・考え方の違いによるトラブル
- 入社後に長く働いてくれるか(定着率)
- 入社後の組織への順応性・協調性
- 外国人採用・雇用方法の経験・知識が不足している
どうでしょうか。仕事ができないことを懸念している項目は 1 個もありません。
そして、トップ 5 以外の項目はこのようになっていました。
- 外国人に対する社内の受け入れ体制が未整備である
- 在留資格や社会保障など制度手続きが煩雑で面倒
- 住居など生活環境の支援に手間がかかり面倒
- 採用後の研修等受け入れに時間をかけられない
- 賃金、処遇面での強い要求に対応できない
そうです。だれも仕事ができる人材かどうかなんか気にしていません。ビザの手続きや身の回りの世話などしたくないし、給料の交渉などで会社の空気を乱す人を採用したくないのです。
いまでも「社員は家族」と考えている経営者は多いと思うので、当然の結果かもしれません。
外国人の採用は増えないし、頭脳流出も考えない
大手企業でも優秀な人材が欲しいというのは建前です。本音はグローバル人材の採用に積極的ではありません。だから最初に紹介したグラフにあるように、グローバル人材の採用実績も低いのです。
私が 2 度海外で転職活動して「何かおかしいな?」と思っていたことがちゃんとデータが教えてくれました。
実際、マイナビのレポートの見出しにも「採用そのものへの懸念よりも、採用後の社内への影響についての懸念が強い」とあります。これがすべてをもの語っています。
優秀な人が海外に出て行ってしまうことを「頭脳流出だ」と騒ぐ人はいます。それも仕方ありません。だって企業は必要としていないのですから。
移民法が改正されて外国人を安く使おうという問題もあります。しかしこの法改正により外国人採用はどれだけ増えるのか、疑問が残ります。
何度も書きますが、企業は外国人の採用に積極的ではありません。それはデータで裏づけされました。
コンビニや牛丼チェーンなどではすでに外国人従業員は増えていますが、他の職種では果たしてどうでしょうか?このデータを見る限り、あまり採用は増えないと考えられます。
まとめ
グローバル化が必要と言っているのは一部の人たちだけです。
この記事で紹介したように、グローバル人材の採用に積極的ではない企業の方が多いので、ロボットや AI に置き換える形になる可能性の方があるでしょう。
この記事をまとめましょう。
- そもそも日本の企業はグローバル人材や外国人の採用に積極的ではない。
- それでも大手企業の方がグローバル人材を受け入れ体制がある。日本で転職するなら大手企業や外資系が応募しやすい。
- 大手企業の協力会社も英語を使う機会はある。有名な会社でなくてもキャリアを活かせる道はある。