好待遇だがしがらみもある駐在員、安くても働きやすい現地採用

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海外で働くと「駐在員は恵まれていて現地採用は待遇が悪い」といった風潮があります。駐在員は現地採用より待遇が良いのは確かです。しかし、待遇の良さと引き換えに犠牲になっているものもあります。

この記事では私が外国の現地採用として働いた経験から、駐在員と現地採用の格差について解説します。給料、残業、裁量など具体的にどう違うのでしょうか?

結論を先に言うと、「駐在と現地採用どちらが良いか?」といった比較はナンセンスです。あくまでもどの会社で働くか、が大切です。自分のキャリアに見合う職場かどうか見極めましょう。

駐在員と現地採用の待遇比較

給与や待遇は会社により異なる

駐在員の待遇は現地採用よりは良い

私自身は駐在を経験していないため、一緒に仕事をした駐在員さん2人の待遇を解説します。

図の左はケース1です。このような待遇でした。

  • 給料はダブルペイ(日本の赴任元の給与と現地法人の給与が両方もらえる)
  • 住居はコンドミニアムを会社負担
  • 車も会社負担(車種は選べない)

至れり尽くせりですね。ケース1は駐在員の理想的な待遇に近いのではないでしょうか。

図の真ん中、ケース2ではこのような待遇でした。

  • 赴任元の日本円の給料を赴任先の国の通貨で支払う。赴任先の現地通貨の給料は、一度もらって会社に返納する
  • 住居は給料から自腹、ただし補助あり
  • 車の購入やメンテナンスも自腹、ただし補助あり(自分で車種を選べる)

このように待遇は異なりますね。

近年は車が支給されないケースが増えていると聞きます。よっぽど職場が遠かったり治安の悪いところではない限り、会社としては支給せずに費用を抑えたいところです。

ケース2はケース1と比べて待遇が良くないように感じますが、実際に生活に差はあるのでしょうか?

私が見た限り、他の駐在員さんと同じように生活しています。土日は家庭サービスをして、自分の趣味の時間もあり、お子様の習い事にも支払い、旅行もして、年1、2回日本に帰国できる、といった感じです。ダブルペイではない分、貯金額が異なるくらいでしょう。

ケース2では日本で支払われている給料が十分高い(年収700万円以上?)と考えられます。日本円がベースなので、為替レートの影響で毎月の振込額が変動するリスクはあります。ただ国により駐在員の税制優遇があり、赴任先で所得税を払っていない可能性もあります。

このルールが適用できるのは、数年で帰任するという前提だからです。

現地採用の給料でもその国で普通に生活できる

一方現地採用はどうでしょうか?私の経験(シンガポールとベルギー)をお話します。

現地採用はその国の法人で採用されるため、給料は当然現地の通貨でのみ支払いです。住居も車も欲しいものはすべてその給料内でやりくりします。駐在員と比べると安いです。

ただし、就労する国の労働局が規定している最低給与額を満たさないと、就労ビザは出ません。最低給与額は、その国で生活できるレベルは保証しています。

就労ビザはまず給与額で審査されることは別の記事で解説したとおりです。その国の経済発展に貢献できる人にビザを出します。

関連記事:高卒や大学新卒でも海外で働けるか?難しい理由と突破口

よく「シンガポールは物価が高いから生活が大変なのでは?」と言われましたが、そんなことはありませんでした。むしろ日本よりも貯金ができました。

シンガポールで値段が高いのは家賃(月10万円でもルームシェア)、車(カローラを購入してナンバープレート登録するのに約1,000万円)、医療費、酒・タバコ類です。

一方、公共の交通費は1回100円から250円程度、タクシーの初乗りは300円前後、食事も屋台で食べれば1食数百円、一年中暑いので衣服にお金はかかりません。所得税も安いので、月10万円以上は貯金ができました。

ベルギーは税金と社会保障費で給料の約4割が引かれるため、自由に使えるお金は日本よりも少ないです。その中でやりくりをしても貯金はできますが、月の貯金額はシンガポールの半分以下です。

関連記事:ベルギーでの生活費の計算例

ただし、福利厚生としてフードバウチャー(フードスタンプ)やエコバウチャーがあります。現金ではなくて商品券の電子版です。生活必需品はこのバウチャーで購入できます。

家賃はシンガポールほど高くはないですが、日本よりは高めです。物価も決して安いわけではありません。

日々の生活で値段が高くなるのは外食と電気代です。例えば、外食はマクドナルドのセットでも1,000円くらいします。どの国でもスーパーが消費者の味方で、自炊が基本です。電気代は日本の2倍です。

ヨーロッパに住んでいたら近隣諸国にも旅行したいですね。バスやLCCが数十ユーロからあるので移動費はそれほど高くつきません。むしろホテル代が高くので、宿泊費を抑えるならユースホステルかAirbnbです。日本では民泊が問題になっていますが、ヨーロッパでは浸透しています。

このように、現地採用だから不遇ということはありません。現地で普通に生活できます。

もし現地採用で働いている日本人で生活が厳しい人がいたら、是非理由を聞いてみてください。実際に考えられる理由は次のどれかです。

  1. 海外インターンかワーキングホリデーとして働いている
  2. 旅行やショッピングなどで浪費している
  3. 不法滞在しているのでちゃんとした仕事に就けない

台湾で日本語の先生をしている日本人が、生活に苦しいという話を聞いたことはあります。しかし自分が直接会った人でそういうケースを見たことはありません。単に言えないだけでしょうか?

駐在員の平日定時内は会議、定時後に自分の仕事をする

毎日定時で帰宅する駐在員さんを見たことはありません。それどころか有休もまともに取れていない感じです。もし残業をしていない駐在員さんがいるなら、かなり恵まれているでしょう。

どうしてでしょうか?

駐在員は赴任先の仕事だけでなく、日本側との連携で頻繁に連絡を取り合います。定時中は会議の連続、定時後にやっと自分の仕事を始めるというのが平日のサイクルです。

駐在員は日本の会社から出向する人です。外国にいること(日本の労働基準法の外にいること)をいいことに、あえて日本から駐在に仕事を振ることがあります。これを暗に「治外法権」と言う人もいます。それくらい仕事量は多くなる傾向にあります。

ただ締め切りの近いプロジェクトなどがなければ、土日は基本的に休んでいます。

また2年に1回程度、会社負担の飛行機で一時帰国できる休暇があります。この休暇はどの駐在員さんも取得しています。

一方、現地採用でも残業はあります。

現地採用は駐在員を支える立場でもあるため、必要に応じて駐在員と時間を合わせて勤務します。そうなると自然と夜遅くなることもあります。

ただ現地採用は駐在員と異なり、その国の労働法で守られています。残業への対価は国によって異なりますが、残業代なり代休をきちんと取得できます。現地採用だからといって不当に働かせることはありません。

現地採用はローカル社員と密接に仕事するため、駐在員よりも現場の生の声を知ることができる貴重な存在です。

関連記事:海外でも残業はあるけど日本と何が違う?3か国就労経験を比較

現地採用は駐在員にいじめられる存在?

あくまでも個人間で関係が良いか悪いか

駐在員さんにいじめられたことはありません。2か国で現地採用として働いた経験を通じて、全くなかったと断言できます。

どうして「駐在が現地採用をいじめる」といった話が出るのでしょうか?ドラマの定番設定だからでしょうか?

ネットで調べると「現地採用は駐在員からこき使われる」という記述もあります。そんな経験は一度もありません。転職エージェントが駐在員案件を売り込むための営業トークではないでしょうか。

駐在員と現地採用の関係は、上司と部下のような関係とほぼ同じです。現地採用は通常平社員、駐在員は課長以上の役職付きで赴任します。この上下関係が力の差を生みます。

日本の会社の上下関係と同じで、当人同士がうまくやれるかどうか。それだけです。

私は幸運にも、駐在員さんが紳士的でした。高圧的な態度や嫌がらせを受けたことはありません。

現地で日本人同士の交流もありましたが、駐在だから、現地採用だからという理由で差別を受けたこともありませんでした。私にとっては日本よりもシンガポールで知り合った日本人の方が仲良くさせてもらっています。あくまでも個人間でフィーリングが合うかどうかです。

駐在は現地採用をいじめるという一方的な論調は受け入れられません。

駐在はストレス?

もし現地採用がいじめられているのであれば、理由があるはずです。

単純にその会社がブラック企業なだけではないでしょうか?

それともこう考えてみてはいかがでしょうか。もしかしたらその駐在員さんに余裕がないのかもしれません。

駐在は基本的に会社の命令で赴任します。海外赴任を望んで頑張っていた人が駐在員に選ばれれば嬉しいでしょう。でももし望まない赴任を命じられたらどうでしょうか?ストレスであることに違いがありません。

そして、日本と赴任先の2か国分の仕事をこなさなければいけません。赴任先の共同プロジェクトや、日本本社からの遠隔的な会議でストレスは溜まるでしょう。日本でも仕事を処理するのが大変なのに、海外で外国人と仕事して結果を出すのはさらに大変です。

仕事の時間以外に駐在員同士や駐在員妻同士の付き合いもあります。現地の日本人コミュニティでうまく立ち回る必要もあります。現地採用にはこういったしがらみはありません。

さらに海外生活に慣れないといけません。気候はまだしも、食べ物だけは現地の食事だけで生活はできません。

日本人は必ず日本食が恋しくなります。自炊してでも日本食が食べられれば良いのですが、食材や調味料が現地で手に入らなければこれもストレスになります。駐在員の奥様方は毎日お子様の分も日本食を作られて素晴らしいです。

こうして気持ちに余裕がなくなっていき、立場の弱い現地採用に八つ当たりすることは考えられるでしょう。

駐在員の待遇についてGoogle検索をしていたら、このような画面を見ました。

駐在員も疲れている
駐在員も疲れている

私は駐在を経験していないので、これ以上触れないことにします。

組織構造上、駐在員でも裁量は限られている

駐在員が赴任先で頑張ると、平社員から課長、課長から部長へと昇進することがあります。また、日本では中間管理職の人でも、海外法人の社長として赴任するケースがあります。

これはどういうことでしょうか?

グローバル企業の組織構造を比較する必要があります。図にするとこうなります。

グローバル企業構造の比較(イメージ)

日本型のグローバル企業は図の左にあるように「日本本社」をトップとしたツリー型になっています。あくまでも日本本社が上、海外法人は下です。

そのため日本で中間管理職でも海外で社長クラスに就けるというレベル変換があります。また赴任先から帰国して出世するのは、ご褒美的な意味があるのでしょう。

この組織構造には問題点があります。海外支社(駐在員やローカルマネジメント)の裁量は限られています。

私がシンガポールで経験したことです。図面や設計変更などの承認は毎月日本本社にお伺いを立てなければいけませんでした。駐在員やローカルのマネジメントは照査(チェック)まで、承認はあくまでも日本の会議でした。

そのため、日本の会議に出席を代理してくれた主任さんには大変お世話になりました。その分、現地採用でマネジメントになったとしても裁量に限界があることも知りました。

ただ、現地採用は出世よりも自由が欲しい人です。現地採用に出世欲があるかというと話は別です。私は自分のキャリアに挑戦する意味で出世も考えましたが、あきらめました。

一方、外国のグローバル企業は図の右のようになっています。一部のトップが各国の部署(人事、調達、開発、営業、生産、品質保証など)を管理し、国による序列はありません。

私自身は外資系で働いていないので細かく書けません。でもスティーブ・ジョブズ氏やイーロン・マスク氏を見ていると、こういう組織になっていると推測できます。重要な意思決定はトップで、現地でできることは現地で決めたほうが効率的なはずです。

もちろん日本企業でも構造改革により海外型のグローバル組織となっている会社もあります。具体的なケースは参考文献にゆずります。まだまだ少数派なのが実態でしょう。

まとめ

駐在員と現地採用、海外で働くにはどちらが良さそうですか?

人によって考え方は違いますが、私は現地採用で働いていることに後悔はありません。むしろ海外で働くチャンスを私に与えていただいた会社に感謝しています。しがらみにとらわれない現地採用は気が楽です。

このシリーズ「海外就職のトリセツ」では海外起業やノマドワーカーについても言及しています。もっと様々な働き方ができる時代です。こうあるべきといった型にはめずに、柔軟な働き方ができればと思います。

この記事をまとめましょう。

  • 駐在員は現地採用よりも待遇はよいが、仕事量も多い。
  • 現地採用はその国で普通に生活して貯金できるくらいの待遇はある。
  • 駐在員と現地採用の人間関係はあくまでも個人間の話で、どの会社でも駐在が現地採用をいじめているわけではない。
  • 駐在員でも権限や裁量はそれほどない(日系企業の場合)。

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参考文献