海外就職するにはどの国がいい?3か国就労で見た例と考え方
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この記事では海外で仕事をするならどの国が良いか?私の考えを整理します。その人の過去の経歴や今後の目標から個別に決めるべきことなので、ややあいまいなアドバイスかもしれません。ただこの記事を通じてヒントやきっかけが提供できれば嬉しいです。
日本はヤバいから海外に出るのか?
政府の問題と会社の問題は別
「日本はヤバいから海外に脱出しよう」と言う人がいます。
あなたはそう思いますか?
労働環境(ブラック企業)の問題、年金問題、消費税増税、殺傷事件の報道など、確かに暗い話は尽きません。
私もこの手の「日本はヤバいニュース」に影響を受けていた時期はありました。別記事でも書きましたが、日本で生活していると「こうしなければいけない」という無言の空気がすごいストレスでした。
関連記事:海外で働いて生活するために知っておきたい治安と差別のこと
しかし私は日本がヤバいとは思いません。日本での生活は他国よりも便利であることは確かです。
過剰なほど行き届いたサービス、まずい店を探す方が大変なくらいの外食レベルの高さ、それでいて値段の安さ、整備されたインフラ、これらは海外で生活して初めて実感する人が多いです。
もちろん、日本の物価が安いということは賃金が安いことにつながります。ブラック労働を生む原因の 1 つといえるでしょう。
でもこれだけは言わせてください。国の問題とあなたの労働環境の問題は別です。
私が日本で働いていたとき、お世辞にも労働環境が良いとは言えませんでした。だから「日本ヤバい」という気持ちは理解できました。
政府は「働き方改革」と称して労働環境の改善を推し進めていますが、改善しているのか私にはわかりません。
しかし、政府の問題と会社の問題を一緒にしていませんか?
少なくとも、日本の借金が膨れ上がって財政破綻することはありません。そのことを何年も前から指摘している専門家がいます。
外部リンク:「日本の借金1000兆円」はやっぱりウソでした~それどころか…(髙橋 洋一) | マネー現代 | 講談社(1/6)
もし給料が低い、労働時間が長い、同僚や上司とうまくいかないなどの問題があれば、それはあくまでも会社のマネジメントの問題です。利益はあるけど内部保留して給料やボーナスに反映されない、無駄な会議が多い、上司や会社の方針と自分の考えが合わないなど、これらはいずれも政府の問題とは違います。
海外に出たら勝ち組なのか?
ブラック環境を抜け出すには、私たち雇われている側が変わらないといけません。私の経験上、残念ながら経営層に何度提案をしても改善されませんでした。
しかし、海外に出たからといって勝ち組だとは思いません。海外に出たいだけなら旅行すればいいのですから。
注意:ノマドワーカーはあくまでも日本が拠点(税制上の居住国)で、観光ビザの範囲内で外国を転々としています。所得税や年金は日本で支払っています。
良い条件の会社を日本で見つけるのは今の時代大変かもしれません。海外の会社は労働者が基本的に守られているのは事実です。
しかし実際には、あこがれの海外生活を始めたのに海外の労働環境や人間関係が合わなくて数か月で辞めて日本に帰った人もいます。先に紹介した関連記事にあるように、海外ではいつテロの被害にあうかもわかりません。
一度海外で働いて、その経験をアピールして日本で再度転職することもできます。しかし、海外経験者を上手に使いこなせるマネジメントや人事部がどれだけいるのでしょうか。私が日本で再度転職するなら外資系企業を狙います。
考えだすときりがありませんが、日本が嫌で脱出したいというネガティブな理由で海外就職するのはおすすめしません。
日本の仕事環境が嫌で海外に出た人に会ったこともありますが、わずか数人で少数派です。
その国でしかできない何かがあるか?
もし海外に出たいのであれば「なぜその国に行きたいのか?」という質問に答えられるようにしましょう。
その国でなければ経験できないことですか?
この質問に対して熱く答えを語れるモチベーションがあれば、現地に行っても頑張れるでしょうし、貴重な経験を積むことができるでしょう。
例えばですが、国や地域によって日本にはないこういう特色はあるでしょう。
- 最先端のテクノロジーやスタートアップに関わりたい⇒アメリカ(ただし今の日本でも経験できるようになりつつある)
- 音楽や芸術の仕事をしたい⇒ヨーロッパ(他にも国によって伝統的な楽器やダンスなどがある)
- 人の役に立ちたい、貧しい人を助けたい⇒中南米、アフリカなど
- 経済発展を五感で感じたい⇒インドや東南アジア
例として、ヨーロッパの食器の輸入販売をしたいとしましょう。
日本向けに販売するならメルカリでできるでしょう。しかし売り物を仕入れるには写真だけで判断せず、やはり実物をこの目で見たいでしょう。すると現地に行く必要が出てきますね。事業が本格的になれば現地で協力者を見つけたり、現地法人を作る必要性が出てくるかもしれません。
もしくは、ヨーロッパの小物や家具のデザインを学びたくてヨーロッパに行くのもありでしょう。ダッチデザイン(オランダのデザイン)や北欧デザインというカテゴリがあるくらいですから、現地のデザイナーの生の情報を収集したくてヨーロッパに行くのもありでしょう。
ヨーロッパは日本のように師弟関係にならないと教えてくれないこともあるでしょう。表面的な情報はネットで調べることができても、足を使わないと入手できない情報は今でもあります。
このように、その国に行かなければできないことがあって初めて海外移住するのが後悔しないやり方です。私の周りにいる海外在住者は変わった人が多いですが、目的意識や情熱をしっかり持った人が多いのも特徴です。
目的から移住する国を決めた実例
自分のスキルが世界で通用するか挑戦した結果シンガポールへ
私は 20 代のころ大学や研究所で「英語で研究発表ができる一人前の研究者」になりたかったのですが、大学のポストの減少もあり修了後も就職先がありませんでした。
研究者の夢は早々にあきらめて、社会人になりました。次の目標は「世界で通用する技術者になりたい」でした。英語はすでに既にある程度克服していました(TOEIC 700 点台)。
関連記事:英語習得物語 目次(私はどうやって英語を克服したか)
幸い、最初に就職した日本国内の会社では技術者としての基礎を習得させていただき、少しだけ海外出張もあり満足していました。しかし 2020 年の東京オリンピック開催が決まり会社の方針が「海外よりも日本国内への需要」となりました。
自分の方向性と会社の方針のずれから「何のために英語を勉強して博士号を取得した?」と悩みました。
そのとき私は既に 30 代でしたが、今やらないと絶対に後悔すると思い海外の会社に転職しようと行動しました。 2014 年の話です。
現在もそうですが、東南アジアは発展途中なので比較的就職しやすい地域です。東南アジアで製造業ならタイかな?と思い転職活動をしました。
しかし、 2 社応募したタイの会社はどちらも不採用で、シンガポールの日系企業 1 社とベトナムの会社 2 社で内定をもらいました。
ベトナムの会社はソフトウェアのマネージャー職で魅力的でした。しかしそれ以上にシンガポールの会社の製品開発がより魅力的でした。「世界で通用する技術者になりたい」というやりたいことをシンガポールで実現することができました。
結果的には 2 年半で辞めてしまいますが、とても貴重な経験をすることができました。
このケースでは国にこだわりすぎていたら失敗していたかもしれません。しかし目的意識と情熱は誰にも負けませんでした。
関連記事:海外就職へのチャレンジ–プロフィール
ドイツの製造業に挑戦して見つけたベルギーの仕事
シンガポールの会社に就労したものの、また転職しなければいけない状況になりました。
次に持った目標は「別の国でも技術者として通用するか挑戦したい」でした。シンガポールにある別の会社も応募したのですが、うまく行きませんでした。
関連記事:不採用となったこともご縁、私の苦い面接経験をお話しします–転職活動で不採用が続くときのアドバイス(1/2)採用側の事情
日本、シンガポール(東南アジア)と 2 つの地域で経験を積むことができたので、もうひとつの地域でも挑戦したい気持ちになりました。実現すれば「世界にはばたく技術者」に説得力が増すからです。
検討した結果、挑戦するならアメリカ(北米)かドイツ(欧州)しかないと思いました。
ただアメリカは製造業というよりもITよりで、ドイツの方が自分のイメージに合っていると思いドイツにしました。
この時も第一希望だったドイツにある日系企業は不採用で、ベルギーにある日系企業への内定をいただくことができました。
希望していた国とは違うから失敗では?とお考えでしょうか。確かに 100 % 達成ではありません。しかしベルギーの仕事でも出張などでドイツ、オランダ、オーストリア、チェコの協力会社さんに行く機会があり欧州の製造業の仕事を経験できています。
結果的に、日本、東南アジア、欧州の 3 大陸で技術者として活動することができました。
ひとつだけ、満足していない点があります。それは外資系(その国のローカルの会社)には縁がなかったことです。もちろん応募しましたが、採用にはなりませんでした。
それでも「なりたい自分になれた」という意味では自分のキャリアに満足しています。
ヨーロッパに行ったある女性のケース
私が実際に会ったことのあるその女性はピアニストです。日本の音大を卒業後、ピアノの先生をやりながら自身の演奏会をやっていました。
ところがある日、 Youtube で観たピアノの演奏に衝撃を受けました。
「その先生からピアノを教わりたい!」
そう思って自分からそのピアニストに直接コンタクトを取りました。自分の夢を叶えるために英語も勉強しました。
熱意は伝わり、その先生の弟子となることができました。そしてヨーロッパのある国に引越し、現地の大学に通いながら自身の演奏に磨きをかけています。
学生さんという立場上、現地の生活は日本の貯金を崩しているため楽ではありません。たまにあるお祭りの演奏でおこづかいをもらっています。
その女性は 20 代でしたが、まだ子どもっぽさを残した天真爛漫な感じでした。
しかし、ある演奏会に参加したら驚きました。
ムソルグスキーの組曲『展覧会の絵』を 40 分以上、休憩なしで演奏し続けました。
あのほんわかした雰囲気からは想像できない気迫を目の当たりにしました。アーティストはこうあるべき(演奏という舞台ではプロ意識を見せる)というのを感じ、今の若い人たちだってやればできることを教えてくれました。
演奏会の司会をしていた師匠も、そのときの演奏の完成度が高く絶賛していました。
まとめ
このように、その場ではできない体験や経験を積みたくて外国に出る。私はこの方法を断然おすすめします。逃げるように外国に出るのとは得られる感動が違います。
大変でしょうが、一生に一度の人生、思いきってみませんか?
この記事をまとめましょう。
- 日本がヤバいから脱出したいというネガティブな想いよりも、その国でなければできないことを経験するために海外に出てみよう。
- たとえ 100 % 自分の希望がかなわなくても、ここだけは妥協できない一番大切な部分が達成できればよしとしよう。
- 人によってバックグラウンドは違うし、国によっても何が魅力的なのかは違う。自分に合った国や地域を探そう。