AutoSleep vs Fitbit「睡眠の質」表示比較レビュー
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このシリーズでは iPhone (+ Apple Watch) 向けにリリースされている睡眠アプリをレビューします。私が徹底的に調べた Fitbit の睡眠図とどう違うのか、比較して解説します。
今回は AutoSleep というアプリをレビューします。結論だけ先に書くと「睡眠の質をチェックできそう、かなり参考になりそう」です。
iPhone 向けの睡眠管理アプリはたくさんありますが、 AutoSleep は数少ない有料アプリです。購入してでも使うべきメリットはありそうです。詳しく見ていきましょう。
AutoSleep の睡眠図の見方
この記事では睡眠図から睡眠の質をチェックする方法にターゲットを絞って解説します。基本的な操作方法や細かいアプリ設定などについては、お手数ですが他サイトの記事を参照してください。
上図は AutoSleep で得られる睡眠図(睡眠サイクル)です。一般的な睡眠図と表現が少し異なるので補足させてください。
医師の書かれた本によると、睡眠ステージは「覚醒」、「レム睡眠 (REM) 」、「ノンレム睡眠 (4 ステージ)」があります。しかし AutoSleep の表示は違います。「軽い」や「静か」といった表示となっています。
どうしてこのように表示が違うのか、 AutoSleep のヘルプページで調べたのですが説明はありませんでした。あったのは深い睡眠の解説のみでした(後ほどリンクを紹介)。
そのためこの記事では AutoSleep の表示をこのように独自解釈します。健康にかかわるので本来は勝手な解釈は許されません。しかし私が実際に 1 か月使用してみた経験から、下記の説明であれば睡眠サイクルのチェックに使えそうです。
- 目覚め→覚醒
- 軽い→レム睡眠?(睡眠の質のチェックに使わないので気にしない)
- 静か、深い→セットでノンレム睡眠とみなす
上図には心拍数のグラフもあります。睡眠中の心拍数も睡眠ステージの解析に必要なデータです。ただし睡眠サイクルの図があれば質のチェックはできるのでここでは使いません。
図の右上には “4:45 – 4:59” 深い睡眠」といった表示が出ています。何時から何時まで(何分間)どの睡眠ステージだったか、画面をタップしたりスライドすると表示されます。上図の例では 14 分間深い睡眠だったことがわかります。睡眠の質をチェックする際に必要な機能です。
外部リンク:Deep Sleep – AutoSleep (アプリ制作側による睡眠についての解説、英語)
※補足:上記のリンクには睡眠ステージの解説はなく、深い睡眠の解説しかありませんでした。しかしリンク先に書かれている「成人は一晩で 1.5 – 1.8 時間の深い睡眠がある」や「ほとんどの人の深い睡眠は 10% – 30% 」といった記述は、私の睡眠データの解析経験からも当てはまっている内容です。
睡眠の質をチェックするポイント
医師の書いた睡眠に関する本や私が Fitbit で計測した睡眠データから、睡眠の質をチェックするポイントは以下の 3 つに整理しました。
- 「覚醒」から「深い睡眠」に入るまでの時間は短いほど良い (30 分以内が目安)
- 最初の深い睡眠は20分間以上あることが望ましい
- 睡眠中の途中覚醒回数は少ない方が良い
1 番が最も重要で、番号順に優先順位は下がります。詳しくはこのあとのレビューで実際の睡眠サイクルから解説します。
レビュー: Apple Watch vs Fitbit で睡眠表示を比較
本題に入りましょう。 1 か月間睡眠データを計測しました。得られた睡眠サイクルから「良く眠れたかどうか」チェックしてみましょう。
このレビューシリーズではすべて Fitbit の波形を基準に比較しています。 Fitbit も万能ではありませんが、過去の徹底レビューにて信頼できると判断したため利用しています。あらかじめご了承ください。
データの取り方
上図のように 2 つのデバイスを腕に装着していつも通り生活しました。他の iPhone (Apple Watch) アプリのレビューと同じ計測条件です。睡眠データはどちらのデバイスも自動で計測してくれました。
Apple Watch を装着せず、枕元に置くことで睡眠を計測するモードも AutoSleep にはあります。しかしアプリ制作者は Apple Watch を装着したまま寝ることを推奨しています(設定変更可能)。
この記事ではできるだけ同じ条件で Fitbit と比較するため、 Watch を外した計測はしていません。ご了承ください。
計測したデータは起床後に iPhone アプリで収集して結果を見ます。 1 か月分のデータから代表的な睡眠サイクルについて Fitbit と比較します。
比較結果(1):良い傾向の睡眠であればストレートに深い睡眠へ
AutoSleep の睡眠サイクル画像をグレースケールにして、その上に Fitbit の睡眠サイクルを重ね合わせました。先ほど紹介した 3 つのポイントから解説しましょう。
まず最も重要なポイントは「①覚醒状態から最初の深い睡眠までの移行時間」です。この時間は短いほど( 30 分以内)良い傾向の睡眠となります。
グラフを重ねた結果、Fitbit と AutoSleep どちらも就寝時刻がほぼ同じでした。そのため波形のスタート地点が同じでした。そして Fitbit はわずか数分で深い睡眠に移行しました。こういう日は疲れていて布団やベッドに入ってすぐ意識が落ちたといえるでしょう。
Fitbit の睡眠サイクルはカクカクしているのでステージの移動がわかりやすいです。一方 AutoSleep の睡眠サイクルはカーブする折れ線グラフです。本来の睡眠図はカクカクしたグラフなので AutoSleep のグラフはややみにくいです。
しかし比較してみると、 AutoSleep のグラフは「覚醒から深い睡眠(または静か)までストレートに移行している(落ちている)」ことがわかります。そのため上図では良い傾向の睡眠だったと判断できるのではないでしょうか。
次に悪い傾向の睡眠サイクルも紹介しますが、そちらは「覚醒から深い睡眠(または静か)までうねうね移行する」のがわかります。
このように AutoSleep で睡眠の良し悪しをチェックする最重要ポイントは「覚醒から深い睡眠(静か)までストレートに移行しているか」です。ここをチェックしてみてください。
残りのポイントも解説しましょう。 2 番目のポイントは「最初の深い睡眠が(静かと合わせて) 20 分間以上ある」です。
Fitbit では「深い睡眠が何分間だったか」個別に見ることができます(ブラウザログインとアンドロイドアプリの場合)。 AutoSleep でも睡眠サイクルをタップすることで深い睡眠(静か)が何分間だったか確認することができます(この記事の冒頭で解説)。
この例では Fitbit が 46 分 30 秒、 AutoSleep のグラフでは 28 分でした。どちらも 20 分間以上でした。
ただし、このチェックの優先順位は 2 番目です。「①最初の深い睡眠までの移行時間」が最も重要なチェックポイントなので参考程度としてください。
3番目のポイントは「睡眠中の途中覚醒回数は少ない方が良い」です。この睡眠図では途中覚醒の発生回数や発生地点が一致していないため判断できません。ただ優先順位が最も低い項目なので気にしなくて大丈夫です。
上図では起床後のグラフが全く一致していません。就寝時刻と起床時刻を同じにしてグラフを重ね合わせたところ、 Fitbit の方は 5:58 で起床し計測終了。 AutoSleep は朝 6 時以降も波形がありました。
目覚まし時計のアラームは毎朝 6 時にセットして起床しているので Fitbit の波形が正しいです。このように睡眠サイクルの不一致がたまに生じます。後ほど詳しく解説します。
全体的には各睡眠ステージの出現サイクルは似た傾向で出ていました。 Apple Watch を使った睡眠図レビューの中では一番 Fitbit と相似しているといえました。
比較結果(2):睡眠の質が悪いと睡眠サイクルはうねうねする
次に「よく眠れなかった」と思える例を紹介します。上の図をご覧ください。
チェックポイント「①覚醒から最初の深い睡眠までの移行時間」を見てみましょう。 Fitbit, AutoSleep どちらも 90 分以上かかっています。これは典型的な、よく眠れない場合の睡眠サイクルです。
実際、 Fitbit のサイクルはカクカクして深い睡眠に行くのに対して、 AutoSleep のグラフはうねうねしながら「軽い→静か→深い」に移行しています。
次のチェックポイント「②最初の深い睡眠が 20 分間かどうか」です。 AutoSleep では 28 分間と表示されていました。これだけ見ると「よく眠れたのでは?」となりそうです。
しかし Fitbit では深い睡眠が 2 回分に分かれており、最初の方は 17 分間でした。 20 分に到達していませんね。
Fitbit は細かく睡眠計測していることを別のレビューでも指摘しました。したがって「 Fitbit で2回分に分かれていた深い睡眠が、 AutoSleep では 1 つにまとめて表示された」と解釈することができます。
チェックポイント②は①よりも優先順位が低いです。そのため冒頭の 90 分間のサイクルの方が「よく眠れなかった」という判断に使うことができます。あとは起床後のご自身の体調や感覚(眠気を感じるかどうか)と合わせてご確認ください。
チェックポイント「③睡眠中の途中覚醒の回数」はこの図でも比較が難しいです。 AutoSleep が「何度も途中覚醒している」とはっきり表示しているのに対して、 Fitbit は「明らかな途中覚醒は 1 回のみ」となっています。このポイントは使うのが難しいです。
ただし全体的な睡眠ステージの移り変わり(サイクル)は Fitbit も AutoSleep も相似しています。表示の違いはありますが、深い睡眠(静か)を中心に分析すれば傾向として睡眠の良し悪しを参考にできそうです。
不一致もたまにある
月に 1, 2 回程度ですが、上の図のように明らかに一致しないことがあります。やはり起床後の体調や感覚(起床後にあくびをするかどうか)を振り返ってください。
上の図では Fitbit が「軽い睡眠」であるのに対して AutoSleep は「深い睡眠」となっていました。この違いは大きく、 Fitbit の図では「あまりよく眠れなかった」ですが、 AutoSleep では「よく眠れた」と判断してしまう可能性があります。
※ただし上図の AutoSleep のグラフは入眠直後の 22:15 から「静か→軽い→目覚め→深い」という変化を1時間以上かけています。そういう意味では「①覚醒から最初の深い睡眠までの移行時間」のポイントから良く眠れなかったと判断することも可能です。
Fitbit はかなり信頼の高い結果を出してくれますが、完璧ではありません。 Fitbit でもごくたまにですが「この睡眠サイクルは違うかも?」と思えることがあります。
したがって起床後の感覚も忘れずに確認してください。
睡眠効率はあくまでも参考程度に使おう
AutoSleep では独自に睡眠効率を評価する機能があります(上図)。ただしそこまで重要視する必要はありません。
AutoSleep に限らず、睡眠管理アプリの多くは「睡眠時間」を重要視します。目標の睡眠時間(通常 8 時間か 7 時間)より長いか短いかで睡眠の質を判断しようとアドバイスするアプリは多いです。しかし私は 1 日 8 時間寝る日は月に数回もありません。
そういう生活の中でどうやって良い睡眠をとるべきか?また私のように自律神経失調の疑いがある人(私は過労死しかけた)にとってどのように疲労を回復させるべきか?試行錯誤した結果が、この記事でも紹介した「睡眠サイクルを使ったチェック方法」なのです。
そのため 1 日 8 時間(または 7 時間)寝られなくても気にする必要はありません。この記事で紹介した方法と自分の体調(起床後の感覚)を振り返りましょう。「どういうグラフだと良く眠れたか」という自分なりのパターンを見つけてみましょう。
補足:過去の睡眠サイクル履歴の見方
当日分や過去一週間分のデータ(睡眠サイクル)はアプリですぐ見ることができます。しかし一週間以上前の履歴から睡眠サイクルの詳細を見る方法が分からずに悪戦苦闘しました。そのやり方をまとめたのが上の図です。
履歴から各日のデータの概要を見ることができます。睡眠サイクルも簡略化したグラフを見ることができます(図右上)。
その状態で「時計」をタップすると詳細画面に行けることを知りませんでした。睡眠データのリング画面で下にスクロールすると「睡眠時間」という項目があります。この「睡眠時間」をタップすると睡眠サイクルの詳細画面になります。
過去のデータを見る機会は少ないでしょうが、こういう方法は他のサイトでも出てこなかったので、お役に立てれば幸いです。
まとめ
iPhone 向けの睡眠管理アプリをこれまで 4 つレビューしましたが、その中で最も参考になりそうでした(レビュー時点)。有料アプリですが使ってみる価値はありました。
この記事をまとめましょう。
- AutoSleep アプリの睡眠ステージ定義や睡眠サイクルの表示が他のアプリと違う。しかし睡眠サイクルの表示傾向は Fitbit と似ていた。
- 良い睡眠がとれたと思える場合の AutoSleep のグラフ表示は「覚醒から最初の深い睡眠まで右下に直線的に表示される」。
- 逆によく眠れなかったと思える場合、 AutoSleep のグラフ表示は「深い睡眠に入るまで(軽いや目覚めなどのステージを)うねうねしながら曲線的に表示される」。
- 常に参考になる睡眠サイクルが得られるとは限らない。起床時の自分の体調や眠気などの感覚も忘れずに確認する。
- 1 週間以上前の睡眠サイクルの詳細図を見るには、過去の履歴から「時計→睡眠時間」の順で操作することでたどり着ける。
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※このレビューは 2019 年 7 月から 8 月にかけて行いました。最新アプリではこの記事で書かれた内容と相違があるかもしれません。
※良い睡眠がとれたかどうかは必ずご自身の体調や起床後の気分などでご確認ください。アプリの表示は計測結果を保証するものではありません。