『のんくら本』を理系博士が読んだら記事の書き方が論文と同じだった

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今回の書評は『Google AdSense マネタイズの教科書[完全版]』、通称『のんくら本』です。

のんくら本成分

ブックセイブンってなに?(別ウィンドウで開きます)

ブログ運営もSEOもこれ1冊でOK

本書は長く愛されるサイト運営をするにはどうすればよいのか?著者が開催したセミナーの資料をベースにまとめた本です。

本書を購入したのは、私が運営しているサイトの方向性があっているのか確認したかったからです。そして自分のサイト運営スタイルに間違いないと「答え合わせ」ができました。

本書の主要著者、のんくら氏は2003年からサイト運営をしているとのこと(プロフィールより)。私が人生で最初に運営したウェブサイトは2000年から2001年ごろ。このころは収益ありきではなく、情報発信そのものを楽しんだりネット上で交流することがメインでした。

ところがいつの頃からか「SEO」や「被リンク」、「YMYL(来的な幸福や健康、お金に関連する情報)」、「EAT(専門性、権威性、信頼性)」など、サイト運営をするのに専門用語が使われるようになっていました。

10年以上もサイト運営から離れていた私には「何のことだ?」と不思議でした。むしろ正直に言って怪しいイメージしかありませんでした。サイト運営ってそういうものではないでしょ?と考えていた時期もありました。

しかし働き方が多様化し従来の価値観が通用しなくなっている時代。私もサラリーマンだけやっていたらリスクしかない。そう思い当サイトをワードプレスで立ち上げ情報発信を始めました。

試行錯誤しながらコンテンツを少しずつ増やし、SEOやブログで収益を上げるための本も何冊か読みました。そして本書こそ、私が学生時代にサイト運営していた時から変わらない「本質」が書かれていました。

本書では下記に示す内容について詳しく書かれています。

  • どういうサイトが長く利用され、大切にされるのか(愛されるのか)
  • 個人サイトは大手メディアとどう共存していくべきか
  • どういう記事が検索で上位に上がるのか
  • ユーザーにとって使いやすいサイト構造はどう構築すべきか(検索エンジンにとってではない)
  • 広告(アドセンス)で収益を上げるための戦略と、得られた収益の受け止め方

Twitter や書籍から得られるSEOの情報は以前から「大学院生時代にやっていた論文の書き方や、論文誌(論文を収録した雑誌)のしくみと似ているな~」と思っていました。そして本書を読んで間違いないと確信しました。

そもそも Google というサービスは論文という形で発表されました。そのためかSEOはアカデミックなスタイルと相性が良いのです。このレビューでは主にSEOとアカデミックの関連性について紹介します。私が実際に書いた論文と比較しながら解説します。

ブログ運営やSEOに関する書籍はたくさんありますが、真剣に長く取り組みたいのであれば本書1冊で十分です。小手先のテクニックは数年で変わりますが、サイト運営の核となる考え方は本書の内容をきちんと理解して実践すれば大丈夫です。

本書では10年先も通用するノウハウと書かれていますが、むしろ15年以上前から変わっていない「サイト運営の根幹」について書かれています。私には共感しかありませんでした。

あれこれ情報収集してノウハウコレクターになるよりも、本書1冊を繰り返し読み込んで自分のものにした方が良いでしょう。

ただし、アフィリエイト前提でサイト運営をされるのであれば本書はおすすめしません。本書にはアフィリエイトによる稼ぎ方には一切触れられていません。またサイト運営の方向性や考え方も全く違います。

ブログ記事と論文のフォーマットが似すぎている

ブログ記事と論文のフォーマットの共通点

この記事の残りは本書を参考にしながら、私が気がついたSEOと論文の共通点をレビューします。難しい内容になるので興味のある人だけお読みいただければ幸いです。

ほとんどの人は論文というものを見たことがないでしょう。論文とはざっくり言うと「研究活動の報告書」です。そして論文にも一定のフォーマットがあります。

上の図の右側は論文のフォーマットの例です。図の左にはワードプレスのエディタ画面を抜粋しました。比較してみましょう。

タイトルは納得いくまで推敲する

SEOの教科書では「記事のタイトルにキーワードを入れて、28文字前後にする」と言われていますね。のんくら本でも「ページタイトルは簡潔にする(同書p.61)」、「説明文を読まなくても記事の内容がわかるようなタイトルをつける(同書p.127)」と解説しています。

論文も同じで、タイトルにはキーワードを入れつつ何について書かれた論文なのかが分かるようにします。長いタイトルはあまり好まれません。

一部のブログ論では「タイトルを先に考えるべきか?後から考えるべきか?」という議論があります。私の答えは「仮のタイトルを先に付けておいて、公開するまで(納得するまで)何度も修正する」です。

実際に論文を書いていたころは、良い表現と思えるタイトルになるまで(締め切り直前まで)何度も修正しました。ブログでは公開後もタイトルを修正できるので、気が付いた時点で修正すればよいでしょう。考え過ぎはかえってよくないです。

タイトルが検索順位に影響するのは事実です。実際に当サイトでもタイトルからあるキーワードを取り除いて検索順位が上がったことがあります。ランク外から1ページ目になりました。試行錯誤すればよいのです。

概要は本文を読んでもらう前の最重要パート

エディタにはメタディスクリプションを入れる欄があります。SEO的には検索結果の一覧で記事タイトルの下に表示される概要(スニペット)の部分。重要なパートです。検索順位にも影響を与えるでしょう。

論文の世界ではスニペットではなくアブストラクト (abstract) と呼び、論文の中身を抜粋してまとめた要約文をタイトルの下に入れるルールがあります。似ていませんか?

のんくら本では「ユーザーがサイトに訪れてから最初の8秒間でコンテンツの内容がわかり、ユーザーの心をがっちり掴むわかりやすい要約が必要です。(同書p.130)」と要約の重要性を解説しています。

論文のアブストラクトも同じで、メタディスクリプションの役割があります。要約は本文を読む前に、何について書かれているかを知る大切なパートです。またアブストラクトだけで論文の予備審査が行われることもあります。そのため軽視できません。

当サイトではメタディスクリプションを入れる記事とそうでない記事を明確に分けています。メタディスクリプションを入れない記事は冒頭分がスニペットとして表示されるように内容と文字数を工夫しています。

キーワードは1記事で複数存在する

次にキーワードです。キーワードも検索順位に影響する部分ですね。

図の左側のエディタにはメタキーワードという入力欄があります。またSEOの教科書では見出し (h1, h2タグ) にキーワードを入れると指導しているものもあります。

論文ではタイトルの他に「キーワード」という欄が別に設けてあり、論文に関連するキーワードを4個から6個入れることができます。のんくら本では「複合キーワードを狙う(同書p.53)」とありますが、この論文でもキーワードを5個入れることでアピールしています。

このように、ウェブページの構成は論文とほぼ同じフォーマットです。そのため理系の研究者や博士たちには(SEOという観点では)ブログは有利なはずです。

おまけ:ファーストビューも考えられている

ちなみに、のんくら本では「ヘッダーと本文の間に広告や関連記事が大量にあることで本文が押し下げられていると、ユーザーは本文にたどり着けず即離脱になる可能性がある(同書p.69)」とも指摘しています。

ユーザーは検索を通じて情報を得たいのであって、広告を見に来ているわけではありません。その通りですよね。

図にあるように論文も同じです。論文には記事中に広告が入りません。しかし紙面の上部には雑誌社のロゴ(アイコン)と雑誌名(バナー)があり、その下に論文のタイトルがあります。まさにファーストインプレッションで雑誌の名前を宣伝をしているかのようです。

もしこの論文に広告をさらに入れるのであれば “Abstract” と “1. Introduction” の間でしょう(いわゆる記事中広告)。しかしウェブページと同じように本文が下に押し下げられますね。研究者がもし広告入りの論文にアクセスしたら「広告のせいで本文が読めない!」というのかどうか。

ユーザーファーストを考えればウェブページも論文も同じようなフォーマットになるということですね。

検索エンジンによるページ評価もアカデミック発

ウェブページと論文の評価に共通する3指標

良いコンテンツと思われるブログ記事と論文の共通点

ここまでの解説で、ブログ初心者が検索上位を狙う記事を書くことの難しさを痛感したかもしれません。なぜなら大学院生や研究者が論文を書くレベルの意識が求められるのですから。

収益を無視して情報発信を楽しむのであればここまで考えて記事を書く必要はありません。しかし検索の上位を狙って収益向上を目指すのであれば話は別です。むしろ論文を書くくらいの専門性が今やネット記事に求められていることに驚きです。

のんくら本ではさらに、ユーザー(ひいては検索エンジン)に評価される「良質な記事とは何か?」についても解説しています。これがまた論文の審査基準に当てはまるので解説させてください。

上の図を見ながら1つずつ解説しましょう。無理せずゆっくり理解してくださいね。

まずは「新規性(オリジナリティ)」です。研究とは今まで世に知られていなかったものを見つけたり、新しい仕組みを発明することです。研究活動の報告書である論文では「今までにない新しい発見や知見(知識や情報)」があることが必須です。

したがって新しくないものを書いてもそれは論文ではなく解説記事です。

昨今のウェブで同じことをするには「新製品のレビュー」や「特ダネをつかむ」ことが新規性ということになるのでしょう。しかしそれではライバルが多く消耗してしまいます。

そこで、のんくら本では「調べればわかるレベルの情報ではなく、自分の経験で差別化すること(同書p.84)」とアドバイスしています。この差別化こそが「他の記事にはないオリジナリティ」といえるでしょう。

次に「信頼性」です。当然ですが、ウソを書いてはいけません。

覚えてますでしょうか? STAP 細胞という万能細胞を発見したと大騒ぎになったことがありました。しかし実際には誰も(小保方さん本人も)再現して作り出すことができず、その論文はなかったことになりました。

ネット上でも同じです。のんくら本では「信ぴょう性」という言葉で解説しています(同書p.80他)。「客観的に書く」や「情報の出所を明確にする」など論文執筆でも当たり前の指摘です。

最後に「有効性」です。

新しい物質を発見した場合は用途が未知数なので必須項目ではありません。しかしテクノロジー系の論文では「新しいスマホバッテリーは従来品より10%長持ちする」といったアドバンテージを説明する必要があります。

たった10%とお考えですか?バカにしてはいけません。あくまでも例ですが、重要なのは「進歩したこと」です。革命的な進歩は早々起きません。少しでも進歩があれば価値のあることなのです。

ブログ記事ではまさに「役に立つ」とか「読んだ人にメリットのある」コンテンツが有効性です。文字数だけあって中身のない記事は評価されないということです。

これらのことをすべて考慮して記事にする必要がある。初心者には大変でしょう。私自身も当サイトのコンテンツを作るのに上記の内容は意識していますが、大変です。

被リンクとはズバリ論文の引用

被リンクと論文引用はともに権威性を上げる

被リンクについてもレビューしましょう。被リンクはまさに論文の引用と同じです。上の図をご覧ください。

論文にある Reference (参考文献一覧)では自分が過去に発表した論文と、他者が発表した論文をリストでまとめます。これはリンク集のようなもので、自分の書いた論文を「内部リンク」、他者が書いた論文を「外部リンク」とみなせます。

そして論文の世界では「インパクトファクター」という数字によって論文や論文雑誌の「権威性」を評価します。計算には「論文が引用された回数」を使います。引用された回数が多いほど「その分野の研究をするのに必読な論文(雑誌)」とみなされるからです。

世界で最も権威のあるとされる雑誌の1つ、 Nature のインパクトファクターは 41.577 (2018)と言われています。

この数字は高ければ高いほど権威性があることになります。私の実感では3.0もない (Nature の10分の1もない) 雑誌が世界の多数派です。それくらいNatureには権威性があります。

インパクトファクターは論文の「質」を直接評価しているのではありません。あくまでも引用回数からその論文(雑誌)の影響度を評価しています。この評価方法については疑問の声もあり、ノーベル賞クラスの研究者が異論を発しています。

STAP 細胞の問題も Nature で起きました。 Nature では残念ながら数年に1度、論文のねつ造問題が起きます。「ウソの論文を出してでも業績アピールをしたい」という承認要求に研究者も勝てないのでしょう。

外部リンク:インパクトファクター – Wikipedia

一方、SEOでも被リンクを大量に獲得することで検索順位を上げる「ブラックハット手法」という問題があります。

リンク獲得で権威性を持たせて検索順位を上げる原理は、ここまで解説した論文引用と同じですね。特定のページへのリンクが多いと、検索エンジンは「リンク先のページがクエリ(検索キーワード)に対する最も有益な答え」と判断するからです。

もちろん検索エンジンも日進月歩で進化しています。現在は不自然な被リンクは検索順位に影響を与えないことになっています。

ただ被リンクの重要性は今後もなくならないでしょう。リンク数の計算は Google の検索技術の原点である「ページランクアルゴリズム」の核だからです。創業者の論文から引用させていただきます(これがアカデミックスタイルです)。

The Google search engine has two important features that help it produce high precision results. First, it makes use of the link structure of the Web to calculate a quality ranking for each web page. This ranking is called PageRank and is described in detail in [Page98]. Second, Google utilizes link to improve search results.

S. Brin, L. Page “The Anatomy of a Large-Scale Hypertextual Web Search Engine,” Seventh International World-Wide Web Conference (1998)
外部リンク(この論文のPDFがあるページ):Stanford InfoLab Publication Server

【和訳例】

Google 検索エンジンには高精度な結果を提供する2つの重要な特長がある。ひとつはウェブにあるリンク構造から各ウェブページの品質ランク(検索順位)の計算をすること。このランクのことをページランクと呼び、詳細は別論文に記載する。もうひとつは Google が検索結果の改善にリンクを活用すること。

結局はユーザー目線で試行錯誤するしかない

のんくら本が指摘するように「(検索順位)アルゴリズムの真実は「中の人」にしかわからない(同書p.47)」のが実情です。

ただ私の感覚では「中の人もわからない」とも考えられます。AI(人工知能)のしくみは「入力と出力の関係は示すが、なぜこの出力をしたかはわからない」からです。

そのためSEOの全貌解明は難しいでしょう。であれば小手先のテクニックではなく、本書やこの記事に紹介した「新規性、信頼性、有効性のある、読者にとって必要とされるコンテンツ」を提供するしかありません。

この記事でものんくら本からかなり引用させていただきました。しかしこれらは私の考える「サイト運営の本質」との答え合わせの結果でした。

本書には他にもサイト構造や広告の貼り方など充実した内容がたくさんあります。是非購入して読み込み、実践されることをお勧めします。

インターネットを有益なコンテンツで満たしましょう!

今回紹介した本

のんくら(早川 修), a-ki, 石田 健介, 染谷 昌利, 日本実業出版社, 2018
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