将棋用語の英語表現を楽しく学ぼう—駒、ルール、棋譜

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この記事では将棋で使う道具や用語を英語でどう表現するのか?紹介します。将棋がどのように国際化されているのか、英語を通じて理解する第一歩です。

英語で将棋の基本用語を表現する

将棋に必要な道具

将棋に必要な道具の英語表現

まずは将棋に必要な道具を英語で何て言うのか、以下にまとめてみました。

  • 将棋盤: Shogi board (または単に board)
  • 将棋盤のマス: square
  • 駒: shogi piece (または単に piece)
  • 駒台: piece stand
  • チェスクロック: chess clock (または単に clock)

チェスの盤のことを chess board と言うので、将棋盤もそれにならって shogi board です。 board という単語は本来「平らな板」という意味です。プロの使う将棋盤は平らでない物もありますが、意味の厳密性よりもわかりやすさを優先して board を使います。

将棋は 9 × 9 の合計 81 マスに駒を動かして玉を取りに行くゲームです。各マスは四角の意味の square ですが、棋譜の説明ではこの単語を省略します。

駒は一般名称で piece です。パズルのピースと同じ単語です。各駒の名称についてはこのあと紹介します。

駒台は piece stand, チェスクロックは chess clock です。局面の解説では使いませんが、インタビューなどで出てくるかもしれない表現なので予備知識として覚えておきましょう。

各駒の名称

将棋の各駒の英語表現

次に駒の名称を英語で表現するとこのようになります。

  • 王将、玉将: King (K)
  • 飛車: Rook (R)
  • 角行: Bishop (B)
  • 金将: Gold General (G)
  • 銀将: Silver General (S)
  • 桂馬: Knight (N)
  • 香車: Lance (L)
  • 歩兵: Pawn (P)

棋譜中ではカッコ内の略称を使いますので覚えてください。どの駒も頭文字を使いますが、桂馬の頭文字の K は King とかぶってしまうため、 2 文字目の N を採用します。

上記の駒の中で、玉、飛車、角、桂馬、歩は同じ駒の動きをするチェスの駒と同じ呼び名です。これなら海外の人にも覚えやすくて親切ですね。

金、銀はチェスに似たような駒が無いため、そのまま英訳して Gold と Silver です。簡単な英単語なので、これも海外の人は覚えやすいでしょう。

興味深かったのが香車です。香車はチェスにない駒で、かつ金や銀のように簡単には訳せません。しかし駒の動きが一直線であることから槍(やり, Lance) という名前です。

研究社新英和大辞典第 6 版によると、 lance の 2 番目の意味は槍騎兵(そうきへい)という意味です。つまり lance なら一直線に進む兵士のシンボルとして意味が通るわけです。

うまい訳だな~と感心しました。

こういう目線で英語に触れると新鮮ですね。私自身が勉強になりました。

駒が成るのは昇進と同じ

将棋の各成駒の英語表現

駒が敵陣に入って成ることを英語で promotion と言います。これは昇進の意味の promotion と同じです。

各成駒は promotion を使ってこう言います。

  • 龍王(竜): Promoted Rook (Dragon King)
  • 龍馬(馬): Promoted Bishop (Dragon Horse)
  • 成銀: Promoted Silver
  • 成桂: Promoted Knight
  • 成香: Promoted Lance
  • と金: Promoted Pawn (Tokin)

竜や馬は大駒なので別名で Dragon King とか Dragon Horse とも表現できます。しかし後ほど紹介する棋譜では別の記号を使うので、あまり使わない表現かもしれません。

また、と金のことを成歩とは言いません。しかし英語では表現上 Promoted Pawn の方がルールを統一していていいでしょう。カロリーナ女流が解説している英語サイトでは一応 Tokin という表現もあります。

その他の基本用語

将棋盤と駒以外の基本用語についても紹介しましょう。まずはこれだけ知っていれば大丈夫でしょう。

  • 先手: Sente or Black
  • 後手: Gote or White
  • 持ち時間: Time condition, basic time
  • 秒読み: Byo-yomi
  • 局面: position
  • 局面図: diagram (diag.)
  • 振り駒: furigoma, piece toss
  • 手番: turn
  • ◯手: move (3 手目は third move, 5 手数は five moves)
  • 千日手: repetition of moves
  • 持ち駒: piece in hand
  • 打ち駒: piece drop
  • 王手: Check
  • 詰み: Checkmate
  • 投了: Resignation (resign)

先手と後手は棋譜に出てくる▲と△の色からそれぞれ Black と White です。

※本来の先手・後手の記号は☗と☖ですが、慣例にならって▲と△を使わせていただきます。

持ち時間は英語でこのように表現します。

Time conditions are 10 minutes basic time and 30 seconds byo-yomi for each player.

【訳例】持ち時間はそれぞれ 10 分、それ以降は 1 手 30 秒の秒読みです。

局面は position 、局面図は diagram です。 diagram は省略して diag. とも表します。

図という意味の英単語は diagram 以外にも figure, graph, chart, plot, drawing, picture, illustration などたくさんあり使い分けが難しいです。私の個人的な解釈ですが、このような違いがあると認識しています。

  • figure: 図の一般的な意味
  • diagram: 線画、物の位置と関係を表した図(技術の世界の回路図など)
  • graph, chart: 棒グラフや円グラフなどデータ解析した統計的な図
  • plot: 点と線でできた graph の簡略的な図
  • drawing: diagram や graph を整理した図面のこと
  • picture: 絵画や写真 (photograph)
  • illustration: マンガのようなカジュアルな絵

将棋にて手とは駒を動かすことなので英語で move です。イメージできますね。

持ち駒と打ち駒は駒の piece をどうしているのか、状況をイメージすると理解できます。

持ち駒は取った駒を自分の手中に収めるので piece in hand です。

しかし打ち駒の drop はどうでしょう?落とすのは少し過激な表現では?という意見もあるでしょう。しかし車の送迎でお客様を降ろす際ことを drop-off と言いますが、客を落とすとは言いません。なので指定の位置で車から降りる、指定のマスで駒が手から降りるという意味が drop にはあると覚えましょう。

王手、詰み、投了はチェスの用語をそのまま使います。

投了の resignation は他にも「退職する、辞任する」という意味で使います。日常英会話でも使われる単語なので、これを機に覚えてもいいでしょう。

棋譜の英語表現は難しい

一般的なルール

棋譜記号の読み方

棋譜の読み方は独特ですね。英語での棋譜表現もできるだけ簡潔にするためのルールがあります。国際将棋マガジンの実例から私も勉強しました。

上の図は先手4五歩打の例です。全部で 7 桁あります。順にみていきましょう。

最初は先手か後手かを指定します。日本と同じ黒が先手、白が後手です。英語表記でも三角マークを慣例としています。上記の例は先手の黒三角です。

2 文字目は成駒を動かしたかどうかを表現します。成駒の場合はここに + を入れます。非成駒や金将の場合 2 文字目はなく次に飛びます。上記の例は歩なので何も入りません。

3 文字目は駒の名称です。先ほど紹介した駒の頭文字を入れます。上記の例は歩なので P です。と金だったら +P になり 2 文字目と 3 文字目が両方入ることになります。

4 文字目は少し複雑です。駒をただ動かしただけか、打ち駒か、相手の駒をとるのかで表現が違います。上記の例は歩打ちなので*が入ります。相手駒をとる場合はxを入れます。少し難しいのでこのあと例題を参考にしましょう。

5 文字目と 6 文字目はマスの位置です。位置の指定は日本の将棋のルールに従うので縦・横の順です。ただし漢数字は使いません。

7 文字目は動かした駒が成ったかどうか記載します。敵陣に入って成った場合は + を付けます。不成の場合は何も入れません。

同じ駒が近くにある場合はどちらの駒が動いたかさらに細かく表現するため、左、右、直ぐ、引くなどもあります。しかしこの英語表記ルールには含まれていません。代わりに記号の最後に前位置をカッコで書きます。例えば▲5八金左を▲G 58 (69) と書くことで対応しています。将棋ソフトで使われる表記と同じでしょうか。

代表的な駒の動きの例

棋譜記号の例題

私なりに例題を用意していました。上の図から順番にみてみましょう。

まずは右中央の▲2四歩です。対局開始直後にある最もシンプルな駒の動きです。先ほどのルールに従うと▲P24になります。

次に左にある2手の動きです。先手が9四歩と突き捨てた後に、後手が同歩と駒を取ります。この動きを英語にすると▲P94, △Pxとなります。xを使うことで同歩と略して表現できます。△Px94としてももちろん問題ありません。同でなくても駒をとる場合はxを入れるというルールだからです。

次はその右にある▲7五竜の動きです。すでに成っている飛車を動かしているので▲+R75です。あとは通常の駒の動きと同じになります。

その下には馬がいますね。後手の角が敵陣に入って成ったので、△B88+として角成を表現しています。

その右では後手がさらに銀を敵陣に進めました。しかし成らなかったので、通常の駒の動きと同じ△S37です。

最後は一番下です。先手が香車を打ちました。持ち駒を使ったことを示す*を入れて▲L*69となります。

実際の棋譜はこの例の組み合わせになります。

まとめ

私は将棋はできるのですが、強くありません。ただ藤井聡太さんで火が付いた将棋ブームのおかげで私も将棋の面白さを再認識しました。

今回紹介した将棋の英語表現も予想以上に面白くて、この記事を執筆した私自身がとても勉強になり執筆もあっという間でした。本記事を通じて英語の将棋も面白そうと感じてくれたら嬉しいです。

この記事をまとめましょう。

  • 将棋の英語表現はチェスの用語をかなり採用している。チェスを知っている人にはとっつきやすい。
  • 駒や将棋用語の英語表現に難しい単語は使っていない。英会話にも活かせる表現なので覚えてみよう。
  • 棋譜の表現は英語でも独特だが、漢字ではなく記号を使うことで共通化と簡略化の工夫がある。

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※本記事の目的は英語表現を学ぶことです。将棋のルールや駒の動かし方、局面の解説については取り扱いません。

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このブログを書いている人

ダイブツ
twitter: @habatakurikei
元々IT系だけど電気系技術者。20代で博士号を取得するも、全然社会の役に立てないのが不満でブログによる情報発信を開始。あなたに有益な知識やノウハウを理系目線かつ図解でわかりやすく解説するのがモットー。2018年心臓発作であわや過労死寸前。そこからガジェットレビューを通じた体調管理の情報発信も開始。ベルギー在住でシンガポール就労経験もあり、海外転職や海外生活のノウハウも公開中。

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