将棋用語の英語表現を楽しく学ぼう—道具、駒、ルール

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日本の将棋界初の女流棋士として、ポーランド出身のカロリーナ・ステチェンスカ女流1級が誕生しました。

カロリーナ女流は対局だけでなく、「国際将棋マガジン(International Shogi Magazine)」という英語のフリーペーパーを発行し将棋の魅力を英語で世界に伝えています。

この記事では将棋で使う道具や用語を英語でどう表現するのか?紹介します。将棋がどのように国際化されているのか、英語を通じて理解する第一歩です。

※本記事の目的は英語表現を学ぶことです。将棋のルールや駒の動かし方、局面の解説については取り扱いません。

英語で将棋の基本用語を表現する

将棋に必要な道具

将棋に必要な道具の英語表現

まずは将棋に必要な道具を英語で何て言うのか、以下にまとめてみました。

  • 将棋盤: Shogi board (または単にboard)
  • 将棋盤のマス: square
  • 駒: shogi piece (または単にpiece)
  • 駒台: piece stand
  • チェスクロック: chess clock (または単にclock)

チェスの盤のことをchess boardと言うので、将棋盤もそれにならってshogi boardです。boardという単語は本来「平らな板」という意味です。プロの使う将棋盤は平らでない物もありますが、意味の厳密性よりもわかりやすさを優先してboardを使います。

将棋は9×9の合計81マスに駒を動かして玉を取りに行くゲームです。各マスは四角の意味のsquareですが、棋譜の説明ではこの単語を省略します。

駒は一般名称でpieceです。パズルのピースと同じ単語です。各駒の名称についてはこのあと紹介します。

駒台はpiece stand、チェスクロックはchess clockです。局面の解説では使いませんが、インタビューなどで出てくるかもしれない表現なので予備知識として覚えておきましょう。

各駒の名称

将棋の各駒の英語表現

次に駒の名称を英語で表現するとこのようになります。

  • 王将、玉将: King (K)
  • 飛車: Rook (R)
  • 角行: Bishop (B)
  • 金将: Gold General (G)
  • 銀将: Silver General (S)
  • 桂馬: Knight (N)
  • 香車: Lance (L)
  • 歩兵: Pawn (P)

棋譜中ではカッコ内の略称を使いますので覚えてください。どの駒も頭文字を使いますが、桂馬の頭文字のKはKingとかぶってしまうため、2文字目のNを採用します。

上記の駒の中で、玉、飛車、角、桂馬、歩は同じ駒の動きをするチェスの駒と同じ呼び名です。これなら海外の人にも覚えやすくて親切ですね。

金、銀はチェスに似たような駒が無いため、そのまま英訳してGoldとSilverです。簡単な英単語なので、これも海外の人は覚えやすいでしょう。

興味深かったのが香車です。香車はチェスにない駒で、かつ金や銀のように簡単には訳せません。しかし駒の動きが一直線であることから槍(やり、Lance)という名前です。

研究社新英和大辞典第6版によると、lanceの2番目の意味は槍騎兵(そうきへい)という意味です。つまりlanceなら一直線に進む兵士のシンボルとして意味が通るわけです。

うまい訳だな~と感心しました。

こういう目線で英語に触れると新鮮ですね。私自身が勉強になりました。

駒が成るのは昇進と同じ

将棋の各成駒の英語表現

駒が敵陣に入って成ることを英語でpromotionと言います。これは昇進の意味のpromotionと同じです。

各成駒はpromotionを使ってこう言います。

  • 龍王(竜): Promoted Rook (Dragon King)
  • 龍馬(馬): Promoted Bishop (Dragon Horse)
  • 成銀: Promoted Silver
  • 成桂: Promoted Knight
  • 成香: Promoted Lance
  • と金: Promoted Pawn (Tokin)

竜や馬は大駒なので別名でDragon KingとかDragon Horseとも表現できます。しかし後ほど紹介する棋譜では別の記号を使うので、あまり使わない表現かもしれません。

また、と金のことを成歩とは言いません。しかし英語では表現上Promoted Pawnの方がルールを統一していていいでしょう。カロリーナ女流が解説している英語サイトでは一応Tokinという表現もあります。

その他の基本用語

将棋盤と駒以外の基本用語についても紹介しましょう。まずはこれだけ知っていれば大丈夫でしょう。

  • 先手: Sente or Black
  • 後手: Gote or White
  • 持ち時間: Time condition, basic time
  • 秒読み: Byo-yomi
  • 局面: position
  • 局面図: diagram (diag.)
  • 手番: turn
  • ◯手: move (3手目はthird move, 5手数はfive moves)
  • 千日手: repetition of moves
  • 持ち駒: piece in hand
  • 打ち駒: piece drop
  • 王手: Check
  • 詰み: Checkmate
  • 投了: Resignation (resign)

先手と後手は棋譜に出てくる▲と△の色からそれぞれBlackとWhiteです。

※本来の先手・後手の記号は☗と☖ですが、慣例にならって▲と△を使わせていただきます。

持ち時間は英語でこのように表現します。

Time conditions are 10 minutes basic time and 30 seconds byo-yomi for each player.

【訳例】持ち時間はそれぞれ10分、それ以降は1手30秒の秒読みです。

局面はposition、局面図はdiagramです。diagramは省略してdiag.とも表します。

図という意味の英単語はdiagram以外にもfigure, graph, chart, plot, drawing, picture, illustrationなどたくさんあり使い分けが難しいです。私の個人的な解釈ですが、このような違いがあると認識しています。

  • figure:図の一般的な意味
  • diagram:線画、物の位置と関係を表した図(技術の世界の回路図など)
  • graph, chart:棒グラフや円グラフなどデータ解析した統計的な図
  • plot:点と線でできたgraphの簡略的な図
  • drawing:diagramやgraphを整理した図面のこと
  • picture:絵画や写真(photograph)
  • illustration:マンガのようなカジュアルな絵

将棋にて手とは駒を動かすことなので英語でmoveです。イメージできますね。

持ち駒と打ち駒は駒のpieceをどうしているのか、状況をイメージすると理解できます。

持ち駒は取った駒を自分の手中に収めるのでpiece in handです。

しかし打ち駒のdropはどうでしょう?落とすのは少し過激な表現では?という意見もあるでしょう。しかし車の送迎でお客様を降ろす際ことをdrop-offと言いますが、客を落とすとは言いません。なので指定の位置で車から降りる、指定のマスで駒が手から降りるという意味がdropにはあると覚えましょう。

王手、詰み、投了はチェスの用語をそのまま使います。

投了のresignationは他にも「退職する、辞任する」という意味で使います。日常英会話でも使われる単語なので、これを機に覚えてもいいでしょう。

棋譜の英語表現は難しい

一般的なルール

棋譜記号の読み方

棋譜の読み方は独特ですね。英語での棋譜表現もできるだけ簡潔にするためのルールがあります。国際将棋マガジンの実例から私も勉強しました。

上の図は先手4五歩打の例です。全部で7桁あります。順にみていきましょう。

最初は先手か後手かを指定します。日本と同じ黒が先手、白が後手です。英語表記でも三角マークを慣例としています。上記の例は先手の黒三角です。

2文字目は成駒を動かしたかどうかを表現します。成駒の場合はここに+を入れます。非成駒や金将の場合2文字目はなく次に飛びます。上記の例は歩なので何も入りません。

3文字目は駒の名称です。先ほど紹介した駒の頭文字を入れます。上記の例は歩なのでPです。と金だったら+Pになり2文字目と3文字目が両方入ることになります。

4文字目は少し複雑です。駒をただ動かしただけか、打ち駒か、相手の駒をとるのかで表現が違います。上記の例は歩打ちなので*が入ります。相手駒をとる場合はxを入れます。少し難しいのでこのあと例題を参考にしましょう。

5文字目と6文字目はマスの位置です。位置の指定は日本の将棋のルールに従うので縦・横の順です。ただし漢数字は使いません。

7文字目は動かした駒が成ったかどうか記載します。敵陣に入って成った場合は+を付けます。不成の場合は何も入れません。

同じ駒が近くにある場合はどちらの駒が動いたかさらに細かく表現するため、左、右、直ぐ、引くなどもあります。しかしこの英語表記ルールには含まれていません。代わりに記号の最後に前位置をカッコで書きます。例えば▲5八金左を▲G58(69)と書くことで対応しています。将棋ソフトで使われる表記と同じでしょうか。

代表的な駒の動きの例

棋譜記号の例題

私なりに例題を用意していました。上の図から順番にみてみましょう。

まずは右中央の▲2四歩です。対局開始直後にある最もシンプルな駒の動きです。先ほどのルールに従うと▲P24になります。

次に左にある2手の動きです。先手が9四歩と突き捨てた後に、後手が同歩と駒を取ります。この動きを英語にすると▲P94, △Pxとなります。xを使うことで同歩と略して表現できます。△Px94としてももちろん問題ありません。同でなくても駒をとる場合はxを入れるというルールだからです。

次はその右にある▲7五竜の動きです。すでに成っている飛車を動かしているので▲+R75です。あとは通常の駒の動きと同じになります。

その下には馬がいますね。後手の角が敵陣に入って成ったので、△B88+として角成を表現しています。

その右では後手がさらに銀を敵陣に進めました。しかし成らなかったので、通常の駒の動きと同じ△S37です。

最後は一番下です。先手が香車を打ちました。持ち駒を使ったことを示す*を入れて▲L*69となります。

実際の棋譜はこの例の組み合わせになります。

まとめ

私は将棋はできるのですが、強くありません。ただ藤井壮太さんで火が付いた将棋ブームのおかげで私も将棋の面白さを再認識しました。

今回紹介した将棋の英語表現も予想以上に面白くて、この記事を執筆した私自身がとても勉強になり執筆もあっという間でした。本記事を通じて英語の将棋も面白そうと感じてくれたら嬉しいです。

この記事をまとめましょう。

  • 将棋の英語表現はチェスの用語をかなり採用している。チェスを知っている人にはとっつきやすい。
  • 駒や将棋用語の英語表現に難しい単語は使っていない。英会話にも活かせる表現なので覚えてみよう。
  • 棋譜の表現は英語でも独特だが、漢字ではなく記号を使うことで共通化と簡略化の工夫がある。

外部リンク:Shogi Harbour – a safe place for every shogi player (カロリーナ女流が立ち上げた英語による将棋情報発信サイト、国際将棋マガジンの発行元)

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