戦略的な情報発信で信頼を勝ち取る『SNSで夢を叶える』

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今回の書評は『SNSで夢を叶える ニートだった私の人生を変えた発信力の育て方』です。

SNSで夢を叶える成分

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スマホの時代の自己プロデュース術

スマートフォンが 1 人 1 台ある時代、 SNS を使っていない人は少数派でしょう。

これから個人でも活躍できる時代になる。このブックレビューでもお伝えしていることです。しかし私の説明はどちらかと言うと具体的な戦術よりも概念的かもしれません。

本書は著者でモテクリエイターであるゆうこす(菅本裕子氏)が、 SNS を使った具体的な情報発信のノウハウを教えてくれる本です。

かつて著者はアイドルを経験したもののニートになりました。しかしその後フォロワーを爆発的に増やし、やりたいことができるようになった(仕事のオファーが来るようになった)と言います。同じように、やりたいことができず悩んでいる人へのアドバイスとして本書は書かれました。

次節で詳しく説明しますが、彼女の SNS の使い分けはまさに戦略的です。

かつてツイッターで戦っていたこと、良いと思える発信者を徹底的に分析したこと、1年半かけて試行錯誤し多数のフォロワーを獲得したという著者のメッセージは素直にすごいと受け止めることができます。

さらには検索(エゴサーチ)やアンケート機能の使いこなし方を紹介。 DM を開放して相談を受け付けたときのファンとのやりとりは実体験がありありと書かれています。

SNSツールの徹底した使い分けに脱帽

本書では Twitter, Instagram, Youtube, ブログのそれぞれの特徴と使い分けについてかなり細かく書かれています。

メインはツイッターです。著者は私と違い中学生の頃にすでに携帯がある時代に育っています。 SNS のない生活は考えられないと、その想いは文章から伝わってきます。

拡散に向いているツール、深く掘り下げて発信するべきツールを分けて紹介し、その上で「各ツールにベストな形で発信しているか?」を読者に問いかけます。

ツールによって利用層が違うことも考慮して、紹介するアイテムやアドバイスも分けています。単純に同じ文章をどのツールで書いても共感は得られない、と第1章から相当深く突っ込んでいます。

私が本書で一番刺さったのは、第 4 章のインスタグラムの使い方です。引用させていただきます。

でも、インスタを使えば自分一人で、しかも無料で私だけの雑誌が作れるのです。素晴らしいメディアだと思いませんか?

ゆうこす 『SNSで夢を叶える ニートだった私の人生を変えた発信力の育て方』 KADOKAWA (2017) kindle 版位置 No. 1021 付近より引用

「自分の雑誌が作れる」この一言は目からうろこでした。個人で活躍することが大切と言いつつも、ここまでインスタグラムを分析できなかった自分の認識の甘さを痛感します。

そしてコスメ用品のリアルな感想や、どうすればモテるか?といった役に立つ情報の発信の方法。どのような写真や文章が読者に共感してもらえるか、といったノウハウについては私も見習いたいくらいです。

そこまで細かくノウハウを書いているのに、残念なことに写真や図による解説が一切ありません。写真の取り方にまでこだわっているのだから、良い例と悪い例を図解で説明すればもっと良かったのですが。もったいなさすぎます。

これは著者が悪いのではなく編集方針の問題でしょう。著者の熱い思いは文章から伝わるのですが、編集者は本気だったのか?疑ってしまいます。

もう1つレベルアップした「いい女」へ

本当はもっと細かく解説したいのですが、ネタバレになるのでここまでにします。本書をぜひ読んでいただきましょう。

それくらい、ゆうこすの SNS 戦略には学べることがたくさんあります。年下とか女性とか関係なく尊敬します。

最後に 1 つだけ、どうしても残しておきたいことがあります。それは「ありのままの私を愛して」という部分です(第 6 章)。

本書では共感を得るために文章、写真、ツールの使い方などを出し惜しみせず公開しています。

でも、そこまで手をかけて可愛く作ったものが「ありのまま」なはずがありません。だから最後の最後に「ありのままの私を愛してほしい」はないでしょう。

美輪明宏さんの言葉を借りるならば、「ありのままの私を見て」は「畑から抜いてきた大根を(土がついたまま)そのまま食べて」と言うようなものです。ありのままならすっぴんを出せばいいのです。

つまり、著者の言う「ありのまま」は「わがまま」なんです。そういうところに女子のずるさというか、したたかさを感じますね。

私だったら「今日はこんな風に可愛く作ってみた」と言ってくれた方が素直で嬉しいです。私は空気が読めない人なので、気づいてあげられないことが多いので。

本書を読んで「ゆうこすって頭がいいな」とうなされました。本書は一読の価値がありますし、ゆうこすを応援しています。

だからこそ、ありのままではなく「いい女になったよ」と伝えてほしい。美輪明宏さんの言う美人から麗人になってほしい。

  • 美人:容姿がきれいな人
  • 麗人:知識や教養も備えた、美人より一段上の女
※麗人の定義は美輪明宏 『天声美語』 講談社 (2000) p.28 による。

今回紹介した本