オーラリング(右手)対アップルウォッチ生体計測データ比較レビュー

この記事は約 12 分で読めます

アップルウォッチを左手に装着、オーラリングを右手に装着した状態の写真

このシリーズではスマートウォッチやスマートリングの健康管理・生体データ計測機能をレビューしています。

この記事では Oura Ring Gen 3 とアップルウォッチを比較します。

結論からいうと、広範囲に渡る健康データを正確に測定したい場合はアップルウォッチをおすすめします。

歩数と皮膚温以外はアップルウォッチの方が信頼性の高そうな結果となりました。特に日中の心拍数についてはオーラリングの計測結果に疑問がありました。

もしオーラリングを使いたければ非利き手への装着をおすすめします。右手と左手別々にデータを比較した結果、左手(非利き手)に装着した方が良かったからです。

統計解析も含めた詳しい比較結果をすべて公開します。

結果を知りたい人はまとめをお読みください。

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レビュー方法

生体データの計測とレビュー方法のイラスト。日中・夜間ともにデバイスを装着してデータ収集する。データはPCにダウンロードして統計的にデバイスのクセを比較する。

デバイスの装着と計測時間

上図に示すイメージでレビューを行いました。

左腕に Apple Watch (Series 8), 右手人差し指に Oura Ring Gen 3 を装着しました。

Oura Ring はどちらの手に装着しても良いとメーカーが公式に発表しています。どちらが良いのか比較するためこの記事では右手(利き手)のケースをレビューします。

日中、夜間を通して装着しデータを取り続けました。例外としてシャワー中のバッテリー充電 (18:00 – 20:00), 毎朝の体重計測時など一部非計測の時間帯があります。

計 2 週間 (15 日間) データをとりました。

比較項目とデータ解析ツール

メーカーのアプリを使ってまずは基礎データを集計します。そして私の個人 PC にデータを手動でダウンロードしてさらに細かく分析します。

比較する項目は下記のとおりです。

  1. 歩数 (Steps)
  2. 安静時心拍数 (RHR: Resting Heart Rate)
  3. 心拍変動 (HRV: Heart Rate Variability)
  4. 呼吸数 (Respiratory Rate)
  5. 血中酸素 (Oxygen Saturation, SpO2)
  6. 皮膚温 (Skin Temperature)
  7. 最大酸素摂取量 (VO2 Max)

外部リンク:ヘルスサイエンス | Garmin (各計測項目の正常範囲などを参考)

分析のメインは折れ線グラフによる日々の傾向比較です。両デバイスが同じ傾向で計測できているか確認します。

同じ傾向かどうか、統計的には正の相関があるかどうかで判断できそうです。そのため相関係数 R も計算します。

一部の項目は t 検定による平均値の比較も行います。

この記事は論文ではないので本格的な統計処理はやりません。しかし簡易分析でも「両デバイスに有意な(計測の)差があるか」、「日々の計測が安定しているかどうか」といったことが t 検定でわかります。

どちらの計測精度が良いか、といった評価ではなく製品ごとのクセを明確にしたいと思います。

計測精度の観点でいえば、アップルウォッチの精度は良いはずです。アップルウォッチは医療機器認証(心電図のみ)を取得しています。

データの扱い方や解析の補足説明についてはまとめページの項目を参照願います。

関連記事:データ解析のための補足(各社ヘルストラッカーの健康管理機能をレビュー)

グラフによる傾向比較結果

参考:日中の心拍数

ある日の心拍数の比較結果。オーラリングの方が値が高い。

上図は日中の心拍数のアップルウォッチとオーラリングの比較結果です。不自然な点があったので取り上げます。

同日の計測であるにもかかわらず、アップルウォッチは終日心拍数が 100 以下でした。

一方、オーラリングは一日に何度も心拍数が 100 を超える計測結果がありました。なぜでしょうか?

オーラリングを左手(非利き手)に装着した時はこのような現象はありませんでした。

この日はテレワーク(自宅仕事)なので特に激しい運動はしていません。

利き手の人差し指独特の動作か何かで値が高く出ているとしか考えられないのですが、原因はわかりません。

オーラリングを利き手に装着すると心拍数が安定して計測できないのではないでしょうか。

歩数

各日の歩数のプロット結果。両デバイスとも同じ傾向。

上図は歩数の比較結果です。

基本的には同じ傾向で計測できているようです。相関係数 R = 0.979 で高い正の相関を示しています。

しかし全体的にオーラリングの値がアップルウォッチより高めに出ています。なぜでしょうか?

オーラリングを左手(非利き手)に装着していた時はアップルウォッチとほぼ同じ値でした。

キーボードのタイピング時に計測誤差があると思いましたが違うようです。タイピングは左右両方の手でやります。片方だけずれるとは思えません。右手だけ多く出るのは不思議です。

考えられるとするならマウスの操作でしょうか?マウスのクリック動作で歩数を多めにカウントするなら嬉しくないです。それとも他の利き手の動作(包丁?)でしょうか。

そう考えるとオーラリングは左手(非利き手)に装着した方がよさそうです。実際他のメーカーでは非利き手に装着することを推奨しています。

安静時心拍数

各日の安静時心拍数のプロット結果。オーラリングの方が全体的に値が低い。

上図は安静時心拍数の比較結果です。

オーラリングの安静時心拍数が明らかに低いです。

オーラリングは「睡眠中に計測した心拍数の最低値」を安静時心拍数として採用しています。本来の定義とは違います。

相関係数 R= 0.499 は弱い正の相関が認められます。傾向(日々の違い)としてはアップルウォッチとオーラリングで似たように計測するのでしょう。

起きている間に計測しているアップルウォッチの安静時心拍数の方が実態を表しているとはいえそうです。

統計解析も交えて総合的に判断しましょう。

心拍変動

各日の心拍変動のプロット結果。オーラリングの方が全体的に値が低い。

上図は心拍変動の比較結果です。

オーラリングの心拍変動値がアップルウォッチよりも低いです。オーラリングは全期間で心拍変動値が 20 から 40 の間でした。

相関係数 R = 0.066 は相関しているとはいえません。

オーラリングを非利き手(左手)に装着した時も相関係数 R = 0.119 で相関しませんでした。そして利き手装着時の今回はより悪い結果でした。

オーラリングは心拍変動をアップルウォッチと同じように計測できないといえます。

呼吸数

各日の呼吸数のプロット結果。測定値が近く似た傾向のように見えるが相関なし。

上図は呼吸数の比較結果です。

ぱっとグラフを見た感じでは、アップルウォッチとオーラリングで同じように呼吸数が計測できていそうです。

しかし相関係数 R = 0.190 で相関があるとはいえない値です。非利き手(左手)に装着した時は R = 0.664 で今回より良かったです。

つまり呼吸数の値は似た値を示しているが傾向としては違う。この点がオーラリングの左手装着時と異なる点です。

メーカーによると睡眠中の呼吸数は高精度で計測できたようですが、条件によるかもしれません。

オーラリングは左手(非利き手)に装着した方がよさそうです。

念のため統計分析も含めて総合的に判断しましょう。

血中酸素

各日の血中酸素のプロット結果。傾向はやや似ている。

上図は血中酸素の比較結果です。

血中酸素についてもオーラリングの結果は右手(利き手)と左手(非利き手)で違う結果となりました。

相関係数 R = 0.426 で弱い正の相関が認められます。左手にオーラリングを装着した時は相関なしという結果でした。

また日々の測定結果はアップルウォッチとオーラリングで違いはあります。

呼吸数を細かく測るにはオーラリングを非利き手に装着する。血中酸素を細かく測定するには利き手に装着する。このような使い分けが必要なのでしょうか。

統計分析も考慮してみましょう。

皮膚温

各日の皮膚温のプロット結果。傾向はやや似ている。

上図は皮膚温の比較結果です。

皮膚温は平均値(ベースライン)に対する相対的な温度変化です。基準値がわからないので比較は難しいです。

アップルウォッチの皮膚温はかなりマイナス側に振れています。一方オーラリングはプラス側・マイナス側どちらも振れ幅が小さいです。

相関係数 R = 0.317 は弱い正の相関を表しています。両デバイスの傾向はやや似ているといえます。

とはいえオーラリングを左手(非利き手)に装着していた時の方がわずかに相関係数は高かったです。

皮膚温に関しては指に密着しているオーラリングの計測を信じたいです。アップルウォッチは腕なので睡眠中の寝返りなどで接触が不安定になるはずです。

実際にオーラリングは Fitbit との比較で 38 度台の発熱を検知していました。オーラリングの皮膚温は細かく計測できていそうです。

関連記事:Fitbit Charge 5対アップルウォッチ生体データ比較レビュー

最大酸素摂取量

各日の最大酸素摂取量のプロット結果。推定値は実測値よりも高い。

上図は最大酸素摂取量 (VO2 Max) の比較結果です。

Apple (Measured) はワークアウトで計測した結果、 Apple (Estimated) は安静時心拍数から推定した値です。

オーラリングには VO2 Max を計測する機能はありません。そのため安静時心拍数から推定した値だけグラフにプロットしました。

グラフから見る限り、アップルウォッチとオーラリング、どちらもワークアウトの計測結果よりも最大酸素摂取量の値が高いです。

推定値同士の相関係数 R = 0.462 は弱い正の相関はあります。

しかしオーラリングは安静時心拍数の値が「睡眠中の最低心拍数」であり本来の定義と違います。つまり安静時心拍数の推定値も実態を表しているとはいえません。

アップルウォッチの実測値が最も信頼できそうです。

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統計処理の結果

難しい話になるので結果だけ知りたい人はここを飛ばして最後の「まとめ」をお読みください。

歩数

歩数の平均値の比較結果。両デバイスに違いはない。

上図は歩数の t 検定の結果です。上図は箱ひげ図と呼ばれています。

黒いダイアモンド型の点は外れ値と呼びます。平均に対して著しく離れている値です。この場合は高い値の外れ値です。外出でいつも以上に多く歩いたのでしょう。

グレーの箱(アップルウォッチ)と紺の箱(オーラリング)の高さを比べるとオーラリングの方が高い位置にあります。

しかし統計的な有意差はありませんでした。歩数の平均値はアップルウォッチよりオーラリングの方が高い。しかし統計的に差があるほどではない、ということでした。

何らかの理由で高めになったのですが、原因ははっきりわかりません。傾向分析で指摘した、利き手としての様々な動作が関係しているのでしょう。

安静時心拍数

安静時心拍数の平均値の比較結果。オーラリングの平均値がアップルウォッチより低い。

上図は安静時心拍数の t 検定の結果です。

統計的に有意差があるという結果がハッキリでました。両デバイスの平均値には統計的な違いがあります。 p < 0.001 という結果は乱暴に言えば「この差が偶然起きた確率は 0.1 % 未満」です。

傾向分析で指摘した通り、オーラリングの安静時心拍数の平均値は明らかにアップルウォッチよりも低いです。それが統計的にも示されました。

しかしここではアップルウォッチに注目しましょう。アップルウォッチの安静時心拍数には外れ値が多いです。珍しいですね。

全体的に 59 付近に値が集中しているのでしょう。しかし 58 でも外れ値判定されるのは普通ではないですね。

季節の変わり目による体調の不安定さ、または新年度で緊張感が続いたのでしょうか。

このように箱ひげ図で平均、範囲、外れ値を可視化することでさらなる分析のきっかけを与えてくれました。

結論としては、オーラリングの安静時心拍数はアップルウォッチよりも明らかに低く出るということです。

心拍変動

心拍変動の平均値の比較結果。オーラリングの平均値が有意に低いくストレスレベルの変化を調べにくい。

上図は心拍変動の t 検定の結果です。

統計的に有意差があるという結果がハッキリでました。両デバイスの平均値には統計的な違いがあります。 p < 0.001 という結果は乱暴に言えば「この差が偶然起きた確率は 0.1 % 未満」です。

オーラリングを左手(非利き手)に装着したした時よりも今回右手(利き手)で装着した時の方が外れ値が多いです。計測幅も狭く何かがあるのですが、原因はわかりません。使っている心拍センサーではないかと思いますが。

一方、アップルウォッチも外れ値はあるものの、全体的な計測範囲はオーラリングの非利き手装着時のレビューと大差ありません。

オーラリングの心拍変動の計測は明らかにアップルウォッチと違います。

呼吸数

呼吸数の平均値の比較結果。オーラリングの方が値が低い。

上図は呼吸数の t 検定の結果です。

統計的に有意差があるという結果がハッキリでました。両デバイスの平均値には統計的な違いがあります。 p < 0.001 という結果は乱暴に言えば「この差が偶然起きた確率は 0.1 % 未満」です。

傾向分析ではわずかな違いのため一見すると同じように計測しているように感じました。しかし統計分析すると明らかに違うという結果でした。

オーラリングを利き手に装着すると、アップルウォッチよりも睡眠中の呼吸数を明らかに低く計測する。

精度良く計測するにはオーラリングは非利き手に装着することをお勧めします。

血中酸素

血中酸素の平均値の比較結果。有意差はないがオーラリングの方が値は高め。

上図は血中酸素の t 検定の結果です。

オーラリングの方が平均値は高いですが、統計的な有意差はありませんでした。

オーラリングには低い方にバーがありません。高めに計測したのがもしかしたら不具合の可能性もあります。

傾向分析で弱い正の相関が認められたものの、毎日測るのであればアップルウォッチでいいでしょう。

まとめ

スマートリングは現在オーラリング一強という感じですが競争が必要でしょう。改善すべき余地がたくさんあります。

オーラリングは非利き手に装着しましょう。

この記事をまとめましょう。

  • 日中の心拍数:ある日の計測ではアップルウォッチは終日 100 以下で安定していたのに対し、オーラリング(利き手装着)は何回も 100 を超えた。装着する手の違いで結果に影響が出たかもしれない。
  • 歩数:日々の傾向は高い正の相関を示したが一致していたが、オーラリングはアップルウォッチよりも高めに計測された。一方 t 検定による平均値比較では統計的な有意差はなかった。オーラリングが高めに計測する理由は、利き手特有の動作が影響していると思われるが原因は不明。
  • 安静時心拍数:オーラリングはアップルウォッチよりも明らかに低く計測された。日々の傾向に関しては弱い正の相関がみられ、 t 検定による平均値比較では統計的な有意差が認められた。オーラリングは就寝中の最低心拍数を採用するため本来の安静時心拍数とは定義が違う。
  • 心拍変動:オーラリングはアップルウォッチよりも明らかに低く計測された。日々の傾向については相関が認められない一方、 t 検定による平均値比較では統計的な有意差があった。オーラリングはアップルウォッチと同じように計測できないといえた。
  • 呼吸数:オーラリングはアップルウォッチよりも低く計測した。日々の傾向ではほとんど相関が認められない一方、平均値の比較でも統計的に有意な差が存在した。左手(非利き手)にオーラリングを装着したほうが細かく計測されるかもしれない。
  • 血中酸素:日々の傾向としては弱い正の相関が見られた。またオーラリングは平均値で高いものの統計的な有意差は見られなかった。アップルウォッチの方が信頼できそう。
  • 皮膚温:両デバイスの間に弱い正の相関が見られた。アップルウォッチは大きくマイナス側に振れたのに対し、オーラリングの振れ幅は小さかった。オーラリングの計測結果が安定していると信じたい。
  • 最大酸素摂取量 (VO2 Max): アップルウォッチとオーラリングの推定値同士では弱い正の相関が見られた。しかしオーラリングは実測する機能がなく、推定値は「睡眠中の最低心拍数」に基づくもので本来の定義とは異なる。そのため最も信頼性が高かったのはアップルウォッチの実測値であった。

関連記事:オーラリング(左手)対アップルウォッチ生体計測データ比較レビュー

関連記事:Oura Ring vs Fitbit 「睡眠の質」表示比較レビュー

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※このレビューは 2023 年 5 月に行いました。最新ソフトではこの記事で書かれた内容と相違があるかもしれません。

※このレビューではアプリは iPhone 版を主に使用しました。 Android 版でも大きな違いはないと想定してレビューしました。

※レビュー時点での Oura Ring Firmware Version: 2.8.56

※この記事のデータ測定結果は診断結果ではありません。データを過信せず不調を感じた際にはかかりつけ医に相談してください。

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このブログを書いている人

ダイブツ
twitter: @habatakurikei
元々IT系だけど電気系技術者。20代で博士号を取得するも、全然社会の役に立てないのが不満でブログによる情報発信を開始。あなたに有益な知識やノウハウを理系目線かつ図解でわかりやすく解説するのがモットー。2018年心臓発作であわや過労死寸前。そこからガジェットレビューを通じた体調管理の情報発信も開始。ベルギー在住でシンガポール就労経験もあり、海外転職や海外生活のノウハウも公開中。

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