科学が政治に使われている?『地球はもう温暖化していない』
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今回の書評は『地球はもう温暖化していない』です。
地球温暖化は二酸化炭素よりも太陽の活動
「地球温暖化の原因は二酸化炭素 (CO2) ではなくて太陽の活動だよ」
2005年、当時神奈川大学の学生(大学院生)だった私にこう言いました。桜井邦朋先生、アメリカでも研究された宇宙物理学の大先生でした。
既に定年退職されていた先生は名誉教授として大学院の授業を担当された際、色々なことを教えていただきました。
関連記事:STEM教育の重要性は明治時代から言われていた『福沢諭吉の科学のススメ』(桜井邦朋先生の著書レビューです)
あれから15年以上経ちました。世間ではいまだに「地球温暖化=二酸化炭素」という風潮がなくなりません。
本書は同じく物理学者である深井氏による、地球温暖化の正しい知識を広めるための本です。
大きく分けて2つのメッセージがあります。
1つめは「地球寒冷化」です。
著者も桜井先生と同じく二酸化炭素は地球温暖化への影響はほとんどないと指摘しています。それどころか地球はこれから「寒冷化」に向かう、そのために食料やエネルギー確保で争いが起きる、と警笛を鳴らしています。
本書は多くの本や論文に裏付けされた解説のため、専門的なバックグラウンドも求められます。しかし地球の温度変化をシミュレーションした結果がグラフでわかりやすく比較できるように配慮されています。専門用語がわからなければグラフとその周辺の解説を読むだけでもいいでしょう。
もう1つのメッセージ、それは「地球温暖化が政治的な金儲けに使われている」という点です。
本書では、気候変動に関する政府間パネル (IPCC) の主張の矛盾やクライメートゲート(メール流出事件)についても著者の見解が述べられています。
Wikipedia を見ると問題無いような書き方になっています。しかし著者は一貫して IPCC が「二酸化炭素が温暖化の原因ではないことを隠そうとしている」と解説しています。
外部リンク:気候研究ユニット・メール流出事件 – Wikipedia
言い換えると「地球の温暖化の原因は二酸化炭素ありきで、二酸化炭素の排出量を減らす一連の活動で金儲けしている」ということです。
この記事を書いている時点で、世界は新型コロナウィルス (COVID-19) で大混乱しています。ニュースを観ていると世界保健機関 (WHO) や国連、欧州連合 (EU) などが機能していないと感じるのは私だけでしょうか?
組織が大きくなりすぎたのか、実は平和になりすぎているのか。
私も博士号を取った人間の端くれとして、良心を平気で裏切るような行動を国際機関や科学者にはしてほしくありません。事実かどうかは関係なく、これでは利権が絡んでいると疑われても仕方ありません。
著者はまた日本政府がこれ以上温暖化対策でお金を出すことにも NO を突きつけています。私たちひとりひとりが正しい知識を持って生活していかないといけません。
一部のレビューでは「本書のタイトルは中身と一致しておらずふさわしくない」というものがありました。私は『地球はもう温暖化していない』で問題ないと考えています。なぜなら温暖化していないことをちゃんと検証しているからです。
台風の数が減っているのは本当?
公表された内容をただ鵜吞みにせず、自分で検証することも必要です。
例として、台風の発生数について検証してみます。本書では台風の発生は減少傾向にある (同書 kindle 版位置 No. 2849 付近) としています。著者は気象庁のデータをグラフ化して解説しています。
これだと私でも検証できますね。それが上の図です。
データ引用元:気象庁|台風の発生数
青い線はその年の台風のトータル発生数。赤い線は回帰直線とよばれる、傾向を示した近似直線です。エクセルで計算しました。
私の結論は「台風の発生数は確かに減っているようにみえる。しかしこの数字だとたまたま減っているようにみえているだけかも」です。減っていると断言できません。
赤い線をみると確かに右斜め下に向かい「台風の発生数は減少している」といえそうです。しかし R2 という数字(重相関係数)は -0.02 でほぼゼロ。増えてはいないが減ってもない。つまり横ばい状態というのが一番近い説明でしょう。
このデータは時系列なので分析方法によって結果は変わるかもしれません。また他の地域のデータを入れたり、もっと古い時代のデータも入れたりした方がより細かい分析ができるでしょう。
こうやって自分で検証してみれば騙されるリスクが減るでしょう。
他にもみてほしいデータがあります。本書冒頭にある口絵です。
二酸化炭素が増えることで「砂漠が緑化」しているという事実です。カラーの世界地図でアフリカ部分の緑が増えていることがぱっと見てわかります。
二酸化炭素の排出が悪ではないということを、この例も含めて著者は一貫して主張しています。
初歩的な人為ミスが防げない
最後に、本書で指摘している温暖化の要因をもう1つ紹介します。この原因は技術の世界では決して許されないものです。
本書から引用させていただきます。
米国でもヒートアイランド効果の大きさがインホフら(2010)によって詳細に調べられ、また一部の観測点が劣悪な条件にあることが指摘されたことをきっかけに、元気象予報士アンソニー・ワッツの呼びかけで全観測ステーションの環境を調査しようというキャンペーンが行われた。結果は予想以上にひどいもので、測定誤差が1℃以下のものは10%に過ぎず、1~2℃が22%、2~5℃が61%、5℃以上が8%であった。
ちゃんと気温のデータがとれていないというのです。
これを知ったら「何やってるの?」とお怒りになるでしょう。もし日本の気温データ計測で同じようなミスをしていたら炎上案件間違いなしです。
そこなんです。人間はつい頭でっかちになるのです。「測定条件はちゃんと確認したはずだ」と思い込んでしまうのです。
私が日本で技術者として働いていた頃、似たようなミスをよくしていました。 LAN ケーブルや電気配線の接続、 IP アドレスの確認など、自分では確認したつもりが間違っていたことが何度もあり上司やお客様から怒られました。
こういったミスを防ぐには「チェックリストを作って定期的に検査する」、「2人以上で確認する」といったことが必要でしょう。
科学の世界は他にも似たようなミスがありました。ニュートリノの速度が光より速いかも?という実験結果が出ました。
しかし実際には光ファイバーケーブルの接続が緩く(接触が悪く抵抗となり)、光のスピードが遅くなっていたのです。下記のリンクによると他にも原因はあるようです。
外部リンク:【速報】超光速ニュートリノは間違い? | 科学コミュニケーターブログ(この件のやさしい解説) https://blog.miraikan.jst.go.jp/topics/20120223post-170.html
2020-07-10 補足:この記事は削除されました。何かまずいことがあったのでしょうか?
いずれにせよ実験前のチェックが足りなかったことは間違いありません。
人間は間違えます。ニュートリノの件では過ちをすぐ認めて訂正したようです。地球温暖化も違うことをすぐに認めれば、温暖化対策の予算は別のことに使うことができます。
やはり自分自身で正しい知識を身につけて生きていくしかないのでしょうか。