アスリートに英語力は必要?フェンシングの代表選考はやさしさ

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スポーツ選手もグローバル人材

日本フェンシング協会が「日本代表の選考に英語力を考慮する」と発表し、賛否が分かれています。そもそもアスリートに英語力は必要なのでしょうか?

この記事ではトップアスリートが語学も克服していることを解説します。

結論から言うと、私はこの発表に賛成です。

言葉はコミュニケーションツールであり、専門能力とは別ものであるという認識です。 Youtube のインタビュー動画も調べてわかりましたが、日本のトップアスリートは通訳を通さずに自分の言葉で話しています。

語学と専門能力は両立が可能です。

外部リンク:日本フェンシング協会、代表選考基準に「英語力」取り入れ 「基本的な日常会話ができる」条件 – 毎日新聞 (この記事のネタ元)

フェンシングの選手に GTEC A2 以上の英語力を要求、難しいのか?

同記事では、選手に要求されている英語力を「GTEC A2レベル以上」としています。これはどの程度の英語力なのでしょうか?

「英語4技能試験情報サイト」によると、 GTEC A2 レベル以上は英検と TOEIC でこのレベルに相当するようです。

  • 実用英語技能検定(実用英検):準2級または2級以上
  • TOEIC: 625 点以上

外部リンク:資格・検定試験CEFRとの対照表|資格・検定試験 関連情報[英語4技能試験情報サイト]

この点数はきちんと勉強すれば取れるレベルです。決して高いハードルではありません。

もし TOEIC 730 点以上や英検準1級以上を要求していたのであれば私も批判したでしょう。ハードルが高いと。しかし600点台は頑張れば達成できます。

私の経験上、某国立大学工学部の卒業要件(2008年度)は TOEIC 450 点でした。国立大学の卒業要件よりも高いレベルを選手に求めているのは事実です。

しかし、英語による最低限のコミュニケーションが可能なレベルとして A2 にした判断は妥当でしょう。

ちなみに、 GTEC は日本のベネッセが開発した英語能力試験です。 TOEIC と同じで日本人をターゲットにした試験であり、 TOEFLE や IELTS とは違います。読む・聴く・書く・話すの全4種をやるという点では GTEC は TOEIC より大変でしょう。

しかし英検2級でも同じことはできます。英検にも筆記問題や面接試験があるからです。 GTEC A2 ではなく英検2級合格ではだめなのでしょうか?

外部リンク:GTEC | スコア型英語4技能検定|ベネッセコーポレーション

アスリートは能力があれば英語力は不要なのか?そんなことはない

今回のニュースで「アスリートと語学」について注目が集まりました。フェンシング協会の今回の発表には批判もあるようですが、実際のところどうなのでしょう?

私の個人的な見解を述べましょう。基本的には賛成です。

通訳を雇えば解決?通訳が雇えるスポーツはごく一部

批判の中に「通訳を雇えばいい」というものがありました。本当にそうすべきでしょうか?

プロスポーツでも通訳が付けられるレベルの「待遇」があるのは野球とサッカー以外にありますでしょうか? F1 やプロゴルファーなどはあるかもしれません。しかし実際に通訳を雇えるのは億単位の年俸がもらえるごく一部の人たちだけではないでしょうか?

フェンシングの代表選考に英語力を求めると発表したのは、オリンピック代表選手に向けてです。プロの選手に向けられたものではありません。その点が重要です。

オリンピックに参加する選手の中には、自腹(スポンサーなし)で参加している方も多いはずです。むしろマイナースポーツではそれが顕著でしょう。社会人として働きながら練習している人もいます。

そのため、通訳を雇うという発想は安易な気がしてなりません。非現実的です。

代表レベルの選手は海外遠征で言葉もサバイバルしている

他にもある批判として「そのスポーツでずば抜けたスキルや結果を出していれば、語学力は不要」というものもありました。しかしこれも的外れです。

上記の主張を私の仕事(技術者)に当てはめるのであれば「技術力やスキルが高ければ英語ができなくてもアメリカで働ける」と言われているようなものです。

ありえません。

言葉はコミュニケーションのツールです。自分のやった仕事(成果や成績)をどうアピールして上司や仲間に認めてもらえるのでしょう?黙っていてもわかってもらえるはずがありません。私なんかは口をすっぱくしてアピールしてもわかってもらえなかったのです。

同記事にあるように「審判らと意思疎通を図る助けになるほか、現役引退後の第二の人生で国際的に活躍するために役立つとしている」という目的は私も納得できます。

オリンピックの代表に選ばれるレベルの選手であれば、海外遠征もあるでしょう。その場合、現地の練習時間以外はどうしているのでしょうか?通訳が常に同行しているのでしょうか?

そうは思えません。現地でも自分でなんとかしているはずです。競技だけでなく、言葉でもサバイバルしているはずです。

こういう批判をする人は、おそらく日本を出たことないのでしょう。

以上の理由から、私はフェンシング協会の発表を支持します。今の時代を考えると自然なことといえます。

現在はスマートフォンもあり英語学習環境が揃っています。あとは本人次第です。

アスリートの英語力(語学力)の実際

では実際にアスリートが競技スキルと語学力を両立している例を紹介しましょう。私はスポーツに詳しくないのですが、3例調べました。

菊池雄星さん(野球・メジャーリーグ)

この記事の執筆時点で直近の事例です。野球のアメリカ・メジャーリーグに移籍した菊池雄星選手を紹介します。

彼はシアトルマリナーズに移籍した最初の会見で、自己紹介と質疑応答を英語で対応しました。これにはマリナーズ側が驚いたと下記の記事では紹介しています。

外部リンク:Kikuchi excited for opportunity with Mariners | MLB

同様に、菊池選手は15歳の頃から英語の勉強を始め、日本でプレーしていたときも外国人選手と英語で会話していたとのことです。

菊池選手の独立心の高さには尊敬します。

彼はメジャーリーガーなので、渡米しても通訳をつけることができます。しかしあえて「自分の言葉で語る」というストーリーこそが、今の時代に現地のファンを魅了する大切な要素ではないでしょうか?

私が英語学習を始めたのは10年以上前、20代でした。「英語で論文を書いて発表してこそ一人前の研究者」という意識を持って、英語も克服しました。彼の会見を観て、かつての自分と照らし合わせました。

もちろん菊池選手は私よりも若い10代の頃から意識が高く、私なんか彼の足元にも及びません。移籍したばかりなので、英語だけではなくもちろん野球選手としての成績も求められます。

こういう選手こそ日本からも応援すべきです。今の世代の選手のあり方です。

太田雄貴さん(フェンシング)

かつてオリンピックのフェンシングで銀メダルを2個獲得。今回フェンシングの代表選考に英語力チェックの導入を発表した太田雄貴氏です。

「太田さんは英語が当然できるんですよね?」という批判がありました。自分のことを棚に上げて選手にだけ語学力を求めるな、という感情的なものでしょう。

そこで Youtube にて “yuki ota interview” で検索したところ、 2013 年の英語のインタビューがありました。下記のリンクからご覧ください。

外部リンク:Yuki Ota (Japanese Men’s Foilist) Interview – YouTube

ブダペストで開催されたフェンシングの国際大会の合間に行われたインタビューのようです。この時すでに「運営する側に回りたい」と太田氏本人の口から出ていますね。聞き取れましたか?

インタビュアーは外国人、質問も回答もすべて英語です。きちんと英語によるコミュニケーションは成立していますね。

ひとつだけ指摘するなら “you know” を少し言いすぎかもしれません。フランクすぎる感じはあります。

いずれにしても、太田氏も自ら英語を克服してきたと言えるでしょう。「自分のことを棚に上げて選手にだけ語学力を求めるな」という批判は終わりです。ナンセンスです。

福原愛さん(卓球)

最後は英語ではなく中国語のケースです。卓球の「愛ちゃん」こと福原愛さんです。

彼女は結婚して、ご主人は台湾人です。小さい頃から中国に卓球留学をしていましたね。私も小学校高学年か中学生時代の彼女のテレビ取材を視聴した記憶があります。

そんな福原さんの中国語によるインタビューがあります。 2011 年に公開された動画で、香港の鳳凰衛視というメディアによる取材です。

外部リンク:福原愛の中国語 – YouTube (全編中国語でのインタビュー)

すごいですね。冗談を交えながら20分以上中国語で受け答えています。中国語といっても種類はありますが、香港で使われる広東語ではなく普通話(いわゆる中国語)です。

コメント欄もすごいですね。中国語のコメントもたくさんありますが、日本語で「東北なまりが入っていてかわいい」といった細かい指摘もあります。

中華圏での福原さんの人気度がうかがえます。

まとめ

トップアスリートは語学も克服していることがおわかりいただけましたでしょうか?

スポーツ選手もいまやグローバル人材なのです。

たしかに日本人は英語が苦手なイメージはありますし、テニスの大阪なおみ選手のように日本語の壁がある人もいます。しかしボーダーレスな時代が来ていることに何も不思議はありません。むしろこれからはもっと加速していくでしょう。

この記事をまとめましょう。

  • フェンシングの日本代表の選考に英語力が加わった。しかし求められているのは TOEIC 600 点台、英検2級レベルのため決して高すぎるハードルではない
  • この発表について様々な批判はあるが、代表レベルの能力がある選手は海外遠征をするなど語学を克服する環境がある。
  • 野球・フェンシング・卓球など異なる分野の3つの例にて、トップアスリートは英語や他の言葉でのインタビューに対応している。通訳は使っていないし、通訳が雇えるのは一部のスポーツのみ。