英語の発音は矯正すべき?ネイティブ発音が不要な理由と練習方法
この記事は約 8 分で読めます
日本の英語教育ではネイティブ発音が唯一の正解、という風潮があります。しかし英会話の習得にネイティブ発音は不要です。私も発音記号は忘れましたが、海外での就労に全く問題はありません。
この記事では英語の発音について、なぜネイティブ発音が不要なのか、日本人はどういう発音を目指すべきか、詳しく解説しました。またリスニングを鍛えるためにやった音読が発音矯正にも効果があることを紹介します。
ネイティブ発音にこだわる必要ある?
正しい発音より丁寧な発音を意識しよう
発音はきれいなほうが良いのは私も同意です。でも何をもってきれいな発音なのか、説明できますか?アメリカ人のように発音することがきれいな発音ですか?そうではないはずです。
わたしたち日本人は完璧な発音を目指すべきではありません。聞く相手に誤解を与えないように丁寧な発音を目指しましょう。
正しい発音と丁寧な発音は違います。私にとっての丁寧な発音はこのように定義します。
丁寧な発音=発音記号にできるだけ近い発声(音)+正しいアクセントの位置(強弱)
発声についてはあくまでも満点を目指さず、発音記号に近くなるような努力をしましょう。後ほど説明しますが、人は育った環境によって発声できない音があります。 100 % ネイティブ発音にするのは時間の無駄です。
アクセントの位置は正しいほうがいいです。アクセントの位置が違うのはなまりの原因のひとつで、相手が聞き取りにくくなるのは確かです。辞書を使えば調べられますし、後ほど紹介する音読で生きた教材から学べます。
私の経験上、この 2 点だけ意識すれば大丈夫です。
育った環境の数ごと英語の発音の種類もある
そもそも同じ英語でもアメリカとイギリスでは単語も違えば発音も違います。さらにオーストラリアやシンガポールなど、英語が公用語であるにもかかわらず聞き取りが難しい英語もあります。
オーストラリアの英語はオージーイングリッシュと呼ばれ独特なくせがあります。またシンガポールの英語はシングリッシュと呼ばれ、「シンガポール人が話すクセのある英語」という皮肉が入っています。
例えば、日本人は eight (数字の 8 )を「エイト」といいますが、シンガポール人は「エイッ」と発音します。語尾の “t” が発音できません。また twelve (数字の 12 )は「トゥエルブ」といいますが、シンガポール人は「チュエルブ」みたいな発音になります。
誰でも育った環境に由来するクセは残るのです。
だからアメリカ人が話せばアメリカ英語、イギリス人が話せばイギリス英語、インド人が話せばインド英語、シンガポール人が話せばシングリッシュ、日本人が話せばジャパニーズイングリッシュ(ジャングリッシュ?)になることは自然なことです。
自分の発音の悪さをいちいち悩むのは時間がもったいないです。
非ネイティブスピーカーと話す割合がほとんど
私にとって英語はグローバルに活動するためのコミュニケーションツールです。
そもそも私が話す相手は 95 % 以上非ネイティブの人たちです。実際に海外で働いた経験から、アクセントの位置が明らかに違う人、単語の本来の意味とずれて使う人、さらに何がいいたいのかわからない人、本当に様々な人がいます。
Wikipedia のデータでは、英語がネイティブ(第一言語, L1) な人は約 3.8 億人、非ネイティブ(第二言語, L2) な人は約 7.4 億人でネイティブの約 2 倍です。他の報告では非ネイティブは 10 億人以上いるという情報もあります。
外部リンク:List of languages by total number of speakers – Wikipedia
つまり英語は非ネイティブスピーカーの方が圧倒的に多いわけです。事実上の国際共通語なので納得できますね。
だからこそ、ネイティブ発音にこだわる理由がありません。
目指すならフィリピンスタイル
唯一の例外はフィリピン人です。
フィリピン人の発音は「ストレートイングリッシュ」と呼ばれる(と昔雑誌で見た)くらいクセが少なくきれいです。英語の話せる人が多く英語力も比較的高いことから、大手企業がフィリピンを世界のコールセンターとして活用しています。
フィリピンはアメリカの影響で英語による教育が行われました。この英語教育が功を奏したことと、フィリピン人がもともと持っているやさしさ。これらが組み合わさり、フィリピン人はメイドや看護師として世界にはばたいています。
実際に私がシンガポールで知り合ったあるフィリピン人(看護師)は、転職でニュージーランドに移住しました。
相手の発音を治すことはできないのでリスニングは大変です。しかし自分の話す英語はネイティブ発音ではなくストレートイングリッシュを目指すべきです。
先ほど紹介した丁寧な発音はフィリピンスタイルでもある、というのが私の考えです。
私の発音が通じなかった経験談:七面鳥が通じないベルギー人
私は日本、シンガポール、ベルギーの 3 か国で仕事をして発音で大きな問題になったことはありません。しかし、どうしても通じなかったケースが1例だけあるので紹介します。
私の発音が通じなかったのはベルギーの会社の社員食堂のコックさんです。しかも誰かの代打としてたまにしか来ない男性です。
私が七面鳥のステーキ (turkey steak) を英語で注文してもわかってもらえません。何度言ってもわかってもらえません。複数の会社が入っているビルの食堂なので当然みんな英語が使える環境です。
カタカナでは「ターキーステーキ」ですが、実際の発音はそれらしく言いました (turkey の発音記号は上のイラストの通りです)。ただ通じなかったので、舌を巻いて「トゥーキー」みたいに言ってみたり、口を開けて「トォーキー」みたいに言ってみたりしても通じない。
イライラが MAX になって思わず「チキンステーキ!」と言いたくなりましたが、指差しなどして最終的には通じました。
ちなみに、この七面鳥のステーキは特別メニューではありません。毎日食堂で常備されている通常メニューです。レアなメニューならまだしも、いつものメニューなのに通じない。
しかも先ほど書きましたが、このコックさんはたまにしか来ない人です。いつも食堂で働いている人には普通に注文して何も問題なく通じます。そのたまにしか来ない人だけ毎回通じないのです。だから自分の発音のせいだとは思いたくありません。
そんなにイライラするなら別の物を注文すれば?と言われてしまいそうですね。おっしゃる通りです。でも日替わりランチより七面鳥のステーキを焼いてもらった方が美味しいんです。だからイライラしてでも注文してしまうのです。
このような苦労はありますが、発音で大変だったのはこれくらいです。この問題を克服するためにネイティブ発音を学ぶのはコスパが悪くありませんか?
丁寧な発音を訓練したいなら音読でOK
音読はリスニングと発音のどちらにも良い
私がおすすめする丁寧な発音のトレーニング法、それは音読です。
そもそも私が音読をした目的はリスニングの改善であり、発音の改善ではありませんでした。読むほうはできるのに聴くほうが一向に改善せずに苦労しました。だから自分の出した声を自分の耳でフィードバックして耳を鍛えました。
これが結果的に発音の訓練にもなりました。
音読には発音のトレーニングとしても効果は見込めます。ただし、 CD や MP3 などの音声データと読み上げるテキストがセットになっている教材を使ってください。
私が最初に利用した音読教材は雑誌の CNN English Express でした。 CNN のキャスターやレポーターが発生している生の音声と、そのスクリプト(原文)がセットになっている月刊誌です。
ニュースという生きた英語なのでこれ以上の教材はありません。学習に特化した英語教材の音声は聞き取りやすくするため、わざとゆっくりしゃべっています。そういう教材よりも生きた教材を使うべきです。
このレポーターの声を真似して発声することで、単語やアクセント、さらにリエゾン(複数の単語がひとつの音に聞こえるやつ)を習得できます。発音のトレーニングはこれだけで十分です。
具体的なトレーニング方法
私が勧める音読方法は以下の通りです。
- 最初の 15 回は教材の音声に続けて声を出す(オーバーラッピング)
- 次の 5 回は自分の声だけで音読する(教材の音声をまねするように)
- 教材 1 トラックで 1 日合計 20 回
- オプション:日にちを空けて同じ教材で上記を繰り返す(やるなら同一教材を2周か3周する)
教材 1 トラックが 1 分であれば 20 回の音読で 30 分で終わります。しかし毎日、最低3か月以上継続してください。毎日やることで脳への定着率が上がり、効果が見込めます。
音読学習法の詳細については下記の記事にてまとめてあります。ぜひ活用してください。
関連記事:中学英語はフィードバックが大切?理系目線の音読学習法
補足:この音読記事では単語の言い換えが大切と書きました。これはあくまでもリスニングを鍛えて脳内の英文処理スピードを上げるための説明です。音読の訓練では言い換えは不要です。教材の音声を真似することに集中してください。
まとめ:発音よりも大切なのは伝えたいメッセージ
言葉を話す目的は、自分の考えや気持ちを相手に伝えることです。
お笑い芸人の出川哲朗さんがテレビ番組の海外ロケでいろいろチャレンジしています。彼の英語は正直めちゃくちゃです。しかしなんだかんだで最終的には目的を達成します。
彼の英語をバカにしますか?私にはできません。あれこそがコミュニケーションの本質だからです。
スラングだろうがカタコトだろうが、自分の意図が相手に伝わればそれでOKなはずです。
だからこそ、英語の発音に神経質になることはありません。必要なのは訓練と度胸と行動力です。道具として使いこなす英語を身につけて世界でワクワクしましょう。
この記事をまとめましょう。
- アメリカ英語が発音の唯一の正解ではない。地域の数だけ発音の種類がある。正しい発音よりも、相手に誤解を与えない丁寧な発音(発音記号に近い発声+正しいアクセント)を心がけよう。
- 音読でリスニングと発音が同時に鍛えられる。教材は学習用よりもニュースのような生きた英語音声が収録されているものが望ましい。
- コミュニケーションの本質は自分の考えや気持ちを相手に伝えること。発音よりも大切なのは伝えたいメッセージ。
外部リンク(参考):ネイティブが話す「本物」の英語は世界の職場で通じない | ニューズウィーク日本版