英語習得物語 第10話:中学英語の教科書の音読から再出発

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効果を感じなかった学習法まとめ

音読でTOEIC640点を取ったあたりから、初級のペーパーバックを読み始めて700点(L340/R360)まで上げることができました。英語学習を始めてから最初の4年間は、やればやるほどスコアは上がりとても充実していました。しかしついに700点前後で4年間停滞してしまいました。私の英語学習で一番辛かった時期です。

目標としていた730点まであと30点なのに、それが出ない。多読も音読もやっているが、伸びない。特にリスニングは95点アップ以降、改善の兆しがみえない。多くの人はリーディングよりリスニングのスコアの方が高いと聞きましたが、私の場合は逆でリーディングのスコアの方が高かったのです。万策尽きたか、自分の学力ではこれが限界か、と思いました。

この時私は博士号を取得し、日本国内で電気系技術者として働いていました。海外出張の機会はいただいたものの、英語を使う機会は日本国内ではほとんどありませんでした。日本の会社に勤めていたので残業もあれば土日出勤もありました。その中でも朝体力と時間が許す限り学習は続けました。せめて目標だった730点を取ったらこの辛い勉強はやめよう、という気持ちでした。

数ある英語学習法で、私が実践して効果を感じなかった方法をまとめます。どのような英語学習法にも一長一短があります。私にとっては効果を感じなくても、読者様にとって何かヒントになれば幸いです。

1. シャドーイング

第4話で説明したシャドーイングです。テキストを見ずに、英語の音声に続いて真似するように自分で声に出すトレーニング法です。私の場合、リーディングで記憶した英文と実際の音声がそれぞれ分離していたため、シャドーイングだけでは何を言っているのか英文とリンクすることができませんでした。元々リスニング力の高い方向けの学習法なのでしょう。

2. 長時間ヒアリング

数千時間英語の音声を聴きこむ学習法です。シャドーイングと同じで、音声だけを聞いても自分の脳に蓄えた英文パターンに結びつかないので効果を感じませんでした。ただ音声を聞くよりも、自分で声に出してアウトプットすると同時にその自分の声を聞く「フィードバック」のある音読の方がお勧めです。

3. ディクテーション

英語の音声を聴いて文章に書き起こす学習法です。これも上記二つと同じ理由で私は何度同じ文章を書きとっても、答えにたどり着きませんでした。音声から文字に起こすのはとても難しい作業です。なぜならネイティブの発音は複数の単語がつながっていたり省略形があるため、それらを切り離して単語にするには相当な英語力がないとできません。ディクテーションは上級者向けの学習法です。

4. 英語ニュース視聴

ケーブルテレビに加入してCNNを観た時期もあります。世界情勢を知り、かつ生きた英語に触れられるのがニュースのメリットです。しかしネイティブスピードが速くて聞き取れず、ほとんど映像と雰囲気を楽しむだけでした。TOEICや英検の試験対策向けの学習ではなく、一通りの学習後の実践英語として利用するのがお勧めです。

5. 英字新聞

第2話でも説明した通り、英字新聞も多読学習の教材としてはお勧めしません。あくまでも実践で生きた英語を学ぶため、もしくは英語が使えるようになった後の情報収集手段、と割り切りましょう。

6. 英会話学校(グループレッスン)

第8話でも説明しましたが、グループレッスンで日本人同士で話しても効果は期待できません(特に学習初期の場合)。選ぶなら先生とのマンツーマンタイプにしましょう。

この他にも色々な英語学習法がありますが、あれこれやっても効果は見込めません。どのような方法でも良いので、まずは自分の生活スタイルに合い「継続」できる方法を選びましょう。反復練習のできない学習法はどれも身につきません。

TOEICスコアの実態を知る

こうやって試行錯誤をする中、もう一度原点に返ろうと英語学習についての情報を探していたところ、この本を見つけました。千田潤一著 『英語が使える日本人TOEICテストスコア別英語学習法―自己レベルに合ったトレーニング法』 明日香出版社 (2004)でした。

この本で「英語難民」という言葉を知りました。企業(特にメーカー)のグローバル化で高い英語能力が求められており、一定のTOEICスコアが無いと昇進ができないという事実を知りました(私が働いていた日本の会社ではTOEICは求められなかったですし、英語の勉強ばかりするなと陰で言われていたようです)。

TOEICスコアの実態もこの本で知りました。TOEICでも公開テストとIPテスト(団体受験)では受験者層が違うという千田先生の指摘がありました。千田先生の著書に出てくるデータはやや古いので、2014年のTOEIC公式データから引用させていただきます。公開テストとIPテストのスコア分布と平均点の違いを図表化したものです。

TOEIC公開テストとIPテストの比較

千田先生は同書で指摘しています。

団体〔IPテスト〕で受けた人の分布は、会社がほとんどですから、日本のサラリーマンの平均的分布に近いといってもいいでしょう。(中略)〔公開テストを受けた人の分布は〕英語を進んで学習する人たちの平均分布に近いと考えていいでしょう。

引用元:千田潤一 『英語が使える日本人TOEICテストスコア別英語学習法―自己レベルに合ったトレーニング法』 明日香出版社 (2004), p.116
〔〕内は筆者が補足

IPテストは大学でも実施されているので、より日本人受験者の平均に近い結果と言うこともできます。この図表から3つポイントを挙げましょう。

  • (右表より)公開テストの平均点はIPテストの平均点より約100点高い。
  • (グラフより)695点以上の受験者の割合は、公開テストで27.3%、IPテストで11%である。
  • (グラフより)590点以下の受験者の割合は、公開テストで53.8%、IPテストで78%である。

IPテストで695点以上取れる受験者は11%しかいません。つまり、私は700点前後でスランプに陥っていると悩んでいましたが、私は既に日本の平均的受験者の上位11%の位置にいたのです。これまでずっと公開テストの結果を基準にしていたので、自分の位置が上位27%で「まだまだ上は遠い」と思っていました。しかし、どのような資格試験でも合格率が10%前後であれば難しい方に入るはずです。

私もかつては英語難民の一人でした。245点から英語学習をスタートしたことを考えれば、700点まで出せたことをもっと褒めなければいけなかったのです。謙虚さを忘れていたのかもしれません。

中学英語の教科書の音読から再出発

この千田先生の本に書かれているエピソードが私にさらなる衝撃を与えます。某女性同時通訳者からの一言を引用します。

私はTOEIC900点以上の人を集めて、中2までの教科書で同時通訳の訓練をしているのよ。中3の教科書なんて無理よ!

引用元: 千田潤一 『英語が使える日本人TOEICテストスコア別英語学習法―自己レベルに合ったトレーニング法』 明日香出版社 (2004), p.152

中学3年の教科書は同時通訳の訓練として難易度が高すぎる。ということは、私がCNN English Expressでやっていた音読は?もちろん生きた英語に触れる良い教材でしたが、同時通訳の訓練としては難しすぎる、ということです。それが衝撃でした。

そして同書には「中学のテキストを暗唱できるぐらいまで味わう(上掲書p.151)」という記述があったため、中学英語をやり直さねば!と急いで中学のテキストを買うことにしました。この時私は30歳でした。

中学英語のテキストと言っても種類はたくさんあるので困りましたが、この教科書にしました。『三省堂ニュークラウン教科書ガイドCD 1年~3年』 三省堂でした。

この教材のCDトラックの内容をひたすら音読と暗唱しました。暗唱も含めると章にもよりますが300~500回くらいでしょうか。とにかくリスニングを克服したい一心で、家にいる時も車を運転している時も暗唱しました。

注意:危険なので車を運転しながらの暗唱は絶対真似しないでください。文章を思い出そうとして運転以外に注意がいき交通事故を起こす恐れがあります!

こうして中1~中3の教科書ガイドCDを同じように全部やりました。ところが、この時に受験したTOEICの結果は…640点(L310/R330)でした。

この結果を見た時は頭が真っ白でした。これだけやってもダメか…という感じでした。でもこの結果は当時の自分に必要だったようです。スコアが一度下がるのは再び伸びる兆しで、フィリピン留学時(第12話)にも経験しました。次に受験したTOEIC(通算13回目)の結果は…ついに730点(L380/R350)になりました。

英語学習を始めた2005年から8年弱でついに730点をとることができました。この2回のTOEIC受験の間になにか特別なことをしたか?というと、先に述べたような学習法くらいです。メインはこれまでと同じ音読と多読だけでした。そしてその後、750点(L365/R385)まで取ることができました。

この中学英語の教科書では音読だけでなく暗唱もやりました。ただ暗唱の効果があったかどうかは自信を持ってお答えできません。そもそも聞いた英文を思い出すこと自体が大変で、何度も暗唱することはあまりにも時間がかかりすぎました。そのため、他の音読教材では暗唱を一切やってません。

ついに分かったリスニング改善法

もう1冊、音読教材としてお勧めしたいのがこの本です。アメリカ人である著者が日本語を勉強する際にやったトレーニングを英語に適用した教材です。James M. Vardaman著 『毎日の英文法 頭の中に「英語のパターン」をつくる』 朝日新聞出版 (2012)でした。

一つ一つの英文は短いですが、単語の入れ替えによって例文がたくさんあるので、それらを繰り返し声に出すことで英文パターンを身につけるという内容です。音声トラック(MP3)が短く、毎日続けるのにはちょうどいい量でした。

この本を通じてわかったことがあります。

今までは長い文章が聞き取れれば、短い文章も処理できる(大は小を兼ねる)という考えでした。でもここにきてやっとわかりました。短い文章の聞き取りを素早く処理できなければ、長い文章は処理できない(大は小を兼ねない)ということでした。そしてこれがコンピュータの処理に似ていると発見しました。

コンピュータは大量の情報を一気に処理しているように見えますが、実際は1つ1つの計算(命令)をものすごい速さで処理しています。パソコンもしくはスマートフォンで「フリーズ」した経験はありますでしょうか?この原因のひとつは、大量の計算に脳(CPU)が追いつかなくなって動きが止まってしまう事です。

人間の脳も同じで、一つ一つの英文処理に時間がかかると後から来る英文の処理が追いつかなくなり、「フリーズ」のような状態になってしまうのです。リスニングはコンピュータのように英文を一つずつ高速で処理しなければいけなかったのです。またそのように脳を鍛えるのがリスニングの改善方法だったのでは?という気づきを得たのでした。

この本の音読も毎日少しずつ続け、1冊分の音読を2周やりました。やった後の耳の慣れ具合はかなり違いました。それは中学英語の教科書を音読したとき以上の実感でした。2周以上繰り返し音読をした効果もあるかもしれません。しかし、中学の教科書を勧める理由がこれでわかったのです。

中学英語の教科書も簡単な単語と基本的な文法、そして短い英文の集まりで成立してます。それらの簡単な英文をものすごい速さで処理できるようにするために、同時通訳の訓練として中学英語の教科書が使われていたのです。

※音読の方法について、さらに詳しく解説した記事を公開しました。こちらも併せてご覧ください。

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