英語習得物語 第6話:CNN EEを音読してみてTOEIC95点アップ(545→640)
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シャドーイングは失敗
英検を通じて改めて私の弱点を分析してみると、明らかに「リスニング」が苦手でした。読み書きは多読や論文執筆を通じて苦手意識はなくなりましたが、聞く方はまだまだ慣れませんでした。
どうすればリスニングは克服できるのか?ということでいろいろ調べてみて、まず試したのが「シャドーイング」でした。シャドーイングという学習法自体は既に知っていました。英語の音声に続いて自分で同じように声に出して真似てリスニングを鍛える方法です。
当時の記録を見ると、 30 分以上の音声データを 2 ループ以上、ひたすら声に出す、ということをやりました。
私の体験をお話しすると、この方法に効果は見出せませんでした。合計 30 個程度の教材でやってみましたが、効果を実感した覚えはありません。なぜでしょうか?どうやら、音だけを真似しても意味がなさそうでした。
音読という選択肢
ある日、インターネットでリスニングの改善方法を模索していたところ、一つの記事を見つけました。
- 日本語や中国語の漢字は「表意文字」で、文字の意味を目で見て理解する言葉。
- 一方英語等のラテン語系の言語は「表音文字」であって、音が意味を持つ。また音の違いが「意味の違い」である。
音が違うと意味が違う例は確かにあります。本当かどうかわからない話ですが、あるカップルの会話で
“I love you.”
と言ったつもりが、LとRの発音が区別できなくて
“I rub you. (あなたをこすります)”
と受け取られた…。といってもこれは極端な例でしょう。
この記事を読んで一つの仮説を立てました。それは「聞いた音声と記憶している英文が脳内でリンクしてない」でした。
これまで多読で英文パターンはたくさん記憶してきました。そのため英文を読むことはできるようになりました。しかし、音声だけで何度聞いても何を言っているのか全くわからない。でも字幕やテキストを見ると、文章ではわかる…。
ということは、音声に対応する英文を脳内で探せていないのが原因?と仮定したのです。それなら表音文字の英文が理解できない理由として筋が通る?と考えたのです。
この「音声と英文の脳内リンク」を鍛えるにはどうすればよいのか?として行きついたのが「音読」でした。
教材は何を使うか?
教材はどうすれば良いのか?当時は判断基準が無かったため、とにかく生きた教材が良いという理由で “CNN English Express” を購入しました。
CNN のニュースを教材用に編集したものですが、初級者向けから上級者向けまで音声とテキストが加工されています。例えば初級者用では 1 文でもいくつかの単語の塊に区切ってあって、音声もそれに沿ってゆっくり話します。中級者向けは音声はナチュラルですが、短いニュースとその訳文と記事の解説が用意されています。上級者向けは長いインタビュー記事に訳文だけ、といった感じです。
この初級者向けと中級者向けの記事から毎日ひとつを選びました。そして以下のルールで音読をやりました。
- 最初の 10 回はテキストを見ながら収録音声の後に続けて声に出す。
- その後 10 回は収録音声なしで、テキストを見ながら音読を 10 回やる(最初の 10 回と合わせて計 20 回)。
- 最初の 10 回も、その後の 10 回もネイティブの音声を真似て声に出す。
- 慣れてきたら最初は 5 回、その後の音読は 15 回とする(合計 20 回は変わらず)。
最初の 10 回のやり方を一般に「オーバーラッピング」といいます。収録音声に自分の声を重ねる (overlap) トレーニング法です。ただ収録音声だけに頼りたくなかったので、オーバーラッピングは次の音読のためのウォーミングアップとして取り入れました。メインはあくまでも自分の声だけで「音声と英文を脳内リンクさせる」音読でした。文字を見ながら声に出して、その声を再度聞いてフィードバックすることで、音声と英文がリンクできると考えたのです。
これを毎朝 1 記事, 20 回として毎日続けました。 20 回の根拠は 30 分以内にその日の音読学習を終わらせるためです。 1 記事 1 分として 20 回やれば単純に 20 分ですが、記事によって短いものもあれば長いものもあります。もっとたくさんやりたかったのですが、当時大学院生とはいえ、研究が優先でそれ以上の時間の確保は困難でした。一日の量は少なくても、毎日続けるようにしました。
1 日 20 回とはいえ、多少の手ごたえはありました。最初はオーバーラッピングでもネイティブ音声についていくのが精一杯でした。しかしトータル音読回数 12 回から 15 回くらいからその音読テキストをスラスラ言えるような「感覚」になってくるのです。この現象を何というのかはわかりませんが、この感覚があったおかげで毎日続けることができました。
第2話:英語洋書多読との出会いの多読で「反復練習」と「言葉の貯金通帳」のお話をしたのを覚えてますでしょうか。この音読回数もお手製の通帳(ノート)に記録しました。この音読は 5 か月続け、次の TOEIC 受験まで 1,820 回を記録しました。この時少し多読はお休みしています。
この方法で「発音」も訓練しました。音読を通じてネイティブの声を真似ただけでそれ以外の発音の訓練はしていません。それに間違いを恐れる必要はありません。共通語としての英語はネイティブスピーカーの方が少数派です。
TOEIC545点から640点に
この時の TOEIC は公開テストではなく、大学で行われた IP テスト(団体受験)でした。
TOEIC は毎回受験しても手ごたえが分からないので、正直どうなるかわかりませんでした。でも結果が来てビックリ!その前が 545 点 (L255/R290) だったのに一気に 640 点 (L290/R350) にアップ!リスニング・リーディングの両方ともスコアアップしました。
一気に 95 点もアップしたことに興奮して、結果を見た日は眠れなかったことを覚えています。頭から何かが突き抜けた感じでした。さすがに多読だけでこれだけスコアは上がらなかったでしょう。
「音声と英文の脳内リンク」仮設は間違ってなかったようでした。
その後もしばらく同じやり方の音読を続けたのですが、ある時でやめてしまいます。先に述べた仮説は間違ってなかったと思いますが、当時を振り返ると二つの理由が考えられます。
- 音読で学習効果が出せても「多読プチ成功体験による多読信仰」から抜け出すことができませんでした。この頃からペーパーバックにも挑戦しました。どうしてもそれまでの多読の実績から「多読さえやればスコアは上がり続ける」という固定観念が当時はでき上がっていました。
- 教材の選択は正しかったか?確信がありませんでした。 CNN English Express は良い教材ですが、ニュースに使われる表現が当時の自分にはまだ難しすぎました。
ただはっきり言えることがあります。音読に英語学習効果はあります。個人差があるはずなので絶対的な指標はありません。でも英語が表音文字である以上、絶対に音と文章を切り離すことはできません。なので、取り入れてみる価値はあると思います。
※音読の方法について、さらに詳しく解説した記事を公開しました。こちらも併せてご覧ください。
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