Withings Sleep Analyzer vs Fitbit「睡眠の質」表示比較レビュー
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睡眠を計測する製品が市場で増えてきています。腕時計型、パッド型(マット型)、指輪型、ヘッドバンド型など、たくさんの種類があり、どれを選べばいいのかわからない人もいるでしょう。
このシリーズでは睡眠関連の製品を購入して徹底レビューしています。
この記事はフランスのメーカーであるウィジングズ社 (Withings) 製の睡眠計 Sleep Analyzer をレビューします。 Sleep Analyzer はベッドや布団に挟むマット型の製品です。
結論は、睡眠の質をかなり安定して分析できます。また睡眠時無呼吸症候群のチェックがかなり専門的にできます。
欠点は Sleep Analyzer が風船のように膨らんでいるため、マットレスに挟んで寝ると違和感があることでしょうか。
詳しくみていきましょう。
Withings Sleep Analyzerでできること
体動と心拍数で睡眠の質を計測できる
Sleep Analyzer はマットレスもしくは布団に挟むタイプの睡眠計です。
そのため腕時計タイプのように身体に何かを装着する必要はありません。しめつけが苦しいと感じる人にはいいでしょう。
上の写真に示す様に Sleep Analyzer が「肺の裏側」にくるようにセットします。
セットされた Sleep Analyzer は「心拍数」と「体動(寝返りやその他の身体の圧力)」から睡眠の状態を計測します。
寝ていなければ Sleep Analyzer に圧力はかからないので睡眠を勝手に計測するようなことはありません。
ただし睡眠開始の 10 分前までに電源を入れる必要があります。毎回電源を入れるたびに「感度調整(キャリブレーション)」が行われます。
また購入直後は一度だけ細かい感度調整が行われます。布団の重さと人の体重を区別するための処理だと思われます。一時間程度かかります。
気になったのは、 Sleep Analyzer が風船のように膨らんでいるためマットレスに挟むとふっくら感がなくなります。そのため身体がマットレスに沈まず胸の部分だけ張ったような違和感を感じました。
アプリで日々の睡眠をチェックできる
Withings Health というアプリでデータ収集と日々の睡眠解析を行います。
上図は睡眠管理画面です。左から紹介します。
起床後、アプリでデータを同期すると上図左に示す睡眠データが表示されます。画面上部には就寝時刻、起床時刻、睡眠時間が表示されています。
その下には睡眠サイクル(睡眠図)というグラフが表示されています。あなたの睡眠状態がどうだったか、時間の経過とともに変化を教えてくれます。
グラフには色の付いた棒グラフがあります。これらは下記に示す睡眠ステージと呼ばれるものです。
- 起きている状態
- とても浅い眠り
- 浅い眠り
- 深い眠り
このレビューでは上記の各ステージの変化を睡眠の質の分析に使用します。レム睡眠 (REM) は Sleep Analyzer で検出されません。あらかじめご了承ください。
上図左ではグラフをタップすると「深い眠りが何分間」といったような睡眠ステージの詳細が表示されます。この機能を睡眠の質の分析で利用します。
画面を下にスクロール(上にスワイプ)すると、上図中央に示す睡眠データの詳細画面になります。下記に示す項目が表示されます。
- 睡眠時間
- (睡眠の)深さ
- 規則性
- 睡眠の中断回数(睡眠中に目覚めた回数)
- 眠るまでの時間
- 起きるまでの時間
さらに下にスクロール(上にスワイプ)すると、睡眠中の心拍数のグラフが表示されます。
心拍数のグラフ自体を何かに使うことはありません。参考程度に見ておきましょう。
睡眠時無呼吸症候群かどうかが数値でわかる
Sleep Analyzer の特長のひとつ。それは睡眠時無呼吸症候群の検出ができることです。
かなり専門的な計測を行います。 1 時間あたりの無呼吸と低呼吸を合わせた回数を Sleep Analyzer はカウントします。
このカウントされた数字のことを無呼吸低呼吸指数 (AHI) といいます。この数字には下記に示す意味があります。
- AHI < 15: 正常または軽度(緑)
- 15 ≤ AHI < 30: 中等症(黄色)
- 30 ≤ AHI: 重症(赤)
上図中央には緑、黄色、赤のグラフがあります。 AHI を計測した結果が図で示されています。
上図では一応正常範囲内となっています。ただし日本呼吸器学会によると AHI = 5 でも軽度となるようです。
また画面の下側には「いびきの発生時刻」のグラフがあります。グラフ内の縦棒がいびきの発生タイミングです。縦棒が太いほど音がおおきいことを示しています。
ただし、いびきは録音されません。そのためグラフをタップしても音は再生されません。
WiFi 接続でデータ収集できる(Bluetooth不要)
上図は Sleep Analyzer 購入直後のセットアップ画面です。セットアップ手順が細かく書かれており初心者の人でもすぐに使えるように配慮されています。
手順を進めていくと、ネットワーク接続の画面になります。
Sleep Analyzer は WiFi 接続です。 Bluetooth ではありません。
WiFi 接続にすることで睡眠中のデータは常時クラウド保存されます。
スマホアプリ接続も Bluetooth ではなく WiFi かセルラー通信 (SIM カードによる携帯通信)です。毎回 Bluetooth を ON にして接続する方法ではありません。
レビュー方法
レビューする項目とデータの取り方についてまとめます。結果だけ知りたい人はここは飛ばしてください。
データの取り方とレビュー項目
上図に示す方法で日々の睡眠の質を分析してレビューしました。
左腕には活動量計を代表して Fitbit (Charge 4) を装着しました。過去 10 個以上の睡眠トラッカーをレビューした結果、 Fitbit がもっとも安定して睡眠の質を計測できたからです。
就寝 10 分前までに Sleep Analyzer の電源を入れていつも通り就寝します。購入直後のキャリブレーションは済ませてあります。
毎朝起床後、アプリでデータを収集し睡眠サイクルを確認しました。
主に下記に示す内容をレビューしました。 Fitbit 以外のデバイスも一応使いますが、あくまでも参考データです。
- 睡眠サイクルを Fitbit と比較して、日々の睡眠の質をきちんとチェックできるか?
- いびきの発生タイミングと Fitbit の推定酸素変動量のグラフを比較して、何かしらの関連性はあるか?
- 【参考】いびきの発生タイミングを Sleep Cycle というスマホアプリと比較して、同じタイミングで発生しているか?
合計 4 週間分 (28 日間分)の睡眠データを収集しました。
睡眠の質を評価するポイント
医師が書いた睡眠に関する本や私が Fitbit で計測した睡眠データから、睡眠の質をチェックするポイントは以下の 3 つに整理しました。
- 「覚醒」から「最初の深い睡眠」に入るまでの時間は短いほど良い (30 分以内が目安)
- 最初の深い睡眠は 20 分間以上あることが望ましい
- 睡眠中の途中覚醒回数は少ない方が良い
1 番が最も重要で、番号順に優先順位は下がります。各項目の詳細と根拠については下記の補足説明をご覧ください。
睡眠サイクルの比較結果:かなり一致している
よく眠れた日の睡眠サイクル比較
上図はよく眠れた日(睡眠の質が良い日)の睡眠サイクルです。
Sleep Analyzer の睡眠サイクルをグレースケールにして、 Fitbit のサイクルを上に重ねています。横軸は就寝時刻と起床時刻が同じになるように調整しています。
上図にて睡眠サイクルを比較すると、どちらのグラフも冒頭部分が同じ傾向で「よく眠れた(疲れがとれている)」と判断できそうです。
Sleep Analyzer の睡眠サイクルを、睡眠の質のチェックポイントの視点で細かくみてみましょう。
- 最初の深い睡眠まで 1 分 (30 分以内が良い) → ◎
- 最初の深い睡眠が 35 分間 (20 分間以上が良い) → ◎
- 中途覚醒 4 回 → ×(ただし優先順位は低い)
- 睡眠の質の総合評価 → 〇
同じ傾向の分析が Fitbit もできました。 Sleep Analyzer の睡眠分析はかなりの確率で Fitbit と一致しました。
この日は朝 4:56 と早い時間に起床しています。平日の目覚まし時計は 5:30 にセットしていますが、それよりも早い目覚めとなっています。
恐らくトイレで起きたと思われますが、疲れが取れてすっきりしているので早く起床できたのでしょう。
睡眠の質が悪かった日のサイクル比較
上図は眠りが悪かった(睡眠の質が悪かった)例です。パッと見て「深い睡眠」の出方が先ほどと違いますね。
Sleep Analyzer の睡眠サイクルを同じようにチェックポイントを使って分析するとこうなります。
- 最初の深い睡眠まで 80 分 (30 分以内が良い) → ×
- 最初の深い睡眠が 17 分間 (20 分間以上が良い) → △
- 中途覚醒 4 回 → ×(ただし優先順位は低い)
- 睡眠の質の総合評価 → ×
Fitbit も似たような睡眠サイクルになっています。しかし違いもあります。
この日はソファでうとうとしていしまいました。腕に装着している Fitbit ではこのうたた寝が検出されています。一方、 Sleep Analyzer はベッドに行かないと睡眠が検出されません。この違いがグラフ冒頭部分に表れています。
睡眠中盤以降も深い睡眠が何度も検出されています。疲れを取るためには深い睡眠が必要です。しかし一番重要なのは入眠直後です。入眠直後に深い睡眠が出ると最もスッキリした状態で翌朝を迎えることができます。
そういう意味でも、質の悪い睡眠でも Fitbit と Sleep Analyzer はかなりの確率で一致しました。
睡眠サイクルが不一致だった例
上図は睡眠サイクルが不一致だった例です。
Fitbit は「よく眠れた」と分析できるのに対して、 Sleep Analyzer は「質が悪かった」と逆の分析結果になってしまいます。
このような不一致は週 1 回程度の頻度でありました。
不一致が週 1 回起きるのは多いと感じるかもしれません。しかし Fitbit 社以外のアクティビティトラッカーの睡眠計測はもっと不安定です。それらと比べれば Sleep Analyzer は安定して日々の睡眠を計測できています。
この日はベッドに入ってスマホをいじるなどすぐに寝なかった可能性があります。
Sleep Analyzer を利用する場合はベッドの中でスマホを触ったりマンガを読んだりするのは NG かもしれません。睡眠の状態を誤検出する可能性があります。
いびき発生タイミングと推定酸素変動量の比較
Sleep Analyzer が検出したいびきのタイミングと、 Fitbit の推定酸素変動量のグラフに関係はあるのでしょうか?
代表してある日のグラフを重ね合わせてみました。上図に示します。
どうみても関連性があるようには見えません。
いびき発生のタイミングで呼吸の変化(極端に酸素変動が少ないか、極端に多くなるか)があると仮定していました。しかし上図を見る限りは関係がなさそうです。
個人的な感覚では、 Fitbit の推定酸素変動量のグラフがまだ安定していないようです。そのため上図のグラフが一致していないのはある意味仕方ないでしょう。
睡眠時無呼吸症候群かどうかは既に紹介した AHI という数字でチェックできます。この結果はあくまでも参考程度としてください。
いびきの発生タイミング比較(参考)
iPhone アプリの Sleep Cycle を起動して枕元に置き、睡眠中のいびきを録音してみました。
Sleep Analyzer が記録したいびきの発生タイミングをグラフで重ね合わせたところ、上図に示す様にかなり一致しました。
どちらもマイクで録音しているでしょうからある意味当然かもしれません。
数日間同じようにいびきを録音したところ、上図のように一致していないと感じる日もありました。
しかし上図の例は「マイクの感度の違い」だと考えられます。 Sleep Cycle (つまりスマートフォンのマイク)の方が感度が高いのでしょう。 Sleep Analyzer よりも多く録音したのでしょう。
どちらが正解ということはないでしょう。少なくとも Sleep Analyzer のマイクがきちんと機能していることはわかりました。
まとめ
予想以上に安定して睡眠データを計測することができました。
睡眠時無呼吸症候群が気になる人にとってはこの製品を使うメリットは十分にあるでしょう。冒頭に紹介したマットレスのふくらみだけが気になります。
この記事をまとめましょう。
- Sleep Analyzer は無呼吸低呼吸指数 (AHI) という値を計測する。睡眠時無呼吸症候群をより専門的にチェックしたい人にはおすすめ。
- 睡眠サイクルを Fitbit と比較したところ、かなりの確率で一致した。日々の睡眠の質の評価には使えそう。ただしベッドの中でスマートフォンを触るなど、睡眠前の状態を Sleep Analyzer が正しく検知せず一致しなかった日もある。
- Sleep Analyzer が検出したいびきの発生タイミングと、 Fitbit が示す推定酸素変動量のグラフに関連性は見つけられなかった。
- スマートフォンアプリのいびき検出と Sleep Analyzer のいびき検出タイミングは一致した。スマートフォンアプリの方がいびきの録音感度が高く多く検出された。
- Sleep Analyzer は風船のように膨らんでいる部分があり、マットレスが上に持ち上がる。そのため寝る時の姿勢が変わってしまう感じがした。
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※このレビューは 2020 年 6 月に行いました。最新ソフトではこの記事で書かれた内容と相違があるかもしれません。
※良い睡眠がとれたかどうかは必ずご自身の体調や起床後の気分などでご確認ください。アプリの表示は計測結果を保証するものではありません。