ベルギーの電気代(2/2)料金のしくみ、支払い方法と節約方法
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前回、電気代の請求書から請求項目を解説しました。ベルギーの電気料金のしくみを調べることは私にとって勉強にはなりました。しかしそれ以上に、無駄な電力を使っているのではないかということもわかり節約の必要が出てきました。
今回はベルギーの電力事情を取り入れながら、どういった料金制度になっているのか、またどうすれば節約ができるかをまとめました。難しい話ですが参考になればと思います。
ベルギーは電力自由化により電力会社を選べる
日本では 2016 年に電力自由化(電力会社を消費者が選べる)しましたが、その頃私はすでに海外生活を始めていたため実感がありません。一方ベルギーは 2007 年の実現から 10 年以上経過しており、電力事情としては先進国といってもいいかもしれません。
私の住居に最初の電気代請求が着た時も「まだ電力会社を選んでいないようなので、是非ウチでいかがでしょうか」といったセールストークが書かれていたことが印象的でした。
ベルギーの電力会社は下記のリンクにて一覧で紹介されています。地域によって提供している会社は異なるようです。試しに下記リンクにて「フランダース地方」を選択すると、なんと 21 社がノミネート (?) されました。
外部リンク:List of Belgian Suppliers of gas and electricity(ベルギーの電力・ガス会社一覧の英語ページ)
私は休日のランチメニューを二択から決めることも大変なのに、電力会社を 21 社の中から選ぶことなどできません。ましてやベルギーに来て間もない人が予備知識なしで選ぶのは至難の業です。
私はあまり深く考えずに、大手である Engie 社(旧エンジー・エレクトラベル)にしました。現在はフランスのエンジー社の子会社ですが、自由化以前はベルギー広域の電力を独占していました。大手会社を利用した方が安定して(停電なしで)電気が使えると考えました。
外部リンク(参考記事):電力の切り替え率は世界有数、でも複雑なベルギーの電力市場 (1/2) – スマートジャパン(ITmedia)
後ほど解説しますが、電力会社を選択できても日々の電気代や安定供給にどれだけ差があるかはなんとも言えないようです。
電気料金のしくみはこうなっている
前回解説した請求内容をまとめると、電気料金はおおむねこのような図式になっているといえるでしょう。
サーチャージと認証費用はある種の税金だと思ってください。この2つの金額は電力消費量に比例しますが、支払総額からすると小額なのでこれ以上は扱いません。
期間調整金額(電気消費量の申告日から請求日までの推定電気代)は別項目とはいえ電気代なのでエネルギー料金とネットワーク料金に分配できます。ただ話をシンプルするため一旦そのままにします。
残りはエネルギーとネットワーク(送電と配電)になります。約2対1でネットワークがエネルギーの倍近い価格になっています。このネットワークが支給金額全体の4割を占め、そのうち配電に 35.9 % と最も負担がかかっています。
送電と配電を比較すると、送電の方が電気の輸送距離が長いため費用は高くなりそうだと考えてしまいがちです。ただ前回解説したように、送電は Eria 社という大手会社が担うことで大量の電気を安価に提供でき、結果として 6.1 % しか負担していないのでしょう。一方、配電は地域管轄で送電よりも距離は短いはずですが、電気料金全体の 35.9 % という負担になっています。
たとえ期間調整の金額をエネルギーとネットワークに分配しても、それぞれの比率が上がるだけでやはりネットワークが最も負担の高い項目となるでしょう。試しに計算してみると、電気料金全体のうちネットワーク 59.1 % (€ 604.88 /5ヶ月)、エネルギー 28.3 % (€ 289.64 /5ヶ月)となります。電気代の約 6 割は送配電費用となってしまいます。
そして、送配電料金は消費した電力量のトータルで算出します。いくら昼と夜で電気を使い分けてもトータルは同じです。料金の節約方法については次節で解説します。
電気代を節約する方法:電気を使わない
電気代を節約するには「使わない」という結論しかありません。こう言うと身も蓋もありませんが、もう一度おさらいしましょう。
消費電力量によって価格の決まる項目は下記の 4 つです。支払い比率の高い順に箇条書きにするとこうなります。
- 送電と配電 (42 %)
- エネルギー (20.1 %)
- 認証費用 (7.7 %)
- サーチャージ (4.9 %)
上記のうち、送電は 1 社で提供、配電は住む場所で決まってしまいます。電力自由化といっても送電会社と配電会社を変えることはできません。しかも送配電は消費電力のトータルで算出されます。電気代を下げるには、電気を使わずに送電・配電しないことが必須になります。
次にエネルギー料金です。日中と夜間でメーターは違いますが、使い分けても支払い額全体の 2 割ほどで、送配電ほど節約の影響は大きくありません。私のような一人暮らしではなく家族全体で電気を節約するのであれば、極力夜間を使うなどすれば多少の効果はあると思います。
またエネルギー料金は自由化で電力会社を変えられます。単価の安い会社があれば乗り換えることができます。ただし、先に解説したようにフランダース地方には20社以上の電力会社があます。今の私の力では実際にどれくらい料金に差が出るか、算出できる自信はありません。私にとっては電力会社を変えるよりも使わない方がコストパフォーマンスは良いと考えています。
認証費用とサーチャージの料金も消費電力量に比例します。この料金を抑えるにも電気を使わないが正解になります。ただ認証費用は請求金額の 7.7 %, サーチャージは 4.9 % とどちらも割合としては少ないので、影響は小さいでしょう。
以上のことから、電気料金の節約手順をまとめるとこのようになります。
- スイッチを切る、コンセントからプラグを抜くなどして消費電力量を根本的に抑えることで、送配電、エネルギー、認証費用、サーチャージのすべての金額を抑える。
- 電力会社を変えて、エネルギー(発電料金)の単価を下げる。
私は月 200 ユーロ以上の電気代が請求されました。今回解説した電気料金しくみから言えることは、私の請求が高額となったのは「冬季のヒーターの利用(特に寝ている間もヒーターを使っていた)」でしょう。ヒーターの利用方法を見直せばもう少し安くなると期待しています。
支払いは毎月あり、水道と同じく年に一度調整する
水道は 3 か月に一回定額を支払いますが、電気も同じように毎月一定額支払います。前回紹介した 5 か月分の請求書にて、水道と同じく年一回の確定申告 (?) により調整しました。
上の画面は実際のオンライン申告のスクリーンショットです。ひとつのメーターに複数の値があるので、すべてメモして正確に入力します。私の部屋では 3 つの値(日中、夜間、あとひとつ?)を申告します。
実際には毎月 109.29 ユーロを支払っていましたが、今回の調整でもっと使っていたことが判明ため、不足分として 500 ユーロ以上を支払いました。予想外の出費で少し痛かったですが、相場を知らなかったため仕方ありません。今回しくみがわかったので今後気をつけようと思います。
水道と同じで電気も前年の消費実績から新年度の毎月の支払額が決定するはずです。ただ今年度は前年と同じ 109.29 ユーロでした。調整時に多く支払うことを想定して貯金が必要かもしれません。
おまけ:まだまだ原子力発電に頼っている
最後に、発電にどの資源が使われていたのかについて補足します。
請求書には電力会社全体として発電に使っている資源の割合と、私が実際に契約しているプランによる利用資源の割合が書かれていました。政府が再生エネルギーの積極利用を勧めていることは前回紹介しました。どのような資源が使われているのかを意識付けするためにも、読んで理解する必要があるのでしょう。
このグラフを見ると、やはり原子力と火力(化石燃料)という従来の発電方式が圧倒的な割合となっています。再生可能エネルギーによる発電はこの Engie-Electrabel 社では 15.8 % です。
私の住む地域でも風力発電用の風車を見るのですが、発電の効率を考えればまだまだ少数派なのでしょう。またソーラーパネルを取り付けている家庭を時々見かけます。ヨーロッパは景観の問題もありそうなので、太陽光発電の普及はまだまだ難しそうというのが私の肌感覚です。
再生エネルギーの普及には今後の技術開発が望まれます。「設備の発電効率のアップ」と「私たちが使う機器の省電力化」の双方のアプローチで改善していくといいですね。
まとめ
以上、 2 回にわたりベルギーの電気代について解説してきました。複雑な料金制度ですが、それでもやりくりの余地はあり最終的には消費者主体で上手に使うべきなのでしょう。
この記事の内容をまとめましょう。
- ベルギーは電力自由化により電力会社(発電会社)が選べる。ただし電気料金としては全体の 20 % ほど。
- 電気料金の大部分は送電と配電費用で消費電力量に比例する。しかも送電会社と配電会社を選ぶことはできない。
- 電気代を節約するには「電気を使わない」。電力消費量全体を抑えるのが最も効果的。
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※この記事は 2018 年 2 月時点の情報を基に作成しました。