マッチング指標を「就職率・充足率・求人倍率」の三位一体グラフにする

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私は過去2回転職していますが、常々仕事探しには「縁」を感じます。この縁とは「人と仕事のマッチング(労働需給)」です。

転職活動を通じて確かに「マッチングとは何だろう?」と不思議に思い始めました。そこでまず、実態として「マッチングができている/いない」が存在するのか、統計データを調べました。

今回から数回に分けて、「人と仕事のミスマッチ」の実情を私なりに調べて考察した結果をシェアさせて頂きます。今回の記事は「厚生労働省のマッチング指標をもう一歩進めたグラフ」として、求人倍率も考慮したグラフを作ってみました。

厚生労働省のデータを利用する

まず「人と仕事のミスマッチ」のデータがあるか調べてみました。労働政策研究・研修機構の「ユースフル労働統計」にて「ミスマッチ指標」という評価基準を見つけました。

外部リンク:独立行政法人労働政策研究・研修機構 ユースフル労働統計2016 ―労働統計加工指標集―

この値では全職業を総合してのミスマッチ状況はわかりますが、個別の職業でのミスマッチ状況はわかりませんでした。

次に、厚生労働省の「マッチング指標を用いたマッチング状況の分析(労働市場分析レポート第43号)」という資料を見つけました。

参考資料(外部リンク):マッチング指標を用いたマッチング状況の分析(労働市場分析レポート第43号)平成26年(2014年)10月31日付 (PDF)

この資料に書かれているグラフを熟読して何とか理解したのですが、時間がかかりました。せっかくグラフにされているので「パッと見てわかるグラフ」にできないか?私の考察は続きました。

就職率と充足率だけでなく「求人倍率」もつながっている

3つの値の関連性を絵にするとこうなる

まずは、指標の算出に使われている値について確認しましょう。私がここで言いたいことは「就職率・充足率・求人倍率は三位一体である」という点です。

三位一体グラフ
充足率・就職率・求人倍率は三位一体

なぜ3つの値はつながっているのか

順番に解説していきます。今回参照している資料(労働市場分析レポート第43号)にて、マッチング指標の算出に以下の二つの値を使っています。

就職率=就職件数÷新規求職者数 (%)

充足率=就職件数÷新規求人数 (%)

そして、この二つの値をデカルト座標上の点とみなして、原点からの距離をマッチング指標として計算します(計算式は元資料を参照)。

計算されたマッチング指標には単位は無いため、この値自体に意味はありません。しかし、二つの値を比較することで、どちらがよりマッチングがされているか(されてないか)を調べることができます。例えば、「◯◯の職業」は「××の職業」よりもマッチングされている、という感じです。

ただし、マッチング指標という値だけを比較するだけであれば、二次元のグラフにプロットする必要はありません。何かが足りない…と考えました。

考えた結果、「計算に使う各値の関連性がわからない」に行きつきました。就職率は就職した人の割合、充足率は採用された人の割合というのは理解しました。この二つの関連性を理解するのにもう一歩足りませんでした。

そして資料を見返して見つけたのが「求人倍率」でした。

求人倍率=新規求人数÷新規求職者数

そして、「就職率」、「充足率」、「求人倍率」はいずれも「就職件数、新規求職者数、新規求人数」のうちどれか二つを使って計算していることがわかりました。つまり、2つの値ではなく3つの値のバランスでグラフにすれば何か得られるのでは?という考えに行き着きました。

以上、話は長くなりましたが、3つの値をまとめると最初に示した図になります。

この図を見ると、「距離、時間、速度の計算式は互いに関連している」(おはじきという絵で覚えましたでしょうか?)のと同じように関連して分析ができるのではないでしょうか。

これが私の言いたかった「就職率・充足率・求人倍率は三位一体である」です。

マッチング指標を三位一体でグラフ化する

では改めて、求人倍率も考慮したグラフを作成しましょう。まず、充足率と就職率をグラフにプロットします。この二つの値で散布図ができます。

マッチング指標グラフ
マッチング指標のグラフ(厚生労働省の資料を元に作図は筆者による)

データ引用元URL:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000066759.pdf

ここまでは厚生労働省の資料と同じです。そして、第三の値である求人倍率をこの図に表してみましょう。

「求人倍率=1.0」となる点を繋いで直線を引きます。すると、「充足率、就職率、求人倍率」という3つの値がグラフに反映されて「売り手市場、買い手市場」まで見ることができます。実際に作図するとこうなります。

求人倍率を考慮したマッチング指標グラフ
求人倍率を考慮したグラフ(厚生労働省の資料を元に作図は筆者による)

データ引用元URL:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000066759.pdf

この図から以下のことが言えます。

  • 図の上側の「1.0<求人倍率」のエリアは「求職者数<求人数」なので、仕事を探している人に有利な「売り手市場(就職者が少ないという偏り)」とみなすことができます。
  • 図の下側の「求人倍率<1.0」のエリアは「求人数<求職者数」なので、採用側に有利な「買い手市場(求人が少ないという偏り)」とみなすことができます。

この図を見ると、どの職業も偏りがあって「マッチングはできていない」とも言えますね。実際に、各職業の求人倍率の値と所属するエリアに矛盾はありません。

「事務的職業」と「運搬・清掃・包装等の職業」については買い手市場で、残りの職業は「売り手市場」となりました。このグラフの結果が読者様の直感にあっているか、ご意見をいただければ嬉しいです。

以上、散布図に「求人倍率=1.0」という線を引くことで、職業別の「売り手市場」と「買い手市場」を視覚的に分類することができました。従来のグラフよりも、マッチングを分析するための情報が図に追加されましたね。

求人倍率で直線が引けるのはなぜか?

ここは数学的な話になるので、読み飛ばしていただいてもかまいません。

ポイントは2点あります。「求人倍率は隠れた値である」と「求人倍率は求人数と求職者数のバランス(比)であり、各々の数の絶対量とは無関係」という点です。

求人倍率はグラフに隠れた値

まずはグラフの解説をしましょう。横軸を充足率、縦軸を就職率としますが、充足率・就職率ともに、計算式の分子は「就職件数」で同じでしたね。一方、分母はどうでしょうか。充足率の分母は「求人数」、就職率の分母は「求職者数」でしたね。

言い換えると、両軸である充足率・就職率は計算式の分子は同じで分母だけ違うので、このグラフの各点は「分母の違い」によって位置が決まります。

では分母の違いとは何でしょうか?ここで三位一体のおさらいをしましょう。充足率の分母である「求人数」と、就職率の分母である「求職者数」を使った値が「求人倍率」でしたね。

つまり、グラフの各点を決める要因となるのは、

分母の違い⇒求人数と求職者数の違い⇒求人倍率の違い

なのです。

就職件数は充足率と就職率を決める重要な共通値なのですが、計算する(割る)ことでグラフから消えてしまいます。一方、求人倍率は計算には直接使いませんが、グラフ上の点(位置)を決める影の存在なのです。これが先に述べたポイントの1つ「求人倍率は隠れた値である」ということを示しています。

充足率や就職率にかかわらず「求人倍率=1.0」がありえる

求人倍率という値の重要性をお話したので、残りは可視化ですね。第二のポイント、それは「求人倍率は求人数と求職者数のバランス(比)であり、各々の数の絶対量とは無関係」でした。

これは、新規求人数(新規求職者数)が100万件あろうと、1件しかなくても、「求人数=求職者数」であれば「求人倍率=1.0」です。

求人倍率はバランスなので「充足率=就職率=0.1だけど求人倍率=1.0」というケースや「充足率=就職率=1.0でかつ求人倍率=1.0」というケースもありえそうです。つまり、求人倍率=1.0となる点は複数存在するということです。

そのため、「充足率=就職率=0(グラフ左下の原点)」を起点、「充足率=就職率=1.0(グラフ右上の頂点)」を終点として線を引けば、求人倍率=1.0を間接的に図示したことになります。

そして、この直線の意味は重複になりますが、「直線より上のエリア(1.0<求人倍率)⇒就職者が少ない(売り手市場)」、「直線より下のエリア(求人倍率<1.0)⇒求人が少ない(買い手市場)」となります。

以上、長い解説になりましたが、これが三位一体グラフのからくりです。

まとめ

実際に「人と仕事のミスマッチ」について調べてみたら面白くて、結構深いところまで考察してしまいました。以上、この記事の内容をまとめましょう。

  • 充足率・就職率・求人倍率は互いに関連している値である(三位一体である)
  • 求人倍率はグラフ上の位置(点)を決める隠れた値である
  • マッチング指標のグラフは求人倍率のラインから「売り手市場・買い手市場」に2分して「人と仕事のミスマッチ状況」を分析できる。

以上の考察から現状が少しでも把握できるようになれば、筆者として幸いです。

このグラフですが、さらにもう一歩進めた解析方法を考えました。それは「ポートフォリオ風にする」です。詳細は次回の記事にて紹介します。

次回記事:人と仕事のミスマッチを見える化するポートフォリオ風マッチング指標