【対訳】竜王とエンディング—ドラクエ1で英語を勉強しよう
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ドラゴンクエストの英語版で英語は学べるのか?という試みにより、これまでドラクエ1の「ラダトーム城関係者のセリフ」と「街の人々のセリフ」を解説してきました。
ドラクエ 1 の英語セリフ解説は「ラダトーム城編」、「街の人編」、「竜王編」の3回に分けたシリーズとしてご紹介します。
今回はいよいよ最終盤の「竜王のセリフ」を中心に、日本語(ファミコン版)と英語(スマートフォン版)の対訳をします。
なお、前回と同じようにできるだけ日常英会話やビジネス英会話で使えそうな表現を取り上げました。ここで解説している英文はご自身で編集して音読教材として活用していただくこともできます。
竜王と対面するまで
虹のしずくで橋をかける
- FC日本語版
- (勇者)は にじのしずくを てんに かざした
- スマホ英語版
- (Hero) holds the Rainbow Drop aloft…
- スマホ英語版日本語訳
- (勇者)は虹のしずくを空高くかかげた
- ※(勇者)は主人公の名前を呼んでいる部分
太陽の石、雨雲の杖、ロトの印を手に入れてついに虹のしずくと交換しました。いにしえの言い伝えどおり、虹のしずくで竜王のいる島に橋をかける。ドラクエ 1 屈指の名場面です。
この英文で唯一難しい単語は aloft です。意味は「上に、空中に」ですが、とても詩的な表現です。この単語を無理に覚える必要はありません。
この英文を現代英語にするならこうなるでしょう。 “Hero holds the Rainbow Drop high up in the sky.”
虹のしずくは Rainbow Drop です。ここで drop は「一滴」という使い方であり「落ちる」ではありません。目薬のことを eye drops と言いますので、関連して覚えるのがいいでしょう。
王の中の王
- FC日本語版
- よくきた (勇者)よ。 わしが おうのなかの おう りゅうおうだ
- スマホ英語版
- So, you come before me at last, (hero)! I am the Dragonlord, master of masters, king of kings!
- スマホ英語版日本語訳
- そうか、ついに私の前にあらわれたな、(勇者)よ!わしが竜王、君主の中の君主、王の中の王だ!
- ※(勇者)は主人公の名前を呼んでいる部分
ついに (at last) 、竜王とご対面です。緊張しますね。
自分(竜王)の目の前にあらわれたことを before me と言っています。
before は時間的に前という意味でよく使われますが、自分の目の前にあらわれる (in front of me) という使い方もできます。両方覚えて損はありません。むしろ私が提案している英文の言い換え訓練に使えそうです。
関連記事:中学英語はフィードバックが大切?理系目線の音読学習法(短い文の言い換えは英語力向上に役立つという解説)
次の文です。 “I am the Dragonlord, master of masters, king of kings!”
竜王はみずから「君主の中の君主、王の中の王」と言います。君主か王のどちらか1つでいいと思うのですが、どうやら理由がありそうです。
master は「主人、マスター」という意味で、日本語でも「バーのマスター」みたいに使いますね。また奴隷の雇用主に対しても master と使います。
ここでは「この世界を支配 (master) する者」という意味で、 king とは別に言う必要のある単語だったと推測します。もし king of kings だけだったら「竜王の島という狭い範囲しか治めていない王様であり、世界の王ではない」という風に解釈される可能性もあります。
ところで、竜王は Dragonlord と英訳されており、 Dragon King ではありません。どうしてでしょうか?
lord には「高位の官職に対する称号、他者に対して権力を持つ者」という意味があり、 king よりも重い意味だと考えられます。
映画『ロード・オブ・ザ・リング』の本来のタイトルは “The Lord of the Rings” です。世界を支配することができる指輪をめぐって覇権 (lord) を争うから「ロード・オブ・ザ・リング」なのです。道の意味のロード (road) ではないので注意してください。
lord という単語はこのように重い意味がありますが、実は日常英会話でも使う単語です。ルームシェアをした場合、部屋の大家・地主にたいして landlord と言うことがあります。ルームオーナーなので room owner でも間違いありませんが、こういう表現が日常英会話にもあるのです。
このように、竜王は世界を支配したいことがセリフから伝わるのです。
姫を連れてきたのか?
- FC日本語版
- ほほう ひめを わしのところまで つれてきてくれたのか? ごくろうで あったな
- スマホ英語版
- And bearing tribute to my glory in the form of a fair princess, no less! Hm hm hm! I am honored indeed!
- スマホ英語版日本語訳
- (そして)同じく、ここまでいらした姫に最大限の敬意を表しますぞ!フハハハハ!本当に光栄だ!
余計なお世話ですが、ローラ姫を連れて竜王と対面するとこのようなセリフが出てきます。
この竜王のセリフはなかなか格調高いですね。訳すのが難しいので私の主観で訳しました。そのため一語一句の対訳にはなっていません。
「勇者と会えるだけでも光栄なのに、さらにローラ姫とも対面できるとはなんと光栄なのだ!」と最大級のあいさつ(しかし竜王らしくプライド高い)を姫にしています。
決してファミコン版のように「連れてきた」などとは言っていません。欧米らしい、まずは対面した相手をリスペクトしたあいさつです。
ここまでかしこまった表現はビジネス英会話でも使うことはまずないでしょう。万が一、他国の王室関係者と謁見する機会があれば、くらいに思ってください。
各単語の意味は以下のリストのようになります。ただしこのセリフは各単語の意味よりも英文全体の雰囲気を大切にしてください。
- bearing tribute: 敬意を表す
- my glory: 自分にとって名誉な人(この場合 princess のこと)
- form: 礼儀、作法(意訳のため「ここまでいらした」と訳した)
- no less: 同じように、~に劣らず
- fair: (古文で)美しい
次にいきましょう。
“Hm hm hm!” は本来は「フムフム」という感じですが、ここでは「フハハハハ!」としました。求められている雰囲気はこのような気がします。
最後の文です。 “I am honored indeed!”
「本当に光栄だ!」と竜王は念を押します。 honored は「光栄な、名誉な」という意味です。
indeed は「本当に」という意味で really と同じです。日常英会話で「本当にそうだよね~」と相づちを入れるのに indeed と使います。
また転職サービスのインディードはこの indeed という単語のことです。このサービスを使えば「本当に」転職できるよ、という意味だと私は個人的に解釈しています。
世界の半分をやろう
- FC日本語版
- もし わしの みかたになれば せかいの はんぶんを (勇者に)に やろう どうじゃ? わしの みかたに なるか?
- スマホ英語版
- Take your rightful place at my side! Do so, and I will grant to you dominion over half this world! What say you? Will you rule beside me?
- スマホ英語版日本語訳
- そなたが本来いるべき場所はわしのところだ!そうすれば、この世界の半分以上の統治権をそなたにやろう!どうだ?わしとともに(わしのそばで)統治しないか?
さあここまできました。あなたは興味本位で「はい」と答えましたか?私は初代のファミコン版をプレイしたとき怖くて「はい」とは答えられませんでした。
最初の文です。直訳すると「私のサイドで君の正しい場所を確保しなさい」です。でもこれでは不自然なセリフなので「そなたが本来いるべき場所はわしのところだ!」と訳しました。rightful は「正しい、正当な」という意味です。
竜王は勇者に倒されることを恐れています。なのでヘッドハンティングすることで倒されるリスクを回避しようとしています。 Facebook 社がつぶされないようライバル社を買収しようとしているのと同じことです。それがこの口説き文句としてあらわれています。
次の文です。 “Do so, and I will grant to you dominion over half this world!”
勇者がもし竜王側に寝返ることに同意すれば (do so) 、竜王は世界の半分以上 (over half this world) の統治権 (domination) を与える (grant) と言っています。
grant は「願いを聞く、許す、与える」という意味で、目上から目下に与えるニュアンスがあります。わざわざ grant と使って give や share ではないところから、やはり竜王は自分が上の立場なんだと主張しています。
世界の半分以上だなんて、セールストークでしょう。同意した後、実際に半分以上もらえるとは思えません。でもそれくらい魅力的だぞ?と勇者にアプローチします。
“What say you?” は「~してはどうか?」という提案をしています。ここでは「世界の半分を欲しくないか?」に対する返事を求めているのであり「何か言いますか?」ではありません。
最後の文です。 “Will you rule beside me?”
rule は dominion と同じで「統治する」です。ここでは同じ単語の繰り返しを避けたと考えられます。
竜王と一緒に世界を支配しませんか?と誘われますが、 beside という単語を使っています。一緒に支配するのであれば with を使って “Will you rule with me?” でもよさそうです。
しかし、 with を使ってしまうと竜王と勇者の力関係が対等になるかもしれません。なので beside (そばで)という単語を使って、勇者には側近になってほしいのです。あくまでも竜王が上の立場なのです。本当にしたたかな交渉ですね!
そしてここで「いいえ」と答えると、ついに竜王との対決になります。
竜王打倒直後
光の玉を取り戻した
- FC日本語版
- そして ひかりのたまを りゅうおうのてから とりもどした!
- スマホ英語版
- (Hero) wrests the Sphere of Light from the Dragonlord’s death grip!
- スマホ英語版日本語訳
- (勇者)は竜王の死骸が握っている光の玉をねじ取った!
ついに竜王をやっつけました。さあ、光の玉を取り戻しましょう。この英文で勇者が光の玉を取り戻したことがわかります。
grip は「握る(にぎる)」です。街の人々編でロトの印を握りしめてやる気を出したように、竜王は光の玉をしっかりにぎりしめていたのです。もちろん単に「持っていた」とも解釈できます。
wrest は「ねじ取る、もぎ取る」という意味です。死んだ竜王の身体は硬直していたのでしょう。ただ取り返すのではなく、力を入れて竜王の手 (Dragonlord’s death grip) をこじ開けないと光の玉を取れなかったとイメージできます。
それにしても、竜王は光の玉を持ったまま勇者と戦っていたのでしょうか。それとも死を覚悟した竜王が光の玉を渡さないように握りしめていたのでしょうか。どこかに置いたままなら、戦いの隙に勇者が光の玉だけ取って逃げられるかもしれませんしね。
想像力が膨らみます。
まばゆい光があふれだす
- FC日本語版
- あなたが ひかりのたまを かざすと まばゆいばかりの ひかりが あふれだす……
- スマホ英語版
- As he holds the sphere aloft, a blinding light radiates from deep within its core…
- スマホ英語版日本語訳
- 彼が光の玉を高くかざすと、目がくらむほどの光が玉(の深い核)から放たれる…。
虹のしずくを空にかざしたように、勇者は光の玉を上に高くかざします (he holds the sphere aloft) 。すると、目が開けられないほどまぶしい光が玉から放出されます。
blinding light は「目がくらむほどの光」です。カーテンの代わりに使うブラインドはこの blind という単語から来ています。また目の見えない人のことを blind people ともいいます。
radiate は「(熱や光を)放射する、放出する」です。放射状に広がる様子を意味します。
ではどこから光が放射されているのでしょうか?光の玉の中からです。それも奥深いところ (deep within its core) からです。 core は「中核、芯、コア」です。光の玉の中心部に光を発する何かがあるのでしょう。 within は in と同じで「~の中に」という意味で、文語表現です。
もしこれがリアルなら、勇者はこの光で失明するのではないか、とイメージしてしまいそうな英文表現です。もちろん悪を倒して光が放たれるのですから、それくらい強力な光だったという演出が必要なのはわかります。
平和が戻ったのだ
- FC日本語版
- このくにに へいわが もどったのだ。
- スマホ英語版
- The great evil has been banished, and the world knows peace one more!
- スマホ英語版日本語訳
- 大いなる悪は払いのけられ、そして世界はもう一度平和になった!
長い時間をかけて、ついに平和を取り戻しました。
ここでは竜王を大いなる悪 (great evil) に置き換えて、話をシンプルにしています。
banish は「払いのける、追い払う」という意味です。人の国外追放や害虫の駆除にも使う単語ですが、ここでは「恐怖の根源を払いのけた」という意味です。
the world knows は直訳すると「世界は知ることになる」でしょうか。 know は「知っている、わかっている」です。ただしここではむしろ、ものすごい光が放射されたことで「アレフガルドは(平和が戻ったことに)気が付いた」といったニュアンスに感じます。
その後ラダトーム城にて
私の治める国があるなら
- FC日本語版
- いいえ。 わたしの おさめる くにが あるなら それは わたしじしんで さがしたいのです
- スマホ英語版
- My thanks, Majesty, but were I ever to rule, it must needs be over a realm of mine own founding.
- スマホ英語版日本語訳
- 陛下、ありがとうございます。しかし、もし私がいつか統治するなら、自分自身で創り上げた以上の場所にする必要があります。
いにしえの伝説の勇者は本当だった。ラダトーム王は自分の地位を勇者に譲ろうとしました。それに対して、勇者は自分の治める国を自分で探したいと答えます。ドラクエ2への布石ですね。
この英文は長く訳も難しいので、意訳とさせていただきます。
“My thanks, Majesty.” はラダトーム王に対する感謝の言葉です。この表現はシンプルですが、実はかなりかしこまっています。「陛下、身に余るほどの光栄です」くらいの意味です。
Majesty は「王族、皇族、陛下」という意味で、王族の人に対する返事です。『不思議の国のアリス』でもハートの女王のセリフに対してアリスが “Yes, your Majesty.” と返事をするシーンを見たことがあります。
この後の英文が難しいです。 “but were I ever to rule, it must needs be over a realm of mine own founding.”
まず王様の提案を断るのに no ではなく but と言っています。王様の名誉を傷つけないように、柔らかく断りを入れています。英語は何でもストレートに表現する言葉ではありません。
カンマの前までは「もし私がいつか統治できるのであれば」という意味です。 were I は「(今は違うが)もし自分に~」と仮定して、さらに倒置しています。仮定法では was ではなく were を使います。 ever は「いつか」です。
カンマの後はさらに難しいです。
自分自身 (mine own) で創る/設立する (founding) 国/領土 (realm) を超える (over) と言っています。アレフガルドよりも大きい国を自分でつくりたい、という野心なのでしょうか?正直これ以上わかりません。
ちなみに、 must needs (~する必要がある)は文法的にどういうことなのか(正しいのか)わかりません。ここでは原文のままとしました。日常英会話でこういう表現はしないので気にしなくて大丈夫です。
おともしとうございます
- FC日本語版
- その あなたの たびに ローラも おともしとうございます。
- スマホ英語版
- Take me with you, my dearest heart!
- スマホ英語版日本語訳
- 最愛の人、私も連れてって!
勇者がラダトーム王の提案を丁重に断りました。「自分で統治する場所」を探す新しい旅に出ようとしたその時、ローラ姫が現れます(助けていれば)。
ラダトーム城編で、ローラ姫のキャラがファミコン版と英語版で異なることを解説しました。フィナーレ直前でもこのキャラにブレはありません。
ファミコン版のローラ姫は、自分も一緒に行きたいことを丁重にお願いしています。
英語版はまたしてもストレートです。しかも父親(ラダトーム王)と兵士たちの目の前で my dearest heart (最愛の人)と勇者を呼んでいます。
dearest は「親愛なる、愛しい」という意味です。 heart は「心臓、ハート」ですが、ここでの使い方は dearest が前についているので「人」という意味になります。
take me はそのまま「私を連れて」です。 with you は無くてもセリフとして成立するのですが、ここでは勇者に対して言っていることを明確にするため意図的に入れたと考えられます。
連れてってくださいますね?
- FC日本語版
- このローラも つれてって くださいますね?
- スマホ英語版
- Pray, forsake me not! Will you take me for your companion?
- スマホ英語版日本語訳
- お願い、私を見捨てないで!私を仲間として連れてってくれますよね?
最後の試練です。この問いかけも「はい」と答えるまで無限ループです。
英語版は forsake me not (私を見捨てないで)とまで言います。もう一度言いますが、王様や兵士たちがいる目の前で、です。断れない雰囲気を計算して言っているのでしょうか?
pray は「祈る」という意味ですが、この場合は「お願い」と訳しました。見捨てないでと圧力をかけているので「誓って」というニュアンスにも受け取れます。
後ろの質問文です。 “Will you take me for your companion?”
ひとつ前のセリフと重なりますが「連れてって」の疑問文(連れて行くのはこれからなので未来形)です。ただし最後に for your companion とあります。
companion は日本語のコンパニオンのことです。意味は「仲間、付き添い」です。ここまで言うということは「将来的にはお嫁さんにしてほしい」という意味が含まれるのでしょうか?そこまでは正直わかりません。
うれしゅうございます
- FC日本語版
- うれしゅうございます。ぽっ
- スマホ英語版
- You will? Oh, joy! Then let us away, my love! Tee hee! (simper)
- スマホ英語版日本語訳
- 本当に?あぁ、うれしい!では行きましょう、愛する人!やっほー!(ニヤニヤ)
「はい」と答えると You will (take me)?(私を連れてってくれるのですね?)と確認します。訳としては「本当に?」という感じです。
Oh, joy! は「うれしい!」です。後ろの Tee hee! (やっほー!)もそうですが、イメージとして、飛び跳ねながらキャーキャー喜んでいる感じです。もう少しおしとやかに喜びを表現するなら “My pleasure!” だと思うのですが、そうではありません。
simper は「ニヤニヤ笑う」です。 smile (スマイルとしての笑顔)ではありません。「やった!これで私は勇者様と…(ハート)」といった下心が透けてみえそうな笑い顔です。
“Then let us away, my love!” は「今すぐ城を出て旅に出ましょう」と言ってますが、勢い的に宿屋に直行しそうな感じです。
my love は「愛する人(勇者のこと)」で、さきほど出てきた my dearest heart ほど強くはありません。それでも愛する人とはっきり言っていることに違いはありません。
then は「それでは、あの時」という意味です。ここではローラ姫を旅に連れて行く決定をしたことを受けて「では出発ですね」と文をつないでいます。 let us はレッツ (let’s) のことです。
away は「離れて」という意味です。ラダトーム城からはるか遠いところに行きましょうと言っています。
サッカーで使うアウェーはこの away のことで「対戦相手のホームグラウンド(自分たちのホームではない)」という意味です。また食べ物の持ち帰りはテイクアウェイ (take away) です。テイクアウトは和製英語です。
ローラ姫のキャラがここまで異なるのはこのシーンだけではありません。ぜひラダトーム編もあわせてお楽しみください。
新たな旅がはじまる
- FC日本語版
- (勇者)のあらたなたびがはじまる
- スマホ英語版
- It would seem a new journey awaiting you, (hero)! May it be a happy one!
- スマホ英語版日本語訳
- (勇者)、あなたに新しい旅が待っていることでしょう!良い旅を!
- ※(勇者)は主人公の名前を呼んでいる部分
エンディングロール前、最後のメッセージです。これは誰かが言ったセリフではなく、システムメッセージです。
“It would seem a new journey awaiting you.” と新しい旅が始まることを説明しています。この英文の解釈は「新しい旅のほうがプレイヤー(勇者)を待っている」のです。勇者が新しい旅を始めるのとニュアンスが少し違います。
journey はカタカナのジャーニーで「旅」ですね。ラダトーム城に帰ってくることは想定しない旅なので journey です。旅という意味の単語は他にもツアー (tour) やトラベル (travel)、トリップ (trip) などあります。意味の違いは辞書で調べてみましょう。
would は「(未来が)~だろう」という意味、 seem は「~らしい、~のようだ」という意味です。期待は込めているのですが、確信がない感じです。「新しい旅がはじまる」と言い切っても良さそうですよね。例えば “A new journey is awaiting you.” みたいに。
そして最後の最後に “May it be a happy one!” とゲームを締めくくります。
この英文は直訳すると「幸せな旅になるかもしれません!」ですが、本来は旅の安全や健闘を祈るメッセージのはずです。この英文もなぜ遠回しなのかがわかりません。たとえば推測ですが “Have a nice journey!” (良い旅を!)や “Best wishes to you!” (お幸せに!)と言うべき部分ではあります。
この流れでは、どう考えても旅先で勇者はローラ姫の尻に敷かれそうな感じです。勇者の健闘を祈ります。
まとめ
ドラクエ 1 の英語版を 3 回に分けて解説してきました。やや難しい表現が多いものの「日本語のセリフをこうやって英語で伝えているんだ」と翻訳している私自身が勉強になりました。
全編を通してローラ姫に何か持っていかれた感じでした。まさかここまでキャラが違うなんて。しかしプレイしてみると日本と欧米の文化の違いを理解する教材にもなりました。
次はドラクエ 2 でも対訳に挑戦したいと思います。ボリュームがさらに多くなりそうですが、引き続き日常英会話やビジネス英会話でも使えそうな表現を選んで解説したいと思います。
これからもよろしくお願いします!
声に出して読もう(英語のセリフ一覧)
この記事で紹介した英語のセリフを再度一覧にまとめました。下記のリストをご覧ください。
ドラクエのセリフは文語体や叙述的、詩的なものもあります。難しいセリフについてはグロービッシュや工業英語の観点から英文を書き直しました。そのため下記のセリフリストはより英会話に使えるようになっています。
音声データはありませんが、英語をある程度学習している方であれば音読教材としてお使いいただけます。ご活用ください。
- 竜王闘う前
- Hero holds the Rainbow Drop high up in the sky.
- So, you come before me at last, (hero)!
- I am the Dragonlord, master of masters, king of kings!
- And bearing tribute to my glory in the form of a fair princess, no less! Hm hm hm! I am honored indeed!
- Take your rightful place at my side!
- Do so, and I will grant to you dominion over half this world!
- What say you? Will you rule beside me?
- 竜王打倒直後
- (Hero) wrests the Sphere of Light from the Dragonlord’s death grip!
- As he holds the sphere aloft, a blinding light radiates from deep within its core…
- The great evil has been banished, and the world knows peace one more!
- その後ラダトーム城にて
- My thanks, Majesty, but were I ever to rule, it must needs be over a realm of mine own founding.
- Take me with you, my dearest heart!
- Pray, forsake me not! Will you take me for your companion?
- You will? Oh, joy! Then let us away, my love!
- It would seem a new journey awaiting you, (hero)! May it be a happy one!
このレビューで解説した英単語一覧
- aloft: 上に、高く、空中に
- away: 離れて、アウェー
- banish: 払いのける、追い払う
- bearing tribute: 敬意を表す
- before: (時間的、空間的)前に
- beside: そばで
- blinding light: 目がくらむほどの光
- companion: コンパニオン、仲間、付き添い
- core: 中核、芯、コア
- dearest heart: 最愛の人
- domination, dominate: (より独裁的な)統治
- drop: 一滴、落ちる
- ever: いつか
- evil: 悪
- eye drops: 目薬
- fair: (古文で)美しい
- form: 礼儀、作法(意訳のため「ここまでいらした」と訳した)
- forsake: 見捨てる
- founding: 創る、設立する
- grant: 願いを聞く、許す、与える
- grip: 握る
- hm: ふーん、うーむ
- honored: 光栄な、名誉な
- indeed: 本当に (really)
- journey: (帰路を想定しない)旅
- joy: うれしさ
- know: 知っている、わかっている
- landlord: 大家、地主
- lord: 高位の官職に対する称号、他者に対して権力を持つ者
- majesty: 王族、皇族、陛下
- master: 君主、主人、マスター
- mine: 私のもの
- my glory: 自分にとって名誉な人(この場合 princess のこと)
- my love: 愛する人
- no less: 同じように、~に劣らず
- own: 所有する
- pray: 祈る、誓う
- radiate: (熱や光を)放射する、放出する
- realm: 国、領土
- rightful: 正しい、正当な
- rule: (より政治的な)統治
- seem: ~らしい、~のようだ
- simper: (滑稽な)笑顔
- then: それでは、あの時
- What say you?: どうだ?、~してはどうか?
- within: (文語表現)~の中に (in)
- would: (未来が)~だろう
- wrest: ねじ取る、もぎ取る
関連記事:英単語を克服するコツ、多読による覚え方と必須単語数
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※ゲーム内の英文は一部古文表記となっています。読みやすさのため筆者が現代英文に修正したうえで解説しました。また文法的な厳密性については解説を省略します。