【対訳】ムーンブルク王女を救出せよ—ドラクエ2で英語を勉強しよう

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仲間が揃った

ドラクエ 2 で英語を学ぶシリーズ。第 2 回はムーンブルク王女を救出して仲間にするまでのストーリーです。どのようなセリフをヒントに攻略するのでしょうか?みていきましょう。

このシリーズで紹介する英文はすべて対訳になっています。音読教材としてお使いいただけます。

ムーンペタの街に逃げのびた兵士

ムーンペタの街に逃げのびた兵士

城から逃げ出した

FC日本語版
わたしは あまりの おそろしさに しろから にげだしたのです。
スマホ英語版
Stricken with terror, I did flee the castle in its time of dire need!
スマホ英語版日本語訳
恐怖に襲われて、あまりの悲惨さに私は城から逃げ出してしまいました!

ムーンペタの街の左上端の草むらにいる兵士のセリフです。城 (castle) から逃げ延びることはできたものの、兵士としての務めを果たせず自分を責めています。

stricken はストライク (strike) の過去分詞です。そのため恐怖 (terror) にストライクされた(打たれた)のですが、より自然な日本語にするため「恐怖に襲われて」と訳しました。

flee は「逃げる」です。 run away と置き換えることができます。 did が付いているのは強調で「とにかく逃げ出した」というニュアンスでしょうか。ちなみに戦闘中の逃げるコマンドも英語版では flee です。 free (自由)ではありません。

in its time of dire need は訳が難しいです。

Google 翻訳では「悲惨な時に」でした。また別の辞書では dire need が「緊急を要する、すぐ必要とする」という意味でした。自然な日本語にするには time (時)にこだわる必要がないと判断して「あまりの悲惨さに」としました。

今回はテーマ的に日常英会話にするのが難しいセリフばかりです。しかしそれでもあえてセリフ調をなくして実践的な表現にするならこうなるでしょう。

I was stricken with terror, so I escaped from the castle!

今ごろお城は

FC日本語版
いまごろ ムーンブルクの おしろは……。 ああ エレイン ひめっ!
スマホ英語版
And now Moonbrooke is… And Princess Elaine…! Oh, Princess! Highness! (sob)
スマホ英語版日本語訳
そしてムーンブルクは今…そしてエレイン王女は…!ああ、王女様!殿下!(すすり泣く)
※ Elaine はムーンブルク王女の名前エレイン

Highness は「高位の人」という意味です。別の回で紹介した majesty と同じです。

sob は「すすり泣く」です。 cry よりも泣きじゃくる感じです。

英文だけ読むと、この兵士は膝をついてわんわん泣いているイメージが浮かびます。ゲーム中のドット絵ではこの悲しさを表現できていません。

ムーンブルク王(亡霊)

ムーンブルク王(亡霊)
FC日本語版
わが むすめ エレインは のろいをかけられ いぬに されたという。
スマホ英語版
My dear, dear daughter, the Princess Elaine, has been cursed to roam the land as a common mongrel… A stray dog!
スマホ英語版日本語訳
我が愛しき、愛しき娘、エレイン妃は呪われてしまった。地べたを歩き回る雑種の野良犬に!

ムーンブルク王の悲痛な叫びが伝わります。

cursed (curse) は「呪われた」の過去形です。

roam は「(あてもなく)歩き回る」です。通信サービスの「ローミング」はこの単語が元の roaming です。普段自分たちが利用しているサービス領域外に移動して(歩き回って)、他者の通信サービスを使うことからローミングなのだと考えられます。

land は「土地、ランド」ですが、王様のおかれている状況やセリフのイメージから「土地」では堅いので「地べた」にしました。

mongrel はズバリ「雑種、混血」です。本来は使用が好ましくない単語でしょう。しかし、由緒正しい王様からしたら、野良犬にされてしまった娘にそれくらいきつい言葉で感情をぶつけたいのかもしれません。

このセリフでは common (共通の)という単語でつないでいますが、なくても雑種で通じます。むしろ common mongrel とすることで差別色を薄めているかもしれません。

stray は「はぐれる、さまよう」です。そのため stray dog は「はぐれた犬」なので「野良犬」です。迷子のことを stray child といいます。

このセリフも日常英会話にするには難しいです。ムーンブルク王の伝えたいことをシンプルにするため、英文を分割してみましょう。このようになります。

My dear, dear daughter, the Princess Elaine, has been cursed and become a dog! She is almost a common mongrel that roams the land!

ムーンブルク城の兵士

ムーンブルク城の兵士

ラーの鏡で真実を

FC日本語版
ひめの のろいを とくには しんじつの すがたをうつすという ラーのカガミが ひつようです!
スマホ英語版
Yet if some brave soul could retrieve Ra’s mirror, show you your true face in its polished depth… Then might the curse upon you be lifted at last…
スマホ英語版日本語訳
それでも誰か(勇敢な魂)がラーの鏡を取り戻すことができたら、その磨かれた(鏡の)奥まであなたの顔を映し出してください…。そのときあなたへの呪いがついに解かれるかもしれません…。

ラーの鏡で呪いを解けるかもしれない、すなわち犬にされた王女を元に戻せるかもしれない重要なヒントです。英文の方はかなり難しい表現です。

some brave soul は「何か勇敢な魂」です。兵士自体が滅ぼされて魂になっているので、人とは言わないのでしょう。 someone, somebody (誰か)のことだとみなせます。

retrieve は「取り戻す」です。私がまだ英語ができなかった頃、情報検索という英単語は search ではなく retrieve を使っていました。今は普通に search を使っていますね。

鏡を入手したら、その磨かれた (polished) 面の奥深く (depth) まで顔を映し出す (show) と呪いが解けるようです。 show なので本当は「見せる」ですが「映し出す」の方がいいと思いました。

lift はリフト(エレベーターのイギリス英語)なのですが、ここでは「包囲網、禁止令を解く」という意味で使っています。私も知りませんでした。

このセリフも難しいので、もっとシンプルに伝えられないか検討しました。こう言ってみるのはどうでしょうか?

If someone could find Ra’s mirror, show you your true face in it. Then the curse might be lifted at last…

4つの橋に沼地

FC日本語版
ひがしの ちに 4つのはしが みえる ちいさなぬまちが あるという。
スマホ英語版
To the east of this castle… in a place from where may be espied four bridges… there stands a suppurating swamp…
スマホ英語版日本語訳
この城の東へ…4つの橋が遠くから見えるであろう場所…そこには(膿んだ)沼地がある…。

ラーの鏡の場所を教えてくれる重要ヒントです。

espied (espy) は「遠くから見える」という受け身表現です。モンスターの襲撃以前より、ムーンブルク城の高台から 4 つの橋が見えていたのでしょう。ただし may be 「かもしれない」とあるので、自分の知識に自信はなさそうです。

swamp は「沼地」です。 suppurating (suppurate) は「化膿した」です。この2語でドラクエ特有の「毒の沼地」を表現していると思われます。ただし suppurating には毒 (poison) の意味はなく、傷口の膿みという意味しかありません。そのため(膿んだ)とカッコ書きにしました。

stand は「立つ」のスタンドですが、ここでは「その場所に~がある」という意味です。 stand には複数の意味があるのでご注意ください。

このセリフも難しいですね。日常会話で使うかわかりませんが、こうした方が伝わるでしょう。

There is a swamp where four bridges can be seen from the east of this castle.

そこにはラーの鏡が

FC日本語版
そこには ラーの鏡が! 
スマホ英語版
Beneath its foul surface lie Ra’s sacred mirror… (sigh)
スマホ英語版日本語訳
その腐った地の下には、ラーの聖なる鏡が…。(はぁ)

foul は「汚れた、腐った」です。毒の沼地を表現したいので「腐った」にしました。一般的な「汚れた」という英語表現を使いたければ dirty です。

surface は「表面」ですが、ここでは沼地の表面です。マイクロソフトの製品であるサーフェスはこの英単語から来ています。机に置いても机の表面 (surface) と高さが変わらないくらい薄い PC である、と命名されたと考えられます。

beneath は「下に」で、アンダー (under) とほぼ同じ意味です。沼地にただ落ちているのではなく、沼地を掘らないと出てきません。どうしてそれを知っているのでしょうか?

lie は「ある」です。この単語は「横たわる」が一番目の意味です。しかし私も含めて受験英語アレルギーがある人にはこの単語の活用で悩まされましたね。そのためこれ以上深く解説しません。「ウソをつく」の英単語も lie です。

sacred は「聖なる」です。武器の聖なるナイフにも使いそうな単語ですが、実際には divine dagger (神の短剣、ダガー) です。

最後の sigh は「ため息」の意味です。しかしこの状況はため息ではなく、ダメージを受けた息苦しさから出る「はぁ」です。

lie を使わずに英文を修正するとこのようになります。こちらの方が私にはわかりやすいです。

Ra’s sacred mirror might be beneath its surface.

ムーンブルク王女

ムーンブルク王女

元の姿に戻れるなんて

FC日本語版
ああ もとのすがたに もどれるなんて……。 もうずっと あのままかと おもいましたわ。
スマホ英語版
It is a relief indeed to be returned to mine own dear body! I had feared that I might be cursed to bark and beg forevermore!
スマホ英語版日本語訳
自分の愛しい身体に戻って本当にほっとしました!このまま一生呪われたまま吠えてエサをもらい続けるのかと恐怖でした!

relief は「不安を取り除く、安心する」です。野球のリリーフピッチャーはこの単語が元ですが、この意味ではなく「救援者、番兵の交代者」の方でしょう。

mine own (dear) body で「自分の(愛しい)身体」と言っています。 my own ではなく mine own としているのは、自分の身体を所有しているのは自分だけだからでしょうか。

bark は「吠える」です。犬以外にも使えます。鳴き声の「わんわん」は bowwow (バウワウ)です。

beg は「許しを求める」です。 I beg your pardon? (失礼ですが何と言いましたか?)という丁寧な使い方もありますが、物乞いという意味で使うケースが多いです。ムーンブルク王女は犬にされたため、乞うのはエサでありお金ではありません。そのため意味は離れますが「エサをもらう」と訳しました。

forevermore は forever (ずっと、永遠に、フォーエバー)と同じです。 more が付くことで意味が強調されます。呪いが解けたのだからそれくらい強調して喜びを表現しているのです。

救世主に会えた!

FC日本語版
わたしは ムーンブルクおうの むすめ エレイン。
スマホ英語版
Well met, savior mine! I am Elaine, Princess of Moonbrooke!
スマホ英語版日本語訳
よく出会えました、(私の)救世主に!私はエレイン、ムーンブルクの王女です!
※ Elaine はムーンブルク王女の名前エレイン

met は meet (会う)の過去形です。

savior は「救世主」です。呪いから解放してくれたのですから確かに救世主ですね。さきほどの forevermore と同じで、呪いから解放された喜びは尋常じゃなかったのでしょう。

共に闘いましょう

FC日本語版
わたしも あなたがたの なかまに してくださいませ。 ともに たたかいましょう!
スマホ英語版
Come, let us join forces, that we may vanquish our common enemy as one!
スマホ英語版日本語訳
さあ、力を合わせましょう、私たちはひとつの(共通の)敵を倒せるかもしれません!

サマルトリア王子が仲間になった時のセリフとほぼ同じです。しかし後半部分は少し違います。

「倒す」という英単語にサマルトリア王子は smite を使いました。しかしムーンブルク王女は vanquish になっています。ドラクエ 1 の竜王に対して使ったのと同じ英単語です。英語は同じ単語の重複利用を避ける傾向にあるため、その配慮でしょうか。

最後の our common enemy as one は「ハーゴンというひとつの共通の敵」でしょう。自分たち 3 人で旅に出るが、その目的は同じですよ、と強調していると受け止めました。

この英文は書き直してみるとこのようになります。サマルトリア王子のセリフとほぼ同じです。

Come, let us join, and defeat our common enemy as one!

まとめ

難しい表現はあるものの、感情のこもったセリフがあり対訳して面白かったです。もっと現代英語にできれば日常会話でも使えそうな表現もありました。

仲間が全員揃いました。次回は紋章編です。すべての紋章を集めるのにどういったセリフが出てくるのでしょうか?お楽しみに!

※プレー後記:ラーの鏡ってどうして沼地に落ちてるんだろう?その辺のストーリーってあったっけ?

声に出して読もう(英語のセリフ一覧)

この記事で紹介した英語のセリフを再度一覧にまとめました。下記のリストをご覧ください。

ドラクエのセリフは文語体や叙述的、詩的なものもあります。難しいセリフについてはグロービッシュや工業英語の観点から英文を書き直しました。そのため下記のセリフリストはより英会話に使えるようになっています。

音声データはありませんが、英語をある程度学習している方であれば音読教材としてお使いいただけます。ご活用ください。

  • ムーンペタの兵士
    • I was stricken with terror, so I escaped from the castle!
    • And now Moonbrooke is… And Princess Elaine…! Oh, Princess! Highness!
  • ムーンブルク王
    • My dear, dear daughter, the Princess Elaine, has been cursed and become a dog!
    • She is almost a common mongrel that roams the land!
  • ムーンブルク城の兵士
    • If someone could find Ra’s mirror, show you your true face in it.
    • Then the curse might be lifted at last…
    • There is a swamp where four bridges can be seen from the east of this castle.
    • Ra’s sacred mirror might be beneath its surface.
  • ムーンブルク王女
    • It is a relief indeed to be returned to mine own dear body!
    • I had feared that I might be cursed to bark and beg forever!
    • Well met, savior mine! I am Elaine, Princess of Moonbrooke!
    • Come, let us join, and defeat our common enemy as one!

関連記事:中学英語はフィードバックが大切?理系目線の音読学習法

このレビューで解説した英単語一覧

  • bark: 吠える
  • beg: 許しを求める
  • beneath: 下に (under)
  • castle: 城
  • cursed, curse: 呪われた
  • dire need: 緊急を要する、すぐ必要とする
  • divine dagger: 聖なるナイフ
  • enemy: 敵
  • espied, espy: 遠くから見える
  • flee: 逃げる (run away)
  • forevermore: ずっと、永遠に (forever)
  • foul: 汚れた、腐った
  • highness: 高位の人 (majesty)
  • land: 土地、ランド
  • lie: 横たわる、ある
  • lift: リフト、包囲網、禁止令を解く
  • mongrel: 雑種、混血
  • polished, polish: 磨かれた
  • relief: 不安を取り除く、安心する
  • retrieve: 取り戻す
  • roam: 歩き回る
  • roaming: ローミング
  • sacred: 聖なる
  • savior: 救世主
  • sigh: ため息
  • sob: すすり泣く
  • some brave soul: 何か勇敢な魂 (someone, somebody)
  • stand: その場所に~がある
  • stray child: 迷子
  • stray dog: 野良犬
  • stray: はぐれる、さまよう
  • stricken, strike: 打たれる、ストライク
  • suppurating, suppurate: 化膿した
  • surface: 表面、地表
  • swamp: 沼地
  • terror: 恐怖
  • vanquish: 倒す

関連記事:英単語を克服するコツ、多読による覚え方と必須単語数

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※この記事の英訳には主に研究社新英和大辞典(第6版)を使用しました。

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このブログを書いている人

ダイブツ
twitter: @habatakurikei
元々IT系だけど電気系技術者。20代で博士号を取得するも、全然社会の役に立てないのが不満でブログによる情報発信を開始。あなたに有益な知識やノウハウを理系目線かつ図解でわかりやすく解説するのがモットー。2018年心臓発作であわや過労死寸前。そこからガジェットレビューを通じた体調管理の情報発信も開始。ベルギー在住でシンガポール就労経験もあり、海外転職や海外生活のノウハウも公開中。

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