【対訳】ローラ姫とラダトーム城—ドラクエ1で英語を勉強しよう
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あるときドラクエのスマホアプリをダウンロードしたら、なぜか英語版でした。おそらく当時のスマホの住所登録がシンガポールだったからかもしれません。
ドラクエを英語版でプレイしたら英語力は向上するのか?英語に抵抗はあるけど、ゲームを通じて英語を学習したい。そう考えている人もいらっしゃるのではないでしょうか?
この記事ではドラクエ 1 で出てくるセリフをファミコン版(日本語)とスマホ版(英語)の対訳式で解説します。ここで解説している英文はご自身で編集して音読教材として活用することができます。お役に立てればうれしいです。
本来はドラクエ 1 全体で 1 記事にまとめる予定でした。しかしボリュームが増えてしまったため「ラダトーム城編」、「街の人編」、「竜王編」の 3 回に分けて解説させていただきます。今回は「ラダトーム城編」です。
ローラ姫 (Princess Gwaelin) のセリフ
そんな、ひどい
- FC日本語版
- そんな ひどい……。
- スマホ英語版
- Th-!? B-!? Grr… Maybe you did not hear me correctly…
- スマホ英語版日本語訳
- え?あ?うーっ…。たぶん私の言うことをちゃんと聞いてなかったのね…。
ローラ姫は名前だけでなくキャラも違います。名前はグウェリン、おしとやかなイメージではありません。
ドラクエ 1 を一度でもプレイしたことがあればこのセリフは知っているでしょう。ローラ姫のお願いを断ったときに出るセリフです。
ファミコン版では、ローラ姫は哀れなセリフを言いながらも「はい」と答えるまで質問を繰り返します。ささやかな抵抗をしている感じです。
しかし英語版のこのセリフは明らかに自分を強く出しています。 Grr は「うーっ」という怒りの意味もあれば「ガルルルル…(犬のうなり声)」という意味もありますから。
そして maybe は「おそらく」という意味、 correctly は「正しく、ちゃんと」という意味です。そのため「私の言うことを勇者はちゃんと聞き取れてなかったのね」と勇者の返事を自分の都合のいいように解釈して再度質問するのです。
私のこと好きですか?
- FC日本語版
- (勇者)さまは ローラのことを おもってくださいますか?
- スマホ英語版
- (Hero)… Think you often of your beloved princess?
- スマホ英語版日本語訳
- (勇者)さま…。あなたの愛しい姫のことを(たまには)心に抱いていますか?
- ※(勇者, Hero) は主人公の名前を呼んでいる部分
ローラ姫救出後、ラダトーム城にいる姫に話しかけたときのセリフです。これもファミコン版であれば「はい」と答えるまで無限ループになる質問です。
この質問は日本語も英語もどちらも「勇者様は私のこと好きですか?」と確認しています。日本語版のほうは控えめなのに対して、英語版はかなり刺さります。
think は学校で習った通り「考える」で大丈夫です。むしろここでの使い方はすこし面倒です。グウェリン姫が勇者に愛されていることを確認したいのですが「愛していますよね?」とさすがにストレートには聞けません。
なので日本語版のセリフのように「心に抱いて」と遠回しに「好意はありますか?」と聞いています。英和辞典で think を調べると「心を抱く」という意味は出てきます(研究社新英和大辞典第 6 版)。
ところが、せっかく遠回しに質問したはずなのに、 think の直後に your beloved princess 「あなたの愛しい姫」とド直球の表現がきます。
beloved は「いとしの、最愛の(人)」という意味です。
位置を調べているだけなのに
- FC日本語版
- (勇者)さまを ローラは おしたい もうしております。
- スマホ英語版
- (Hero)… Beloved… Oh, how I do yearn for you…
- スマホ英語版日本語訳
- いとしの(勇者)さま…。あぁ、どれだけ私はあなたのことをしたっていることか…。
- ※(勇者, Hero) は主人公の名前を呼んでいる部分
ローラ姫を救出したときにもらえる重要アイテム「おうじょのあい (Princess’s Pledge) 」を使った時のメッセージです。ロトの印を見つけるためにラダトーム城からの位置を調べるために使うアイテムですが、メッセージの最後になぜか愛の確認をします。
pledge は「保証する、誓う」という意味です。つまり英語版のアイテム名は「王女の誓い」です。このセリフとなにも矛盾していません。
yearn は「あこがれる、慕う(したう)」という意味です。
“I do yearn” と do が付いているのは強調です「私は間違いなく勇者様のことを慕っています」と好意をしっかりアピールしています。 do のこのような使い方は英会話でも出てくることがあるので覚えておいて損はないでしょう。
このように、英語版のローラ姫はかよわいお姫様のイメージとは異なります。はっきり主張する外国人の女性という意味では、別の意味でローカル化をちゃんとしています。
城内兵士のセリフ
誠の勇者なら
- FC日本語版
- まことの ゆうしゃなら ぬすみなど せぬはずだ。
- スマホ英語版
- A true hero would not stoop to petty thievery…
- スマホ英語版日本語訳
- 本当の勇者なら(このような恥ずべきささいな)盗みはしないだろう…。
このセリフを聞いた時ドキッとしましたか?当時小学生だった私にはかなり刺さりました。
ラダトーム城内にある宝箱を見守る兵士のセリフです。もちろん勇者が中身を持ち出すことを想定して作られたセリフです。このセリフにドキッとした私は、まんまと制作者側の作戦にはまりましたね。
この英文の stoop は「前かがみになる、恥ずべき行為をする」、 petty は「ささいな」、 thievery は「盗み、盗む行為」です。盗賊のことをゲームではシーフと呼びますが、これは thievery の類似語である thief から来ています。
勇者がにくい
- FC日本語版
- ああ いとしの ローラひめ… わたしは (勇者)が にくい。
- スマホ英語版
- Ohh, Princess, dear Princess… Would that I might clutch you to my chest after the manner of the mighty (Hero)…
- スマホ英語版日本語訳
- あぁ、姫、いとしの姫よ…。偉大な(勇者)のようにあなたをこの胸で抱きしめられれば…。
- ※(勇者, Hero) は主人公の名前を呼んでいる部分
ファミコン版と英語版で同じ場所にいる兵士ですが、日本語と英語でセリフのニュアンスが違いますね。正直、この英文の訳は難しかったです。そのため私の個人的な気持ちが訳に入っています。
この兵士の日本語のセリフは「自分もローラ姫のことが好きだが、勇者のせいで姫とつきあうことができない(だからにくい)」という解釈ができます。
一方、英語版のセリフは「勇者が姫を抱えて戻ってきたように、自分も姫に対して同じことができたらなぁ」と解釈しました。しかし英文からはこの解釈が難しいです。
would は「~だろう」という意味ですが、ここでは古文で「望む、欲する」です。勇者のように姫を自分の胸 (my chest) で抱きしめられたら (might clutch) 、という願望がストレートに出ているのです。
might は「~かもしれない」で、ビジネス英会話でも少しの可能性を示したいときに使います。clutch はマニュアル自動車にあるクラッチ(変速のためにギアを一時的に抑える部分)と同じ単語です。この場合は物ではなく人をつかみたいのです。
“after the manner” は解釈に苦しみました。直訳すると「勇者の後に自分が抱きしめたい」になってしまいます。お姫様を抱えるのに順番があるのはおかしいですよね。もしかしたら「勇者がいなくなれば」という意味かもしれません。
manner はまさに「マナー、やり方、作法」です。また mighty は「偉大な」で great と同じ使い方です。これらの単語は直接訳しませんでした。
ラダトーム王 (King Lorik) のセリフ
ラダトーム王のセリフはどれも難しかったのでこの記事の最後の紹介としました。しかしどのセリフもドラクエシリーズに欠かせないものなので、解説させてください。
そなたの来るのを待っておったぞ
- FC日本語版
- おお (勇者)! ゆうしゃロトの ちをひくものよ! そなたのくるのをまっておったぞ。
- スマホ英語版
- (Hero)! Scion of the bloodline of Erdrick, hero of legend! Long have I waited for you coming!
- スマホ英語版日本語訳
- 伝説の勇者アードリック直系の子孫よ!そなたが来るのを長い間待っておったぞ!
- ※(勇者, Hero) は主人公の名前を呼んでいる部分
ゲーム開始後のラダトーム王のセリフです。
主人公が伝説の勇者の末裔であることを、王様が強調するセリフです。 scion は「子孫」、 bloodline は「家系、直系」という意味です。英会話で使うことはまずない単語でしょう。
次の文「長い間待っておったぞ!」は日常会話にも出てくるフレーズですね。ただし “I have waited” ではなく “have I waited” と倒置表現にすることで王様の発言らしい「上から目線」な感じがします。また現在完了形なので「長い間、今の今まで待っていた」というニュアンスになります。
ちなみに、英語版ではロトという表現は出てきません。理由はロトという単語が宗教的な意味を持っているからだと言われています。信仰深い人たちへの配慮です。
代わりに、伝説の勇者のことをアードリック (Erdrick) という架空の人名にしています。またラダトーム王にはロリック (Lorik) という名前が付いています。
光の玉を取り戻してくれ!
- FC日本語版
- ゆうしゃ (勇者)よ! りゅうおうをたおし そのてから ひかりのたまをとりもどしてくれ!
- スマホ英語版
- So I say to you, (Hero) of the bloodline of heroes, vanquish the accursed Dragonlord, and reclaim the Sphere of Light!
- スマホ英語版日本語訳
- 勇者の子孫(勇者)よ、お願いだ、あの忌まわしき竜王を打ち破り光の玉を取り戻してくれ!
- ※(勇者 / Hero)は主人公の名前を呼んでいる部分
勇者が旅に出る目的を簡単に言い表したセリフです。
“I say to you” は「私はあなたに言う」ですが、そのまま日本語にするのは変なので「お願いだ」と訳しました。実際に “I say to you” は王様が「自分はこれが言いたいんだ」と強調していると解釈できます。
reclaim は「取り戻す、返還を要求する」です。 re と claim が合わさった単語です。
日本語でクレーム (claim) は「苦情」という意味で使われますが、英語で苦情は complain です。本来の claim の意味は「自分の物であることを主張する」です。空港に到着して自分の荷物を受け取ることを baggage claim ということから「自分の荷物を要求する」のです。
claim に re を頭に付けることで「(一度他人の物になったが)再び自分の物にする」という意味が含まれます。取り戻したいのは光の玉 (Sphere of Light) です。
vanquish は「打倒する、負かす」という意味です。
accursed Dragonlord は「忌まわしき竜王」です。accursed (いまわしき)は日常英会話ではあまり使わない表現です。竜王 (Dragonlord) という単語については「竜王編」で解説します。
死んでしまうとは何事だ
- FC日本語版
- おお (勇者) しんでしまうとは なにごとだ!
- スマホ英語版
- But what is this, brave (Hero)? Defeat do ill become you!
- スマホ英語版日本語訳
- (しかし)勇敢な(勇者)よ、何事か?そなたは不幸にもやられてしまったのか!
- ※(勇者 / Hero)は主人公の名前を呼んでいる部分
ドラクエ 1 をプレイしたことがあれば一度は耳にするセリフのはずです。私はドラクエ 1 では「がいこつ」や「影の騎士」によく負けてこのセリフを聞きました。がいこつ系は攻撃力が高いんですよね。さらに影の騎士はこっちの攻撃をかわすので厄介でした。
日本語のセリフよりも、英語版のセリフはまだ勇者に対するリスペクトがあります。言い方は遠回しですし、 brave hero (勇敢な勇者よ)と名前の呼び捨てではありません。
後ろの英文は訳すのが正直難しかったです。同じことをもっとシンプルに言うなら “Unfortunately, you are defeated! ” で良いはずです。
defeat は「倒す、やっつける」でドラクエを英語でプレイすれば無数に見る単語です。先ほどの vanquish と似た意味ですが、 defeat の方がカジュアルな表現で、スポーツの英語ニュースで使われます。 vanquish の方が硬い表現です。
ill は「病気」という意味でよく使います。しかしここでは「不吉にも、不幸にも」という意味でしょう。「不運にも」であれば先に書いた unfortunately でいいのですが、あえて ill を使うのは、日本語で解釈できないニュアンスがあるのかもしれません。
become は「~になる」です。この場合はやられてしまったという事実を are を使わずに表現しています。
戦いで傷ついたら宿屋で休め
- FC日本語版
- たたかいで キズついたときは まちにもどり やどやに とまって キズをかいふくさせるのだぞ。
- スマホ英語版
- Yet swear to me that when next you suffer, you will go straight to the nearest town, and there seek out an inn.
- スマホ英語版日本語訳
- もう一度わしに誓ってくれ、今度そなたが傷ついたときは、最も近くの街にすぐ向かい宿を捜し出してくれ。
二度と同じことを繰り返さないように王様が勇者にお願いしています。
swear は「誓う」という意味です。日常会話ではあまり使わないかもしれませんが、法廷やアメリカ大統領の就任式でこの単語は出てきます。このセリフでは厳密に「誓ってくれ」というよりも「私のアドバイスに従ってほしい」というニュアンスです。
yet は「まだ~ない」という意味ですね。否定文で not yet はよく使います。でもここでは肯定文で「もう一度 (again) 」という感じです。ゲーム開始時に同じアドバイスをしているはずだけど、念のためにもう一度アドバイスしますよ、というのが王様の気持ちです。
suffer は「病気や損害で苦しむ」という意味です。ここでの意味は HP と MP が少ない状態です。だから近くの街 (nearest town) にすぐ向かい (go straight) 、そこで (there) 宿屋 (inn) を探してほしい (seek out) とアドバイスしています。
go straight は「すぐに」と訳しましたが「寄り道せずまっすぐ街へ戻れ」というアドバイスです。
seek out は「捜し出す」です。失踪した人をみつけるくらいの気持ちで、街に着いたら宿を探してほしいという意味です。求職中の人のことを job seeker と言い、ビジネス英会話でも割と使う単語です。
まとめ
私はハリーポッターの原著を英語でおすすめしていません。なぜなら魔法の世界という設定は日常英会話やビジネス英会話からかけ離れて実用的ではないからです。
ドラクエも似たような世界なのでどうしても難しい表現が多くなります。それでもできるだけ日常英会話やビジネス英会話でも使えそうな表現を選んで解説しました。
このシリーズでは引き続き英会話の教材として使えそうなフレーズを引き続き紹介していきます。次回もよろしくお願いします。
声に出して読もう(英語のセリフ一覧)
この記事で紹介した英語のセリフを再度一覧にまとめました。下記のリストをご覧ください。
ドラクエのセリフは文語体や叙述的、詩的なものもあります。難しいセリフについてはグロービッシュや工業英語の観点から英文を書き直しました。そのため下記のセリフリストはより英会話に使えるようになっています。
音声データはありませんが、英語をある程度学習している方であれば音読教材としてお使いいただけます。ご活用ください。
- ローラ姫/グウェリン姫のセリフ
- Maybe you did not hear me correctly…
- Do you often think of your beloved princess?
- Oh, how I do yearn for you…
- ラダトーム城の兵士のセリフ
- A true hero would not stoop to petty thievery…
- I might clutch you to my chest after the manner of the mighty (Hero)…
- ラダトーム王のセリフ
- Scion of the bloodline of Erdrick, hero of legend! I have waited long for you coming!
- So I say to you, vanquish the accursed Dragonlord, and reclaim the Sphere of Light!
- But what is this, brave (Hero)? Unfortunately, you are defeated!
- Yet swear to me that when next you suffer, you will go straight to the nearest town, and there seek out an inn.
このレビューで解説した英単語一覧
- accursed: 忌まわしき
- become: ~になる
- beloved: いとしの、最愛の(人)
- bloodline: 家系、直系
- chest: 胸
- claim: 自分の物であることを主張する
- clutch: ぎゅっとつかむ、抑える
- complain: 苦情を言う、不満を言う
- correctly: 正しく、ちゃんと
- defeat: 倒す、やっつける
- go straight: (寄り道せず)まっすぐに行く
- Grr: うーっ、ガルルルル…(犬のうなり声)
- hero: 勇者
- ill: 病気、不吉にも、不幸にも
- manner: マナー、やり方、作法
- maybe: おそらく
- might: ~かもしれない
- mighty: 偉大な
- nearest: 最も近くの
- petty: ささいな
- pledge: 保証する、誓う
- reclaim: 取り戻す、返還を要求する
- scion: 子孫
- seek out: 捜し出す
- stoop: 前かがみになる、恥ずべき行為をする
- suffer: 病気や損害で苦しむ
- swear: 誓う
- thief: 泥棒、盗賊、シーフ
- thievery: 盗み、盗む行為
- think: 考える、心に抱く
- unfortunately: 運悪く、あいにく
- vanquish: 打倒する、負かす
- would: ~だろう、(古文で)望む、欲する
- yearn: あこがれる、慕う(したう)
- yet: まだ~ない、もう一度
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※ゲーム内の英文は一部古文表記となっています。読みやすさのため筆者が現代英文に修正したうえで解説しました。また文法的な厳密性については解説を省略します。