【対訳】英語版ドラクエ2の福引きで英会話は学べるのか?
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福引きはドラクエシリーズで最初にできたゲーム内ゲームです。ゴールドカードや祈りの指輪などレアアイテムを入手するために頑張ったのは良い思い出です。
英語版のドラクエをプレーしてふと思いました。「ドラクエのセリフで英語を学べるのか?」
今回はドラクエ 2 の福引きのセリフを対訳で紹介します。そしてこれらの英語のセリフが英会話で使えるのか検討してみましょう。
結論から言うと、ドラクエの英語のセリフは難しいです。各セリフの内容を現代英語に直すと日常英会話やビジネス英会話でも使える表現になりました。見ていきましょう。
始める前
福引券をお渡しします
- FC日本語版
- かんしゃのきもちを こめて ふくびきけんを おまけしておきますね。
- スマホ英語版
- A pleasure doing business with you, friend. Allow me to present you with this tombola ticket by way of thanks.
- スマホ英語版日本語訳
- あなたと取引ができて嬉しいです、友よ。感謝の目的でこの福引券をプレゼントすることをお許しください。
- ※ tombola ticket は福引券のこと
道具屋で買い物をするとたまに福引券がもらえます。
tombola は「福引き」という意味です。景品が出る「くじ引き」のことです。
business は「ビジネス」です。大がかりなビジネスだけでなく、このような取引(売買)に対しても使うことができます。ドラクエ 1 シリーズでは「僕に何か用でも?」というセリフに business が出てきました。 business とは商売以前に用事なのです。
allow は「許可する」です。道具屋の主人はかなり丁寧な対応をしていることがわかります。
実際に私が海外生活を経験して、買い物時に店員から allow me と言われることはまずありません。もし日常英会話として言うなら、例えば Also a tombola ticket for you. (福引券もどうぞ)といった感じでしょうか。
by way of は「~を手段として、~のつもりで」という意味です。直訳すると「感謝の手段として(福引券をプレゼントします)」となります。ファミコン版のような「気持ちを込めて」というニュアンスはなくあくまでも「代替手段として」というドライなイメージです。
最初の英文は以下のように書き換えることができます。日常英会話であればこちらの方が自然です。
It is my pleasure to do business with you. This is a tombola ticket for you with thanks.
福引きをしますか?
- FC日本語版
- ここは ふくびきじょです。 ふくびきを いたしますか?
- スマホ英語版
- Welcome, challengers of chance, to the home of the tombola! So, friend – will you set the wheels of fate in motion this day?
- スマホ英語版日本語訳
- ようこそ、運命の挑戦者、福引き所へ!それで、友よ – 今日は運命の円盤を回しますか?
福引き所の主人のあいさつのセリフですが、難しい言い方をしていますね。
challengers of chance は「運命の挑戦者」と訳しました。直訳すれば「チャンスのチャレンジャー」ですが、日本語なら単に「チャレンジャー」とするのが一番自然かもしれません。
home of the tombola は「福引き所」と訳しました。
単に場所であれば place of the tombola でも良いのですが、辞書によると home には「本領を発揮できる所、発祥地、本元」といった意味もあるようです。そのため「あなたの運命を発揮できる所、福引きの本元」というニュアンスが home によって出るのでしょう。私も知りませんでした。
wheels of fate は「運命の円盤」です。
先ほどの chance とともに fate も「運命」と訳しました。しかし chance は「景品をもらえるかもしれない運」であり、 fate は「出来事を支配する力としての(実は結果が決まっている)運命」です。これらの意味を考えると主人公側(プレーする側)は chance 、福引き側が fate になるのがわかります。
wheel は車などの「ホイール」のことです。ここでは「ルーレットの円盤」をイメージしてください。
実際のところ、ドラクエ 2 の福引きはスロット (slot machine) です。商店街にあるような、ガラガラして色の付いた玉を出すやつ (tombola) ではありません。国によってスロットマシーンの英語表現は違うようです。
外部リンク:Slot machine – Wikipedia
この英文も書き直すとするならこうなるでしょう。
Welcome to the home of the tombola! So, friend – will you play today?
ルール説明
説明を聞きますか?
- FC日本語版
- ふくびきについての せつめいを ききますか?
- スマホ英語版
- And would you fain hear the Great Game explained prior to spinning the reels of destiny?
- スマホ英語版日本語訳
- そして運命のリールが回転する前に、この素晴らしいゲームの説明を聞きたいですか?
ゲームを始める前にルールを確認するだけなのに、やけに難しい英文で聞いてきますね。
fain は「~を望んでいる、喜んで~する」という意味です。今は使われていない単語なので覚えなくて大丈夫です。ドラクエならではの叙述的なセリフにするための英単語です。
hear は「聞く」ですね。何を聞くのかというと、素晴らしいゲームの説明 (the Great Game explained) です。 explain は「説明する」です。
prior to は「~に先立って」という意味です。 to の後ろに書かれていること(リールが回りはじめる)をやる前に、です。カタカナの「プライオリティ(優先順位)」は priority で prior の仲間です。
spinning は「回転する」です。例えばコマの回転などをカタカナでスピン (spin) といいますね。私はゲームの世代的に、ストリートファイターの春麗の技「スピニングバードキック」を連想します (spinning bird kick) 。
the reels of destiny で「運命のリール」です。先ほどは同じ意味のことを wheel of fate と言いました。どう違うのでしょうか?
destiny はドラクエ 2 紋章編でも解説したように「運命」で、 fate とほぼ同義です。ただし destiny の方がよりよい結果を期待できるニュアンスです。同じ単語 (fate) の繰り返しを避けたのでしょう。
wheel と reel の違いは何でしょうか?上の図に示すように 3 つの各スロットのことを reel, スロット全体を外から回転させることを wheel としています。英文を見ると reels は複数形なので区別ができます。車のハンドルのことをステアリング・ホイール (steering wheel) とも言いますので、ホイールは操作部であると推測できます。ルーレットも同じですね。
この英文も書き換えてみましょう。リールの部分はあえて残して「ゲームを始める前にルールを確認しますか?」くらいのニュアンスにするならこうなるでしょう。
Would you like to hear the rule of this game before turning the reels?
ボタンを押して回転を止める
- FC日本語版
- ふくびきの きかいが かいてんを はじめたら ボタンをおして とめてください。
- スマホ英語版
- When the reels of the engine of fate do commence to turn, simply tap upon your screen to call each of them to a halt.
- スマホ英語版日本語訳
- 運命のエンジンのリールが回転を始めた時、シンプルにあなたの画面をタップし、各リールが止まるように呼びかけてください。
この英文も難しいです。後ほどもっとシンプルな英文に書き換えますので、まずは解説します。
engine は「エンジン」です。「運命のエンジン」と言って少し大げさにゲームを演出しているのでしょう。
commence は「始める」です。 start/begin の堅い表現だと思ってください。 commencement で「新たなスタート=卒業」という意味になります。スティーブ・ジョブズ氏の有名なスタンフォード大学の卒業式スピーチでも使われる英単語です。
turn は「回転する、ターン」です。先ほどの set in motion よりも turn の方が普通に使います。
tap は「タップする、軽くたたく」という意味です。「 A ボタンを押す」と言わない所に、スマートフォンという時代を感じます。
halt は「止まる、停止する」です。軍事的な意味もあるので通常の英会話であれば stop で十分です。
他にも細かい指摘はありますが、すべて説明するのは大変なので英文をシンプルにしましょう。このように書けばすっきりするはずです。
When the reels start to turn, just tap on your screen to stop each of them.
1等はゴールドカード
- FC日本語版
- 太陽じるしが 3 つそろうと 1 とう ゴールドカードが あたります。
- スマホ英語版
- Should three reels marked Sun thus come into alignment, the ultimate prize of a loyalty card shall be yours.
- スマホ英語版日本語訳
- このように太陽印のついた 3 つのリールが揃った場合、究極の景品であるロイヤリティカードはあなたのものです。
景品の説明です。前半部分がまたすっきりしないので後ほど書き直します。まずは解説しましょう。
marked (mark) は「~のマークがついた」です。リールには紋章が描かれていますが、そのうち太陽 (sun) のマークがついた部分について説明しています。
thus は「このように」です。文章をつなぐために入っていますが、無くても英文は成立します。とりあえず飛ばしましょう。
come into alignment は「一列に入る=揃う」です。 come into で「~に入る」、 alignment は「一直線になる、提携する」です。福引きの説明の最重要部分ですね。
そして景品の説明です。
ultimate は「究極の、アルティメット」、 prize は「景品、プライズ」です。ここも大げさに「究極の景品」と言っていますが、普通に一等賞であれば first prize で通じます。
loyalty card は「ロイヤリティカード(ゴールドカード)」です。意味としてはポイントカードのことです(会員証は membership card )。ゴールドカードの役割は割引なので実際にはポイントカードではありません。しかし英語的には loyalty card の方が適切です。
loyalty は本来「忠誠」という意味です。よく使う店やサービスにある種の忠誠心があり、マイルの上級会員のような優遇サービスがある。だから loyalty なのです。
この英文も書き直してみましょう。下記の英文の方がすんなり理解できると思いますが、いかがでしょうか?
If three reels marked Sun come into alignment, the first prize of a loyalty card shall be yours.
ほかにも景品は盛りだくさん
- FC日本語版
- そのほか いろいろ しょうひんを よういしております。
- スマホ英語版
- For other symbols, other prizes await. It shall be your pleasure to discover them all.
- スマホ英語版日本語訳
- 他のシンボルについては、他の賞品が待っています。 それらすべての景品を当ててみるのも(あなたにとって)楽しみですよ。
英語版のセリフは今風に言えば「すべての景品をガチャでコンプしてね」です。さらっとえぐいことを言いますね。
symbol は「シンボル、象徴」です。 other symbols とは、ここでは太陽以外の紋章のマークのことを指しています。
await は「待つ」です。この英単語は文語表現なので、普通に wait で問題ありません。
pleasure は「喜び、楽しさ」です。 カタカナで「プレジャー」と書かれていればこの英単語のことです。 It is my pleasure. (どういたしまして、こちらこそ)は日常英会話では必須です。ぜひ覚えてくださいね。
discover は「発見する」です。カタカナの「ディスカバー」です。福引きなので「景品を見つける」はおかしいのでここでは「当ててみる」と訳しました。
プレーと結果
福引きをはじめましょう
- FC日本語版
- では ふくびきを はじめましょう
- スマホ英語版
- Let the game begin!
この英文はシンプルですが、意外にもビジネス英会話に応用できるので紹介させてください。
let は「~させる」という意味です。よくあるキャッチコピーとして Let’s play! (さあ遊びましょう)だったり、ビートルズの名曲 Let it be などが有名でしょうか。
ビジネス英会話ではこのように使います。
- I will let you know the result. (結果は私からあなたにお知らせします)
- Let me help you. (私にあなたのお手伝いをさせてください)
この場合は game が主語で「ゲームを始めさせてください→福引きを始めましょう」となります。
はずれの場合
- FC日本語版
- ざんねんでした。 このつぎは あててくださいね。
- スマホ英語版
- Alas, a crying shame indeed. May the fates smile upon the next spin of their fickle wheel!
- スマホ英語版日本語訳
- ああ、本当に残念です。次回(の気まぐれな円盤の回転)にて運命がほほ笑むかもしれません!
はずれの時でも盛り上げを忘れません。先ほどはえぐいと言ってしまってすみませんでした。福引所のおじさんはかなりハイテンションなキャラなのかもしれません。
crying shame は「残念」という意味です。直訳すると「泣くほど面目ない」となるので熟語として覚えてください。日常英会話的には sorry に置き換えることができます。
indeed は「実に、本当に」です。ドラクエ 1 の英語シリーズでも出てきましたね。
fickle は「気まぐれな、変わりやすい」です。スロットの円盤が気まぐれと言っています。始める前は「運命の」って言っていたのに。たしかに「運命は気まぐれ」かもしれませんが。
この英文を書き換えてみましょう。無理に円盤とか入れなくても、今まで出てきた単語を組み合わせれば意味は伝わります。
Oh, sorry indeed. The fates might smile on the next time of challenge!
3個中2個合った場合
- FC日本語版
- いやー おしかったですね。 ざんねんしょうに ふくびきけんを さしあげましょう。
- スマホ英語版
- Alas – so near, and yet so very far! Allow me to present you with another ticket by way of commiseration.
- スマホ英語版日本語訳
- あぁ – 惜しかったです!同情の目的で福引券をもう1枚プレゼントすることをお許しください。
so near, and yet so very far は「当たらずといえども遠からず」です。熟語として覚えましょう。ここでは「惜しかった」という訳で十分です。
そして次の英文は、道具屋で福引券をもらった時のセリフの言い換えですね。
another ticket は「もう 1 枚のチケット」です。日常英会話でも使います。 another cup of coffee で「コーヒーをもう 1 杯(おかわり)」です。
commiseration は「同情」です。道具屋で福引券をもらった時は「感謝の手段」でしたが、ここでは「同情の手段」です。
いくら惜しかったとはいえ、もう 1 回チャンスをくれるのは割と太っ腹ですね。
この英文は書き直すと道具屋のセリフとほぼ同じになります。言い換えの訓練になるでしょう。
Ah – so near, and yet so very far! This is another tombola ticket for you with commiseration.
当たりの場合
- FC日本語版
- おめでとうございます! 4 とう まよけのすずが あたりました!
- スマホ英語版
- I congratulate you heartily! The fourth prize of a banishing bell shall be yours!
- スマホ英語版日本語訳
- 心からおめでとうございます! 4 等賞の魔除けの鈴はあなたのものです!
- ※ banishing bell は魔除けの鈴のこと
何とか頑張って 4 等賞を当てました!ここでも盛り上がっている感じですが、セリフはシンプルです。
congratulate は「祝う」です。 名詞の Congratulations! (おめでとう!)の方がおなじみかもしれません。
heartily は「心から、本気で」という意味です。日常的にあまり使わない英単語です。
余計なお世話ですが、この英文も書き換えてみましょう。私が福引所の担当であればこのように言うでしょう。
Congratulations! You won the fourth prize, a banishing bell!
まとめ
福引きというゲームを題材に英語のセリフを解説しました。思ったより難しかったのではないでしょうか。
しかしどのセリフもあくまでドラクエ調の言い回しです。書き直せば日常英会話やビジネス英会話で実際に使いそうな表現はありました。この記事の最後に英語のセリフを再度整理しますので、英語を学習されているのであれば声に出して読んでみましょう。
今後は DQ3 の各闘技場や他に遊び心のあるシーンについても取り上げてみたいと思います!
声に出して読もう(英語のセリフ一覧)
この記事で紹介した英語のセリフを再度一覧にまとめました。下記のリストをご覧ください。
ドラクエのセリフは文語体や叙述的、詩的なものもあります。難しいセリフについてはグロービッシュや工業英語の観点から英文を書き直しました。そのため下記のセリフリストはより英会話に使えるようになっています。
音声データはありませんが、英語をある程度学習している方であれば音読教材としてお使いいただけます。ご活用ください。
- 始める前
- It is my pleasure to do business with you. This is a tombola ticket for you with thanks.
- Welcome to the home of the tombola! So, friend – will you play today?
- ルール説明
- Would you like to hear the rule of this game before turning the reels?
- When the reels start to turn, just tap on your screen to stop each of them.
- If three reels marked Sun come into alignment, the first prize of a loyalty card shall be yours.
- For other symbols, other prizes wait. It shall be your pleasure to discover them all.
- プレーと結果
- Let the game begin!
- Oh, sorry indeed. The fates might smile on the next time of challenge!
- Ah – so near, and yet so very far! This is another tombola ticket for you with commiseration.
- Congratulations! You won the fourth prize, a banishing bell!
このレビューで解説した英単語一覧
- allow: 許可を得る
- another: もう1つ、おかわり
- await: 待つ (wait)
- business: 取引、用事
- by way of: ~を手段として、~のつもりで
- challengers of chance: 運命の挑戦者
- come into alignment: 一列に入る=揃う
- commence: 始める (start/begin)
- commiseration: 同情
- congratulate: 祝う
- crying shame: 残念
- destiny: 運命(よい結果を期待できる)
- discover: 発見する
- engine: エンジン
- fain: ~を望んでいる、喜んで~する
- fate: 運命(出来事を支配する力として実は結果が決まっている)
- fickle: 気まぐれな、変わりやすい
- halt: 止まる、停止する (stop)
- hear: 聞く
- heartily: 心から、本気で
- home of the tombola: 福引き所
- indeed: 本当に
- let: ~させる
- loyalty: 忠誠
- marked: ~のマークがついた
- pleasure: 喜び、楽しさ
- prior to: ~に先立って
- prize: 景品、プライズ
- reel: リール
- so near, and yet so very far: 当たらずといえども遠からず
- spin: 回転する
- symbol: シンボル、象徴
- tap: タップする、軽くたたく
- thus: このように
- tombola: 福引き、景品の出るくじ引き
- turn: 回転する、ターン
- ultimate: 究極の、アルティメット
- wheel: 円盤
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※英単語の調べものには主に研究社新英和大辞典(第6版)を参考にしました。