『英語の多動力』で英語力は身につくのか?徹底レビュー

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英語の多動力
英語の多動力

ホリエモンこと堀江貴文氏による英語本が発売されました。英語で論文を書き3か国で就労した私からみても、本書はきれいごとを言わないまともな本でした。

この記事では英語の多動力をレビューし、私のコメントと感想を書きます。かなり深く突っ込みましたが、英語を学びたい人のお役に立てれば嬉しいです。

英語とどう向き合うべきか

本書は英語力が向上する具体的なノウハウを紹介した本ではありません。ホリエモンが考える「これからの時代英語とどう向き合うか」を多動力という視点から解説した本です。

ホリエモンは言います「自動翻訳が実現しても生身の人間同士でコミュニケーションを取りたいという本質的な要求があるから英語学習は必要(同書kindle版位置No.843付近)」だと。

この考え方には正直ほっとしました。自動翻訳が完成されたら英語というスキルの優位性がなくなるのか?そういう不安が正直ありました。

ただ一方で、ホリエモンの言うことはとても自然なことです。どうしてでしょうか?

世界的には複数の言語を話すのが普通な地域があります。そういう場所では自動翻訳は普及しない可能性が高いです。外国は基本的に日本以上に人と人のコミュニケーションを大切にするからです。

例えばシンガポールの公用語は4か国語(中国語、英語、マレー語、タミル語)ですし、ベルギーは3か国語(フランス語、オランダ語、ドイツ語)です。日本の公用語は日本語だけですね。しかしシンガポールの首相は最低3か国語でメッセージを発信します。

台湾の公用語は中国語(北京語をベースとした普通話という言葉)です。ただし台北の地下鉄(MRT)に乗ると英語を含めた4つの言葉でアナウンスがあります。そのうちの1つは台湾語と呼ばれる言葉で、台湾人同士の世間話は中国語でなくこの言葉で話します。中国人もこの言葉は理解できません。

水ペットボトルの多言語表示
ヨーロッパに行けばミネラルウォーターのボトルですら多言語表示は当たり前(GB:英語、NL:オランダ語、FR:フランス語、DE:ドイツ語)

複数の言葉を話せる人は、会話中でもその場で言葉をスイッチします。私は仕事中、オランダ語で会話していた同僚が突然英語に(親切で)切り替えてくれたことがあります。

状況や相手によって途中で言葉を変えることに抵抗はありません。みんな複数の言語が話せるのが普通だからです。

たしかに自動翻訳機ができたら便利でしょう。特に英語以外の言葉を翻訳してくれたら大変助かります。

だからといって外国語(日本人の場合は英語)が将来的に不要になるということはない。ホリエモンのこの言葉に私は救われました。

勉強よりも実践がすべて

私は大学受験で英語が苦手になりました。だから英語(特に英文法)の克服はお勉強ではなくトレーニングのようにやってきました。

しかし世間的にはまだまだお勉強こそ正しい学習法という風潮があるように感じます。この点についてもホリエモンの言葉に救われました。引用させていただきます。

実践を超える勉学など存在しない。従来の教科書や参考書にあるような架空の人物の会話例を読むよりも、ネットで実際に外国人とコミュニケーションを取り交わすほうがよほど英会話の訓練になる。

堀江貴文 『英語の多動力』 DHC (2018) kindle版位置No.293付近より引用

ネットで直接外国人とコミュニケーションをとることについて、私は英語で論文を書いて発表するということを昔やりました。今読み返してもめちゃくちゃな英語論文でしたが、それでも国際会議で採択されてアメリカで発表することができました。

関連記事:英語習得物語 第3話:TOEIC385点で米国学会発表

後ほど解説しますが、音読や洋書多読なども生きた英語でトレーニングをする意味では実践です。相手がいるか/いないか(一人で学習できることか)の違いです。

実践を超える勉学など存在しないのはまさにその通りです。しかし私がやってきたことはなかなか理解されませんでした。だからこそ、本書は私がやってきたことが間違っていなかったと思えるのです。やっぱり間違っていなかった(しみじみ)。

では具体的にどう実践していけばよいのでしょうか?もっと深く掘り下げてみましょう。

ハマる経験は知らぬ間に英語力を向上させる

多動力シリーズに共通するメッセージは「まずは1つのことにとことんハマれ(同書kindle版位置No.778付近)」です。

私が英語学習でハマった経験、それは洋書多読でした。中学レベルの英単語だけで書かれた薄い洋書を辞書なしで読むことができ「自分でも英語の本を読んでストーリーを楽しめた!」と感動したのがハマるきっかけでした。

その後何年も多読をやり、最終的には500冊の洋書を読みました。時間はかかったかもしれませんが、結果として英語アレルギーがなくなり、基礎英語力も身についたと確信しています。

関連記事:英語習得物語 第2話:英語洋書多読との出会い(英語学習にのめり込むきっかけとなった話)

好きなことにハマった場合、無我夢中になってやります。その結果、気がついたら知識やノウハウが身についていた。これは理想的な英語力向上の方法です。

いまさら革新的な英語学習法などはありません。大事なのはやるか/やらないかだけなんです。

ただし後述するするように、学習法は人によって合う/合わないがあります。人によって趣味や好み、育った環境、読み書きどちらが得意か、確保できる学習時間や場所などが異なるからです。

だからこそ私は別の記事でコーチング(学習進捗管理)が重要と書きました。好きなことに夢中な場合はコーチングは重要ではありません。自分で勝手にどんどん先に進むからです。

関連記事:おすすめの英語学習法はある、上達に必要なのはコーチング

試行錯誤は必要

あれだけハマった洋書多読ですが、壁に当たってしまいました。あるところから英語力が向上せず停滞する時期がありました。

その頃は何としても停滞を突破したくてあれこれ手を出しました。

そして本書にはこう書かれています「トライ・アンド・エラーを続け、自分に一番しっくりくるものを見つけよう(同書kindle版位置No.1408付近)」。

どのような英語学習法も一長一短があります。成功体験が書かれている本はあくまでも「その人にとってうまくいった方法」です。

私の場合はリスニングが極端に悪く、シャドーイングやディクテーションは全く効果を感じませんでした(シャドーイングやディクテーションという学習法の解説は関連記事にて解説しました)。

関連記事:英語習得物語 第10話:中学英語の教科書の音読から再出発(自分に合わなかった学習法と合わなかった理由を解説)

しかし、中学英語の音読を徹底することで道が開けました。すでにある程度の単語や文法を身につけていた私に必要だったのは、英文の脳内処理スピードを上げることでした。

私は自分で合う方法を見つけることができて良かったですが、それもやはり自分で行動したからでしょう。もし英会話学校の先生に相談してもこの答えは得られなかったでしょう。

本書には6人のインタビューがあります。どの人も英語を克服した方法やバックグラウンドは違いますが、少なくとも行動だけはしました。

これらのインタビューを通じて自分に合う方法が見つかれば、それだけでも本書を読んだ価値があるでしょう。

失敗こそ英語力向上の近道

英語が通じなくて恥ずかしい経験や悔しい思いをしたことはありますか?「あんな嫌な思いをしたからもう英語はやりたくない」ではもうおしまいです。失礼ですが逃げです。

失敗したり恥をかいたことは絶対に忘れません。「次は同じことをしないためにこう改善しよう」は英語力向上のきっかけになります。だからこそ、くじけないバカが最強だとホリエモンは言うのです。

成功体験よりも失敗体験の方が強く記憶に残ります。悔しい経験が大切ということを本書からも引用させていただきます。

自己防衛、あるいは強い英語への好奇心が“悔しい”から芽生える。
それがあると英語はどんどん頭に入ってくる。
勉強の本質とはこういうことではないだろうか。

堀江貴文 『英語の多動力』 DHC (2018) kindle版位置No.1452付近より引用

私の忘れられない経験もお話ししましょう。

12年以上前、アメリカに学会発表に行ったときのことです。ロサンゼルスのスターバックスでの会計で「サーティーンダラーズ($13)」が聞き取れませんでした。小学生でも知っている単語が聞き取れないことがショックでした。

あのthrteenのthの発音(空気が出て行くような音)が聞き取れず「ティーンダラーズ」としか聞き取れず、思わず10ドル札を出しました。そして店員さんからレシートを見せられて「13ドルだったのか!」となったのです。

関連記事:英語習得物語 第3話:TOEIC385点で米国学会発表(スターバックスの話の初出)

あのときの光景は今でもハッキリ覚えています。

こういったきっかけはとても大切です。そのためにもいろいろ行動することは大切です。

私は20代でたくさん恥をかいて良かったです。

24時間英語に触れなくても少量・毎日継続で効果は出る

スマホを英語設定にするのは気持ちの問題

本書の最後にてホリエモンは「スマホを英語モードにする(同書kindle版位置No.2121付近)」と提案しています。目的は英語を少しずつ受け入れられるようにするためです。

この方法は効果的でしょうか?大きな効果は見込めないのが私の意見です。

英語の環境に慣れたくて設定変更することは問題ありません。ただスマートフォンは起きている時間はほぼお世話になります。英語で通知が着たり、エラーメッセージを受け取るのは初心者にとって逆にストレスではないでしょうか?

通知内のわからない単語をいちいち調べていたら時間がもったいないと思いませんか?

私はシンガポールとベルギーで就労経験があります。仕事で支給されるPCは当然英語版です。ベルギーにいたってはオランダ語のキーボードなのでキー配列も違いました。しかし私は英語を既に克服していたので問題ありません。今現在もスマホの設定をわざわざ英語にはしません。

慣れないうちに何でも英語の環境にする必要はありません。そもそも私が英語を学習していた20代の頃にはスマートフォンはありませんでした。当時ホリエモンがもしアドバイスしたなら「あなたのガラケーやWindows PCを英語設定にする」だったでしょうか。

反復練習をすれば日本にいながら英語力は上がる

そこまでしなくても英語力を向上させる方法はあります。それは毎日継続することです。

24時間英語にふれる必要はありません。しかし少しの時間でも毎日ふれる必要があります。

たとえ1日30分でも、毎日継続すると3ヵ月後や半年後には効果を実感できるようになります。脳が記憶を定着させる仕組みとして、学習後24時間を目安に復習するのが効果的とする説があるからです。本書ではこの仕組みを利用した英語学習管理アプリも紹介しています。

私の経験もお話します。ある英語雑誌の音読を1日30分、3か月続けたところTOEICスコアが95点アップしたことがありました。毎日テキストの内容をCD音声と音読で反復練習する単調な作業でしたが、ある日突然改善していたのです。

関連記事:英語習得物語 第6話:CNN EEを音読してみてTOEIC95点アップ(545→640)(この時は興奮して夜眠れなかった話)

どうしても24時間英語漬けにしたいのであれば、思い切って語学留学する方法もあります。

しかし留学先で日本人としか絡まない学習者を私はたくさん見ました。せっかく外国まで来ているのに、です。本気で語学留学する人は少数派で「俺留学しているかっこいい~」という人が多数派でしょう。本書でも「日本にいるから英語ができないのは言い訳(同書kindle版位置No.164付近)」というのはその通りです。

関連記事:英語習得物語 第12話:~そしてフィリピン・セブ島留学へ~(フィリピンの語学学校で日本人学習者に無視された話あり)

私にとって最も英語の抵抗を減らしたのは、先ほども紹介した多読でした。英語で面白い話を読むことにハマった結果、英文アレルギーはなくなりました。そのため日本にいても英語力を鍛えることはできます。

その意味でもスマホ設定よりも他の学習法にハマる方をおすすめします。

まとめ

英語の指南書としては、本書はまともな本です。きれいごとを書いて中身のない英語の本は世の中にたくさんあります。

実践と試行錯誤が必要ですが、本書の考え方さえきちんと理解すれば英語力の向上は望めるでしょう。あとはあなたの努力しだいです。

この記事をまとめましょう。

  • 座学よりも実践的な方法で英語をトレーニングしよう。
  • 好きな方法にハマったり、悔しい気持ちを持つことは英語を上達したいというモチベーションアップに必要。
  • 24時間英語の環境に身をおかなくても英語力は向上する。しかし毎日少しでも継続してやる必要はある。